元法律事務所職員が教える債務整理の手続きの進み方

債務整理について、手続きをすることでどのような結果になるか、どんなメリット・デメリットがあるのか、ということは情報としてたくさんあるのですが、では実際に契約をすると、その手続きがどのように進むのか?という詳しいところまでは詳細な情報がありません。

 

Expert
当然に人によって進み方が違うのですが、割と手続きは標準化されています。

 

このページでは、債務整理の進み方について、元債務整理に関する法律事務職員がお伝えします。

債務整理とは

まず、債務整理というものがどのようなものかを知りましょう。

債務整理とは、借金の返済に困ったときに、経済的な再生を目指して手当をしていく手続きのことをいいます。

個別には任意整理・自己破産・個人再生という3つの手続きがあり、そのどれかを使って、支払いを軽くしたり免除してもらうことになります。

一番経済的な再生に近いのは自己破産手続きで、裁判所に申し立てをした上で借金を0にしてもらうものになります。

任意整理は、債権者と話合いをして、支払いに関する事項についてあゆみよってもらうよう交渉をして、支払いをしていく手続きで、ほとんどのケースで元本を利息がつかない形で支払うことができるようにしてもらうように動くのが実務上の扱いです。

個人再生は、裁判所に申し立てをして、借金を1/5程度に圧縮して支払っていく手続きで、住宅ローン債権者がいる場合に手続きから外すことで自宅を守りながら債務整理をすることができるなどの場面で利用します。

債務整理は法律上は個人でもできるのですが、弁護士・司法書士に依頼することで、貸金業者は本人への督促をやめて、手続きが終わるまでは支払いをしなくてよくなる、といったメリットから、ほとんどの方が債務整理には弁護士・司法書士に依頼する形ですすめています。

債務整理の進み方

では、その債務整理はどのようにして進んでいくのか見てみましょう。

Expert
依頼をするまでは上記の3つの手続きすべて共通しています。

 

 

法律相談

債務整理の申し込みは弁護士・司法書士の事務所で行います。

とはいえ、弁護士・司法書士の事務所に行ってすぐに契約をするというわけではなくて、最初に法律相談をして、手続きの見通しを話し合うことから始まります。

Expert
自己破産をしたいからといって、自己破産の申し込みをします・受け付けました、というような進み方はしません。債務の総額と収支のバランスによって債務整理の方法もかわってくるので、どの手続きが利用可能か、どの手続きが適しているのかを決めるために、法律相談を必ずしています。

法律相談をするにあたっては、弁護士・司法書士の事務所に事前に電話・メール等でコンタクトを取って、予約をすることになります。

 

突然事務所に行っても弁護士・司法書士も普段は裁判所や法務局、顧客先を回っていたりするような事もありますので、きちんと話ができる時間を決定します。

法律相談当日は、次のように進むことが一般的だと考えてください。

Expert
まず、ヒアリングシートがありますので、こちらをご記入いたいだいてよろしいですか?
Man
はい、わかりました。

債務整理の手続きにおいて必要なのは、債務に関する事項・収支に関する事項・資産に関する事項です。

 

これらをまとめるために、債務整理を専門にしている弁護士・司法書士は事前に申告をしてもらうためのヒアリングシートを用意しています。

訪問をすると、まずヒアリングシートの記入をするように促されます。

ヒアリングシートには次のような事項の記載することになります

債務について

債務に関する事項としては次のようなことが聞かれます。

債権者の会社名

まずどこから借り入れをしているかを申告します。

消費者金融など、どこから借りているかわかりやすいものであれば良いのですが、ショッピングセンターの提携カードで、発行しているのがどこの信販会社なのかわからないような場合もあるので、できればカードを持ってくる、請求書・領収書などで確認をしてください。

いくら借り入れをしているか(正確な額でなくてもおおよその額でかまわない)

借り入れ額がいくらあるのかを申告します。

会社ごとにそれぞれいくら借り入れをしているかを申告して、借金の総額がいくらいくらいなのかを判断するためにつかいます。

理想としては直前に支払った際の領収書等に残金が書いてあったり、延滞しているような場合には請求書に記載がされているので持って行ったほうよいですが、領収書は捨ててしまったり、請求書を長くもっている人のほうが少ないので、大体でもかまいません。

Expert
まず、正確な金額わかる人は1割もいないので、あまり気にしないでください。たとえば、枠が50万で最後に借入をしてから3回は支払っている、というような場合には、大体45万以下にはなっていないでしょう、という推測自体はできます。

 

 

