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投資信託には、いろいろな種類のファンドがありますが、それぞれの内容は目論見書(もくろみしょ)にて確認することができます。目論見書とは、いわゆるファンドのカタログ、パンフレットのようなもので、その投資信託がどのような投資を行うのかを説明するものになります。
投資信託では、この目論見書はとても重要なものになりますが、投資の初心者にとってわかりづらい内容であることも事実です。目論見書を見ながら当惑してしまう人もいるでしょう。
そこで今回は、投資信託の目論見書の見方を解説するとともに、合わせてファンドの投資状況が確認できる月次報告書や運用レポートの見方にも触れていきたいと思います。
投資信託の目論見書とは
投資信託の目論見書とは、そのファンドの説明書のことで、購入しようとしているファンドの重要事項等を説明した書類のことです。
オンラインでも目論見書は見ることができます。とくに最近はオンラインで投資信託を購入する人も多いので、目論見書の現物をみたことがある人は意外に少ないのかもしれません。
目論見書には「交付目論見書」と「請求目論見書」の2種類があり、普段わたし達が目にするのは「交付目論見書」になります。
運用レポートとは?
投資信託で必要な書類は、目論見書の他には、運用レポート(運用報告書)というものがあります。運用レポートとは、決算を迎えるごとに作成されるファンドのレポートのことです。
投資信託を運用している運用会社が発行する投資家向けの書類の1つになります。
これまでの運用状況や累積リターン、ベンチマークとの比較、組み入れ上位銘柄の記載、今後の運用に関する方針・対策などがまとめられたものです。
発行の間隔は、そのファンドによって異なり、毎月出されるものを月次レポート(月刊報告書)、週1で出されるものを週次レポート(週刊報告書、でも実際に週で出す商品は少ない)といいます。
月次レポートとは
毎月の運用状況が確認できるものを月次レポート(月刊報告書)といいます。運用レポートが月ペースで発行されるもののことをいいます。
よりタイムリーな情報を得ることができ、ファンドの基準価額の値動きや分配金の推移などに加えて、その背景となる市場動向について書かれてあるので、とても勉強になります。
これらは総じて投資信託、そのファンドの詳細がわかる大切なものですので、必ず目を通すようにしましょう。
投資信託で確認すべき書類
投資信託で確認すべき書類とは・・・
- 目論見書
- 運用レポート
- 月次報告書
以上の3つの書類になります。とくに目論見書はそのファンドの基本となる説明書なので重要です。最初は目論見書が簡単に理解できるようになるのが理想的です。
わかりづらい、初め聞く用語が多いかと思いますので、理解できなくとも繰り返し書類を目にすることで用語に馴れていきましょう。
目論見書に慣れてくれば、運用レポートも大まかに読めるようになり、なぜファンドの価額が上がったのか、なぜ下がったのかと理由を探すことができるようになります。
目論見書の見方
それでは、目論見書の見方をわかりやすく解説していきます。
ファンドによって、目論見書の記載方法は若干異なりますが、基本的な流れや内容はほとんど同じです。今回は「関西応援ファンド」を例にして見ていきたいと思います。
現物の資料であっても、オンラインの資料であっても内容は全く同じものになりますので、オンラインでの見方を参考にしたいと思います。
目論見書の確認ポイント
最初から、書いてあることを全部理解しようとするから、わけがわからなくなるのです。重要なことだけポイントを押さえて読むようにすれば、徐々に理解できる範囲が広がっていきます。
わかるとこだけ、最初は読んでいけばいいのです。
まず、初心者が確認すべきポイントは・・・
①何に投資をする投資信託なのか?
誰が投資をするのか、どんな種類の投資信託なのか、など大まかな内容を掴んでいきます。
②リスクとリターンを把握しておく
このファンドのリスクは何なのか、どれくらいのリターンが期待できるのか
③運用状況(価額の動き)はどうなのか?
銘柄にはどんなものがあるのか、どうしてその銘柄なのか、市場の動向はどうなのか
の3点になります。
できれば投資信託用のノートを一冊用意して、時間がある時に色ペンなどで内容をまとめていくようにすれば、わかりやすく楽しく学んでいけると思います。
あるいは、オンラインのワードやドキュメントにグラフなどを挿入しながら、ノートを作っていくのもお勧めです。
何に投資をしているのか?
