副業フリーランスが陥りやすい「3つのトラブル」から身を守る方法

まさか自分が?トラブルは誰にでも起こる

自分の「好き」や「得意」を活かして働きたいというニーズが増え、年々フリーランスという働き方が注目されています。現在、副業を含めるとフリーランス人口は約1,119万人に達しています。

このように自由な働き方が促進される一方、フリーランス人口が増えるにつれトラブルも急増しています。

「報酬未払い」「納期を守れない」などのよくある事例から、中には情報漏洩などが原因で裁判に発展する事例などもあります。会社に属していれば、トラブル対応のコストは会社が負担してくれるのが一般的ですが、フリーランスにはそのようなものはありません。良くも悪くも、自分に起こることは全て自分で対処するのが原則です。

普段、慎重な姿勢で副業フリーランスをしている人も、トラブルは予期せぬところで起こってしまうものです。つまり、副業フリーランスと言う仕事を続けている以上、トラブルを無視することはできません。そこで、今回はトラブルが起こった際の対処法について詳しくお伝えします。

トラブル1「報酬を払ってもらえない」

副業フリーランスにとって、最も頻繁に起こる事例の1つは報酬の未払いです。「クライアント企業に成果物を納品して決裁もいただいたので、その後、請求書を送るがいつまでも支払いがない」。こう言った事例は、副業フリーランスを長く続けていくと多くの人が何度か経験することになります。

ただ、報酬未払いの主な原因は、クライアント企業が支払いを忘れているというものです。この場合は、きちんとクライアント企業に問い合わせれば無事、支払いが行われます。ただ、中には業務委託した相手がフリーランスであることをよいことに、故意に支払わないという悪質なものがあるのも事実です。

そこで、報酬未払いに対してどう対応するのか、具体的に次の2つの方法をお伝えします。

対策その1.相手に状況を確認する

先ほどもお伝えした通り、報酬未払いの多くは「クライアント企業の単純なミス」であることが多いです。振り込むのを忘れた、支払日を勘違いしていたなどです。中には、請求書を紛失してしまったと言うこともあります。このような場合、単純に相手企業に確認をとればそれで済むことも多いものです。

なので、報酬未払いがあったからと言って即座にケンカ腰で、クライアント企業に乗り込んでいくようなことをしてはいけません。きちんと落ち着いて状況を確認することが大切です。最初はメール・郵便などで連絡をとるのが妥当です。具体的な文例としては下記のような内容が考えられます。

お世話になっております。先月より業務委託して頂いている○○(お名前)です。さて、○月○日付で納品させて頂いた○○の案件に対する代金を本日現在、ご送金いただいておりません。当方としては経理の関係上からも、お早めに対処頂きたいと考えております。つきましては、何らかのご事情がある場合、お早めにご連絡をいただくか、○月○日までに下記の口座宛にご送金いただくことを改めてお願い申し上げます。尚、本状と入れ違いにご送金済みの場合は、あしからずご容赦のほどお願い申し上げます。まずは取り急ぎお知らせいたします。
Expert
一般的な報酬未払いの大半はクライアント企業の単純ミスであることが多いです。ですので、まずは上記のように穏やかに対応をしてみてください。ただ、スタートアップ企業などの場合は資金繰りなどの問題から支払いが遅れることもあります。そういった場合は、改めて支払期日について当事者同士で話し合いを行うようにしてください。

対策その2.内容証明を送る

一般的な報酬未払いは相手企業の単純なミスであることが多いものです。しかし一方で、こちらが副業フリーランスであると言うことを利用して、最初から払うつもりがなく仕事を委託してくるという悪質な企業がいることも事実です。

万が一、成果物の納品後このような悪質企業であることが発覚した場合は「内容証明」を送ることを考えます。内容証明というのは「この手紙をいつ、誰に、この内容であなたが出しました」ということを日本郵便が証明してくれるというものです。

法的な効力はありませんが、後ほど裁判になった場合、請求内容を正式な公文章として残すことができます。それと同時に相手に、心理的プレッシャーを与えるという効果があります。

内容証明郵便の出し方は、郵便局の窓口で手続きをしてもかまいませんが、小さな郵便局では扱っていないこともあります。そこで、下記の郵便局「e内容証明」サイトを利用してください。これなら場所にかかわらず、24時間いつでも送ることができます。

