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円が高くなったり安くなったりすることを利用した投資方法に、FXや外貨預金があります。円高円安という言葉は、日常でも何気に耳にする言葉ですが、いったいどういう意味なのでしょうか。
FXや外貨預金など、外貨を取り扱う投資では、この円高円安が非常に重要なポイントとなります。さらに、円高円安とは、外貨取引だけでなく様々な金融市場に大きな影響を与えています。
投資の種類にかかわらず、投資をする上で円高円安を理解しておくことが欠かせません。これから、投資を始める方は円高円安の仕組みや市場に与える影響をまずは抑えておきたいものです。
今回は、円高円安の基礎知識をわかりやすく解説していきます。これからの投資にどうぞお役立て下さい。
円高円安はどちらがいいの?
ニュースや新聞などで頻繁に使われている「円高」「円安」という言葉。ニュースメディアにて頻繁に登場するからには、きっと重要なことに違いないと何となくわかっている人は多いでしょう。
でも、そこで、
投資とは「買いと売り」の組み合わせ
では、円高円安が投資にどのように関わってくるのかを理解していくために、まず投資の基本的な仕組みを考えていきましょう。
投資の基本は非常にシンプルです。
「買いと売り」のタイミング
まず、円高円安は投資を行う上で「買い」「売り」のタイミングがいつなのかを教えてくれます。
とくにFXや外貨預金など外貨そのものを扱う投資においては、円高円安は最も欠かすことのできない重要な指標となります。
外貨の取引においては(円を基盤とした場合)
- 円高の時に買う
- 円安の時に売る
この2つがすべてです。
「買いか売り」かで違う
ですから、円高円安はどちらの方がいいのかというのは、
- これから買うのか
- これから売るのか
によって異なるわけです。
金融商品によって、円高時に売った方がいいものや、円安時に買った方がいいものもありますが、円通貨を基盤に行う外貨取引においては、
- 円高になったから外貨を買う
- 円安になったから外貨を売る
ことで、大きな利益を獲得できるのです。
従って、これから外貨を買おうと思っている人にとっては、円高になれば嬉しいことです。反面、これから売ろうと思っている人にとっては、円高は損失を出すサインとなってしまいます。
同様に、これから外貨を売ろうと思っている人は円安が進んでほしいと願います。これに対して、これから外貨を買おうと思っている人は、円安がまた進んでしまったのでしばらく待つことになるのです。
為替レートと外貨預金・FX
それでは、これから外貨預金やFXを始めたいと思う人のために、外貨取引において利益が出る仕組みを詳しく解説していきます。
円で外貨を買ったり、外貨を円に戻したりというのは、海外旅行に行ったことがある人は経験していますね。そのような人たちは、知らずにいながらも外貨取引をしていることになります。
外貨取引とはつまり、1つの通貨を異なる通貨に両替することです。
外貨預金やFXでは、
- 円から外貨に両替することを→円で外貨を買う
- 外貨から円に戻すことを→外貨を円で売る
といいます。
為替レートとは
このように、1つの通貨から異なる通貨に両替(売買)する時に、基準となるのが為替レートです。
例えば100円を1ドルにしたら、日本円ではいくらになるのか、
を示したものが為替レートです。
為替と聞くと何だか難しいことのように聞こえてしまいますが、昔は外貨両替をする際に外国為替という証券が必要だったため、現在も為替と呼ばれているだけです。
正確には外国為替といいますが、近年で為替といえば「外貨」のことと思っておいて間違えありません。
為替レートは常に動いている
このように1つの通貨から異なる通貨に両替するには、為替レートを基準にするのですが、この為替レートはつねに変化しているのです。
例えば、昨日の夕方には1ドルは110円でした。
でも今日の朝は1ドルは111円に変わっています。
ここで、
つまり、昨日持っていた110円(1ドル)は、何もしていないのに、為替レートが変動したために111円に増えているわけです。
為替レートが動く要因
