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地震王国日本。
日本に住んでいる限り、地震からは逃げられません。テレビを見ている時に地震速報が流れると、「また地震か」と不安が募る一方です。さらにこの不安に追い打ちをかけるように、都心で起こると言われている首都圏直下型大地震、そして30年以内に起こると言われている近畿・東海エリアを中心に被害が大きくなると予想される南海トラフ地震という言葉をメディアを通して耳にした事があるでしょう。
首都圏直下型地震、南海トラフ地震ともに本当に起こったとすると、古い建物は壊滅したり、津波で流されたりと今住んでいる家・家財を一瞬で失う恐れがあります。
地震保険は、こういった地震が原因で建物や家財が損害を被った時に、保険金が支払われるしくみとなっています。しかし、地震保険に加入して一体どれぐらい補償されるのか、本当に加入する価値があるかどうかは分からないですよね?
今回は地震保険はどういう保険なのか、加入する必要性があるのかどうかなどを、分かりやすく徹底的に解説していきます。
1.地震保険とは
皆さん、地震保険という保険はご存知でしょうか?
地震保険は、1966年に作られた保険制度です。地震保険は現在も存在している損害保険の1つですが、実は地震保険単体では加入する事ができません。地震保険に加入したいのであればまずは、火災保険に加入する必要があります。
そして地震によって損害を受けた建物や家財に対して、一定の保険金が支払われるのが地震保険の特徴の1つといえます。
2.地震保険料ってどれぐらいかかるの?
できれば、安く済むなら済ませたい保険料の支払い。地震保険料ってどれぐらいかかるのか皆さんご存知でしょうか?次は地震保険料について解説します。
地震保険料は地域や建物の構造によって異なる
地震保険料は、地域や建物の構造によって異なります。財務省のHP に地域別の地震保険料の記載がありますが、本当に地域によって地震保険料にバラつきがあります。地震保険料が高い地域として、東京都・千葉県・神奈川県の関東主要エリア、そして静岡県が挙げられます。一方地震保険料が安い地域は、九州エリアとなっています。
建物の構造としては、木造が1番地震保険料が高くなってしまいます。RC 造や鉄骨造に比べると、耐火性・耐震性ともに劣ってしまう点が、地震保険料が高くなる原因になります。
建物の種類によって地震保険料が割引される
実は、地震保険料は建物の種類によって割引がある、家計に優しい一面があります。一体どういう建物であれば地震保険料の割引があるのでしょうか。
建築年割引
購入した建物が、昭和56年6月1日以降に建てられた場合は、一律10%の割引があります。新しい建物は、地震保険料が安くなるということですね。
耐震等級割引
国土交通省が定めている耐震等級を満たしている建物に対して割引があります。
- 等級1級→10%の割引
- 等級2級→30%の割引
- 等級3級→50%の割引
等級が上がれば上がるほど、地震に強く、地震が起きても被害を受けにくいように建築されているため、割引率が高くなります。
免震建築物割引
免震建築物割引は、国土交通省ではなく国が定めている免震建物の対して割引があります。割引率は一律50%の割引となります。
耐震診断割引
耐震診断割引は、地方公共団体に耐震診断、もしくは耐震改修を受けて基準を満たしていると判断されるとその建物に対して割引があります。割引率は一律10%の割引となります。
地震保険料はまとめて払う方がお得!
地震保険料は毎月一定金額を支払う方法ももちろん可能ですが、1年分・5年分とまとめて一時払いで支払うほうが、保険料が安くなります。
ただ、1年分・5年分とまとめて保険料を支払うとなると、5年分では20万円ほどの支払額になるため、まとめて支払って保険料を安くしたい場合は、前もって資金を用意しておいた方が良いでしょう。
地震保険料は3段階見直しがある
地震保険料って下がったり上がったりするのかどうか、これは非常に気になるポイントですよね。地震保険料は3回見直されるようになっています。
1回目の見直し(改定)は、2017年1月に行われました。そして2回目の見直し(改定)が、2019年1月に行われ、2019年1月の見直し(改定)では、全国平均で3.8%の保険料率が上がる事が決定しています。
保険料が上がる都道府県があれば、保険料が下がる都道府県もあります。
もし、保険料が上がる都道府県にお住まいの方で地震保険への加入を検討しているのであれば、2018年12月までに加入する事をおススメします。そして地震保険の契約期間は、長期契約(5年)にした方が、割引もあるので節約になります。
一方保険料が下がる都道府県にお住まいの方は、3回目の保険料の改定で上がる可能性があるので、地震保険の契約期間は長期契約ではなく短期契約(1年)にした方が、おススメです。
3.地震保険ってどこまで補償されるの?