出典:日本郵便

内容証明の文言をしっかり練り、より厳密に対処したいという場合や裁判になる可能性が高いのなら、地元弁護士などに内容証明を依頼することをお勧めします。

弁護士の名前を連名で記載すれば、こちらの本気度が相手に伝わり、裁判を回避したいという思いから支払いに応じてくれやすいという面もある上、実際に裁判になった場合も、引き続き同じ弁護士に対応をとってもらえます。

Expert
自身で内容証明を送る場合は、数百円から数千円程度の費用ですみます。弁護士に内容証明を依頼する場合、費用の相場は5~10万円程度と考えてください。もちろん、弁護士によって厳密な費用は異なります。

トラブル2「納期を守れない」

通常、クライアント企業と取引する場合、成果物に対しての納品期限があるのが一般的です。しかし、フリーランス側の事故や病気などで納期を遅延してしまうということも起こり得ます。

このように、フリーランスの過失によって仕事が遅れてしまった場合、仕事遅延に伴う責任を問われることになります。そこで、次の2つの対策をとっておきます。

対策その1.フリーランスネットワークを作っておく

副業フリーランスを続けていると、時には事故や病気など、不測の事態が起こり納期に間に合わないということが発生します。

こう言った時のために、普段から自分の代わりに仕事をしてもらう「副業フリーランスの仲間」を作っておくと安心です。もちろん、仕事を依頼する以上は賃金の支払いも発生しますがクライアント企業に迷惑をかけ、自分の信頼を損なうことは避けることができます。

そこで、フリーランス同士の「社交場」に顔を出し人脈を築いておくようにしてください。

例えば、多くのフリーランスが仕事場として利用している「コワーキングスペース」で人脈を築いておく事ができます。コワーキングスペースなら、地理的にも近場のフリーランスと知り合うことができ「もしもの時」にスグに相談にのってもらえます。

また、フリーランス対象のセミナー・勉強会などもあります。セミナーや勉強会に参加しているフリーランスは、意識や仕事のレベルも高いため安心して仕事を依頼することができます。その他、地方に住んでいてそのような場がないという場合は、Facebookなどで親しくなる事も可能です。

ただ、今回の場合はただの人脈ではなく「仕事を依頼することができる」仲間ですので、相手の人柄だけではなく仕事能力についてもきちんとチェックしておきましょう。仕事を代行してもらったとしても、能力不足だと「良い成果物」に仕上がらないため、結果としてクライアント企業に迷惑をかけることになってしまいます。

対策その2.日頃から報連相を心がける

事故や病気など不測の事態が起こったら、1人で抱え込まず、まずはクライアント企業に連絡をとるようにしてください。適切な関係性が築けていれば、クライアント企業も納期を見直してくれることが大半です。

こういったことは時間をおけばおくほど、クライアント企業に迷惑がかかるため早めの連絡を心がけてください。

Expert
副業フリーランスにとって最低限のマナーは「納期を守ること」だと思います。それが守れないというのはこちらの信用問題となり、結果として継続的に仕事の発注をしていただけなくなります。そのため、日頃から納期を守るための対策を練っておきましょう。

トラブル3「損害賠償を請求される」

品質や納期の遅れ、あるいは情報漏洩など重大な過失によって、クライアントから高額な損害賠償を請求されるということも起こり得ます。このような法的手段をとられてしまうと、副業フリーランスとして再起不能になる事も珍しくありません。

そこで、このような重大なトラブルを避けるため、次の2つの対策をとってください。

対策その1.契約書を必ず交わす

損害賠償など、大きなトラブルを避けるためには受注した段階で正式な「契約書」を交わしておくことが大切です。契約書には通常「業務の内容」「報酬支払日」「報酬額」「報酬支払い方法」などが記載されていますが、念のためにトラブル発生時の対処についても記載しておきます。

例えば、契約書に損害賠償として請求できる限度額を、受注金額の範囲内であると定めておけば自分の身を守る為にも安全です。このようにしておけば、万が一の時も、支払うことができないほど莫大な金額を請求されるということを避けられるからです。

具体的には、契約書に下記のような条項を加えます。

甲及び乙は、本契約の履行に関し、相手方の責めに帰すべき事由により直接且つ現実に被った通常の損害に限り、相手方に対して損害賠償を請求することができる。但し損害賠償額については、甲乙が本業務の対価として定めた委託料相当額を累積限度額とする。

また、万が一、現時点で取引している相手企業との契約書にトラブル発生時の対処について記載が無いのであれば「契約書の内容を更新したい」ということを申し出て追加してもらうようにしてください。また、契約書は最低でも報酬の支払いが完了するまでは必ず大切に保管しておく必要があります。

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契約書を交わす際、何か便利なツールはありますか?

