FPが教える「外国株投資入門」外国株投資のはじめ方・メリットデメリットを徹底解説

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今回は外国株投資の魅力を徹底的に掘り下げてみなさんにお伝えしていきます。なぜ、いま外国株投資なのか。むしろ、今だからこそ外国株投資なのです。その理由はいくつかあります。

  1. 日本はこれからさらに少子高齢化が進み、すでに人口は減少傾向に入っています。30年後には人口は9000万人を割り込むと言われています。そうなると、国内マーケットは必然的に縮小します。また、労働人口の増加による経済成長にも頼れなくなっていきます。すでに経済成長は鈍化していますが、今後は、さらに経済が成長しにくい環境になっていくのです。
  2. 何百兆円を超える日本の巨額の国債残高は、大変警戒すべき水準になってきています。このまま国債発行が増え続けると、市場が消化できなくなってきて国債価格が急落し、金利上昇によって深刻なインフレを引き起こす可能性もありえます。その場合には一気に円安になる場合もあります。外国株に投資することは、これらのリスクをヘッジする防衛手段のひとつと言えます。
  3. 日本の全株式時価総額が世界のシェア10%にも満たない状態の中で、株式投資において日本株だけに投資しているのだとしたら、その投資のポートフォリオはかなり偏った形になっていると言えるでしょう。新興国の成長株や先進国市場に分散投資をすれば、日本株だけというリスクを分散できます。

日本株より外国株が魅力的な理由

ここでは、日本株がなぜこれまで伸び悩んできたのか、なぜこのままでは今後も期待できないかを考えていきましょう。日本の株式市場には、株価を抑える構造的な要因があります。敵対的買収に対抗する買収防衛策、長期にわたって続いている株の持ち合い、そして公募増資です。これらは日本の企業経営者の株主への目線に深く関わるもので、日本独自の経営文化と言えるものです。従って、法律や制度が変わったからといってすぐに改善するわけではなく、私たち投資家は、その姿勢が改善するのを悠長に待っている時間はありません。

まずは、株の持ち合いから説明します。株の持ち合いは日本の悪しき伝統です。持ち合いは買収や株の買い占めを防ぐために取引先や銀行などとお互いの株を持ち合う仕組みのことです。このような株の持ち合いは、持ち合い株主以外の株主にとってなぜ良くないのでしょう。株の持ち合いは持ちあった企業同士がもたれ合いの形になりますので、両方とも株主の権利をNOの立場で行使することはまずありません。両方ともYESとなり経営者にとっては非常に都合のいい株主ということになるわけです。また、持ち合い株主で過半数以上を占めれば、買収される心配もなくなるため経営に緊張感がなくなり、企業活力や競争力が落ちてくるということが容易に想像できます。

日本の巨額の公募増資の発想は、株主の利益を考えた姿勢からは出てきません。まず、徹底的に無駄を減らし、コストを削減し、事業再編をして収益体質を強化することが先決です。それでも必要な場合に止むを得ず行うのが、公募増資のはずです。欧米では、増資に迫られるといった負の印象をもたれるのが一般的です。増資は、株主割当増資でない限り、新規発行株式の増加に伴い既存株主の持分を薄めるものです。大幅な株式の希薄化を伴う増資は、発表日前後で株価の変動を大きくして株価の安定を欠きます。

新規上場は市場バイタリティーのバロメーター

新規上場が多いということはそれだけ市場が企業の資金調達という大切な機能を果たして新しい活力を社会に注ぎ込んでいるということです。ところが日本の企業はここのところ経営破綻による上場廃止が相次ぎ、2008年末より上場会社数は100社以上少なくなりました。新規上場も減ってきて、退場が多いということはまさに市場の縮小を表しています。

少子高齢化と人口減少でもマーケットは縮小する

日本は2004年をピークに人口減少期に突入しました。中でも生産年齢人口の15歳〜64歳は全体の人口減少幅より大きく減少しています。生産年齢人口が減少していく中で、国内総生産を押し上げる労働生産性を大幅に引き上げるのは難しく、2020年代には日本の国内総生産はマイナスに転じるのではないかと言われています。このままでは生産年齢人口の減少とともに、縮小に転じることが見込まれます。

外国株にどんなメリットがあるか

今までは日本株だけに投資するデメリットを紹介してきましたが、ここでは外国株に投資するメリットを紹介します。

伸長著しい新興国

ますます先進国の高齢化が進み生産年齢人口が減少する中で、ブラジルやインドなどの新興国では、人口が増加し、若年層の労働力化が進み、安定的な消費をする人の層が広がることによって内需が拡大し、企業が成長する経済成長段階に入っています。実際に新興国の人口増加スピードは先進国の2倍近い速さがあります。国連世界人口推計では、今後10年間で新興国の人口は8.2%増えるのに対し、先進7カ国は4.4%増えるところにとどまる見通しです。増え続ける人口は消費市場を拡大し、都市化の進展によりインフラ整備などの投資活動を活発にします。中国は現在人口ボーナスの真っ最中といってよいでしょう。高い経済成長率は、この高い人口ボーナスによって支えられている面も大きいと言えます。

