相続で弁護士に依頼する費用相場とトラブルを円満解決に導く専門家の探し方

相続を行う場合は、被相続人や相続人同士で話し合い、事前に手続き方法を決めておくこともできます。しかし、遺産配分の際に家族観で揉め事となったり、お金に関するトラブルのもとになることも多いです。

そこで、弁護士という第三者に依頼する方法がとれます。弁護士に相続手続きを任せることで、複雑で専門的な作業を自分で行うこともなければ、家族間のトラブルを仲裁して、誰もが納得する解決を図ることも可能です。

今回は、そんな弁護士に依頼する費用相場をお伝えしています。相続人が受け取る遺産から、どの程度の費用なら受け入れられそうか、今回の記事を参考にご検討ください。

相続手続きを弁護士に依頼するメリットとは?

遺産相続については、ご自身やご家族だけで話し合って手続きを進めることが可能です。しかし、様々な資産やお金にかわかる問題のため、手続きは複雑で専門的な知識も要ります。

そこで、遺産相続に役立つのが「弁護士」です。特に、遺産相続にまつわる家族観での揉め事やトラブルを、円満に、なおかつスムーズな手続きによって解決してくれます。

ここでは、遺産相続で弁護士に依頼するメリットを、次の3つのポイントからお伝えしています。

  • 相続トラブル時など、法的根拠にもとづいた正当性を主張できる
  • 複雑で専門的な手続きをお任せできる
  • 見落としがちな問題を発見に役立ち、税金などがお得になることも

では、弁護士に遺産手続きを任せた場合のメリットを、以下でより詳しくお伝えしていきましょう。

弁護士がいるだけで相続トラブルが解消に向かうことも

遺産相続では、現金のほかにも土地や建物、金融資産など高額なお金が親族間で移動します。相続できる対象人物が多ければ、それだけ揉め事の原因になりやすいと言えるでしょう。

しかし、こうした相続トラブルは相続人がそれぞれ自分の正当性を主張するため、なかなか円満な解決はできません。そこで、弁護士が彼らの間に立ち、専門的な観点からアドバイスを行うことができます。また、第三者の視点で物事を見るため、仲裁者として役割も大きいです。

弁護士が間に入ることで相続人同士が納得できる

弁護士が相続トラブルの仲裁を行うことで、相続人同士が納得し合い、円満な解決が図れます。誰もが納得のいく結果で相続手続きができること、これこそ弁護士に依頼する最大のポイントといえるでしょう。

相続トラブルで揉めている相手は、血縁関係のある家族同士です。たとえ、自己の主張を押し通し、力づくで相続トラブルを解決させたとしても、その後も相続人同士は付き合っていかなければなりません。そのため、弁護士による納得のいく解決策を提示してもらい、できるだけ円満な解決を行うことが重要となります。

「相続手続きを自分で行う」「弁護士に任せる」どちらがおすすめ?

相続の手続きは、必ずしも弁護士に任せなければならないわけではありません。遺産を残す被相続人が先頭に立ち、生前から家族同士で話し合って手続きの細かい流れを決めておくことも可能です。

しかし、被相続人と相続人同士で手続きを進めていく場合は、「専門知識」と「手続きの煩雑さ」を忘れてはいけません。遺産相続は、現預金のほか、今まで被相続人が投資していた株やFXなどの金融資産、土地や住宅、投資用マンションなどの不動産など、資産に応じて最適な手続きを進めていく必要があります。不動産の名義変更をするために相続登記を行ったり、もちろん相続税に関する知識も必須です。

こうしたことを専門的な観点からアドバイスしてくれる弁護士は、やはり傍にいるだけでも相続人を安心させてくれるでしょう。遺産相続では税金が必ず絡んでくるため、知識があまりないことで損をしてしまうことだってあります。そうした納税のサポートまでしてくれるのが弁護士です。

では、弁護士に相続手続きを依頼した場合の詳しいサービス内容を学びながら、手続きを自分で行うか、それとも弁護士に依頼するか、どちらが良いか検証していきましょう。

遺産相続の知識不足が損に繋がることも……

遺産相続の手続きといえば、一生のうちに1回、多くても2~3回程度しか行われないものです。そのため、一般の方がいきなり自分たちだけで手続きを進めていくことは、現実的に難しいことでもあります。また、相続人が社会で働いているなど、普段から忙しい方にとっては時間的な負担が大きいでしょう。

また、遺産相続について知識が不足していると、思わぬ「損」をすることにも繋がります

たとえば、現預金や金融資産など、自分では相続できる資産をすべてピックアップしたつもりでも、見落としがあることも考えられます。自分では考えつかない意外なものも遺産として残せる場合、相続人は本来受け取るはずだった資産の一部が受け取れず、損をしてしまうこともあるのです。

また、相続税の各種控除や細かい節税方法などを知らなければ、本当なら支払わずに済んだ税金まで納めてしまいます。これも損ですよね。

一方で、弁護士に依頼をすることで、遺産として残せる資産種別の見落としは間違いなく抑えられます。さらに、弁護士は税理士やファイナンシャルプランナーなど横の繋がりも広いため、節税や控除に関して適切なアドバイスをくれる専門家の紹介も行ってくれるでしょう。