実際に地震保険に加入したけど、一体どこまで補償してくれるのか不安ですよね?次は地震保険の補償内容について解説します。
地震保険は地震だけではなく、津波や噴火も補償対象となる
保険名が「地震」となっているので地震のみが補償対象と思われがちですが、地震に伴う津波や噴火も地震保険の補償対象となります。2011年に発生した東日本大震災では、津波の被害が1番大きかったですよね?この津波の被害にも地震保険は対応しています。
地震保険の補償対象となる建物・家財とは?
地震保険の補償対象となる建物・家財は、実は条件があります。一体どういう建物・家財が補償対象となるのでしょうか。
補償対象となる建物
- 居住用(住む目的)の建物
- 居住用住宅兼店舗(居住用部分のみが補償対象)
※例えば、1階が事務所で2階で居住用となっている場合は、2階部分が補償対象
補償対象となる家財
- 家具や家電製品
- 1個、1組の価格が30万円以内の貴金属類
※自動車や1個、1組の価格が30万円以上の貴金属類が補償対象外となるので注意してください。
4.地震保険の保険金額っていくら?
地震が起きて建物や家財が壊れてしまったら、また使えるようにしたり、最悪新たに購入しないといけないですよね?一体保険金額はいくらまで設定できるのでしょうか。
保険金額の設定には限度がある
震度7の地震が起きて建物が全壊してしまったとしましょう。建物の購入価格が5,000万円だった場合、全壊してしまうと当然立て直す必要があります。購入価格が5,000万円なので地震保険に加入していれば、5,000万円支払われるのかというと残念ながら、保険金は5,000万円ももらえません。
地震保険の保険金額は、セット契約の火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定しなければなりません。さらに上限額の設定もあり、建物が5,000万円、家財が1,000万円が上限額となります。
例えば火災保険の保険金額が5,000万円で契約しているとしましょう。この場合、地震保険は火災保険の30%~50%の範囲内で保険金額を設定しないといけないので、地震保険の保険金額は、1,500万円~2,500万円内で設定するということになります。
地震保険の保険金の支払いは実際の損害額ではない
実は地震保険の保険金の支払いは、実際の損害額が支払われる訳ではありません。被害状況に応じて4つの区分の分けられ、区分によって支払われる保険金が異なってきます。
全損
全損という言葉を聞くと、建物が全壊すると保険金が支払われるというように思いがちですが、実際はいくつか定義があります。
①主要構造部(柱・壁・屋根等の建物のメインのもの)の損害が、建物の時価(※)の50%以上である
※建物の時価→建物は時間が経つにつれて、劣化していきます。当初1,000万円の価値があった建物も10年後には、屋根が少し壊れたり、壁がはがれたりと当初の建物のまま維持はできません。建物の時価とは、10年後の建物を査定し、劣化している箇所分を当初の価格から差し引いたりし、今この建物を売るのであればどれぐらいの価値があるのかどうか算出された金額を指します。一般的には、建物の時価は、当初の建物の価格よりも下がる傾向にあります。
②損害(焼失・流失)を受けた建物の床面積が延べ床面積の70%以上である
①もしくは②の条件を満たすと、地震保険の保険金額の全額が支払われる形になります。しかし、限度額が設けられており、限度額は建物の時価となります。
例えば、地震保険の保険金額が1,000万円とします。30年後、大地震が起こり、損害を受けた床面積が延べ床面積の80%を超えました。本来であれば、これは全損扱いになり、地震保険の保険金額の満額、1,000万円が支払われるはずですよね?
しかし、当初2,000万円で購入した建物も30年も経てば、当然ながら劣化しているため建物の評価額は当初の購入金額よりも下がってしまいます。もし、30年後の建物の評価額が800万円と評価された場合、建物の時価が800万円となり、実際に支払われる地震保険の保険金は、800万円となってしまいます。
このように、時間が経てば建物の評価額が下がってしまい、もらえると思っていた保険金よりも少なくなる可能性が高くなるので、頭に入れておくと良いでしょう。
大半損
大半損は全損よりも損害が小さいものが対象となります。
①主要構造部(柱・壁・屋根等の建物のメインのもの)の損害が、建物の時価の40%~50%未満である
②損害(焼失・流失)を受けた建物の床面積が延べ床面積の50%~70%未満である
大半損の損害は、全損の損害がが100%だとすると、60%と設定されています。
小半損
①主要構造部(柱・壁・屋根等の建物のメインのもの)の損害が、建物の時価の20%~40%未満である
②損害(焼失・流失)を受けた建物の床面積が延べ床面積の20%~50%未満である
大半損の損害は、全損の損害がが100%だとすると、30%と設定されています。
一部損
①主要構造部(柱・壁・屋根等の建物のメインのもの)の損害が、建物の時価の3%~20%未満である
②床上浸水もしくは地盤面から45㎝オーバーの浸水である
大半損の損害は、全損の損害がが100%だとすると、5%設定されています。
全損・大半損・小半損とは異なり、一部損は、②の定義が浸水がメインとなっているので注意しましょう。
地震保険の損害区分に注意を!