一方、ブラジルやインドは今後2倍を超えて、人口ボーナス期に入っています。高い経済成長が今後も期待できるわけです。そのなかでもインドは2050年でも労働人口が日本に比べてかなり高くなることが予想されますので、将来の成長の見通しが明るいことを示しています。

人口動向は今後、どこの国の市場が成長するかをかなり正確に予想することができます。年齢というのは万人が等しく積み重ねるものですので、人口動向の先行きは、移民などを考慮しない限りほぼ正確に測れます。

米国企業は社外取締役が多い

日本では、社外取締役が社内取締役に比べ大幅に少ない状況ですが、米国の場合、圧倒的に社外取締役が多くなっています。東証全上場企業の1社あたり平均では、社外取締役は1人未満にとどまっているのが現状で、日本の企業が社外取締役の受け入れに非常に消極的なのがわかります。この日米のコーポレート・ガバナンスの差が日本企業においては、経営監視機能を弱くし、株式持ち合いや買収防衛策の導入につながってくるのです。株式の価値を大幅に希薄化する増資も、株主価値を重視する経営監視機能が弱いために起きていることと言えます。

外国人投資家も日本株離れか

株主資本利益率は、株主資本に対してどの程度利益を挙げているかを示す指標で、これが高い方が経営の効率がいいことを意味するのですが、日本企業の株主資本収益率は欧米企業に比べてかなり見劣りしてしまいます。これは、株主資本に対する利益配分が少なく、株主にとって投資効率が悪いことを示しています。彼ら外国人投資家にとって、どこに投資するべきかの選択肢は広くおおよそ全世界が対象です。少しでも投資効率のいい市場、株主還元比率の高い企業に投資資金を自由に移動します。そしてその傾向は近年のネット証券の発達によってますます強まっています。

もし、日本のコーポレートガバナンス改革が進まず、停滞した状況が続けば、株式市場は低迷を続け、企業の価値は下落し、敵対的買収リスクを高めるでしょう。そして、それを受け企業が株式の持ち合い、買収防衛策の導入・維持、増資などに向かえば、完全に悪循環に陥り、その被害に遭うのは、株主です。

コーポレートガバナンスが浸透している外国企業への投資に目を向けることは、株式投資のリスクを減らしリターンを高めることにつながります。

外国企業は増配や自社株買いを積極的に行う

配当政策や自社株買いへの姿勢を見ることで、企業経営者の株主重視度を判別することができます。試しに日米企業の比較をしてみましょう。日米企業で、配当政策・自社株買いの株主還元姿勢に大きな違いが見られます。結果的には、配当政策・自社株買いのいずれも、米国企業に軍配が上がります。近年の日本企業と米国企業の配当性向の比較をしますと、日本は約26%、米国は34%と、日本が見劣りします。そして、配当性向は10年来一貫して米国が日本を上回っています。また、自社株買いと配当金を合わせた総還元性向(自社株買い金額と配当金の合計/純利益の比率)では、2007年の日本は42.4%、米国は107.8%と大きく開いています。米国企業は、純利益を上回る株主還元をしていることになります。そして、総還元性向で見ると、それまでの10年間の日本と米国の開き幅は、配当性向よりさらに広がっています。日本の株主還元志向が高まってきたといっても、米国と比べるとまだまだ向上の余地は残っています。

また、日本では自社株買いした自社株を保持しないで、焼却まで実施した企業の割合は、生命保険協会調べによると、自社株買いを実施した企業の30%にも満たないのが現状です。購入した自社株が、後になって市場に売り出しという形で放出されたり、また、金融機関に引き取ってもらったり、株式の持ち合いに利用するという動きまで見られます。これは、せっかくの自社株買い効果を全て打ち消してしまうものです。

米国企業の場合、買い付けた自社株は、焼却処分になったり、株式交換によるM&Aなどに使われたりします。市場に売り出しで放出されるようなことはまずありません。また、経営的観点から見ると株価を上げるため、一時利益を上げることを目的に、自社株買いを実施することが多いのです。

外国株を持つことで何が得られるか

外国株には為替リスクがあるから、情報が入りにくいから投資しづらい、といった理由で外国株投資を遠慮している人もいるかと思われます。ですが、実際には外国株に投資しないで日本株だけに投資している方が、リスクが高いということはおわかりいただけたと思います。外国株に投資することでリスクヘッジにもなります。外国株投資で得られる様々なメリットを具体的に紹介します。