複雑な手続きは弁護士に完全に任せることができる

相続手続きを弁護士に任せることで、まず相続人の現状や目的などに関して十分なカウンセリングを行ってくれます。同じ手続きであっても、相続人がおかれている立場によって方法が異なるため、しっかりと調査を行って各依頼人に最適なプロセスを紹介してくれるのです。

たとえば、相続人の数がいまいちつかめなくて、自分にどれくらいの遺産が残るのか分からないというケース。この場合でも、弁護士が代理で戸籍調査を行ってくれます。ほかにも銀行口座の開示請求などの代行で、遺産の全容を知ることもサポートしてくれます。

相続手続きで特に複雑なものは、「遺留分の減殺請求」や「相続放棄」です。弁護士に依頼した場合は、専門的な見地から正確で迅速に手続きを行ってくれます。相続人の時間的コストを抑えることにも役立つため、できるだけ弁護士のアドバイスを受けながら相続手続きをすすめる方が良いでしょう。

弁護士の費用にかかる5つの料金

相続手続きにおける弁護士費用や料金体系は、その方が所属する法律事務所によって異なります。

ただし、依頼者が事前にある程度の費用相場を予測できるよ、料金の目安が設定されています。それが、「日弁連の旧報酬規程」です。この規程は、弁護士報酬の基準として、今ではこの内容をもとに法律事務所や弁護士の料金体系を決めていることがほとんどです。

ここでは次の5つの報酬規程がベースとなります。

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 報酬金
  4. 手数料
  5. 日当

相続の手続きといっても、一般的な法律相談から、相続人間のトラブル仲裁、訴訟事件の対応など様々です。その依頼内容によって、上記5つのうち、いずれかの報酬体系が適用されるということです。

まずは日弁連の旧報酬規程を参考に、おおまかな費用相場を知っておきましょう。

法律相談 相談料 30分ごとに5000円から2万5000円の範囲内の額
訴訟事件 着手金 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:(経済的利益の)8%
300万円を超え3000万円以下の場合:5%+9万円
3000万円を超え3億円以下の場合:3%+69万円
3億円を超える場合:2%+369万円
※事件の内容により、30%の範囲内で増減額できる
※着手金の最低額は10万円
報酬金 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:(経済的利益の)16%
300万円を超え3000万円以下の場合:10%+18万円
3000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円
3億円を超える場合:4%+738万円
※事件の内容により、30%の範囲内で増減額できる
調停および示談交渉事件 着手金・報酬金 ②に準じる。ただし、それぞれの額を3分の2に減額できる
※示談交渉から調停、示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は②の2分の1
※着手金の最低額は10万円
日当 半日(往復2時間を超え4時間まで) 3万円以上5万円以下
1日(往復4時間を超える場合) 5万円以上10万円以下

 

5種類の相続手続きから見る弁護士の費用相場

上記で紹介した日弁連の旧報酬規程を、もう少し詳しくお伝えしておきます。それぞれ弁護士の料金体系に密接にかかわるため、費用相場を検証する場合に役立ちます。

おもな相続の弁護士費用は、「着手金」と「報酬金」の2つです。

相談料

相談料とは、弁護士へ法律相談を行う場合に必要となる料金です。

相談料の目安としては、「30分あたり5000円」が一つの基準価格となっています。この金額は法律で定まっているわけではないので、法律事務所や弁護士によって時間あたりの料金が高くなったり、逆に安くなることもあります。「1時間まで5000円」という法律事務所もあれば、「初回相談は無料」などサービス価格を提示する弁護士も目にすることが多いです。

着手金

着手金とは、相続人間のトラブルや訴訟事件を解決する手続きで、実際に物事に着手する前に支払う料金となります。いわゆる初期費用ともいえるでしょう。

着手金は、依頼をした後、一括で支払うことが多いです。なかには分割払いに応じてくれる弁護士もいるため、事前に確認しておきましょう。

この後お伝えする報酬金は、トラブル解決などの成果によって金額が変わりますが、着手金は内容がどうであれば金額が変化しません。

報酬金

報酬金は、相続人間のトラブルや訴訟事件などが解決した後に支払う料金です。事件性の高い依頼のときは、先ほどの着手金と報酬金の2種類が必要ということを、しっかりと覚えておいてください。

着手金のように費用が一律で決まっているわけではなく、「経済的利益の○%」というように問題を解決した結果に応じて金額が変化します。仮に経済的利益が得られないという場合、報酬金がゼロになることも考えられるでしょう。

手数料

手数料は、相続手続きの書類作成や、裁判所への申し立てなど諸手続きの際に必要な料金です。報酬金のように一つの仕事に対する料金ではなく、一つの仕事に必要な細かい手続きごとに手数料が発生します。つまり、複雑な依頼ほど、この手数料が高額になりやすいので注意しましょう。