クライアント企業と契約書を交わす際、紙ベースで契約書を作成しても良いのですが、郵送の手間がかかったり契約書を返送してもらうのに時間がかかったりします。そこで、オンライン上で契約を交わすことができる「クラウドサイン」を利用すると便利です。


出典:弁護士ドットコム

契約書をテンプレートから用意したり、自身でPDFファイルを用意して契約書を作成することができます。クライアント企業がアカウントを持っていなくても利用出来るため、導入が簡単です。クライアント企業は、オンライン上で契約書を確認しその場でサインをすることができるため、時間も手間もがかかりません。

また、データはクラウド上に永久保存されるため、契約書の紛失などということも心配いりません。しかも、これまで紙で制作した契約書をオンライン上に保管できるサービスもあるため、契約書関連をこれで一元管理してみるのも良い方法です。

対策その2.情報漏洩の対策をとる

近年、パソコンの置き忘れや盗難などによって情報漏洩してしまい、クライアント企業から訴えられるケースも目立ちます。

情報漏洩の対策としては、ウィルス対策ソフトをインストールしておくことはもちろん、多少面倒でも長めのパスワードを設定するようにしてください。パスワードが覚えられないという場合は、「LastPass」「OnePassword」などパスワード管理ソフトを使用するのも1つの方法です。

パスワード管理ソフトを使えば、パスワードが脆弱で問題があるときはそのことを指摘してくれますし、不正ログインなどがあったとき即座に警告される機能が付いたものもあります。

また、データはなるべくローカルで保存せず、Googleドライブ・Dropboxなどクラウドで保存しておく方がセキュリティが強固なため安全です。さらに、Boxcryptorなどファイル暗号化ソフトを導入しておくと、極めて強固なセキュリティを保つことができます。


出典:SecombaGmbH

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Boxcryptorは、クラウド上に保管してあるファイルを暗号化することができます。Boxcryptorで暗号化したファイルは、自身のパソコンなどでしか開くことができません。そのため、仮にクラウドサービスのセキュリティが突破されたとしても、情報の安全を確保することができます。

どうしても問題を解決出来ない場合は?

トラブル発生時、クライアント企業とどうしても和解できない場合、法的な手段に則って解決を行うことになります。ただ、副業フリーランスの立場からすると、弁護士を雇うというのはとても敷居が高いものです。

そこで、法テラスの利用を検討してください。法テラスを利用すると弁護士費用を大幅に削減できる可能性があります。法テラスというのは、法務省が所管となっている公的な法人で正式名称を「日本司法支援センター」と言います。


出典:日本司法支援センター

もともとは経済的な余裕がなくても、弁護士や司法書士の力を借りられる機関としてスタートしました。そのため、無料相談に応じてくれることはもちろん、弁護士・司法書士の費用を立て替えられるサービスもあります。

東京・大阪など大都市圏だけでなく全国の都道府県に事務所があるため、まずは無料相談を利用してみてください。各都道府県の法テラス事務所にて電話で無料相談の予約を入れ、後日、事務所にて相談を受けることができます。

無料相談については、1つの事案に対して1回30分程度で最大3回まで受けることができます。

まとめ

今回は遭遇する可能性があるトラブルについて取り上げ、その対策までをお伝えしました。具体的には次の3つです。

  • トラブル1.報酬の未払い
  • トラブル2.納期を守れない
  • トラブル3.損害賠償を請求される

報酬の未払いについては、クライアント企業の単純なミスであることも多いため、まずは連絡を取って事情を聞いてみることが先決です。

また、事故・病気などのことが原因で、納期に間に合わない場合はクライアント企業に早めに連絡をとってください。そうすることで、納期の延期など対処してくれることも多々あります。ただ、副業フリーランスとして信頼を得るためには、できる限り納期は守りたいところです。そこで、常日頃から同業のフリーランスとネットワークを築いておく事も肝心です。

トラブル3の「損害賠償を請求される」ことの対策は、事前の契約書が鍵を握っています。トラブル発生時の損害賠償の範囲をきちんと決め、その解決方法についても明記しておくことで、トラブルが発生しても速やかに解決を図ることができます。

Expert
今回はトラブルの話しが中心なので、副業フリーランスを始めようと思っている人にとって大きな不安を感じてしまったかも知れません。しかしトラブルに対しては本来、予防策を講じておけば、ほとんどの問題を避けることができます。過度にトラブルを恐れず、今回記述した内容を参考に予防策を練り副業フリーランスに挑戦してみてください。

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