経営者の株主に対する考え方はそう変わらない

日本特有の持ち合いや敵対的買収防衛策は、経営者の保身などの理由によるもので、株主重視の姿勢が希薄なために行われてしまうものです。株主重視の姿勢が強い欧米企業はもちろん、新興国でさえも、経営者はこのような自らの首を絞めるような株式資本策はとりません。日本ではそれがまかり通っています。これが、投資家にとっては大きなリスクになります。

日本にはない業種などに投資できる

日本経済は、エネルギー消費型、材料や資源は海外から輸入する輸入型、そしてそれを加工して製品を輸出する製品輸出型経済といえるでしょう。また、日本経済は、成熟期でこれからは衰退期に入るでしょう。外国株投資は日本にはない天然資源・エネルギー株や日本と異なった成長ステージにある産業に投資できるという大きなメリットがあります。

日本企業の中だけでは、投資しにくい業種もたくさんあります。例えば、鉱物、天然資源企業です。また、鉱物・天然資源企業が日本にあるとしても、競争力の面から世界のメジャー企業の足元にも及ばないことが多くあります。日本は鉱物、石油などの天然資源のほぼ100%を輸入に頼っています。そして、日本は資源、エネルギー消費型経済ですから、天然資源の価格高騰は、日本の産業にとってマイナス効果が大きいということです。そのリスクを外国の天然資源企業に投資することにより、ヘッジしておくのです。このようにリスクをヘッジできるところにも外国株投資のメリットがあります。

外国株投資の大きなメリットは、このように、日本株だけに投資していては得られない投資対象の選択肢を新たに獲得して、投資対象を広めることができ、リスクを分散しながらリターンを改善できるというところにあります。

銘柄がわからなくても大丈夫

外国株投資を始めようと思っても、個別銘柄の選択に自信がないとか、個別銘柄の情報は入手しづらい、あるいは個別銘柄のリスクをもっとなくしたいというときに利用できるのが、海外の上場株式投資信託です。略してETFと呼びます。海外ETFはここ数年で急速に発達し、利用者が増えてきました。現在では様々な種類のETFが売買されています。日本人にとっても、国際分散投資の有力なツールとして利用価値が高まっています。海外株式ETFは一般の外国株と同じように売買することができ、また税金関係も外国株と全く同じです。

ETFの組み入れ銘柄は少なくても数十銘柄からで、多いところは数千銘柄にも及びます。個人でこれほどの銘柄を買い付けるのは、かなり豊富な資金がないと厳しいでしょう。まず一般の投資家には手が届きません。銘柄数が増えれば増えるほど、個別銘柄のリスクは少なくなります。そこで、海外ETFを利用しながら、個別銘柄のリスクを少なくして全体の変動幅を少なくしたり、海外ETFをメインとして特定の個別銘柄に投資してより高いリターンを狙うといった手法も取れます。つまり海外ETFは、投資に柔軟性を保ちながら外国株投資をさらに効率的なものにできるといった特性があります。

各地域の成長機会を丸ごと取り込める

海外株式ETFは先進国や新興国などの地域、さらには国ごとに分散投資できますから、その地域の成長機会をしっかりと取り込むことができます。また、今後の成長が有望だと思える国や地域があれば、その地域をカバーするETFを多めに購入して、比重をかけることも柔軟に対応できます。

組み入れ銘柄の配当金を全て受け取れる

海外株式ETFは、企業の株式を実際に買い付けているので、それらの企業の配当金は定期的に配当されます。

コストが安い

時価保有金額にかかるコストは、一般の投資信託にかかるコストの概ね半分以下となっています。そのため長期的に持っていても運用パフォーマンスの足を引っ張らず、市場の動きにかなり近いパフォーマンスを常にあげることができます。

また、国際分散投資をする場合に、外国株や海外ETFに加えて、外国債や金、コモディティーなどのETFを活用すると、さらに投資リスクを分散して効率的な運用ができます。

コモディティーの値動きは株式の逆の動きをすることが多く、一定の割合をポートフォリオに組み入れることにより、分散効果が働いてポートフォリオをより安定させることができるとされています。

金に投資する場合は、地金や金貨に投資するよりも、金ETFに投資することをおすすめします。買い付け、保有コストは、現物の金貨や地金を持つより、はるかに安いものになります。ETFだと金を持っている実感はありませんが、現物を持つことによる盗難リスクはありませんし、保管コストもかかりません。金ETFの売買でかかる手数料と保有期間中にかかる信託報酬のみがコストです。

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