まずは、そのファンドが何に投資をしているのかを知ることが最も重要だと言えます。あなたの資金がどんな目的でどんな金融商品に使われているのかは最低限知っておきたいことです。賛同できる投資内容なのかを確認しておきましょう。
そして、大切な資金を預けるわけですから、誰が運用しているのか(運用会社やファンドマネージャー)を確認しておくことも大切なことです。
それでは実際に目論見書を見ていきたいと思います。参考資料として、「関西応援ファンド」の目論見書を使いました。
ファンドの紹介
以下の画像は目論見書の表紙にあたる部分になり、簡単なファンド紹介になります。
中央に、ファンド名:関西応援ファンドと書いてあります。
そのすぐ下には追加型投信/国内/株式と投資信託の種類が記載されています。
下の左側に運用会社名(委託会社):野村アセットマネジメントとなっています。表紙を見た時点で、すでにファンド名、ファンドの種類、運用会社のことがわかりましたね。
そして、次のページは表紙の裏側にあたる部分です。
この一番上の表には、商品分類と属性分類と表記されています。商品分類と属性分類は、多数の投資信託のファンドを種類別に体系的に説明したものであり、専門的に分類するとどのような内容のものなのかを表記したものです。このページはあまり深く考える必要はないでしょう。
ファンドの目的・特徴
この目論見書では、1,2ページが最も大切な内容である「ファンドの目的・特徴」になります。ここはしっかりと読みたいところです。
上から順に、ファンド目的、ファンドの特色とあります。このファンドの目的や特徴がこのページで確認できるのです。
「関西応援ファンド」の目的は・・・
「関西応援ファンド」の特色では・・・
それでは、引き続きファンドの目的と特色について確認していきましょう。
「主な投資制限」とは投資をしていく金融商品の配分を示したものです。このファンドでは株式の割合には制限を持たないとあります。ということは、100%株式投資のみになる可能性もあるということです。
さらに、外貨建て資産への投資は10%、そしてデリバティブ商品への投資はヘッジ目的のみとするとあります。
この辺は、最初は何となくわかっていれば大丈夫です。損失を出さないように、他のものにも投資をすることがあるんだな、と思っておいて下さい。
その下の段の「分配の方針」では、決算月が年に1回、9月とあります。決算日には利益がいくら、損益がいくらだったのかを清算する月のことです。分配金はこの清算月に支払われますが、このファンドでは、分配金の支払いは委託会社の判断によるとあります。
損失が出た場合に分配金の支払いをしないことによって、そのファンドのトータルの資産が減少してしまわないように配慮されているということです。
ここまでは、何となく内容が理解できましたでしょうか?ファンドの目的と特色を読むことで、このファンドは何に投資をしていくのかが確認できるのです。
それでは次のポイントを見ていきましょう。
リスクとリターン
3、4、5ページ目には、リスクについての説明があります。このファンドの目論見書ではリスクについて述べるながらリターンのことも解説してあります。
それではリスクとリターンについては3ページ分ありますので、分かる範囲で上から読んでいきましょう。
「投資リスク」のページの最初の段には、「基準価額の変動要因」とあります。これは、ファンドの価格は変動していくので、元本の保証ができないことを提示しています。
つまり、裏を返せばファンドの価格は変動していきますが、ファンドの目的・特徴のページにも書いてあったように、元本(資金)が増えることをもちろん目的にしているということです。
その下の段には「その他の留意店」とあります。とても大切なことが書いてあるので、きちんと読んでおきましょう。
不慮の事故や投資先の倒産などで、損失を出す恐れがあることなどが書いてあります。また、投資している企業の事情によっては利払いが滞る可能性があること、分配金を払うことで、元本割れの可能性があることなどが書いてあります。
ここの部分をまとめると、事情によっては損失を出す可能性があることを理解しておいて下さい、といった内容になります。
では、次の投資リスクのページを読んでみましょう。
「リスクの管理体制」では・・・
このファンドの運用体制を説明しています。委託会社(運用会社)では委員会を設けて、投資状況の分析を評価を行っていることが書いてあります。
次の段の「リスクの定量的比較」を見てみましょう。
左側にあるグラフは、このファンドの価格の推移が表してあります。価格が上がったということは利益が出ているということです。価額が下がっているということは元本が損なわれている可能性が高くなります。また、分配金を再投資した場合には価額は上昇し続けていることが分かります。
次に、「リスクの定量的比較」にある右上のグラフを見てみましょう。このグラフは、国内株式や海外株式、債券などとリスク・リターンの騰落率を比較したものになります。
