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東京で民泊を始めるなら、どの地域がおすすめなのでしょうか。日本で始まったばかりの民泊は、地域によってはあまり推奨されない場合もあり、認可の難易度も自治体の取り組みによって変わってきます。
外国人観光客のニーズを狙った東京での民泊は魅力的で、宿泊施設の不足からも民泊の規制緩和が期待されていました。しかし、実態は地域住民からの不満の声も多く思うように進んでいないのが現状です。
そこで、東京で民泊をするなら大田区がおすすめです。大田区は現時点では都内で唯一、特区民泊として民泊を積極的に推進している地区です。今回は、民泊投資において大田区がおすすめの理由、特区民泊とは何なのか、さらに、都内23区の民泊への取り組み状況などを解説していきます。
東京の民泊の需要
民泊(住宅宿泊事業)とは、原則として一般の住宅を宿泊施設として貸し出すことをいいます。外国人観光客が急激に増加していることや、東京オリンピックの需要からも、東京は民泊にて安定した収益が期待できるエリアとして注目されています。
最初に、東京での民泊の需要がどれくらい高いのかデータをもとに検証しておきたいと思います。
住宅宿泊事業の宿泊実績について/観光庁
2018年10月に公表された、観光庁の2018年6月~7月にかけての「住宅宿泊事業の宿泊実績」にかかるデータによると、
宿泊日数の合計は68,711件。都道府県別で見ると、東京都が27,851件と最も多く全体の約3分の1を占めています。
全国における延べ宿泊者数は223,113人で、東京都にて91,933人と最も高い数字となっています。
ホテル客室不足/みずほ総研
東京で民泊を始める最大の理由として、2020年の東京オリンピックによる経済効果が期待できることが挙げられます。オリンピック時に需要が最高に達することはいうまでもありませんが、さらに、その後もオリンピックを契機に外国人観光客が増加することが期待されています。
ここで、みずほ総合研究所が行った市区町村別にみたホテル客室不足の試算レポートを見ておきましょう。
インバウンド需要関数の推計から、今後の外国人観光客の数は2020年には4,400万人を優に超えるとの見通しです。
みずほ総研の見解によると、2020年8月の東京都の宿泊需要は、日本人の宿泊需要がひっ迫することが予想されているため、ピーク時には約1.4満室程度の客室不足が見込まれています。
また、オリンピック終了後の冬のバケーションシーズンには、オリンピック開催時を避けていた外国人観光客によって需要高まる可能性もあるとの見方です。
都内の民泊事業の実態
以前から、オリンピック時の東京における客室不足が懸念されており、ちょうど普及しはじめた民泊の存在が国の政策としても注目され、民泊による宿泊施設の提供が期待されていました。
しかし、日本の民泊事情は海外の主要国とは大きく異なり、とくに東京をはじめとする関東地区において期待されたような自治体の規制緩和は進んでいないのが現状です。
民泊の認可
民泊新法(住宅宿泊事業法)では、ホテルや旅館業などに必要な旅館業の営業許可を取得せずとも、自治体の認可があれば宿泊サービスの営業を行うことができるとしています。
しかし、民泊新法による認可の場合、営業日数は180日未満であることが規定されてあり、マンスリーなどのその他の運営と併用でなければ安定した収益を得ることが難しくなります。
ところが、実際に関東地区にて民泊の規制緩和(特区民泊)の認定を受けている自治体は、千葉市と東京都大田区のみとなり、期待されていたよりも低い水準にとどまっています。
一方、大阪府では34の市町村で特区民泊が進められています。
地域住民の警戒や反対
関東地区では、特区民泊への規制緩和が期待できるにもかかわらず、むしろ規制強化に動く自治体も目立っているのが現状です。というのも、地域住民による警戒や反対の声が大きいことが主な要因となっているようです。
- 不特定多数の外国人が出入りしている
- 民泊という宿泊サービスに対する理解が浅い
- 騒音、ゴミ出しマナー、共用部でのマナーに対する苦情
などが問題となっており、関東地区では住民からくる警戒・反対の声によって民泊経営が難しいと思われる地域があることを考慮しておく必要があります。
関東だけに限らず、地域・近隣住民からの苦情によって、民泊の撤退を強いられる事例も実際にあります。
このような現象は民泊がまだ普及し始めた段階であるから起きやすいことであって、もちろん時代の流れとともに徐々に回りからも理解されていく可能性はあるでしょう。国際的な観光国として、日本が観光事業を主要ビジネスとして確立させるためには、民泊への理解が必要不可欠だといえます。
ただ、今の段階で民泊を行う際には、エリア選びが非常に重要なポイントとなってくるのです。
東京で民泊なら大田区がおすすめ?
