再生可能エネルギーはどうなる?今後の展望と関連銘柄を紹介!

クリーンなエネルギーとして注目を集める再生可能エネルギー。日本はエネルギー自給率が低く、石炭や石油など化石燃料は輸入に頼っている状態です。政府は再生可能エネルギーの主力電源化を進める方針ですが課題もあります。再生可能エネルギーの現状を分析し、今後の展望を考えます。

再生可能エネルギーとは

日本の主なエネルギー源である石油・石炭などの化石燃料は限りがあります 。これに対し水力や風力、太陽光や太陽熱、地熱、バイオマスなどのエネルギーは一度利用しても再生が可能であり、資源が枯渇しません。これらは再生可能エネルギーと呼ばれています。また、地球温暖化の原因になる二酸化炭素をほとんど排出しないクリーンなエネルギーで、限りがある石油・石炭に代わり、更なる普及が促進されています。

しかし、自然から作られる電気はたったの3.2%。水力発電を加えても12%となっています。 日本のエネルギー自給率はわずか6%。これは海外に比べてかなり低い数値です。石油や石炭、天然ガスはほとんど輸入によってまかなっています。

出典 経済産業省

出典 経済産業省

特に石油は中東情勢の影響などを強く受けます。今後も安定的な供給確保のためには国内でのエネルギー自給率をあげる必要性があります。では、なぜ再生可能エネルギーが普及していないのでしょうか。それは、主にコストの問題があります。また、太陽光や風力といった自然を利用する再生可能エネルギーは、発電量が天候や季節に左右されてしまいます。電力の需要と供給のバランスが崩れると大規模停電が発生する恐れもあります。

日本は日照条件もよく、風力に恵まれた地域も多いです。南北に長い日本列島は地域ごとに多様な再生可能エネルギーがあります。しかも火山国である日本は、地熱資源量で見ると世界第三位。しかし再生可能エネルギーはなかなか普及が進んでいません。

太陽光のコストは約40円、その他の再生可能エネルギーは20円前後と言われています。現在の石炭や原子力のコストは10円前後。これだけの高コストだと現状では普及はまだまだ難しいのです。

出典 経済産業省

そこで固定価格買取制度が2012年7月からスタートしました。これは電力利用者全員で協力して、今は高い再生可能エネルギーを支えて、今後大きく育てていこうという発想から生まれました。固定価格買取制度により2014年の再生可能エネルギーの発電量は制度開始時の1.4%から3.2%に増加しました。

 

 

固定価格買取制度とは

 

固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間、同じ価格で買い取ることを国が約束する制度です。エネルギー自給率の向上、温暖化対策への解決に繋げようとしたのです。

買取価格は期間中変わることはなく固定価格となっています。2018年現在では家庭用太陽光発電(10 kw 未満)は10年、事業用太陽光発電(10kw以上)、水力・風力・バイオマス発電は20年。地熱発電は15年間、固定価格で買い取ることが決められています。

住宅用太陽光発電の買い取り制度は2009年11月にスタートしました。住宅用太陽光発電の買い取り保証期間は10年と定められています。10年を超えると価格が保障されなくなってしまうのです。現在のところ2019年以降の買取価格はどうなるのか、そもそも買取自体が続くのかまだ決まっていません。太陽光発電を導入した家庭は約35〜40万世帯。今後どのような扱いを受けるか不明瞭なままなので、「2019年問題」と言われています。

 

 

出典 経済産業省

 

再生可能エネルギーの種類

太陽光発電

 

太陽光発電は太陽電池を用いて太陽光を電力に直接変換する発電方法です。日本を代表する再生エネルギーとなっています。近年着実に伸びており2016年度末累積で3,910万kwに達しています。

長所

 

  • 太陽光であるため基本的にどこでも発電できます。設置する地域に制限がなく、導入しやすいシステムです。
  • 発電時に排気や排水、騒音、廃棄物などを発生しません。
  • 発電効率が規模によらないので、小規模発電に向いています。
  • 災害時に非常用電源として使うことができます。
  • 建物の屋根や壁に装置を簡単に取り付けられるため、新たに土地を用意する必要はありません。

 

短所

 

  • 天候による影響を受けやすく、また夜間は発電することができません。
  • 導入コストは下がっては来ているものの、今後のさらなる普及のため、低コストに向けた技術革新が必要になっています。

出典 経済産業省

 

風力発電

 

風のエネルギーを電気エネルギーに変えるのが風力発電です。欧米諸国に比べると導入が遅れているものの、2016年度末で2203基、累積設備容量は335.7万 kw まで増加しています。

 

長所

  • 風力には枯渇の恐れがなく、風があれば一日中発電することができます。
  • 現在は陸上風力の設置が進んでいますが、大きな導入ポテンシャルを持つ海上での風力発電も検討・計画されています。
  • 地域ごとの独立した小規模な電源として活用しやすく、個人的な運用が可能です。
  • 風力発電は大規模に発電すれば、火力発電並のコストに抑えることができます。他の発電方法はコスト高の問題がありますが、風力発電は経済性も確保できます。