では、どのような理由があって、上述したように為替レートは動いていくのでしょうか。
為替レートが動く要因は、
輸入や輸出などの貿易、その他の金融商品の動き、政治や自然災害など非常に様々な事情がからんでいますが、大まかには3つの要素から動いていきます。
- 需要と供給
- 金利
- 物価
の3つが主に為替を動かしていきます。それぞれどのように為替レートに影響を与えているのかを解説していきます。
需要と供給
為替レートを動かす最大の要因は、通貨の重要と供給です。
- 需要とは→それが必要とされていること
- 供給とは→モノが提供されること
よく、需要と供給のバランスがどうの・・・と言われています。これは、ある1つの商品を必要としている人の数と、市場に出回る商品の数が割に合っているのかどうかを意味しています。
商品を必要とする人の数と商品の数がほぼ等しければ、需要と供給のバランスがとれている、といわれます。
需要が高い
重要が高いということは、それを必要とする人の数が非常に多いことを意味しています。
例えば、アメリカは旅行や仕事などで、世界中から人が集まっています。日本や中国、フランスやイタリアなどそれぞれの通貨がたくさんドルに両替されます。
つまり多くの人がドルを必要としている状態です。これをドルの需要が高いと表現します。
日常で販売される飲食料品や衣料でも同様のことがいえます。
供給が多すぎる
ところが、アメリカでテロ事件があり非常に危険な状態になったとします。
すると、身の危険を感じて、アメリカから国外に行きたがる人が増えます。そこでドルが世界中の様々な通貨に交換されてしまいます。その結果、誰も購入しないドルがたくさん余ります。
よく小売業などで、在庫が余っているとセールをして価格を下げていく状態と似たようなものです。
金利
次に、為替レートを動かす大きな要因は、各国が行う金融政策です。
それぞれの国には、国政の1つである中央銀行によって国内の金融のバランスがとられています。例えば、本年度に発行する通貨の数や、金融機関にお金を貸し出す時の利息率などを調整しています。
とくに、中央銀行が定める利息率は為替の需要を大きく左右しています。
例えば、普段の暮らしの中で考えみましょう。A銀行の預金の金利は0.1%、B銀行の預金の金利は1%です。皆さんはどちらに預金をしますか?当然ながら、金利の高いB銀行を選ぶ人が多くなります。
このように、
金利が下がれば、需要が減少して通貨の価格が下がります。一方、金利が上昇して需要が高まれば、その通貨の価格も上がっていくということです。
物価
そして、もう1つの為替レートを動かす原因とは、物価です。
物価とは、日常生活において購入されている、飲食料品や衣類、サービスなど様々な商品についている価格のことです。
- 物価が上がると→インフレーション
- 物価が下がると→デフレーション
といいます。
※金融の仕組みについて、こちらの記事でわかりやすく解説してあります。参考にしてみて下さい。
為替変動が市場に与える影響
このように、いろいろな要因がからみあって為替レートを動かしていくのですが、円高・円安は外貨預金やFXだけに限らず、その他の金融市場にも大きな影響を与えています。
為替レートの変動によって、
- 株価が高くなったり安くなったりする
- 債券の金利や価格が変動する
- 商品の価格が変動する
- 不動産が買われたり売られたりする
などと、その他の金融市場も円高か円安かによって、買い時、売り時を判断する目安にすることができるのです。
そこで、円高円安がその他の金融市場に与える影響を、株式、債券、商品、不動産の4つの視点で見ていきたいと思います。
株式市場
株式は企業に投資を行いますが、企業は大まかに3つの種類に分けることができます。
- 輸出を主力とする企業
- 国内事業を主力とする企業
- 輸入を主力とする企業
これら、3つの業種は今が円高か円安かによって、それぞれ異なる影響を受けていきます。
円高の時
円高になると、100円でより多くの商品を海外から輸入できるようになります。企業にとって原料や商品を通常よりも安く仕入れることが可能となり、業績が伸びます。
そこで、円高に向かうと輸入関連の企業の株を買う人が増えます。円高時には、輸入を主力とする株式の価格が上昇する傾向にあります。