その下のグラフは、約5年間における利益率の最大値と損失率の最大値が、その他の投資内容と比較してあります。このページをトータル的に見ていくと損失率が低い割には、利益率が高いことがわかります。
それでは、「投資リスク」の最後のページにいきます。
ここに書いてあることは、前のページで比較グラフに使用された、国内株式や外国株式の騰落率の情報をどうやって入手したかが述べてあるだけです。信用できる情報と比較しているのだな、と思っておけば十分です。
以上がリスクとリターンに関する、このファンドの説明になります。利益が出る確立も高いけれど、損失が出る可能性もあることが理解できました。ポイントを押さえて見ていけば以外とシンプルな内容であることがわかるかと思います。
それでは、次のページにいきます。
運用状況を確認する
それでは、最後に運用情報を確認してみましょう。
「運用実績」のページのグラフを1つずつ見ていきたと思います。
グラフ「基準価額・純資産の推移」では、トータルの純資産額がどのように動いているのか、基準価額がどのように動いているのかを確認することができます。
このファンドの場合、純資産が途中から一気に減少しています。その後ほぼ一直線をしばらく保ち、後半ではまた下がっています。しかし、基準価額は上昇傾向にあり、資産額の変動の影響をあまり受けていません。
このようなグラフから推測できることは、
- 途中で大量にこのファンドを売却した人がいた
- 純資産額が急激に下がっていても、基準価額が上昇傾向を保っているということは、ファンドマネージャーの運用スキルが高いと見ることができます。
右側の「分配の推移」では、1年間で250円から50円に下がっています。これを見ると、分配金を減らすことによって、基準価額が上昇傾向を保っているのだとも言えます。
中央のグラフ「主要な資産の状況」には投資先として組み入れた企業が表になっています。この部分にファンドマネージャーの意向が強く現れます。どんな企業を選んでいるのか、しっかりと確認しておきましょう。
その横の表は、業種別の投資比率です。
「主要な資産の状況」で、見られる企業名や業種名は、定期的に組み入れが変更されます。その時の市場の状況によって、最も値上がりが期待できる株式に投資が行われていきます。
一番下のグラフ「年検収益率の推移」では年間の収益率が、2018年に入ってからマイナスになっているのがわかります。やはり、純資産額が大幅に下がってきているのが原因だといえるでしょう。
純資産額が下がってしまうと、トータルで投資できる資金が減少することから、収益率の低下につながってしまいます。しかしながら、基準価額がそれほど影響を受けていないのは、素晴らしいことでもあり、今後の展開の様子を見てみたいところではないでしょうか。
以上、目論見書で押さえるべき、重要なポイントを解説してみました。いかかでしょうか。
手数料・税金について
目論見書のあとのページは、手数料や税金についての説明になります。手数料や税金のことも最初はわかる範囲で確認しておきましょう。
最低限に確認しておくのは・・・
といった項目でしょう。
価額変動の理由を考える
今回は投資信託の目論見書の見方について解説致しました。今後、投資信託を保有していく中で、価額が下がってしまって解約すべきかどうか悩むこともあるかもしれません。
そんな時に運用報告書や月次レポートの情報が非常に役に立つことを、合わせてご紹介しておきたいと思います。
どうして、価額が下がっている(上がっている)のだろうと不安(不思議)に思う時は、ファンドの運用報告書や月次レポートの、「基準価額の主な変動要因」にどういうことが書いてあるのかを読んでみましょう。
ファンドマネージャーが「下がった要因」「上がった要因」について独自の視点で解説をしています。そこに書いてあることを参考に、今後もそのファンドを保有すべきか、売却すべきかの目安にすることができます。
自分自身でも、目論見書、運用報告書、月次レポートを読みながら、日経新聞や投資先の企業のHP、各種投資メディアの情報を調べるようにしましょう。
まとめ
投資信託を始める人は投資自体が未経験、全くの初心者である場合が多いと思います。初めて聞くような難しい金融用語が羅列されていても戸惑うばかりです。
しかし、少しづつでも勉強を続けることで、自然とそれらの用語が理解できるようになります。勉強を続けるコツは、わからなくても、とりあえず文章や用語を視界に入れていくことです。わかろうと思うから嫌になってくるのです。
わからなくてもいいので、最初に目論見書を読破することから始めてみましょう。目論見書が読めるようになったら、運用報告書、月次レポートと部分的にでも読んでみて下さい。
プロの運用方法から、今後の投資活動に役立つ様々な事が学べるのが、投資信託の大きなメリットの1つなのです。この機会を最大限に活かしていきたいですね。