毎月いくらの支払いをしているか

毎月いくらいくらいの支払いをしているかが聞かれます。

これは、今の債務額を知るとともに、このあと聞いてくる収支のバランスに矛盾がないかを確認する意味もあります。

延滞はないか・裁判を起こされていないか

延滞がないかどうかが聞かれます。

もし延滞がある場合には債務額として遅延損害金が請求される可能性があったり、延滞の期間によっては裁判を起こされる可能性があるからです。

ショッピングローンの場合、ボーナス払いにしていないか

ショッピングローンの利用をしている場合には、ボーナス払いにしていなかも聞かれます。

現在支払いをしていない場合でも、ボーナス払いにしている場合でもそれは債務ですので確認をするためです。

いつから借り入れをしているか

いつから借り入れをしているかが聞かれます。

これは出資法が現在の利率になる前の高い利息だったときの借り入れについて、利息制限法以上・出資法未満の利息というものが存在しており(いわゆるグレーゾーン金利)、利息制限法を超える利息の受け取りは違法と最高裁で判断されています。

そのような金利の支払いをしていた場合には、違法と評価される分について、今残っている債務と差し引きすることになっており、場合によっては債務が減ることが考えられるためです。

利率が何パーセントであったか

借入期間が長期に及んでいるような場合には、利率が何パーセントであったかが聞かれます。

理由は上記と同じで、高い違法な金利での借り入れがなかったかどうかを確認するためです。

連帯保証人はついていないか

連帯保証人の有無について聞かれます。

代表的なものとしては、奨学金や住宅ローン・商工ローン・街金といわれる零細業者からの借り入れがある場合です。

連帯保証人がいる債務の債務整理をすると、連帯保証人に対する請求がされるためです。

担保をいれていないか(不動産担保・抵当権など)

担保の差し入れの有無について聞かれます

いわゆる不動産担保ローンの借り入れをしている場合には、抵当権という権利がつけられており、借り入れについて債務整理をすると住宅を競売にかけられてしまうためです。

公正証書の作成をしていないか

公正証書の作成の有無について聞かれます。

公正証書を作成している場合には、裁判を飛ばして強制執行が可能となるため注意が必要だからです。

収支に関する事項

収支に関する事項としては次のような事の確認を行います。

給与・ボーナスなどの収入の額

まずは収入がどれくらいあるかが聞かれます。

任意整理や個人再生をするためには月々の支払いをしなければなりませんが、それができるかどうかは収入次第です。

同居の家族がいるような場合には同居の家族についても聞かれます。

生活に必要な支出の最低額

すくなくともいくらあれば生活ができるか、ということについて聞かれます。

収入から生活費を引いた、余剰の金額がどれくらいあるのかで債務整理の方針を決定することになりますので、生活に必要な支出を調べます。

資産に関する事項

どのような資産があるのかが聞かれます。

当然ですが500万円債務があっても1,000万円の株式があれば、資産は500万円ですね。

株式を手放したくないから債務だけ自己破産で消してしまう、ということはできませんので、手続きの選択のためにも必要な情報になります。

なお、破産法で資産として評価される退職金・保険など、受け取ることがすぐに予定されない財産も聞かれますが、いますぐ仕事をやめて退職金を引き出してください、保険を解約してください、というわけではありません。

家族構成

収支と直接関係なさそうですが、家族構成が聞かれます。

どのような家族が居て、だれと同居しているかで、予想される将来の収支や、申告している収支に関する矛盾などを調べるためです。

その他

その他事項としては以下のようなことが聞かれます。

手続きの希望

どの手続きを希望するかが聞かれます。

任意整理は無理でも、住宅があるような場合に、手放すことを許容するか、個人再生を利用して住宅を維持するか、などの選択の参考にするためです。

家族に内緒にしたいか

生活苦であれば、夫婦で相互に借金の存在を知っていることが予想されますが、ギャンブルなどが原因の借金は、同居の家族に内緒にしたいという希望があることが通常でしょう。

そのため、家族構成とともに、内緒にしたいかが聞かれます。

こういったことがA4用紙2枚の表裏やA3の用紙をわたされて記載を求められます。

記載した事項をもとに、最初はパラリーガルという債務整理専門の事務員か、弁護士・司法書士が不明点について確認をして、弁護士・司法書士が方針を伝えてくれます。

Expert
債務は◯◯万円、月に払える金額が◯万円程度なので、おそらく自己破産手続きが最適ですね。

弁護士・司法書士に方針を聞けば、相談者としては契約をするか、また後日契約をするか決めます。

 

別の専門家の意見を参考にすること自体は問題ありませんので、納得いく提案をもらえるか、相性の良さそうな専門家に依頼しましょう。

依頼をした後の流れ

 

