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東京・大阪といった大都市に住んでいれば交通手段が発達していますが、地方や郊外に住んでいる人にとっては自動車は足として生活に必要不可欠なものです。
借金の返済にお困りの方で、地方や郊外にお住いの方の中には、「借金は何とかしたいけれども、自動車がなくなると困る…。」という理由で債務整理を躊躇している方も多いのではないでしょうか。
このページでは債務整理をすると自動車がどうなるか、についてお伝えします。
債務整理の概観
まず、そもそも「債務整理」ってどのようなものなのか、という事の前提知識を得ておきましょう。
債務整理というのは、借金返済に困ったときに借金をなんとかするための法律上の制度などを利用して経済的な再生をしようというものです。
債務整理の手続きには、任意整理・自己破産・個人再生という3つの手続きが使われるのと、自動車の関係でいうと相続放棄というものも知っておきましょう。
任意整理とは
任意整理とは、銀行・消費者金融と借入をしている債務者(実際には依頼を受けた弁護士・司法書士)が、交渉をして、借金の額、利息、遅延損害金などの条件について交渉をして、楽な支払いになるように調整するものです。
交渉といっても実務的には東京三会基準という債務整理に関する方針がそのまま適用されており、
- 残元金のみの支払いにする(延滞利息している利息や遅延損害金はつけない)
- 将来も利息をつけない
- 36回~60回(3年~5年)での分割にする
といった内容に支払いを変更してもらうことが基本のものになります。
債務整理の方法の中では、裁判所への申立書類の作成などの負担がないなど、依頼者にとって手続き的な負担は最も少ない方法ですが、すくなくなくとも元本の支払いはしなければならないという点で支払い面では一番支払う額が多いものであるといえます。
自己破産
自己破産とは、借金などの債務の支払いができなくなってしまったと判断できる場合に、裁判所に申し立てをして所定の手続きを行うことによって、借金の返済を免除してもらう手続きのことをいいます。
借金など債務の返済は必ずしなければならないのですが、病気・怪我・倒産などで収入がなくなってしまうようなことがあったり、過度にギャンブルをしすぎたりしたような場合には、借金の返済をしたくてもできない場合は発生します。
そのような場合でも、何がなんでも借金の返済しなければならないとすると、
- 借金返済苦による自殺を招いたり、犯罪に走ってしまうようなことが考えられる
- 債務者の残った財産を回収するために債権者が強引な取り立てを迫りかねない
- 債務者が一部の債権者と通謀して不平等な行為をする(たとえば友人の借り入れだけは返済する)
といった不都合が発生することが考えられます。
そのため、債権や財産の内容を調査した上で、返済ができなくなっている場合には、借金を免除することで上記のような不都合を回避しようとしています。
自己破産は破産法という法律に基づいた手続きで行うことになります。
手続き的な負担は任意整理に比べれば多いものの、原則として債務の支払い義務がなくなる強力な手続きであるという特徴があります。
個人再生
個人再生とは、借金などの債務の支払いができなくなってしまったと判断できる場合に、裁判所に申し立てをして所定の手続きを行うことによって、借金を圧縮してもらって、残った額を支払うようにしてもらう手続きのことをいいます。
自己破産はすべての債務を処理する必要があるのですが、住宅ローンを利用して借り入れをしている場合には、家を手放すことが避けられません。
また自己破産手続きでは警備員や宅建業などの資格についている人は欠格事由という規定の影響をうけて失職する可能性が非常に高いものになっています。
個人再生は住宅ローン特別条項というものを利用して、住宅ローン債権者だけを外すことができたり、欠格事由にあたらないという手続きで、自己破産ができない場合に役にたつ手続きです。
手続きは、民事再生法の個人が利用する章の規定を利用して、裁判所に申し立てをして行うことになります。
申立をすると、債務の額に応じて約1/5程度に圧縮されることになります。
任意整理での支払いは難しくても、上記のように自己破産が利用できない場合という場合に利用しやすいという特徴があります。
相続放棄
法律上も親がした借金を支払う義務があるのは親で、一緒に住んでいても、血がつながっていてもいなくても、子が支払う義務はありません。
しかし、親が亡くなると相続が発生したときには、相続は家・土地・預金などプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も包括して引き継ぐことになります。
相続を原因として親の債務であったものが自分の債務になってしまうと、法律上は支払わなければならなくなります。
この場合、相続放棄という制度を利用することにより、相続人ではなかっとことにすることができる結果、資産も相続できませんが、債務も相続する必要はなくなります。
相続放棄は家庭裁判所に申し込みをして相続人として外れるようにしてもらう手続きで、原則として相続開始から3ヶ月以内に行う必要があります。
相続によって借金を負ってしまったという特殊な局面でだけ使える債務整理手段ですが、他の債務整理手段のように信用情報に事故情報として登録されない、裁判所への申立手続きになりますが自己破産・個人再生ほど複雑なものではないという特徴があります。
手続きの選択
これらの手続きは、実務上は次のようにして行います。
まず、任意整理は通常、残元金を分轄して支払うのですが、最長36回です。
ですので、36回を超える分割をしなければ支払えないというのであれば、任意整理を利用できる可能性は低くなります。
つまり、借金が500万円ある場合には、36回分割をすると約14万円になるので、月々14万円以上支払いが可能であれば任意整理ができますが、そうでない場合には原則として自己破産をすることになります。