さらに、円高になると、株価が上昇傾向に向かうのが国内での事業を主力とする業種です。飲食業や不動産、小売業や運送業、ネット関連業などに投資家が集まるようになります。
円安の時
円高の時には、売られがちな輸出関連業も、円安に向かい始めると株価が上昇し始めます。輸出関連業は、100円の価値が下がると、より多くの商品やサービスが外国で購入されるからです。
例えば、日本の企業がアメリカで1000ドルの利益が出したとします。もし円高で1ドルが100円だとすれば、1000ドルの売り上げは日本円で10万円の利益です。
これが仮に、円安に向かい1ドル120円になったとします。そうすると1000ドルの売り上げは日本円で12万円の利益となるのです。
債券市場
債券も市場も同様に、円高か円安かによって、動きが変わっていきます。
円高の時
円高に向かうと先述したように、輸出関連業の業績が低下する傾向にあります。
そうなると輸出業で経済を支える日本の景気が悪くなっていきます。景気が悪化すると、国内の通貨の流通が鈍化していきます。そこで、資金調達などで通貨の流通を向上させるために金利が下がります。
そこで、もともと政策金利を基盤とする債券の金利は下がり、価格は上昇します。
円安の時
反面、円安に向かうと、外国通貨でより多くの債券が購入できるようになるため、海外投資家が日本の債券を購入し始めます。
すると、海外債券は売られ、国内債券の需要が高まり、金利が上昇します。
商品市場
商品市場とは、コモデティとも呼ばれるもので、大豆・野菜・ガソリン・灯油・金・プラチナなどのの商品の取引市場のことをいいます。
例えば、
NY金の価格が1300ドルのまま変わらないとしても、為替レートが変わることによって、国内で取引される商品の価格は変動することになります。
円高の時
円高になるということは、世界経済をリードするアメリカの経済力が弱まっていることを意味しています。アメリカ経済への不安は、そのまま世界経済の不安につながってしまいます。
世界経済への不安が高まると、通貨や株式の資金が安全資産である金やプラチナなどの貴金属に向かいます。従って、円高時には金・プラチナの価格が上昇しやすくなります。
円安の時
これに反して、円安時というのはアメリカ経済が非常に良好な状態であることを意味しています。アメリカ経済への期待が高まり、様々な金融商品が購入されるようになります。
円安時に価格が上昇しやすい商品は、原油、大豆、とうもろこしなど、アメリカ市場で取引量が多いものの需要が高まります。
不動産市場
不動産を購入する時には、基本的に融資を受けることが多くなるため、政策金利の影響を強く受けます。金利が低くなると借入を検討する人が増え、金利が高くなると借入を見送る人が増えます。
従って、金利が下がる、つまり円高時には不動産資金の借入がしやすくなることで、不動産市場は活性化する傾向にあります。
また、不動産市場は株式や債券、通貨とは全く異なる動きを見せることも度々あります。不動産は原則として土地や建物を売買することにありますから、簡単にネットで証券を売買するといったわけにはいかないからです。
ただ、リーマンショックなどと大きな経済恐慌があった時には、金融市場が総じて暴落してしまうような現象も起こります。不動産の価格は、金利や世界経済の影響を受けながらも、結局のところは、国内の賃貸ニーズに深く関わっています。
円高円安の予想方法は千差万別
円高円安が外貨預金やFXなどの通貨の取引だけでなく、あらゆる金融市場において、1つの目安となることがわかりました。
投資を行うにおいて、円高円安を理解しておくことはもっとも重要なことだといえるのです。
円高円安を予想する方法
では、そのように重要となる円高円安の動きはどのように予想することが可能なのでしょうか。
まず、代表的な方法として2つの方法があります。
- ファンダメンタル分析
- テクニカル分析
ファンダメンタル分析とテクニカル分析
ファンダメンタル分析
ファンダメンタル分析とはその国の経済状況を既存のデータを基に、通貨の動きを予想していく方法です。
その国の、
- 政策金利
- 経済成長率
- 消費者物価指数
