目次
初心者のうちから正しい使い方をマスターしよう
FXで最も基本的であり、利用してないトレーダーはいないとも言えるテクニカルツール「ローソク足チャート・移動平均線・トレンドライン」についてお話しします。
この3つのツールは、どんなFX業者を使っていても無料で利用することができ、また特に操作しなくても最初からパソコンやスマホの取引画面上に表示されているほど非常に身近なツールです(トレンドラインは自分で引く必要がありますが)。
それだけにFXトレーダー達の目に付きやすく、相場への影響力も大きなものとなっています。
しかし、初心者の場合これらのツールに特に強い関心を抱くこともなく、普段もなんとなく眺めているといった感じで、十分に使いこなせていないのではないのでしょうか?
また、他の魅力的なツールや射幸心を煽るだけの効果が疑わしい攻略情報などに興味がそそられてしまうこともあり、その結果、思うような成績が上げられずトレードに自信がなくなってしまう(又は退場する)ことも珍しい話ではありません。
そこでこういったことにならないよう、またツールの使い方に対する意識が高まるよう、本項にてこの3つのツールの使い方をマスターし、早い段階において安全でブレの無いトレードスタイルの確立を目指しましょう。
ローソク足チャートの賢い使い方
ローソク足チャートの種類
ローソク足チャート(以降「チャート」と表記します)は、1本で1日分の始値から終値を示すもの(日足)や1時間分のみを示すものなど様々ありますが、だいたいどのFX業者を利用していても次の時間別のチャートを見ることができます。
・長期的なもの・・・日足、週足、月足
・短期~中期的なもの・・・1時間足、2時間足、4時間足、8時間足
・短期的なもの・・・Tick(秒)、1分足、5分足、15分足、30分足
チャートごとの役割や使い方
初心者の方ですと、チャートの更新が頻繁に行われる短期的な1分足や5分足のチャートを多用する傾向があります。
ではそれぞれのチャートをどのように使ったらよいのでしょうか?
まず全体的な相場の流れをつかむために日足、週足、月足を見ます。週足と月足はなかなか更新されませんが、相場の行方に一番大きく影響しますので、短期取引が中心であっても1日1回はチェックするようにします。
中期的な1時間足、2時間足、4時間足などは具体的な相場のパターンの把握や、最終的なエントリーに密着した戦略を考える際に利用します。
長期的な足で全体的な流れを把握できたとしても、FXは常に大小の波が訪れていますので、こういったチャートの状況をもふまえて明確な投資戦略の決定を行うことが大切です。
特に短期的に数多くトレードをこなす「スキャルピング」や、同一ポジションを1日程度保有する「デイトレード」では不可欠なチャートです。
そして、1時間に満たない短期的な足は、先ほどのスキャルピング実行時や、エントリー全般の最終タイミングを計るのに利用します。
相場状況や取引スタイルを考慮しチャートを選ぶ
実は以上の説明はあくまで目安であり、各チャートとその利用方法に厳密な区分があるわけではありません。またトレードしようとするスタイルや、その時の相場状況によっても利用方法が変わってきます。
例として、相場状況に従ったチャート選びのケースをあげてみます。
次の画像のようなチャートがあります。現在チャートはAのところまで形成されているとした場合、「ここからは、おそらく赤い点線矢印のようなチャートが形成されるだろう」という予測が多くの取引参加者の頭によぎるものです。
これは「ダブルトップ」と呼ばれるチャートの形で、法やルールで規定されているものではもちろんありませんが、過去の傾向から多くのトレーダーがダブルトップを予測して(または願って)しまうんです。
本題はここからですが、さらにこのチャートパターンが短期足では捉えられず、主に日足でその兆候が見えているとするならば、他のローソク足よりも日足を最重要視する必要が出てきます。
移動平均線の使い方とその現実
移動平均線の基本
移動平均線は、こちらも皆様におなじみのテクニカルツールですね。
移動平均線は現在の価格が過去の一定期間の平均価格からどれだけ離れているか、及び相場がこれから上下どちらに行こうとしているのかという方向性をチャート上に視覚的に表示したものです。
出典:SBIFXトレード
上記画像の例では、茶・緑・青の3種類の移動平均線が表示されていますが、茶色い線は過去5日間の平均価格を元に描写され、緑は25日間、青は75日間の平均価格を元にした表示です。
ちなみにこの日数はデフォルト設定でよくある日数ですが、自分で好きなように変更することができます。
また、移動平均線にはいくつかの種類があります。
・単純移動平均線(SMA)
・指数平滑移動平均線(EMA)
・加重移動平均線(WMA)
単純移動平均線はシンプルに過去の日数分の平均価格を元に線を描きますが、やや描写(反応)が遅いという欠点があります。そこでもう少し直近価格に比重を偏らせ、より速やかな相場状況の出力(サイン)を図ったものが指数平滑移動平均線や加重移動平均線になります。
移動平均線を利用した取引手法の例
ゴールデンクロス(GC)
下の画像のように矢印の部分でローソク足の下にある2本の線がクロスしていますが、これを「ゴールデンクロス(GC)」と言います。