 

短所

  • 風力により発電量が異なり、また風の吹き方にも左右されます。
  • 台風などにより発電機が破損する恐れがあります。
  • 発電機を設置する場所の風力により、風の強さや風向きが異なり、発電量が左右されてしまいます。

その他、騒音や低周波音の発生,景観の破壊、また鳥類の事故死などが問題点としてあげられます。

出典 経済産業省

 

バイオマス発電

 

バイオマスとは動植物などから生まれた生物資源(bio:バイオ)の量(mass:マス)を意味します。

バイオマス発電において燃料となる建設資材・廃材と植物をバイオマス燃料といいます。建設資材の廃材とは間伐材、のこぎりくず、木くずなどです。植物はサトウキビ、とうもろこし、海藻などです。

これらの生物資源を直接燃焼したり、ガス化したりして発電します。

 

長所

 

  • バイオマス資源を残すことなく有効利用できます。
  • 植物は光合成により二酸化炭素を吸収します。そして植物の燃焼時の二酸化炭素排出量は光合成の二酸化炭素吸収量に等しくなっています。ですからバイオマス資源を燃焼した発電は、 CO2を排出しないものとされています。
  • 家庭排出物や生ゴミなど捨てていたものを資源として活用することで、地域循環の改善につながります。

 

短所

  • バイオマス燃料となる植物を利用するために森林を開拓しなければなりません。その結果、環境破壊が進行してしまいます。
  • 資源が広範囲に分布しているため、収集・運搬・管理コストがかかります。

出典 経済産業省

 

水力発電

 

水力発電では、水力で水車を回転させ、回転による動力で発電機を動かして電気エネルギーを得ます。発電量は水量・高低差次第です。

水資源に恵まれた日本では昔から発電への利用も盛んで、国内で賄うことのできる貴重なエネルギー源となっています。水力発電といえば大きなダムが連想されますが、中小水力発電の建設が活発化しています。河川の流れを利用する以外にも、農業用や上下水道を利用する場合もあります。ですから開発できる地域が多く残されていて、今後のさらなる更なる開発が期待されます。

 

長所

 

  • 水を通すだけで発電が開始できるので、短時間で始動できます。そして一度発電所を作ればその後数十年に渡り発電が可能になります。
  • 水の流れがあれば場所を問わずに発電できます。そして自然条件によらず、一定量の電力を安定的に供給することができます。
  • 発電時に二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーです。

 

短所

 

  • 一定の高低差がないと電気を発電することができません。
  • 発電所の建設時に動物や植物などの生態系を破壊してしまう可能性があるので、環境への影響や水利権の調整など、地域住民の理解が必要となります。
  • 送電にかかる設備の費用が大きいという弱点があります。

 

出典 経済産業省

地熱発電

 

地熱発電は地熱で蒸気を発生させます。そして蒸気でタービンを回転させ、タービンの回転により発動機で電気を発電します。

日本は火山国ですから、地熱利用は早くから注目されていました。本格的な地熱発電所は1966年に運転を開始。東北や九州を中心に展開しています。発電量はまだ少ないものの、安定して発電ができる国産エネルギーとして注目されています。

長所

 

  • 火山国である日本は地熱資源が豊富です。
  • 蒸気が発生する場所であればどこでも発電が可能です。また発電に使った蒸気・熱水は農業用ハウスや魚の養殖、家庭の暖房などに再利用できます。
  • 季節や天候、昼夜による影響を受けにくく、発電量が安定しています。

 

短所

 

  • 地熱発電に関する調査や開発・建設コストが高く、期間も長くかかります。
  • 地熱発電に適している地域は 国立公園・国定公園・温泉地等などで開発に対する阻害要因が多く、地元関係者との調整が必要になります。
  • 噴火や地震などの自然災害に弱いという弱点があります。

 

バイナリー方式地熱発電

現在、新エネルギーとして定義されている地熱発電は「バイナリー方式」のものに限られています。地下の温度・圧力が低いため、熱水のみが得られる場合の地熱発電の方法です。

出典 経済産業省

 

再生可能エネルギーのメリット・デメリット

 

再生可能エネルギーのメリット

 

資源枯渇のリスクがなく、国産エネルギーを活用できる

現在日本で主に活用しているエネルギーは石油や石炭など化石燃料で、埋蔵量に限界があります。しかもそのほとんどを海外からの輸入に頼っています。資源の枯渇リスクに加えて中東情勢など、海外の影響を受け原油価格上昇や、最悪、輸入が途絶える危険性もあります。

一方、再生可能エネルギーである風力や太陽光などは他国から輸入する必要はなく、全て純国産のエネルギーです。日本列島は水資源が豊富なので、水力発電の利用が盛んですし、火山帯に属することから地熱も利用できます。そして太陽光や風力は日本中いたるところで利用できます。純国産のエネルギーを確保し、エネルギー自給率を上げることは安全保障の観点からも重要です。

 