- 国内総生産
- 失業率
- 国際収支
- 財政収支
などから複合的に今後の動きを捉えていきます。
テクニカル分析
テクニカル分析は、主にチャートの動きから、将来の価格を予想していく方法です。
具体的には
- 移動平均線
- 一目均衡表
- ピボット指数
- ボリンジャーバンド
- サイコロジカルライン
などからチャートを分析していく方法です。
※FXの2つの分析方法はこちらから詳しくご覧頂けます。
※チャートの分析方法はこちらの記事も参考になります。
トランプ発言分析
また、これは近年トランプ政権になってから使われるようになった分析方法ですが、トランプ大統領が発言した内容によって今後の為替レートを読んでいく方法です。
実際に、トランプ大統領が就任してからというもの、その発言が世界市場を左右するためにツイッターや新聞の登録者数は一気に急増したとのことです。
現在でも、日々一刻と世界中の投資家がトランプ発言によって、振り回される傾向にあります。
予想方法に正解はない
しかしながら結論をいえば、円高円安を予想するのに、これが正しいという正解はありません。それこそ千差万別にあるのです。
どんなに数十年のベテランの投資家でも、先のことはどうなるかわからないのです。誰にも明日の為替レートがどうなるか知る方法はないのです。
そこで、最後に円/ドルの為替レート予想を競う、日経新聞の「円ドルダービー」をご紹介しておきたいと思います。
日経新聞の「円ドルダービー」
日経新聞の「円ドルダービー」とは、全国の一般の人たちから為替レートの予想を募集するイベント企画で、定期的に紙面上で募集・公表されています。
最も予想が近かった人から順に最大で3万円分の図書券が賞金としてもらえます。
最近だと、全国の中学生から大学生、教員を対象にする「第19回 円ドルダービー全国学生対抗戦」があり、様々な予想がこれまでにも発表されています。
経済学部の為替研究
その学生ダービーで上位を占めるのは、主に大学の経済学部の教員と学生たちです。その中から、興味深い予想方法をいくつかご紹介しておきます。
立正大学・経済学部チーム
第18回の円ドルダービーで、現実の為替レートに最も近い予想をしたのが、立正大学の経済学部チームです。
この経済学部チームでは、経済学の教授である林 康史氏の「金融論基礎」を基に為替予想を行っています。この金融論基礎では、主にこれまでの市場の動きや商品の価格を基礎に将来の価格を導きだす方法で、とくに商品先物取引の動きが重視されています。
慶應義塾大学チーム
慶應義塾大学チームは、面白い発想で近い予想を出したことでいくつかのチームが評価されました。
- ディズニーランドの来園者数と為替市場の関係
- 宅配便の件数から読む為替予想
- 円相場の反発数と反落数からの為替予想
東北学院大学チーム
また、東北学院大学チームは、米国のカジノ売上高と日本のパチンコ売り上げ高が為替レートに関わっていることを発表しています。
これらの為替レートの予想方法は、審査に参加した三井住友アセットマネジメントも、参考になる発想として高く評価しています。
※外貨預金を始めたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
※また、米ドルのドル安の基準、円高円安の基準価格に関する記事がこちらでご覧いただけます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は外貨預金やFXを始めるにあたって、最も重要となる円高円安について解説していきました。
原則として円を基盤とする外貨取引は、
- 円高の時に外貨を買う
- 円安の時に外貨を売る
ことで利益が出ることがわかりました。
さらに、円高円安は様々な金融市場において、売り買いのタイミングを計る上で目安にすることができます。どのような投資を行うにせよ、この円高円安の動きを読み取ることがポイントとなります。
円高円安を予想する方法に決まりはありません。意外と身近な身の回りのものから円高円安のヒントを得ることができるかもしれません。
皆さんもそれぞれの得意分野を活かしたオリジナルの方法で円高円安を読み取りながら投資を成功させていきましょう。