先ほど地震保険で支払われる保険金は4つの損害区分で決定するとお話ししました。もし、主要構造部の損害が49.5%の場合は、後0.5%で50%なので、全損でいいじゃないかと思いますが、残念ながら損害区分は大半損となってしまいます。
このほんの数%で、損害区分が分かれてしまうので、地震で被害が大きかったから全損でたくさん保険金がもらえると思うってしまうと、いざ査定で損害割合が全損にならず、大半損となってしまうともらえる保険金が少なくなるので、保険金で住宅ローンの返済などにあてるなら、少なめに見積もった方が無難でしょう。
5.家にある家財にも地震保険をかける方がいい?
地震保険の対象となるものは建物ではなく、家にある家財に対しても地震保険をかける事ができます。しかし、家財にまで地震保険をかけるべきかどうか、判断に迷いますよね?次は家財をメインに、家財に地震保険をかけるとどれぐらい保険金が支払われるのかどうかを解説します。
地震保険の補償対象となる家財ってどういうもの?
前述で少しお話させていただきましたが、ここではさらに詳しく説明します。
家具や家電は地震保険の補償対象
日常生活で使用する家具や家電は、地震保険の補償対象となります。
- お茶碗やコップなどの食器陶器類
- テレビや冷蔵庫、エアコンなどの電気器具類
- 箪笥や食器棚などの家具類
- ベッドや枕などの寝具類
特に、テレビや冷蔵庫、洗濯機などが壊れてしまと、これらは日常生活には欠かせないものなのですぐに購入しなければなりません。しかし電気器具類は安価な品物ではないので、一気に壊れてしまうと、多額の資金が必要となってきます。
この時に地震保険で家財に保険をかけていると、損害状況によって支払われる保険金は変わってきますが、支払われる保険金で新たに電気器具類を購入する資金として使う事ができます。
家財の支払われる保険金は、建物同様、4つの区分に分類される
では、実際に地震等が原因で家財が壊れてしまいました。テレビやエアコンが壊れてしまうと、全て買いなおすのに数十万円かかってしまいます。家財を地震保険でかけていた場合、一体いくらまで保険金が支払われるのでしょうか。建物同様、家財も損害に応じて4つの区分に分類されます。
全損
- 家財の時価の80%以上
家財も建物同様、時価の値段によって支払われる保険金が異なります。当然家財も年月が経つと、消耗するので購入した当初よりも価値は下がります。なので、保険金を決定するのに、現状の時価が非常に重要になってきます。
大半損
- 家財の時価の60%以上80%未満
小半損
- 家財の時価の30%以上60%未満
一部損
- 家財の時価の10%以上30%未満
地震保険の家財には注意点がある!
地震が起こっても食器が落ちて割れるぐらいの被害でおさまる事もありえます。
例えば、家にある全ての食器が割れてしまっても、食器の時価総額が10%未満であれば、1円たりとも保険金が支払われません。一部損にも該当しないのです。
たくさん食器が割れて被害が大きく見えてしまいますが、家財の時価総額が10%未満になってしまう可能性も十分にありえるので、もらえない可能性も頭に入れておきましょう。
6.地震保険はどういう人が必要なの?
日本に住んでいる限り、誰にでも起こりえる地震。やはり日本に住んでいる人は、地震保険に加入すべきだと言えます。保険は、実際に被害にあってから加入しようと思っても遅いのです。
「備えあれば患いなし」ということわざがありますが、まさしくその通りで、起こりえるだろう地震に備えて地震保険の加入していれば、万が一地震が起こって建物や家財に被害があっても、保険金が支払われるのです。
7.まとめ
地震保険は今の日本にはかかせない保険になりつつあります。建物や家財は、全壊にならなくても少しの被害で修復するのに数十万円から数千万円と多額の資金が必要となってきます。地震保険に加入していれば、建物や家財の購入価格に満たさなくても、支払われる保険金で、住宅ローンの返済や修繕費等に充当する事ができます。火災保険に入ると同時に、今一度、将来起こりえる地震に備えて、地震保険について見直されてはいかがでしょうか。