環境にやさしい

再生可能エネルギーは石炭や石油燃料のように温室効果ガスであるCO2を発生することはないため地球環境に優しいエネルギーです。地球温暖化や大気汚染の進行を阻止するという課題の中で、再生可能エネルギーは注目されています。

 

デメリット

 

コスト以外のデメリットと課題もあります。

 

発電量が少ない

 

再生可能エネルギーのエネルギー変換効率は既存の発電よりも低いことが課題の一つです。例えば火力発電のエネルギー変換効率は40%前後と言われています。最も普及している太陽光発電では約10%。それよりも変換効率の高い風力発電でも約25%となっています。バイオマスや地熱はさらに低いエネルギー変換率です。コスト以外にも再生可能エネルギーは生み出せる発電量が火力や原子力に比べわずかであるということが現状です。

 

時間や季節、天候に左右される

 

自然エネルギーを利用するため、季節や時間帯によって十分な発電量が得られない可能性があります。水力や地熱などを安定的に供給できる再生可能エネルギーはありますが、例えば太陽光発電の場合は太陽光が当たらなければエネルギーを得ることはできません。つまり夜間に供給することはできないのです。また風力に関しても台風の時期には被害を防ぐために発電設備を停止しないといけません。このように自然環境によっては期待するエネルギーを得られない可能性があります。特に日本は地震や台風など天災が多い国です。自然災害にどう対応していくのかという課題が残ります。

 

再生可能エネルギー関連銘柄

再生可能エネルギー市場は、中期長期的に拡大するとの思惑があります。7月3日に日本政府が閣議決定したエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを主力電源にする目標をあげました。さらに経済産業省も太陽光や風力など再生エネルギーについて主力電源化を進めると明記しています。そうしたことから今後の成長性に着目した買いが続いています。

 

9519 レノバ

 

7月20日に富士通などが事業に使う電力を全て再生可能エネルギーで賄う方針との報道により一時制限値幅の上限(ストップ高)まで上昇しました。太陽光発電やバイオマス発電を手がけるレノバ株に買いが集まった格好です。

レノバは再生可能エネルギーの発電と開発・運営が2本柱となっています。太陽光からバイオマス、風力など多様化の方針をとっています。ただ、9月には済産業省が事業者や家庭から買い取る太陽光発電の価格を大きく引き下げる方針と伝えられており、やはり太陽光発電の2019年問題が重しとなりそうです。

 

出典 SBI証券

2017年の2月に上昇したレノバは、今年に入って高値を更新しています。今月に入っても買いの勢いは止まらず、上場来高値を更新しました。太陽光発電の価格をめぐり一時的に下落したものの高値圏を維持しています。再生可能エネルギーの中核銘柄と言えるでしょう。

 

1407 ウエストホールディング

 

太陽光発電工事を全国展開しています。メガソーラー、工場・ビル用など企業向け入り太陽光発電の設置工事が主力でしたが、 LED 化や空調制御などの省エネ提案事業、そして売電事業を柱として育成中です。

出典 SBI証券

ウエストホールディングは2013年の10月に1,945円の高値をつけたものの、現在は600円から800円前後でのもみ合いが続いています 。PER は10倍前後、 PBR も1.3倍程度と割安感があります。ただ、これまで主力としてきたメガソーラーで固定価格買取制度の運用見直しなどが影響し、市場全体の先細り感がある中、メガソーラー工事事業も今一つとなっています。現在育成中の売電事業が大きく拡大しているので、今後も順調に契約が積み上がって行くかどうかが注目されます。

 

4651 サニックス

 

業界最大手となったシロアリなど害虫駆除に続き、産業廃棄物処理やプラスチックの燃料化学事業、太陽光発電設備の販売施工にも進出しています。市場縮小と固定価格買取制度事業認定の遅れで太陽光発電の落ち込みが激しいものの、廃棄プラスチックの関連銘柄として注目されています。プラスチックの一部は自社の発電所で燃料として使うため、売電事業にもプラスと見られています

 

出典 SBI証券

ここ数年、サニックスは200円から400円ぐらいでのボックス圏での推移になっています。2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、太陽光発電の設備導入ブームが始まりました。シロアリ駆除から太陽光発電設備の販売へ主力事業を転換し、人員を増加。

しかし、太陽光発電の固定買取価格を政府が連続して引き下げたことにより太陽光発電市場の縮小が続き、サニックスの株価も冴えない展開が続いています。

 

まとめ

 

再生可能エネルギーは、エネルギー自給率が低い日本にとって、今後も力を入れていかなければならない分野です。日本政府は再生可能エネルギーを主力電源にするという目標を掲げています。ただ、普及を後押ししてきた再生可能エネルギーの固定価格買取制度は問題点も出てきています。値上がりし続けている再生エネルギーの賦課金や、住宅太陽光発電の買取期間が初めて満期を迎える2019年問題などです。太陽光事業から撤退する企業もでてきています。こういった問題をどうクリアしていくかということが今後の課題となりそうです。

コメントを残す