東京都で唯一、民泊の規制緩和(特区民泊)を実施している地域は大田区です。大田区は国内で最初に特区民泊を実施した自治体でもあり、自治体・住民と双方からの協力が得やすい環境が整っています。
東京で民泊投資を行うなら大田区はおすすめです。大田区なら、特区民泊の利点を活用することができるのです。
では、そもそも特区民泊とはどのような地域になるのかを詳しく解説しましょう。
特区民泊とは
特区民泊とは、旅館業法の許可がなくとも営業に上限を設けずに365日民泊経営が可能となる地域のことをいいます。自治体が民泊事業を推進しているため、他にも規制上優遇される点も多くなります。自治体が特区民泊への申請を行う必要があるのですが、どの自治体でも可能なわけではありません。
特区民泊として国から認定を受けるためには、その地域が国家戦略特別地区に指定されてあることが条件となっています。
国家戦略特別地区とは
国家戦略特別地区とは、国際的にビジネスを展開させていくことを目的に、特定の事業において規制、制度、税制などの規制改革・規制緩和を行うことができる地域のことをいいます。
現時点でこの国家戦略特別地区に指定されてあるのは、
- 秋田県仙北市
- 宮城県仙台市
- 新潟市
- 東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)
- 愛知県
- 関西圏(大阪府、兵庫県、養父市、京都府)
- 広島県、今治市
- 福岡市、北九州市
- 沖縄県
となっています。これらの地域にて実際に特区民泊を実施している自治体は、
- 新潟市
- 千葉市、東京都大田区
- 大阪府(大阪市を含め34市区町村)
- 北九州市
以上の地域にとどまっています。(今後はさらなる展開も予想されていますが・・・)
特区民泊のメリットは
特区民泊の最大のメリットとは、先述しましたように営業日数の規制を受けないことです。
旅館業法にあたる簡易宿泊宿所の許可をとれば、もちろん上限なく民泊の経営が可能となりますが、保健所の現地調査があるなど、ハードルは高くなってしまいます。
特区民泊の地域では、この旅館業法の許可がなくとも「民泊(住宅宿泊事業)」として、ホテル・旅館業とほぼ変わらない営業が可能となるのです。
基本的に届出を出すだけ
特区民泊の場合は、自治体が率先して民泊事業に取り組んでいます。民泊としての住宅の要件、建築基準法の要件、経営上の要件なども比較的に緩くなっています。届出を出すだけで認可がおりやすい状況にある点も有利です。
家主不在型でも管理業者への委託は任意
通常の民泊新法の認可の場合、家主不在型の民泊経営では管理業者への委託が義務づけられています。特区民泊であれば、家主不在型でも、可能であればオーナー自身が管理していくことができます。
フロント設置に関しては柔軟に対応
旅館業の簡易宿所営業の場合は、フロント設置が義務づけられていますが、特区民泊にて営業を行う場合は柔軟に対応しています。対面にて注意事項の説明ができること、帳簿の管理が正確にできること、苦情に迅速に対応できる環境であれば特区民泊ではフロントの設置は義務づけられていません。
大田区の民泊への取り組み
それでは、実際に大田区ではどのように民泊事業に取り組んでいるのか見ていきましょう。
民泊参入へのきっかけ
羽田空港が立地する大田区にて、特区民泊を導入するきっかけとなったのは、外国人観光客によって区内のホテルや旅館の稼働率が90%超えたことでした。このままでは、オリンピック時や今後の観光客のニーズに応えれなくなる、ということで大田区は率先して民泊を活用することにしたのです。
安心・安全、地域住民への説明を徹底しており、今のところ大きなトラブルは1つもないとのことです。
地域の活性化を推進
旅行者など、区内滞在者が増えることで地域の活性化につながることを大田区では期待しています。地域活性化への取り組みとしても民泊事業に積極的に取り組んでいるのです。
自治体は区内の観光事業と連帯しており、「大田区まちかど観光案内」「大田区ウェルカムショップ」など、連帯事業を展開しており、民泊のオーナーも登録することが可能です。
「大田区まちかど観光案内」とは大田区の観光案内所として、旅行者に観光案内を行ったり、観光マップやパンフレットを提供したりする店舗や施設です。
「大田区ウェルカムショップ」とは外国人旅行者の受け入れを積極的に受け入れを行う店舗や施設のことです。
大田区公式観光サイト
大田区公式観光サイトでは、宿泊先、観光ガイド、ショッピング、飲食店などの大田区ならではの細かい情報を発信しています。
宿泊先情報には、区内のホテル・旅館・民泊情報などが掲載されてあり、旅行者はこのサイトから大田区のことは何でも調べることができるのです。
自治体の支援メニューが活用できる
知るほどに、大田区がいかに民泊に有利な地域であるのか納得する方は多いでしょう。大田区では、観光事業・民泊事業に関する各種支援も万全に整っています。
