目次
賃貸物件を保有するオーナーにとって、空室問題は深刻な悩みの1つで、空室の有効活用ができる民泊への参入を検討する方も多いのではないでしょうか。そこで、東京オリンピック、パラリンピックの開催時こそ非常に効率のよい民泊活用が実現できるチャンスです。
2020年7月以降は競技関係者も含め巨大な数の人々が東京に集まります。すでにホテルオークラなどの大手ホテルなどでは、オリンピック関係者向けに仮予約が始まっており、会場周辺のホテルにて一般の人達が部屋を確保するのは難しい状態にあり宿泊料は高騰しています。
東京都内では宿泊施設の不足が懸念され、民泊への期待も高まっています。今回はオリンピックを狙った、短期での民泊活用について解説していきます。
東京オリンピックで必要な宿泊施設
いよいよ東京オリンピックを間近に控えて、東京都内では交通インフラを始めとするインバウンド需要への対応が急がれています。
東京オリンピック開催!
東京オリンピックによって、膨らむインバウンド需要は短期集中型の緊急の需要であるのですが、東京都内では、三井不動産、住友不動産、三菱地所、野村不動産などの大手不動産によってホテル建設のラッシュが続いています。
オリンピック後の需要はどうなるのかといった話はさておき、開催時期に必要となる宿泊施設はまだまだ足りない状況だとのことです。高まる需要に備えて、民泊活用が気になる物件のオーナーは多いのではないでしょうか。
そこで、まずは2020年のオリンピックの日程を確認しておきましょう。
東京オリンピック開催日程
- 東京オリンピック開会式→7月24日(金)午後8時~/新国立競技場
- 東京オリンピック閉会式→8月9日(日)午後9時~/新国立競技場
以上の日程にて大会は開催され、日数でいえば17日間の巨大イベントとなります。
東京パラリンピック開催日程
さらに、東京オリンピックが終了後はパラリンピックが開催されます。パラリンピックの規模は本大会に比べれば半分以下になりますが、今回は市場最多の4,400人の選手を予定しており、巨大イベントであることに変わりはありません。
- 東京パラリンピック開会式→8月25日(火)/新国立競技場
- 東京パラリンピック閉会式→9月6日(日)/新国立競技場
以上の13日間に渡って開催されます。
東京オリンピックとパラリンピックの約20日間にて得られる経済効果は、直接的な効果だけでも約2兆円、その後見込まれるレガシー効果にて12兆円といわれており、その他にも波及的な経済効果として全国で32兆円が見込まれています。
参照:オリンピック・パラリンピック準備局/東京 2020 大会開催に伴う経済波及効果
※東京オリンピックに関する詳しい情報はこちらから
ホテルの数は足りない?
2020年の東京オリンピックを控え、2020年3月時点での東京都福祉保険局の統計では東京都内の宿泊施設数と客室数は以下のように公表されています。
- 東京都内の宿泊施設の総数→3010件
- ホテル客室数→102,256件
- 旅館客室数→52,613件
- 簡易宿所→1,058件
さらに、東京都周辺の民泊事業者の数は2020年7月の時点で6,438件となっています。
みずほ総合研究所によると2020年には東京都内の宿泊施設数はトータルで約17万室に増えるとの予想です。そこで過去のオリンピック開催地での宿泊者数の動向を参考に試算したところ、おそらく2020年8月には宿泊施設の需要はピークに達し、最大で約1万4千室が不足するとの見解です。
客室 1万4千室が不足!
オリンピック開催期間中は、ピーク時の8月には1万4千室の不足が予想されており、すでにオリンピック組織委員会は国内外の競技関係者向けに競技場周辺のホテル約4万6千室を仮押さえしている状態だとのことです。
都内での現時点での宿泊施設の調査
大手ホテル業界の予約状況
日経新聞の調査によると、ホテルオークラ東京は、全客室を国際オリンピック委員会関係者向けへの提供がきまっており、一般の予約は受け付けていない状況です。
帝国ホテル東京もオリンピック関連の賓客の受け入れに備えており、一般向けに客室の提供ができかどうかはまだ明確にできないとのこと。
競技会場が集中する臨海部エリアにおいても予約状況はかなり厳しいのが現状です。東京ベイの有明ワシントンホテルでは全830室の予定が決まっており、問い合わせは100件以上きているが、いずれも断っている状態だとのことです。
大手旅行関連会社が仮予約に急ぐ
旅行会社はオリンピック時のツアー向けに、一定数の部屋数を確保しておく必要があり、仮予約に急ぐ動きが見られています。具体的なツアーの需要は予想できない面もあるようですが、少なくともツアーの価格は通常の繁忙期の2.5倍から3倍程度になるとの予想です。
客室クルーズが停泊予定
客室数不足を補う解決策とし、現在準備されているの客室クルーズの運営です。東京ベイ、横浜市、川崎市にてクルーズ船の停泊が予定されています。
都心部周辺の市区町村も宿泊サービスへ参入
東京都心部では外国人観光客が多い渋谷区、新宿区を始め客室数が不足することによって、観光客が宿泊場所を求めて周辺の市区町村部へも流入してくるとの見解もあります。
そこで、新幹線で1時間以内の距離を目安に、都心部周辺の各自治体によって観光宿泊事業に参入する動きもみられています。
東京都内の民泊事業に期待も
そして、客室不足を解消する方法として最も期待されているのが民泊です。本来は、数年前から予想されていた客室不足を補う役割として民泊が注目されていましたが、関東地区にて規制緩和を行っているのは現時点では千葉市と大田区のみです。
思惑がはずれたという意見も少なくなく、今後の自治体の緊急の対応策としての展開が期待されています。同時に、営業日数180日の規制範囲内で可能な、オリンピック時を狙った民泊活用を検討するオーナーも増えています。
宿泊料金は高騰している
東京オリンピックに向けて、すでに宿泊施設の予約争奪戦が始まっており、都内のホテルの予約状況は非常に厳しい状態にあるといえます。
ホテルによって、予約受付け可能となる期間が異なりますが、すでに予約可能なホテルにおいては、2020年7月以降の宿泊料金は驚異的に高騰しているのです。
ネットやテレビでも「ホテルの予約が取れない」ことが話題になっています。
オリンピック時の宿泊料金の相場は、通常の宿泊料金の4倍~6倍ほど高騰することが予想されています。
関東地区のオーナー必見!
