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業種別株価指数とは、東証一部銘柄を業界ごとに分類した指数です。 東京証券取引所では33業種、日本経済新聞社では36業種に分けています。業種別株価の動向とTOPIXに対してパフォーマンスはどうなのかということを調べることにより、相場の流れを把握することができます。
この記事では、業種別株価指数の紹介と、実際に時価総額上位5業種がどのような値動きをしているのかを確認していきます。
業種別株価指数とは
業種別株価指数は、上場企業を業種ごとに分類して算出する株価指数のことをいいます 。どの業種に資金が流れているのか、どの業種が下落しているのかといったことを把握するのに役立ちます。株式市場全体を表す指数としては、日経平均株価やTOPIXなどがありますが、それらをさらに詳しく業種ごとに分析できる株価指数です。
個別株を買う場合でも、まず日経平均株価やTOPIXなど全体の指数を分析して、業種別株価指数を分析。最終的に個別株を分析すると勝てる確率を上げることができます。
業種別株価指数が算出されているのは東証一部銘柄だけです。ただし、東証2部指数やマザーズ、ジャスダックに上場している銘柄でも、東証一部の業種別株価指数で同じ業種だった場合は売買の参考になります。
業種別株価指数は2種類
業種別株価指数は次の2種類があります。
- 東証業種別株価指数
- 業種別日経平均
「東証業種別株価指数」は東京証券取引所が東証一部上場企業を33業種に分けて算出しています。
東証株価指数 TOPIX を補完する株価指数で、33業種に分類した時価総額加重方式により算出されます。33業種は以下のように分類されています。
一方、「業種別日経平均」は日本経済新聞社が日経500種平均株価の採用銘柄を36業種に分けて算出しています。
日経500種平均株価とは 、東京証券取引所1部に上場する500銘柄を対象に算出している株価指数です。知名度の高い日経平均株価は225銘柄を対象にしているので、さらに対象銘柄を500銘柄に拡大することにより、市場の実態を表しています。
業界ごとの特徴と株価推移
業種ごとの上場会社数と時価総額は以下のようになります(東証業種別株価指数)
(百万円)
業種 | 上場会社数 | 時価総額 |
市 場 第 一 部 | 2,104 | 675,752,161 |
水産・農林業 | 7 | 777,030 |
鉱業 | 6 | 2,353,599 |
建設業 | 100 | 17,737,386 |
食料品 | 81 | 26,857,418 |
繊維製品 | 41 | 3,963,245 |
パルプ・紙 | 12 | 1,981,078 |
化学 | 146 | 48,637,688 |
医薬品 | 39 | 36,292,761 |
石油・石炭製品 | 10 | 5,681,418 |
ゴム製品 | 11 | 4,963,614 |
ガラス・土石製品 | 33 | 6,208,712 |
鉄鋼 | 32 | 6,968,649 |
非鉄金属 | 24 | 4,896,089 |
金属製品 | 41 | 4,204,454 |
機械 | 139 | 32,311,237 |
電気機器 | 160 | 81,085,550 |
輸送用機器 | 62 | 60,570,589 |
精密機器 | 32 | 11,196,536 |
その他製品 | 53 | 13,671,613 |
電気・ガス業 | 22 | 10,354,508 |
陸運業 | 43 | 26,584,692 |
海運業 | 8 | 1,152,948 |
空運業 | 3 | 2,829,487 |
倉庫・運輸関連業 | 23 | 1,387,468 |
情報・通信業 | 197 | 68,632,569 |
卸売業 | 175 | 31,656,771 |
小売業 | 196 | 40,790,352 |
銀行業 | 82 | 42,113,184 |
証券、商品先物取引業 | 23 | 5,435,991 |
保険業 | 10 | 15,362,074 |
その他金融業 | 26 | 8,664,621 |
不動産業 | 69 | 14,658,028 |
サービス業 | 198 | 35,770,775 |
時価総額上位業種は
電気機器 | 160 | 81,085,550 |
情報・通信業 | 197 | 68,632,569 |
輸送用機器 | 62 | 60,570,589 |
化学 | 146 | 48,637,688 |
銀行業 | 82 | 42,113,184 |
小売業 | 196 | 40,790,352 |
医薬品 | 39 | 36,292,761 |
サービス業 | 198 | 35,770,775 |