これは、それまで下落相場だったのがGCにより上昇相場へ移行していくことが期待されるというもので、株でもおなじみのテクニカル指標です。従って、GCしてからは買いポジションで勝ちやすくなるということになります。
出典:SBIFXトレード
デッドクロス(DC)
今度は矢印の部分でローソク足の上にある2本の線がクロスしていますが、これを「デッドクロス(DC)」と言います。
こちらは、GCとは逆にそれまで上昇相場だったのがDCにより下降相場へ移行していくことが懸念されるというものです。よって、DC後は売りポジションを建てるのが有効となります。
また、表示のポイントとして、デッドクロス以降は移動平均線はローソク足の上に流れ、ゴールデンクロスでは移動平均線はローソク足の下におおむね存在しているということです。
出典:SBIFXトレード
移動平均線の収束狙い
ローソク足が、特に中・長期チャートの線から大きく離れた後、価格が平均価格に戻る際の値動きの発生を狙った投資法です。
ローソク足が移動平均線よりかなり下に離れて存在していれば買いでポジションを建て、逆にローソク足がかなり上に離れて存在していれば売りでポジションを建てます。その後ローソク足と線が見事収束すれば、この手法で利益が出せるということになります。
ラインから反転
上昇相場での例をあげますが、上昇していた相場がいったん落着き、これから下落状態へ移行しそうだったところで、価格が移動平均線にタッチしてから再び上昇を始めるだろうという予測に則った手法です。画像の様に矢印付近からローソク足が再び上昇していくのが分かります。
勝ち方としては、価格が移動平均線に接するまで待ち、接したところで再上昇を狙って買い建てるというものです。
出典:SBIFXトレード
移動平均線における現実
以上移動平均線の基本的な特徴や4つの取引手法をご紹介しましたが、どの内容もFXでは非常に有名なもので、参考書籍やネット検索で簡単に調べることができます。
まず、「移動平均線の種類とその性質の違い」については、その差がハッキリと分かり、結果、他のトレーダーよりも優位に立てるかと言うと、そこはちょっと疑問です。どの移動平均線を使っていても表示の更新ペースに明らかな差異があるものではないです。
特に4時間足以上の中・長期的なチャートでは新規ローソク足が完成するのに時間がかかり、従って移動平均線の更新もかなりもっさりした感じで行われます。
「ゴールデンクロス(GC)とデッドクロス(DC)」については、上記の画像の例ではすでにクロスした後の状態なのでハッキリとその存在が分かるのですが、2本の線がクロスするかしないかといった際どい状態のときに、トレードに迷いが発生することも珍しくありません。
「移動平均線の収束狙い」は、「これだけ上昇したんだからそろそろ下がるだろう」といった、割と簡単にそういったことを想像してしまう日本人の性とも重なりやすいものです。
しかし例えば、2013年頃のアベノミクス相場では、我先に買えといった具合に多くの買い注文が入り、米ドル/円は最高値124円を超えるなど、上昇ムードが非常に強かったものです。
こういう相場状況では、移動平均線の収束狙いを元にした売りポジションは非常に勝ちにくいものとなってしまいます。
そして、「ラインからの反転」は、反転せずにラインを突き抜けることもありますので、価格がライン付近に来たところで「ゴールデンクロス(GC)とデッドクロス(DC)」の場合と同じように、反転するかどうかに自信が持てなくなる心境にもなります。
より勝つことを意識した使い方
取引する時間帯に注意する
ヨーロッパ時間は一般的に東京時間での相場結果の調整が行われやすく、移動平均の収束狙いによる逆張り(上昇相場に対して売り、下落相場に対して買い)や、ラインからの反転手法に期待が持てます。
また相場進行が明確になりやすいニューヨーク時間では、相場が一方向に進みだしたら、ゴールデンクロス(GC)やデッドクロス(DC)を補足的に使い、チャート進行とGC・DCとの2重チェックによって、トレードの信憑性を高めるような使い方をするのが賢明です。
期待値を利用した方法
これは少々作業が必要となりますが、例えば米ドル/円の価格が4時間チャートの75日移動平均線に到達した時(事象Aとします)に、価格が反発した回数と、それを突破した回数をチャートを見ながら過去にさかのぼってカウントします。
仮に反発した回数が20回、突破した回数が10回だとしたら、2/3で反発するということなので、事象A発生時はそれまでのトレンドに反するエントリー(逆張り)をした方が勝ちやすいということになります。
そして、事象A発生時に逆張りでエントリーしたものとし、20回の勝利時に1回につき10pips(銭)で利益確定、損失が出た10回の方は1回につき10pipsの損切りを行うというルールを作成します。
このルールを過去30回分のトレードに当てはめてみますと、以下の計算式をたてることができます。
・10pips(利確) × 20回 – 10pips(損切) × 10回 = 100pipsのプラス
これはつまり、事象A発生時に逆張りでエントリーし利益確定と損切りを既定通り実行すれば、1回のトレードあたり3.3pips程度の平均利益(期待値)が見込めるということを意味します。
