資源国通貨とは?メリット・デメリットと取引手法を解説!

FXには様々な通貨がありますが、今回は「資源国通貨」について見ていきます。資源国通貨の特徴や、商品市場との関係などについて詳しく解説していきます。FXトレードの参考にしていただければ幸いです。

資源国通貨とは

資源国通貨は、「コモディティ通貨」とも呼ばれ、鉱物資源や農産物などを生産していて、主な輸出品としている国の通貨をいいます。主なものは次のようになります。

 

1.豪ドル

2.ニュージーランドドル

3.カナダドル

4.南アフリカランド

 

資源国通貨の値動きの特徴

資源国通貨の特徴を見ていきましょう。

スワップポイントが高くインフレで買われる

資源国通貨は一般的に金利が高く、スワップポイントが高めです。ただ、金利が高いということは、インフレになりやすく投機の対象となる場合もあります。インフレの多くは商品市場高によって起こります。

そのため、インフレ時は商品市場が高くなっていることが多く、資源国は好影響を受けます。ですから、資源国通貨は相対的に強い動きになる傾向があります。

逆に、資源輸入国はインフレ時には、輸入コストが上がり経済活動が停滞しやすくなります。そのため、資源輸入国の通貨は弱い動きになる傾向にあります。

相場が乱高下する場合もあるので注意が必要です。

商品市場の影響を受ける

資源国通貨の値動きは、商品市場の影響を受けます。特に金と原油は為替市場に影響を与えるのと同じようなファンダメンタル要因によって動く傾向があります。コモディティ通貨とみなされる主要通貨は豪ドルやカナダドル、ニュージーランドドルなどがあり、これらは全て金や原油価格と強い相関があります。

ただし、為替市場の値動きは複雑です。各通貨にはその値動きがコモディティ価格を大きく反映する理由がありますが、それ以外にも金利差や国際情勢など様々な影響を受けます。現在の為替相場の動きが、コモディティ価格にどの程度の影響を受けているのかというのを、取引する際には把握するようにしなければなりません。

金価格が与える影響

まずは、金の産出量の多い国を確認しましょう。

 

1.中国          440トン

2.オーストラリア     300トン

3.ロシア         255トン

4.アメリカ        245トン

5.カナダ         180トン

金は特に米ドルとの関係が深いので、最初に見ていきましょう。米国は世界4位の金の産出国ですが、金の上昇が米ドルの上昇を招くことはありません。

しかし、米ドルが上昇すると金価格が下落し、米ドルが下落すると金価格が上昇する傾向があります。

軍事的な衝突など地政学リスクがある時は米ドルが売られ、安全資産として金が買われるためです。また、金には金利がつかないため、米国債が買われる(ドル高要因)と金の価格は下落する傾向にあります。

米ドルが売られると、資産を安定している金価格に連動し、資源国通貨も上昇する傾向があります。豪ドルやカナダドルなどは特に金の産出量が多い国です。また、南アフリカランドも第7位の産出量となっています。

特に注目したい通貨は豪ドルです。AUD/USDは金と強い正の相関があります。相関とは値動きの関係のことで、正の相関とは同じような値動きになるということです。

つまり、金価格が上がると豪ドルが米ドルに対して強くなり、AUD/USDが上がる傾向にあります。これはオーストラリアが世界第2位の金の産出国であり、貴金属を輸出していることが原因として考えられます。

地政学リスクなどで金価格が上昇している場合は、おそらく米ドルがすでに下落し始めているシグナルです。金の輸入業者がコスト上昇に対応して、豪ドルに対する需要を増やすと、AUD/USD の価格はさらに押し上げられます。

またニュージーランド経済はオーストラリア経済と極めて密接な関係があるため、NZドルも オーストラリアドルと同じ値動きになる傾向があります。ニュージーランドドルと金との関係も豪ドルと同じような値動きになるのと同じように、カナダドルも金価格と相関があります。カナダも世界第5位の金産出国だからです。

原油価格が与える影響

原油価格は世界経済に大きな影響を与え、消費者と生産者の両方に影響を与えます。そのため、商品価格と資源国通貨との相関は金の場合よりもはるかに複雑で不安定です。資源通貨の中で特に原油と結びつきが強いのはカナダドルです。

カナダは石油産出国ですが、経済に対する原油の影響ははるかに広範囲です。金の価格は他の分野への影響はあまりありませんが、原油価格は間違いなくあります。カナダは気温が低く一年のほとんどを通じて灯油に対する膨大な需要が存在するからです。

景気後退期には売られやすい

コモディティ通貨は世界的な景気後退の時にも弱い動きとなる傾向があります。世界的な景気後退期は世界各国で生産活動が停滞します。そうすると資源に対する需要が落ち込むため、資源の輸出が減少し、資源国通貨は売られやすくなるのです。