機械 | 139 | 32,311,237 |
卸売業 | 175 | 31,656,771 |
となっています。時価総額が高い業種というのはTOPIX(東証株価指数)に影響を与える業種です。
今回はTOPIXに影響度の高い時価総額上位業種を分析していきます。
電気機器の特徴
1位の電気機器は一部市場の時価総額の12%を占めています。上場企業数は160社で第5位です。電気機器セクターは、電気をエネルギー源として動作する、様々な機器やその部品を製造・販売する企業が中心です。
電気機器セクターの特徴は「多様性」です。例えば、 売上高がソニーよりも大きい多い日立は、電気にとどまらず、素材・社会インフラ等を幅広く事業を展開しています。またソニーに関しても、ゲーム・映画・金融等など幅広く事業を展開しています。ですから、単純に電気という枠で捉えられないほど多くの事業を展開している企業が多いのです。
電気機器の時価総額上位銘柄は以下のようになっています。(2018年10月現在 単位:億円)
①ソニー 79,470
②キーエンス 70,773
③キャノン 46,628
④日本電産 43,916
⑤ファナック 39,685
株価推移を見てみましょう。
電気機器(週足チャート)
出典:四季報オンライン
2015年からの週足チャートを見ていきます。2016年2月に安値をつけたものの、そこから上昇トレンドに入っていて、今年2018年の1月に2849.09ポイントの高値をつけています。ただし、今年はそこが高値のピークで、軟調な展開が続いています。電気機器メーカーは外需産業が多いので、為替の影響を多く受ける企業が多くなります。また、NYダウなど、海外指数の動向に左右されます。
それでは、TOPIX(東証株価指数)と比較して電気機器業種が相対的にどのような動きをしているかを見てみましょう。(2015年10月~ 赤:TOPIX 緑:電気機器)
出典:四季報オンライン
対TOPIXではアウトパフォーム(TOPIXよりも強いこと)しているのがわかります。今年は軟調な展開であるものの、為替が円安傾向にあることや、NYダウなど海外市場が堅調なことから外需産業が多い電気機器は、東証1部全体を表す指数であるTOPIXよりも強いことがわかります。
次は、時価総額2位の情報・通信業です。
情報・通信業の特徴
情報・通信業は東証一部市場の時価総額の約10%を占めています。上場企業数は197社で、サービス業に続いて第2位です。NTT や NTT ドコモ ・KDDI・ ソフトバンクグループなど通信キャリアが上位を独占しています。それ以外にもシステム開発や放送・ゲーム開発などもこのセクターに属していて、多彩な顔ぶれを持つセクターになっています。
情報・通信業の時価総額上位は次のようになっています(2018年10月現在 単位:億円)
①NTTドコモ 110,121
②ソフトバンクG 109,801
③NTT 95,354
④KDDI 74,238
⑤NTTデータ 21,065
それでは株価を見てみましょう
出典:四季報オンライン
ここ3年間のチャートを見てみると順調に右肩上がりで上昇してきているのがわかります。情報通信業は内需産業です。特に携帯キャリアの影響力が大きい業種です。 また NTT グループ (NTT・ NTT ドコモ・ NTT データ)の三社が上位を独占しています。それではTOPIXとの比較チャートを見てみましょう。(2015年10月~ 緑:情報・通信業 赤:TOPIX)
出典:四季報オンライン
情報・通信業もTOPIXをアウトパフォーム(TOPIXよりも強い)しています。携帯各社は、通信は新プラン影響でわずかに減収となっていますが、非通信事業では決済や金融などで新規に収益源を確保しています。外部要因にも影響を受けることが少なく、堅調な試合が続いています。
輸送用機器の特徴
業種別時価総額第3位は輸送用機器です。時価総額は東証一部の約9%。上場企業数は62社で12位です。輸送用機器は、自動車や二輪車、船舶、自転車、電車などを人や物資を運ぶ乗り物を製造販売している企業です。もしくは、それらの企業に部品を供給している企業から形成されています。ただし輸送用機器の主役は何と言っても「自動車」です。 特にトップのトヨタ自動車は、輸送用機器のみならず東証全体においても時価総額がダントツでトップの企業です。 2位のNTT ドコモや3位のソフトバンクグル―プと比較しても2倍近くの時価総額を誇ります。
それでは株価を見てみましょう。
出典:四季報オンライン
輸送用機器は2018年1月19日の3443.98ポイントから下落傾向が続いています。直近では年初来安値を更新してしまいました。時価総額トップのトヨタも同時期に年初来安値を更新しています。トヨタの動向は東証株価指数全体にも影響を受けます。このまま安値を更新し続けるようだと警戒が必要です。