ただこの方法には、「過去のデータに則った手法は未来の相場の全てに通用するとは限らない」という見解もありますので、ルールの定期的な見直しや別の手法の研究を同時進行で行うなどの必要性はあります。
存在感がハッキリしているトレンドライン
トレンドラインの種類と性質
トレンドラインは、ローソク足の高値同士や安値同士を同一の線でつなぎ表示させるもので、これは自分で作成するテクニカルツールとなります。
トレンドラインには、高値同士をつないだ「レジスタンス(高値抵抗線)」、安値同士をつないだ「サポート(下値支持線)、またラインが水平に形成される「水平線」があります。
トレンドラインはすでに形成済みで、他に解釈しえない明確なラインを基準に後の投資判断を行うため、ツールの中では比較的確固とした判断材料です。
出典:SBIFXトレード
出典:SBIFXトレード
トレンドラインを利用した基本的な取引方法
トレンドラインは反発するばかりではない
トレンドラインは、もちろん確実にレートが反発するものではありません。インパクトの強い経済ニュースや要人発言、経済指標の発表などにより急激に一方向へ注文が入れば、レートはラインを突き破り新しいトレンドを形成していきます。
そういった場合は素早く損切を行いダメージを最小限に食い止めるのが肝心です。ただ、ラインを突破後すぐにまた戻ってきたり、ライン前後で売買の攻防戦がしばらく繰り広げられたり、一筋縄ではいかないケースもあります。
賢明な取引方法
長期チャートのトレンドラインに限定する
時には判断を狂わせることもあるトレンドラインですが、ここで賢明なトレード方法をあげてみます。
短期のチャートよりも長期のチャートの方が様々な面で相場への影響力が強いので、逆張りによるライントレードを行う際には4時間足以上のチャートを利用するようにします。欠点としては、長期チャートほどラインへの到達頻度が少ないということです。
ただ、チャンスの少なさは必ずしも不利なものではありません。相場への参加機会が少ない分リスクが軽減されるといった効果があります。
キレイに形成されるラインほど強い
これも欠点としては、そう頻繁にお目にかかれるものではないということですが、もし発見できたらぜひともトレードしたいパターンです。
期待値を利用した方法
移動平均線のところでお話ししたことと同じく、トレンドラインにおいても期待値による取引手法が有効です。ラインから反発したかどうかのカウントは、視覚的にも分かりやすく期待値トレードに向いているものになります。
それぞれのツールは異なる意見を発する
ローソク足チャート、移動平均線、そしてトレンドラインについてご紹介してきましたが、相場状況を伝える内容がそれぞれ異なるケースが往々にしてあります。
例えば相場の方向性を伝える移動平均線がこれから上昇を告げたとしても、現在レートの比較的すぐ上方にレジスタンス(レートの上昇を阻むライン)のトレンドラインが存在していることがあります。
また同じチャートであっても、時間軸が異なると違った方向を指し示していたり、また全ての足がバラバラの方向を表示しているなんてことも珍しくはありません。
サインが異なる場合の対応方法
こういった場合の取引の仕方ですが、どのツールや時間軸が一番多くの参加者の関心を集めているかを考えることです。ローソク足チャートのところでもお話しましたが、やはり視覚的にインパクトのあるものがテクニカル的に最も働きが強くなります。
または、取引する時間帯や通貨ペアを変え、ツールの表示内容がなるべく整った取引環境を探すことも有効な方法となります。
さらに、多くの参加者はみな同じようなチャートに同じようなテクニカルツールを見ていますので、自分ばかりが困惑しているのではないということを理解し、相場状況がまとまるまで取引を控えることもオススメです。
基本に忠実過ぎるのも逆にマイナス要因
また、マニュアルや分類が好きな日本人的な感覚は、定義通りにいかない状況に対し最善の方法をとることよりも、どうしてそのようになってしまったのかをいつまでも考えてしまうフシがあります。
これは、もし建て玉を保有している状態ですと損切の遅れ、ひいては大損害へとつながることになります。相場分析は大切なことですが、貴重なお金を投資している段階においては、相場に少々稚拙であっても行動の遅延だけは何としても避けなければなりません。
FXにおいては現実に現れる相場状況の重要さは言うまでもないことで、勉強や分析に出てこなかった状況が発生するのは全く不思議なことではありません。
まとめ
基本的なテクニカルツールの使い方を理解することと、誰も教えてくれないようなFX取引の現実が存在することを承知の上で日々努力していくことが大切です。
活字になっていないようなツールの性質を、取引をしていく中で自然と知っていくことになるとは思いますが、無防備で相場に臨んでいますと大きな痛みを伴うことは想像に難くありません。
また、テクニカルツールはその使い方や運用のタイミングをしっかり定めつつも、荒れ狂う相場の中で臨機応変的な対応も視野に入れながら、常にルールに忠実な行動を心がけることが利益をあげていく上で重要なことです。
不確定要素も多く怖いイメージのある投資やFXですが、以上のことを念頭に置いて相場に挑めば、自ずと勝利は近づいてくるものです。