- 24時間外国語対応サービス(コールセンター、情報センター、ヘルプデスクなど)
- 外国人旅行者おもてなしガイドブック
- 緊急時の対応
- 各種助成金や支援金など
など・・・
以上ご紹介した内容以外にも、大田区では民泊経営に有利な条件を多数備えています。東京にて民泊経営をお考えの方はぜひ選択肢の1つとして検討してみることをおすすめいたします。
※詳しくは大田区の公式HPから
東京23区の民泊への取り組み
民泊新法によって、民泊経営に関する基本的な規定は大まかに定められています。加えて、民泊の規定は緩和されてあったり、強化されてあったりと自治体によって様々です。
都内23区に関しても、地区によって民泊への取り組み・態度は異なります。
東京で民泊を始める方は、できれば有利な条件にて民泊経営がしやすいように事前にそれぞれの地区における違いを確認しておくことが大切です。
そこで、参考にして頂けるよう、東京23区(大田区以外)の民泊への取り組み状況を要点を絞って解説しておきましょう。
比較的に民泊に柔軟な区域
民泊新法の規定に沿った範囲で柔軟に対応している区域です。とくに、上乗せで強化・制限する条例は今のところ定められておらず、比較的に民泊経営がしやすい環境にあります。(エリアの近隣住民によって異なる)
- 墨田区
- 豊島区
- 北区
- 荒川区
- 葛飾区
- 江戸川区
- 板橋区
※北区は大田区の次に都内では民泊がやりやすい地区だといわれています。葛飾区、江戸川区でも民泊を積極的に取り組もうとする動きが見られています。
エリア別に制限がある区域
まずは、条件を定めたうえでエリアによっては積極的に民泊を進めていく方針である区域からご紹介していきます。あくまでも地域住民が安心できる住環境を守ることを第一優先としていますが、産業・観光の振興も支障が出ない範囲において積極的に取り組む方向であるとしている区域です。
民泊経営が制限されるエリアと比較的柔軟に対応しているエリアが明確に分けられています。
- 千代田区
- 港区
- 新宿区
- 品川区
- 文京区
- 江東区
- 杉並区
- 練馬区
- 足立区
※制限された区域においては、平日の営業は不可、土日祝日のみ、夏休み、冬休みの期間中のみ、年末年始のみなどそれぞれ営業できる期間が限定されています。
民泊にやや厳しい区域
- 世田谷区
- 渋谷区
- 中野区
上記3つの区に関しても、住居専用地域などの制限区域以外での民泊は可能です。世田谷区はもともと住宅専用地域が広範囲に渡ること、渋谷区はエリアごとに期間の定めが複雑であること、中野区は対面本人確認の義務化が徹底されているなど経営上やや厳しい面があるといえます。
民泊に厳しい区域
- 中央区
- 台東区
- 目黒区
- 千代田区
中央区と目黒区は区内全域にて平日における民泊は不可です。台東区は家主不在型民泊の場合に区内全域での営業は不可となります。
旅館業の許可をとることで営業の幅を拡げることは可能
上記で解説した民泊とは、原則として住宅宿泊事業法によって民泊経営をする場合に適用されるものです。
旅館業の簡易宿所営業の許可をとることで、宿泊業が可能なエリアにて制限を受けずに営業することは可能です。自治体の条例を考慮することはもちろんですが、さらに、近隣住民の民泊に対する反応を事前にリサーチしておくことが欠かせないでしょう。
オリンピック前は認可もおりやすい?
東京オリンピックを間近に控え、開催時における客室不足が話題になっています。すでに、ホテル・民泊の宿泊料金は4倍~6倍以上に高騰し始めています。
従って、オリンピックという世界的な巨大イベントが、民泊に対する取り組みを検討しなおす機会になる可能性は無きにしもあらずです。もしかすると、一時的にでも民泊規制を緩和したり、特区民泊の導入を決意する自治体もあるかもしれません。
またとない経済効果が期待できるオリンピックの契機を、自治体も逃すわけにはいかないというのが正直なところではないでしょうか。オリンピック前であれば、民泊の認可も比較的にとりやすい状況にあるといえるでしょう。
※物件のオーナーを対象にした、関東エリアでのオリンピック民泊に関する記事がこちらからご覧になれます。
※民泊でありがちなトラブルに関する記事も参考にして下さい。
まとめ
今回は、東京では民泊の普及拡大が期待されていたにもかかわらず消極的な自治体が多く、現時点では特区民泊を途用している自治体は大田区のみであることを解説していきました。
その他の地区に関しては、全体的に民泊への態度が厳しい地区もあれば、条件つきで全く問題なくできる地区など様々です。1つの区内でもエリアによって、周囲の反応も異なるようです。
日本での民泊はまだ始まったばかりで、一般的に認知されるまでには時間はかかるかもしれません。オリンピックが1つの契機となって民泊への理解度を深める機会になるのではないでしょうか。ぜひ、今後の自治体の動きに注意して、民泊経営がやりやすい区域やエリアを検討するようにしましょう。