資源国通貨の特徴

それでは、各通貨の特徴を確認していきましょう。

豪ドル

オーストラリアのGDPは第13位(2017年)で、1.323兆ドルです。経済規模は比較的小さいものの、1人当たりのGDPでは、欧米先進国に匹敵します。

オーストラリアはもともと農業や鉱業により発展してきた国です。農業の中で盛んなのは家畜業で、牛肉の主要輸出国になっています。また、鉱業は金の採掘から石炭、鉄鉱石など鉱山資源に恵まれています。

金などの商品市況の影響を強く受けます。そして、最大の輸出相手国は中国です。

輸出品目

  • 鉄鉱石   22.0%
  • 石炭    16.6%
  • 非貨幣用金 6.3%

輸出相手国

  • 中国 29.5%
  • 日本 19.3%
  • 韓国 8.0%

中国の経済状態に大きな影響を受けることがわかると思います。オーストラリアの経済指標と共に、中国の経済指標にも注目する必要があります。

オーストラリアの金利水準

2008年のリーマンショック前までの豪ドルの政策金利は「7.25%」。高金利通貨として日本でも人気が高い通貨でした。しかも、地政学リスクが低く経済状況も良いため、安全通貨としての側面もあります。

現在の高金利通貨はトルコリラやブラジルレアルなどの新興国ですが、政情や経済状況がよくなく、金利は高くても通貨安の恐れがあります。その点、豪ドルのレートは安定しているので安心です。

しかし、リーマンショックによって世界経済が減速する中、2009年には3%まで引き下げられ、一時金利引き上げの時期もありましがた、現在は「1.5%」の政策金利となっています。

2019年現在、米国の政策金利は「2.5%」となっており、日本より金利は高いものの、かつてのような「高金利通貨」としての人気はなくなっています。

オーストラリアンの金融政策

オーストラリアの政策金利を決めているのは、RBA(オーストラリア準備銀行)です。日本銀行やFRB(米国連邦準備制度理事会)などと同じように、オーストラリアの中央銀行です。

中央銀行の目的は、主に次の3つです。

1.オーストラリア通貨の安定

2.完全雇用の維持

3.国民の経済繁栄と福祉

このような目的を達成するために、年率2~3%の消費者物価インフレ目標が非公式に定められています。持続可能な経済成長のためには、通貨の安定とインフレ抑制にあると考えているからです。

インフレが2~3%の目標を上回った場合、金融引き締めに転じると見られています。2018年のインフレ率は2014年以来、4年ぶりに2%を上回っており、2019年には利上げに転じるのではないかと、多くの投資家が注目しています。

金融政策決定会合

RBAは毎月第一火曜日に金融政策に関して議論するために会合を開きます。当日の12:30に政策金利や金融政策を発表します。

オーストラリアの主要経済指標

  • 国内総生産

発表時間:3月・6月・9月・12月上旬 10:30(サマータイム、10月第一日曜~4月第一日曜は、一時間早くなります)

GDPは、オーストラリア国内生産と消費の合計を表す指標です。GDPの急拡大はインフレを誘発すると見られ、低成長は景気後退、もしくは景気低迷を示唆します。

  • 消費者物価指数(CPI)

発表時間:1月・4月・7月・10月下旬 10:30

消費者物価指数(CPI)は、都市部世帯による支出の高き割合に相当する財と支出の高い割合に相当するバスケット価格の四半期変化に関する指標です。バスケット価格には、食品や住宅、交通、医療などが含まれます。

  • 貿易収支

発表時間:毎月上旬 10:30

貿易収支は、財とサービスの収支で、国際収支上の財とサービスに関するオーストラリアの国際貿易に関する月次指標です。一般商品の輸出入は主としてオーストラリアの税関当局の記録に基づく「国際貿易統計」から取られています。

ニュージーランドドル

ニュージーランド経済は、貿易依存度が高く、GDPの約70%を占めています。最大の輸出先はオーストラリアから中国へと代わり、輸出全体の20%以上が中国向けとなっています。オーストラリア同様、ニュージーランドも中国経済の動向に影響を受けます。

ニュージーランドドルもオーストラリアドルと同じように資源国通貨と言われていますが、少し性質が異なります。ニュージーランドはオーストラリアと異なり、原油や金など鉱物資源を持ちません。

酪農業が主要輸出産業で、輸出の3割弱を酪農製品が占めています。そのため、ニュージーランドドルの値動きは、は金よりも乳製品といった農産物価格の影響をより受けやすいという特徴があります。

乳製品価格の下落によってニュージーランドは2015年以降利下げが繰り返し行われ 、現在は1.75%となっています。ニュージーランドの政策金利を決めるのはRBNZ(ニュージーランド準備銀行)です。金融政策委員会は金融政策を週1回の頻度で検討する銀行幹部によって構成される内部委員会です。