日当

弁護士に依頼をする際は、できるだけ住まいに近い場所に法律事務所を構える人を対象にすることをおすすめします。あまりに遠方から対応してくれる弁護士の場合、「出張費」として日当が発生することが多いです。

しかし、この日当を着手金のなかに含んでいることもあります。どうしても遠方の法律事務所へ依頼する場合は、その日当も費用としてシミュレーションしておきましょう。

弁護士へ依頼する費用相場

弁護士へ相続手続きを依頼する場合は、その内容によって費用相場が大きく異なります。ここでは、次の通り、相続手続きをする種類を5つに分けて紹介しています。

  • 遺言書の作成
  • 遺言の執行
  • 相続放棄
  • 遺産分割協議
  • 遺留分の減殺請求

中には手数料だけで済むこともあれば、手続きの複雑なものは着手金が発生するものもあります。以下で詳しくお伝えしていますので、弁護士の費用相場としてご参考ください。

遺言書の作成

  • 遺言書の作成にかかる費用相場:10~20万円(手数料のみ)

弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、その依頼料は手数料として徴収されます。相場としては10~20万円です。

この遺言書作成の手数料は、遺産額や遺言内容の複雑さにより金額が変化します。公正証書遺言を作成する場合、上記の手数料とは別に公証人への手数料も発生するので、高額な費用にご注意ください。公証人への手数料は、おおよそ5,000~10万円ほどで、内容によって異なります。

遺言の執行

  • 遺言の執行にかかる費用相場:30万円(手数料のみ)

相続人の遺産分配など、被相続人の遺書に沿って手続きを行うことを「遺言の執行」といいます。

費用相場は30万円の手数料のみとなっていますが、内容によって変化します。日弁連の旧報酬規程では、次のように遺産総額によって費用が異なりますので注意しましょう。

  • 300万円以下であれば30万円
  • 300万円~3000万円の部分については遺産の2%
  • 3000万円~3億円の部分は1%
  • それ以上の部分は0.5%

相続放棄

  • 相続放棄にかかる費用相場:10万円(手数料のみ)

相続人は必ずしも遺産を引き継ぐことを選択しなければならないわけではなく、「相続放棄」を行うこともできます。「被相続人の遺産について、私は受け取りません」という手続きのことです。

被相続人の借金が多いとき、もしくは遺産となる土地や建物の資産価値があまりにも低い場合など、相続放棄が行われることがあります。この相続放棄の手続きも弁護士に依頼することが可能です。

費用相場は10万円ほどの手数料のみとなります。主に、家庭裁判所への申立手数料という費用項目です。

遺産分割協議

  • 遺産分割協議にかかる費用相場:20万円~(着手金)
  • 遺産分割協議にかかる費用相場:日弁連の旧報酬規定をもとに変動(報酬金)

遺産分割協議とは、相続人同士で遺産をどのように分け合うか相談し合うことです。相続トラブルの多くがこの遺産分割協議で起こるため、この部分を弁護士に依頼することで、第三者として冷静な手続きが可能となります。

先ほどとは異なり、遺産分割協議では着手金と報酬金がベースの費用となります。

遺留分の減殺請求

  • 遺留分の減殺請求にかかる費用相場:日弁連の旧報酬規定をもとに変動(着手金)
  • 遺留分の減殺請求にかかる費用相場:日弁連の旧報酬規定をもとに変動(報酬)
  • 遺留分の減殺請求にかかる費用相場:3~5万円(手数料)

遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産のことです。遺言書の内容にかかわらず、相続人が必ず受け取れる金額を表します。この遺留分の権利が侵害されたときには、その事実から1年以内に「遺留分の減殺請求」の手続きを行わなければなりません。

遺留分減殺請求は、手数料のほか、着手金と報酬金も発生します。着手金と報酬金は日弁連の旧報酬規定をもとに変動しますが、主に以下のような目安が設定されています。

経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下の場合 8% 16%
300万円を超え3000万円以下の場合 5%+9万円 10%+18万円
3000万円を超え3億円以下の場合 3%+69万円 6%+138万円
3億円を超える場合 2%+369万円 4%+738万円

 

まとめ

弁護士への依頼費用は、その内容によって数万円から数十万円程度で済むこともあれば、複雑な手続きは100万円以上もの金額が必要になる場合もあります。それだけ相続人にとっては遺産が減少することにもなりますので、慎重にご判断ください。

しかし、弁護士が仲裁に入ることで数多くのトラブルも円満に解決することでしょう。たとえば、遺産配分を巡っては、同じ血を分けた家族同士でも骨肉の争いへと発展していくことも多いです。そうなると、今まで仲良く暮らしてきた家族同士が仲たがいしてしまう結果にも繋がりかねません。

こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、遺産の一部から少しだけ弁護士費用として拠出するだけでも価値があるといえるでしょう。なかにも初回の相談だけであれば無料の法律事務所も多いため、まずはモヤモヤとした悩みを抱えたままではなく、誰かに思いのたけを吐き出してみてはいかがでしょうか。

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