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副業を始めるにあたって不動産投資を考えているサラリーマンの方も多くおられると思いますが、不動産投資を始める際にネックとなるのが「高額な資金」の準備。
物件をすぐに購入できるほどの余裕が無く、同時に普段の生活もしっかりと維持していかないとならない状況である方も多いでしょう。
その点を突破するため「不動産投資ローン」が金融機関により広く展開されており、これを活用すればすぐにでも不動産投資を始めることができます。
ただ、ローンサービスであるためその借入れ審査や金利、月々の返済など様々な不安が募るものです。
そこで、そういった不安や悩みを解消するため、不動産投資ローンにおけるメリットやデメリット、またローンの返済金利を低く抑える方法、その他基礎知識などについてご説明します。
不動産投資ローンの概要
借入可能な金額
不動産投資ローンは、投資用物件を手に入れる際の資金融資を金融機関から獲得する金融サービスです。
融資金額は、購入しようとする物件の価値や融資を申請する本人の与信状況等にもよります。また頭金なしで融資を受けることも不可能ではありません。
借りることのできる上限金額については、法律で定められたものはありませんが、申請者本人の年収のだいたい5倍~10倍というのが現状です。
また金額自体で言いますと最大で1~2億円ぐらいで、あとは本人の運用状況やローンの返済実績によって変わってきます。
返済金利
不動産投資ローンの返済金利はおよそ2%~4%程度が多いですが、利率は変動や改定されることがあり実際には各金融機関へ直接問い合わせないと判明するものではありません。
金利には利率が固定される「固定金利」方式と、金利見直しが行われる「変動金利」の方式があります。
どちらの方式も選ぶことが可能ですが、一般的には後者の変動金利を勧める金融機関が多い現状です。だいたい半年~1年程度の間隔で金融機関により見直しが行われます。
金融機関と物件の所在地
金融機関の選択については、金利状況も大事ですが、金融機関が物件の所在地を限定している場合があり、日本の広い範囲を手掛ける大手メガバンクや日本政策金融公庫といった公的な金融機関以外では、物件選びは地域要因にも影響されることとなります。
「不動産物件の所在地が限定されている例」(2018年現在)
- オリックス銀行 不動産投資ローン・・・首都圏、近畿圏など
- セゾンの不動産投資ローン・・・首都圏の一部、大阪市・京都市・神戸市の一部など
- 横浜銀行、千葉銀行などの地銀・・・県内周辺エリア(金融機関による)
現在は何を調べるにしてもネット検索を使い地域感覚が薄れがちになってしまいますが、不動産への投資であるため、物理的・空間的な要件が必ず関わってきます。
融資期間
融資期間は、全ての金融機関に当てはまるわけではありませんが、「物件の法定耐用年数 - 築年数」というのが一般的です。
耐用年数は木造なら22年、金属造(厚さ4mm超)なら34年、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC)なら47年などと国税庁により定められています。
そして投資対象の物件が築10年のSRCのものであれば、融資期間は「47年 - 10年」で37年となります。
出典:国税庁(主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備))
なお、融資期間中に中途解約する場合は契約条項により違約金が発生することがあり、十分に検討の上で契約・解約を行う必要があります。
不動産投資ローンのメリット・デメリット
メリット
必要資金の一部のみの支払いで不動産投資を行うことができます。また頭金が必要のないローン制度を採用している金融機関もあることから、初心者でもスタート資金で悩むことなく不動産投資を始めることができます。
ローンの返済状況が良好であれば、銀行側への信頼度も高まり、当初決められた貸出金額よりもさらに多くの融資を受けられる可能性も高まってきます。
また、不動産投資において大切な「経済動向」や「相場状況」といった予測が難しい要因に対して、投資に最適な局面が急に発生した場合でも、その時の手持ちの資金量にかかわらずローン融資を利用することでチャンスを逃さず利益を狙うことができます。
デメリット
不動産投資の事業性
住宅ローンとは異なり、「不動産投資とは事業性のある投資活動」と金融機関が捉えていることから、事業としての収益性や計画性などといった項目にローン審査のポイントが置かれております。
お勤めの方ですと、事業計画の立案や将来に渡る不動産相場の考察などといったものに不慣れであることが多く、金融機関を説得する材料の構築に手間がかかります。