支払っていけなくて自己破産を利用すべきケースでも、資格制限や住宅を維持する場合には個人再生の利用を検討することになります。
個人再生をするには、債務額に応じて圧縮されますので、残った額を36回の分割で支払えるかどうかを検討します。
500万円の場合には100万円に圧縮されますので、2万8千円以上の支払いが出来れば個人再生の利用を検討し、それが難しい場合には自己破産手続きの利用をします。
債務整理手段と自動車がどうなるか
それでは、債務整理をすると自動車がどうなるかについて見てみましょう。
債務整理で自動車を手放さなければならないケースとしては次の2つに集約されます
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- 自己破産手続きをするにあたり車が資産として売却対象になった場合
- 自動車ローンの利用中に債務整理をしたため債権者が引き上げて競売などにかけた
自動車ローンの債権者は車を担保にしています。
つまり、自動車ローンの支払いがないときには、自動車を売却してしまって、その売却代金を回収するということが認められているということになります。
それぞれの手続きで上記のようなケースがあるか確認しましょう。
任意整理をすると自動車がどうなるか
まず、任意整理は、自己破産のように、自分が持っている財産をすべて清算して債権者に分配する、という手続きではありませんので、手続きから当然に自動車を引き渡さなければならないということはありません。
また、任意整理では債権者を選んで交渉をすることができ、自動車ローン債権者は交渉せずに従来通り支払っていく、ということが可能です。
自己破産手続きをするときに車がどうなるか
自己破産手続きをする場合には自動車を手放す可能性が最も高いといえます。
まず、自己破産手続きにおいて自動車は資産という扱いがされるので、破産手続きで売却されるのが原則的処理です。
また、自動車ローンがある場合には、自己破産手続きをする場合には、任意整理のように自動車ローン債権者だけをはずして自己破産をするということがわかりません。
上述したとおりですが、通帳の中身は精査されますので、通帳内容に自動車ローンの存在がわかりますので、こちらも隠すことはできないと考えましょう。
ただし、自動車といっても新品同様で転売しやすいものから、長い間載っていて相当な走行距離になっているようなものもあります。
その結果売却が難しいと判断した場合には、資産としての認定から外される場合もあり、その場合には従来通り自動車を保有することが可能になる場合があります。
目安としては、普通車で6年軽自動車で4年という期間が経っている市場価値が20万を切るような自動車であれば、ばいきゃくをしなければいけない対象から外れる可能性はあるため、弁護士・司法書士の腕次第というところもあります。
この場合ですが、金銭に余裕のある身内や第三者に自動車を購入してもらう、ということでこのような事態を避けることができる可能性はあります。
個人再生をするときに車がどうなるか
個人再生手続きは、自己破産とおなじく裁判所への申立をして行う手続きですが、自己破産と違って財産を分配するものではないので、手続き自体から車を売るということはありません。
ただし、資産として手続きで認定されることによって、圧縮してくれる金額に影響をする可能性はあるので注意が必要です。
また、債権者の中に自動車ローン債権者がいる場合には、手続きに加わってもらう必要のあるものになるので、自動車を手放さなければいけないのが原則です。
ただし、自動車の価値が下がっていて購入者が見つけられないようなケースでは売却しなくてもいい場合があります。
相続放棄をするときに車がどうなるのか
相続放棄をするときに車がどうなるかは、車の名義が債務を抱えている親名義なのか、自分名義なのかによって異なります。
まず、債務を抱えている親の名義で自動車を持っていた場合には、車を自分の名義にうつすことはできません。
これは、相続放棄をすると、相続人ではなかったという扱いになるため、債務も相続しなければ、資産も当然に相続しないからです。
自動車だけ相続をして、債務を放棄する、という相続の仕方ができる制度はないので、相続放棄する以上は基本は諦めることになります。
ただし、子2人で相続する、母と一緒に相続するなど、共同相続人が居るような場合で、相続放棄をしない共同相続人がいる場合には、自動車は相続をした共同相続人に移転することになります。
その共同相続人から自動車を買い取ること自体は認められています。
一方で本人名義で車を所有していた場合には、相続放棄をしたとしても自動車の所有権に影響するものではありません。
債務整理手続きが終わった後の自動車ローンについて
自動車は何年かたって古くなった、事故をして廃車になった、家族が増えて大きな車が欲しくなったなどの理由から買い替えるものですね。
債務整理をしたことにより、自動車の買換えに影響するのでしょうか。
相続放棄以外の債務整理をすると、信用情報機関に事故情報(異動情報)として登録をされることになっています。
この情報が登録されると、新しい借り入れやクレジットカードの作成をするときにする審査に通らなくなることになります。
自動車を購入する際には自動車ローンを利用することが一般的ですが、自動車ローンの審査の際にも信用情報機関に事故情報がないかは確認され、これがある場合には自動車ローンの審査がおりなくなります。
ですので、きちんと貯金をして一括で購入したり、親族に購入してもらってそちらに支払いをしていくなどの工夫が必要です。
なお、この事故情報は任意整理から5年、自己破産・個人再生からは7年で消えることになります。
それ以降であれば信用情報をみられて審査が通らなかったということはありません。
まとめ
このページでは、債務整理をすることによって自動車にどのような影響があるかについてお伝えしてきました。
現在自動車を持っている方が借金返済に困った場合で、自動車をそのまま持っていたいというのであれば、任意整理をするのが基本ということになります。