そこで、オリンピック時の客室不足による宿泊料金の一時的な高騰は、空室に悩む物件のオーナーにとって、朗報以外の何ものでもありません。
空室の民泊活用にて効率よく収益をあげるチャンスなのです。
民泊でも価格が高騰!
民泊でも宿泊料金の高騰は始まっています。大会期間中の、都心部における民泊の平均価格は1部屋10万円/1泊です!
関東エリアでは民泊新法による規制に加え、自治体による規制強化がなされた地域もあり、民泊事業が予定どおりに普及しきれていないのが現状です。
民泊は利益を得る手段とした際に、新法による規制にて営業日数が180日以内となるのが、多くの不動産投資家にとって思い留まる理由になっていました。
すでに物件があるならリスクは少ない!
民泊用の収益物件を購入して民泊を始めるとすれば、規制上のリスクがあるだけでなく、それなりに高額な費用もかかってしまいます。単にオリンピック時の価格高騰を狙って、安易な思いつきで民泊を始めるにはリスクは大きいといえます。
民泊の認可をとるために、多少の手間や時間がかかる点を除けば、たまたま空いている部屋を民泊に活用するリスクはほとんどありません。
短期でも民泊活用するメリットは大きい!
手持ちの部屋を民泊に利用する方の中には、わずか初期費用2,3万円程度で始める方もいます。
とくに、空室に悩むオーナーであれば、短期間でも民泊活用にて効率よく収益が得られれば助かります。立地環境や部屋の状態にもよるでしょうが、1部屋1泊5万円の宿泊料が得られるとすれば、10日間~2週間程度活用するだけでも相当な金額が期待できます。
オリンピックの時期だけでも、空室を民泊活用するメリットは大きいのです!
オリンピックで宿泊の対象エリアは
そこで、気になるのがオリンピック時の宿泊先として対象となるエリアです。
ひとことで東京オリンピックといっても、東京都以外の競技会場もあり広範囲に渡るため一概にはいえませんが、とくに「東京ベイエリア」と「ヘリテッジゾーン」に会場が集中しています。
東京ベイエリア
東京ベイエリアは、有明、お台場、夢の島、海の森など東京湾に面したエリア一帯をいいます。東京ベイエリアに属する区域は、江東区、港区、品川区になります。
ヘリテッジゾーン
ヘリテッジゾーンは、新国立競技場や東京体育館、日本武道館などが立地する渋谷区、新宿区、千代田区、港区、中央区、台東区、墨田区あたりをいいます。
オリンピック会場の地図
東京オリンピックにおける各競技・イベントの会場の詳細が、東京オリンピック公式サイトから確認することができます。
人気のある競技がある会場や会場が集積しているエリア、会場までの交通が便利なエリアでは宿泊料金が高騰しやすいといえます。
※詳しくは東京オリンピック公式サイトのオリンピック会場一覧から調べることが可能です。
対象のエリアは1都3県が含まれる
また、東京都以外では千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県、静岡県、宮城県、福島県、北海道の会場が利用されます。
ですので、東京周辺だけにこだわらなくともオリンピックの宿泊客を狙うことは可能です。
オリンピックの主要対象エリアとして見なされるのは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県です。少しでも宿泊客が確保できる可能性があれば、物件のオーナーの皆様には、ぜひ民泊の活用をおすすめします。
オリンピック短期民泊のメリット
それでは、物件のオーナーの皆様に向けてオリンピック短期民泊のメリットをまとめてみましょう。
宿泊料が高騰する
オリンピック時に民泊活用をする一番のメリットは宿泊料金が通常の数倍に高騰することです。
先述のように、競技会場に便利な立地であればそれだけ高い宿泊料金を課金することが可能です。客室の不足が見込まれている以上、高い宿泊料金を払ってでも東京周辺に滞在したい人が世界中にたくさんいるのです。
予約率が非常に高い
通常の民泊経営であれば、閑散期もありますし、地域や物件の条件によってはなかなか予約が取れないケースも考えられます。しかし、オリンピック時の民泊経営であれば、地域にもよりますが関東エリアであればほぼ確実に予約を受けることができるでしょう。