会合は年に8回、約6週間ごとに開かれます。他の多くの中央銀行と異なり、金利政策の決定は最終的にRBNZ総裁によって行われます。

金利政策の目標は、政策の安定性を維持し、生産や金利・為替レートの不安定さを回避することに重点が置かれています。物価の安定とは、 CPI インフレを年率1~3%に維持することを目指すということです。

またニュージーランドドルは投資家のリスクの変化を反映しやすいという特徴があります。株高などでリスクを取れる状態(リスクオン)になればNZドルにとってプラス、株安などによるリスクオフになった時は、マイナスの材料になるので注意しましょう。

ニュージーランドドルの特徴

1.オーストラリアドルとの強い相関

オーストラリアは地理的にも近く、貿易の依存度も高い国です。オーストラリア企業が輸入を増やした場合、その恩恵を最も受ける国のひとつがニュージーランドです。

オーストラリアドルとニュージーランドドルとの相関も高い傾向があります。

2.コモディティ通貨

ニュージーランド経済は、コモディティの輸出が大半です。ニュージーランドドルはコモディティ価格に影響を受けやすい傾向があります。つまり、コモディティ価格が上昇すると、ニュージーランドドルも上昇しやすくなります。

オーストラリアドルとニュージーランドドルは、コモディティ価格に連動した通貨として相関が高くなります。

ニュージーランドの主要経済指標

  • 雇用統計

ニュージーランド統計局は、四半期ごとに雇用統計を発表しています。発表のタイミングは四半期が終了してから翌々月上旬で、発表時間は朝の7時45分になります。

雇用統計はRBNZ(ニュージーランド準備銀行)が金融政策を決める上で重視する経済指標です。為替相場も大きく動きます。

  • GDP(国内総生産)

GDPは、ニュージーランド国内の財とサービスの生産と消費の合計に関する経済指標です。急成長はインフレを誘発すると見られ、低い(もしくはマイナス)成長は景気後退または景気低迷を示します。

発表は四半期が終了してから3ヶ月目の下旬で、発表時間は朝の7時45分です。

カナダドル(CAD)

カナダはG7(先進7か国)の一員で、先進国の安定感とコモディティ通貨としての魅力を持っています。英連邦の一員ですが、地理的な近さから経済的には米国との関係が深く、カナダドルは米ドルとの連動性が高き通貨です。

また、石油や天然ガス、金属やエネルギーなど鉱物資源が豊富で、資源国通貨としての側面も持っています。

金融政策は、中央銀行であるカナダ銀行(BOC)が運営しています。金融政策の変更に関して議論するために年8回会合を開きます。また、年に2回「マネタリー・ポリシー・レポート」を発行しています。

カナダは世界第4位の原油生産国であり、原油価格の影響を受けます。米国の動向とコモディティ価格に注目する必要があります。

カナダの主要経済指標

  • 雇用統計

カナダの雇用統計はカナダ統計局が毎月発表しています。毎月第一金曜日の22時半(夏時間は21:30)で、米国の雇用統計と同じ時間です。

米国雇用統計は最も注目度が高い経済指標ですが、カナダの雇用統計も金融政策に影響を与えるので重要な指標です。

  • 四半期GDP(国内総生産)

カナダ国内で生産されたすべての財とサービスの合計価値を表します。国内の生産で生み出された所得に関する指標です。もとろん、カナダの中央銀行であるBOCも注目している指標で、GDPの結果によって利上げや利下げの判断に影響を及ぼします。

  • CPI(消費者物価指数)

CPIは、物価の平均上昇率を表す指標です。インフレはCPIのパーセンテージ増加によって表されます。BOCはインフレ率の目標として前年比で2%と設定していて金融政策を行っており、金融政策のターゲットになっていることからもCPIは重要な経済指標です。

南アフリカランド

ここまでは、先進国のコモディティ通貨を見てきましたが、新興国のコモディティ通貨として人気が高いのが南アフリカランドです。

南アフリカは金、ダイヤモンド、プラチナ、銅といった豊富な鉱物資源を算出する資源国なので、南アフリカランドは資源価格と連動する傾向があります。

現在の政策金利は6.75%。高金利通貨なのでスワップポイントが高いという特徴があります。ただし、豪ドルやカナダドルなどの先進国通貨に比べ、新興国通貨なのでボラティリティ(値動き)が高い傾向にあります。

金融危機などでリスクオフの動きがでると、大きく売られてしまうので、レバレッジは控えめにしましょう。

まとめ

今回はコモディティ通貨について解説しました。基本的に金利が高めで資源価格に影響を受けます。豪ドルやカナダドルなど先進国の通貨は値動きが安定しているものの、金利は低め。南アフリカなど新興国通貨は金利が高いものの値動きが荒い傾向にあります。

原油や金などコモディティ価格を見ながらトレードすることも可能ですし、高金利通貨として長期保有のスワップポイント狙いで保有することも可能です。

ただし、南アフリカランドは値動きが荒くなる傾向があるので、レバレッジをかけすぎないように注意してください。

 

 

 

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