輸送用機器とTOPIXとの比較です(2015年10月~ 緑:情報・通信業 赤:TOPIX)
出典:四季報オンライン
ここ3年ほどの比較チャートでは輸送用機器はTOPIXをアンダーパフォーム(TOPIXより弱い)しています。特に自動車業界は今年に入り、米国の保護主義的な動きでさえない動きが続いています。
第4位の「化学」について見ていきます。
化学の特徴
「化学」は東証1部時価総額の7%ほどの割合です。上場企業数は146社で第6位。時価総額上位銘柄は次のようになっています(2018年10月現在 単位:億円)
①花王(4452) 41,681
②信越化学 (4063) 39,220
③資生堂(4911) 30,332
④富士フィルム(4901) 24,743
⑤旭化成 (3407) 21,572
それでは株価を見てみましょう。
出典:四季報オンライン
時価総額トップの花王と第3位の資生堂。この2社は化粧品メーカーとして近年、インバウンド(訪日外国人)需要によって株価は大幅に上昇しました。ただし、今年はインバウンド需要も一服感があり保ち合い相場となっています。
次にTOPIXとの比較チャートを確認します(緑:化学 赤:TOPIX)
出典:四季報オンライン
ここ3年間では、化学はTOPIXを大きく上回る状態になっています。昨年までのインバウンド特需の影響が大きかったことがわかります。
最後に東証一部時価総額第5位の「銀行業」を見ていきましょう。
銀行業の特徴
銀行業は東証一部時価総額の6%を占めています。上場企業数は82社で、第9位です。時価総額上位企業は次のようになっています(2018年10月現在 単位:億円)
①三菱UFJFG(8306) 94,802
②三井住友FG(8316) 62,077
③ゆうちょ銀行(7182)59,355
④みずほFG(8411) 49,058
⑤三井住友THLD(8309) 17,507 (信託銀行)
メガバンク3行(三菱UFJFG,三井住友FG,みずほFG)が上位を占めています。日本銀行による低金利政策により、なかなか収益が改善しない状況が続いています。特に地方銀行は数が多いと言われています。このまま収益悪化が続けば、業界再編は避けられないでしょう。それでは株価を見ていきます。
出典:四季報オンライン
今年の銀行業の株価は冴えない展開になっています。年初来安値は7月6日の166.69ポイント。まだ安値水準は割っていないものの、下落トレンドは継続しています。
それではTOPIXとの比較チャートを見てみましょう(緑:銀行業 赤:TOPIX)
出典:四季報オンライン
銀行業はTOPIX に対してアンダーパフォームしています。日本銀行(日銀)による低金利政策が影響していて、なかなか株価は上がらない状態です。 銀行株に大きな影響を与えるのは、やはり金利です。金利が上がると銀行の株価は上がり、金利が下がると株価が下がります。この超低金利状態がいつまで続くかというのが注目されます。
時価総額上位5業種とTOPIXとの比較(過去3年)をまとめてみると
①電気機器 アウトパフォーム
②情報・通信業 アウトパフォーム
③輸送用機器 アンダーパフォーム
④化学 アウトパフォーム
⑤銀行業 アンダーパフォーム
となりました。輸送用機器と銀行業がTOPIXのパフォーマンスを下回っています。
業種別株価指数を個別株取引に役立てる
今回は時価総額上位5銘柄を見てきましたが、気になる銘柄があったら、まず業種を調べましょう。東証一部銘柄であれば、業種別株価指数で調べられますので、その業種の株価をチェックします。東証二部、マザーズ、ジャスダックの場合は、どの業界に属しているかを調べ、東証1部の業種別株価指数をチェックしてみましょう。
四季報をチェックすると業界も載っているので、参考にしてみてください。
個別株を売買する場合は、東証一部銘柄なら日経平均株価やTOPIX、東証二部なら東証二部指数、マザーズジャスダックならそれぞれの指数があるので確認しましょう。
まずは、全体の株価指数をチェック。そして、属している業種を調べ、その業種の株価をチェックします。最後に、個別株の株価を確認するようにします。
このように3段階に分けてチェックすることによって、より全体の流れを把握しながら個別株の売買を行うことができるのです。
まとめ
今回の記事では、業種別株価指数にはどのような種類があるのか、そして業種ごとの上場会社数と時価総額を見てきました。また、TOPIX とのパフォーマンスを比較。直近3年間の上位5業種でTOPIXを上回っている業種は3業種、下回っている業種は2業種となりました。このように、業種間においても強弱はあるので、個別株を売買する際は属している業種がどのような状況なのかということも合わせて確認するようにしましょう。