任意整理・自己破産・個人再生のどれを選んでも、依頼をしてからは次のように進みます。

弁護士・司法書士から債権者に通知の発送

弁護士・司法書士は依頼を受けると、債権者に「受任通知」という通知を発送します。

この通知には、

  • 債務者から依頼をうけたので連絡はこちらにしてほしい
  • 取引の履歴を提出してほしい

という内容がかかれています。

この書面によって債権者は本人に対する督促をやめて、取引の履歴を弁護士・司法書士に提出をします。

債務の調査

提出された取引の履歴をもとに、弁護士・司法書士は債務額の調査をします。

特に利息制限法以上、出資法未満の借り入れがあるような場合には、借り入れ額が減ることがあったり、払いすぎていた利息のほうが多い場合には「過払い金」として返還請求の対象となります。

依頼者は弁護士・司法書士の報酬を分轄して支払う

一方で依頼者は、弁護士・司法書士への報酬を分轄して支払うことになります。

債務整理案件は、自己破産で20万~40万・個人再生で25万~45万円程度の支払いが必要になるので、一括で支払うのはまず無理です。

ですので分割して支払うことになります。

この分割弁済が終わるころに、それぞれの方法ごとに手続きが変わってくることになります。

債務調査・報酬支払い後の手続き

債務の調査と報酬の支払いがおわるとどのように進むのでしょうか。

ここから手続きごとに違いが出てきます。

任意整理の場合

任意整理の場合は、まず交渉に入る前に、収支に変動等があったりして、月々支払える額に代わりはないかを確認します。

Expert
収入が月30万円生活費が20万円なので月10万円の支払いができる、といって依頼時に確認していても、ほとんどの人は債務整理で借金の支払いがなくなったころから、生活のレベルをあげてしまい、半分くらいになっていることが多いものです。

月10万円の支払いであれば任意整理が可能だったけれども、5万円しか支払えなくなっているような場合には、確認をせずに任意整理をしてしまうと、分割弁済ができなくなってしまいますので、確認をすることがほとんどです。

 

確認が終わると、弁護士・司法書士は債権者と交渉をします。

この交渉は書面の往復となることが多く事務処理のスピードによって2週間~1か月程度はかかります。

交渉が終わると契約書を弁護士・司法書士と債権者が交わし、その契約書が依頼者に送られてきます。

契約書には支払いに関する事項が記載していますので、その通りに毎月依頼者は入金をしていく流れになります。

Expert
弁護士・司法書士が入金も管理してくれる場合には、弁護士・司法書士が書類をあずかり、毎月事務所に入金をしていく形になります。

自己破産

 

自己破産手続きの場合には、調査・入金が負わると、自己破産手続きの書類の作成・添付書類の収集に入ります。

書類は弁護士・司法書士が債務者から事情を聴きながらおこないます。

全員に共通する事項ですと、どこの預金口座に預金があるのかが聞かれますので、どこの銀行を利用しているかを申告し、その預金に関する通帳のコピーを添付書類として提出します。

書類の作成・提出が終わると申立を弁護士・司法書士が行います。

同時廃止という簡単な手続きで終わる場合には、裁判所での面接の日程が組まれますので、その日に弁護士(司法書士は立ち会わない)と一緒に裁判所に出向いて、借り入れに至った事情や今後の生活についての話をします。

少額管財という手続きの場合には、申立後に裁判所から管財人という人が選任されるので、管財人の事務所で面接をした上で、その後裁判所に出向くことになります。

どちらの手続きも最後の審議をおこなってから2週間程度で終了となります。

個人再生

個人再生の場合も基本的には自己破産手続きと同様に、書面の作成と添付書類の収集を行います。

申立をした後は、裁判所から再生委員という人が選任されるので、その方とのやりとりを行うことになります。

東京地方裁判所がそうなのですが、申立後に履行可能テストという、きちんと支払っていけるのかをテストするために、毎月の支払いを求めてくることになります。

履行の状況を見た上で、自己破産と同じように再生委員と面談を行って、個人再生手続きの認可を裁判所から受けることになります。

その後は任意整理と同様に債権者に支払いをしていくことになります。

まとめ

このページでは、債務整理の流れの基本的な部分についてお伝えしてきました。

債務整理は弁護士・司法書士・貸金業者・裁判所などが、わりと同じような流れで業務を行っているので、ほとんどのケースで上記のような流れですすんでいくことになります。

当然に、このようにスムーズに進むものばかりではないのですが、とくに相談で何を聞かれるかを知って詳細に知っていただいた上で、手続きの大まかな流れを知って、今どのようなことをしているのかを知ってください。

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