また、確実な成功が保証されていない事業という性質から、ローン審査基準や金利の割合が住宅ローンの場合より厳しめであることも、軽視できない不動産投資ローンのデメリットです。
ダブルローンのプレッシャー
一般的なサラリーマンの方ですと、「住宅ローンと不動産投資ローンの2重のローン」を背負う場合があり、その経済的・精神的プレッシャーが非常に大きな負担になる可能性があります。
運用状況が好ましくない展開となれば、昼間も気が落ち着かず仕事や交友等にも影響し日常生活にも悪影響を及ぼすこととなります。
変動する金利
変動金利の性質上、未来の見直し金利の予測が容易ではなく、売却までの綿密な資金計画を建てることが難しいです。
投資決定前に、融資期間通算の想定平均金利を算出するやり方も考えられますが、初心者であればあるほど当てになる基準を設けるのはたやすいことではありません。
余裕のある時は金利が低いうちに「繰り上げ返済」を行うことなどで有利に運用を進めるようにしましょう。
不動産投資に失敗した後
不動産投資に失敗し、多額の負債を抱えたり債務整理等の法的処理の適用がされますと、各種ローン審査で参照される信用情報に傷がつき、以後クレジットカードの作成や車のローン契約などに支障が出る恐れが発生します。
不動産投資ローンに絡む主なリスク
「金利上昇」
変動金利においては、契約しているローンの返済金利が常に上昇する可能性をはらんでいます。
ただ、後ほどお話しします「ローンの金利を低く抑える方法」にもあるように、常に良好な経営状態、遅れの無い返済等を継続させることで金利上昇を防ぐ(または金利を低下させる)ことができます。
「老朽化・築年数」
通常、物件は築年数を経るごとに資産価値が下がっていきます。長い運用においては、たとえ不動産投資ローンの契約が残っていても、物件の資産価値の低下とともに金利見直しの際に金融機関から金利の上昇を迫られる可能性があります。
「物価・相場・家賃の下落」
上記老朽化や築年数と同じく物件価格を下げるものとなりますが、こちらは不動産相場や経済的な要因といった予測が難しい部類に入ります。そして結果としてやはり金利上昇の可能性を秘めております。
「キャッシュフローが悪化した場合のリスク」
滞納、空室による家賃収入の滞りや、火災、自然災害などその他突発的な要因による多額の臨時出費によって一時的な資金状況の悪化が懸念されます。
その結果、計画的なローン支払いができなくなり返済が遅れ、信用情報に不都合な履歴が記載される可能性や、支払い金利の上昇を金融機関から申し渡される可能性が考えられます。
「初心者としてのリスク」
またこれは不動産投資ローンに限った話ではありませんが、投資全般の初心者の場合、リスクの発生に対する対処法や心構えが十分できていないことから、売却(損切り)や素早い戦略転換といった行動を取ることが困難な傾向にあります。
従って、負債の発生に対しずるずるとアクションを先延ばしにし、金利上昇を抑えることができなくなったり負債額をどんどん増大させてしまうことも考えられます。
融資してくれる金融機関にもリスクがある
スルガ銀行の事件
2018年にスルガ銀行による横暴なローン融資の実態が明るみとなりました。
大雑把な説明になりますが、これはスルガ銀行が回収見込みの悪い物件と事前に分かっていた疑いも指摘されながら、一般の融資希望者に約8%の割高な金利を課し不当に利益を得ていたというものです。
不動産投資の対象となっていたシェアハウスは入居率が40%程でしかなく、ローン融資の審査体制が疑問視されました。
シェアハウスの管理会社においては、オーナー希望者に本物件の都合のいい面ばかりを説明しつつも、管理契約の途中で賃料の減額、さらには完全停止を強行し、最終的にオーナーに多額の負債を押し付けた結果となりました。
ここでは、管理会社のビジネスモデルの脆弱さも非難の的となっていますが、何よりもスルガ銀行のローン審査の実態が甘く、多くの被害者を生み出してしまったことが問題です。
事件からの教訓
従って、物件調査とともに、管理会社の説明や金融機関にも気を払うことが極めて重要となってきます。専門の組織を全面的に信じるのではなく、「自分でものごとを考える」ことが大切です。
また、融資契約成立後においても、今回のように後で大変な目に遭ってしまっては、やはり取り返しのつかないことになります。
不動産相場や金利の変動、物件の劣化具合、近隣の様子、更には取引に関係する各組織の動向などを継続的に注視し、必要に応じて別途行動を起こしながら、不動産投資が円滑に進むよう図っていくことが大切です。
投資の本質を理解することが大切
投資にリスクが付き物であることは常識として心得ておくべきなのですが、スルガ銀行の被害者の場合、一般の会社員などが多く、事件となって世間に取り上げられる段階に至り、訴えを起こすための被害者の会を設立するといった行動をとっております。