とくに東京都23区内であれば、もう予約が取れることは約束されたも同然です。
空室を活用することが可能
賃貸経営をするオーナーが、民泊に参入するケースは実は非常に増えてきています。
なぜなら、ニーズを上回る賃貸物件の数によって、空室問題を抱える物件のオーナーは少なくありません。減少する賃貸ニーズに反比例して増えているのが外国人観光客による宿泊ニーズです。オリンピック開催期間中は宿泊ニーズがピークに達することで効率のいい空室の運用が可能となります。
部屋があれば誰でも始められる
物件のオーナーにとって民泊がおすすめな理由は、空いている部屋さえあれば、民泊は誰でも始めることができる点にあります。ホテルや旅館のようにプロの人材や専用の設備なども必要ありません。人が生活する上で不便がない状態であれば、いつでも宿泊客を受けることができます。
ただ、民泊の認可を取得し、宿泊施設として寝具などの準備が必要になります。
賃貸と併用して継続することも可能
また、短期民泊としてではなく、今後も賃貸と併用して民泊経営を行っていくことも可能です。
最近では、長期賃貸と短期賃貸・民泊を併用して空室リスクを避けるオーナーが増えてきています。民泊新法では営業日数が180日以内との規制があるため、今後旅館業の許可をとる方法もあります。
デメリットもある
ただし、民泊経営におけるデメリットもありますので注意しておきましょう。
賃貸よりもトラブルが発生しやすいリスク
民泊は、国内外の旅行者が対象となります。近隣住民にとって、不特定多数の旅行者が頻繁に出入りすることを不安に不安要素となる場合も多々あるようです。騒音、ゴミ出しマナー、共用部でのマナーから近隣住民とのトラブルが発生する可能性は賃貸の場合よりも高くなります
すでに賃貸契約を結んでいるテナントへの挨拶や相談、確認が欠かせません。
ゲストによる損害も考慮しておきたい
また、民泊経営の場合には賃貸経営ではなく宿泊業になりますので保険の扱いが異なります。ゲストが部屋が家具に損害を与えたとしても従来の火災保険では補償することができません。
ゲストによる損害を考慮して民泊専用の保険に加入しておくことが必須となります。
認可の取得や管理に手間がかかる
そして、民泊の大きなデメリットとは民泊の認可を取るのに手間や時間がかかる点にあります。オリンピックの開催期間はパラリンピックと合わせても20日程度です。
その短期間のために、民泊の認可取得にかかる手間や時間が割に合わないと感じる方もいるかもしれません。宿泊料の見込み額や、その後の民泊計画などに応じて判断することが大切です。
衛生や宿泊者の管理が義務づけられている
もう1つの大きなデメリットは、民泊経営は宿泊業の1つですから、衛生管理や宿泊者名簿の管理などが義務付けられていることです。
まず、宿泊客が入れ替わるたびに清掃や備品を整える作業が必要となります。さらにカギの受け渡し、宿泊者名簿の作成、問い合わせ・苦情にも対応しなければなりません。
※民泊のリスクや問題点に関する記事はこちら
※民泊新法についてまずは学んでおきましょう。民泊新法をわかりやすく解説した記事がこちらからご覧になれます。
まとめ
オリンピック終了後にはインバウンド市場は大幅に激減する、といった声も聞かれていることから、民泊が気になりつつも見送っていた物件のオーナーは意外と多いのではないでしょうか。
これまでの各国の事例を見る限りでは、前年比マイナスとなったケースはオーストラリアと中国の2か国にとどまり、マイナスの要因としてはITバブルの崩壊とリーマンショックによる景気後退が主な要因だったとの見解により、翌年に外国人観光客が激減する可能性は低いといわれています。
おそらくオリンピック終了後も外国人観光客からの宿泊需要が期待できるでしょう。
国内では、深刻な人口減少による経済への影響が深く懸念されいる中、不動産市場は今後大きく変動していくことが予想されます。従来の賃貸経営だけでは、思ったように収益が得られない可能性が高くなるでしょう。
しかし、賃貸ニーズが低下すると同時に一方では、宿泊施設、レンタルスペース、シェアハウス、コミュニティスペースなどに対する新たな市場が成長し始めています。
今後は多角的な視野で安全策を講じておくことが、不動産投資では欠かせない要素になるといえるのではないでしょうか。