被害者とは申しますが、リスクや不確実性との戦いが大前提の投資においては、そもそも投資対象を選ぶ責任が投資家本人に存在しますので、まずはこのことを十分理解し「自己責任」の認識を強く持つことが大事です。
その他の不動産投資における失敗・リスク等を知りたい方は以下の記事もご覧ください。
ローン審査について
ローン審査を受ける前に
物件価格が特に高額なものの場合、価格の3~4割程度は自己資金で賄い、残りの部分を融資審査の対象とした方が無難です。
本ページ冒頭の方で頭金が無くても融資が受けられるとお話ししましたが、ある程度の持ち出しがあった方がその分スタート時からリスクを抑えることができることと、自分が少しでもまとまった資金を集めることが可能な申請者である、といった銀行側への与信アピールにもつながります。
住宅ローンがまだ完済していない場合は、その分が融資額から控除される可能性がります。やはり金融機関としても、個人が住宅ローンと不動産投資ローンを同時に抱える状況に対しては一定の警戒心を抱いてしまうものなのです。
審査の内容
不動産投資ローンの審査については、先ほどデメリットのところでお話ししましたように、「事業としての営みがしっかりなされるかどうか」が重要なポイントです。
「不動産投資ローンの審査項目の例」(物件や事業計画等)
- 築年数
- 物件の価格
- 立地条件
- 利回り
- 用途
- 物件の残存耐用年数
- 将来的な収益の可能性 など
また、申請者本人の審査も当然行われます。以下にその審査項目を挙げてみます。
「不動産投資ローンの審査項目の例」(本人の資産・経済的状況等)
- 年収
- 勤務先
- 資産状況
- 不動産投資の経験
- 他の借入れ状況(住宅ローン、キャッシング、他の不動産投資ローンの有無等)
- 担保(不動産物件、有価証券など)
ローンの金利を低く抑える方法
物件と申請者が良好かどうか
基本的には、物件と申請者本人の属性が健全であれば金利も低く抑えやすい傾向にあります。
物件については各種必要書類がきちんと揃えられているかどうか、また書類に示されている物件内容が資産価値的に好ましい傾向にあるかどうかです。
先ほど上記で取り上げました審査項目をより詳細に見ますと理解しやすくなります。
「金利を低く抑えるのに望ましいポイント例」(物件)
- 物件の築年数が浅い
- 資産価値が高い
- 収益性が高い
- 入居率が高い
- 老朽化が目立たない
- アパートよりマンション(傾向として)
また、申請者の属性に対するポイントは以下の項目などがあります。
- 年収が高いこと
- 勤務先がしっかりとした企業・官公庁などであること
- 各種納税がきちんとされていること
- 本人確認書類・印鑑登録等の準備がなされていること など
返済実績が優れているか
すでに他の不動産投資ローンを利用し健全な返済実績があれば金利を抑えることができるポイントになります。
過去の履歴が良好であれば金融機関としても貸し倒れになるリスクが下がると判断し、融資金や利息の回収も余裕をもって行えると考えるからです。
逆に返済実績が悪い場合は、できるだけお金を貸し出す期間を短く、そして金利を上げて手早く回収した方がリスクを抑えることとなりますので、金利は高くなりがちになってしまいます。
交渉による方法
金融機関の担当者との「交渉」というアクションが金利を下げる力にもなります。
例えば上記の返済実績のアピールも交渉の場で使うことができる材料です。新規契約時だけでなく契約期間中であっても、折を見つけて交渉に臨むのがベストです。
また他の金融機関に、現状より低い金利のローンがあり、借換えをするため金融機関にその手続きへ覗う際も金利交渉のチャンスです。
銀行側も借換えが成立されれば単純な意味で顧客を奪われるものとなりますので、金利を下げるといった対応策を出してくるようになるのです。
ただし、現状の金融機関との解約において違約金が発生する可能性がありますので、違約金による損失と借換えによる効果との差引を事前に計算する必要があります。
まとめ
不動産投資ローンのメリットである資金調達のスピード感に多くの投資希望者が殺到するものでありますが、リスクやデメリットも少なくなく、慎重な心がけが重要です。
不動産投資ローンに関する今回の内容を以下に整理します。
- 不動産投資ローンは賃貸事業を行うものとして物件購入の際に利用されるローン
- 借入れ金額、融資期間、金利、物件所在地などの基本項目をまずは抑える
- 資金が十分に無い場合でも不動産投資が行える
- リスクやデメリットを十分理解し自己責任の元で運用を行う
- ローン審査は「物件の資産的価値・事業収益の見込み」、「本人の資産・信用状況」がポイント
- 金利を下げるコツはローン審査項目の質を向上させることや確実な返済実績に加え交渉も大事
またスルガ銀行の例にもあるように、金融機関や管理会社など関係する専門組織にもメスを入れ、自分の考えを持って万全の備えを構築することが大切です。