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働けなくなった時の保障を考える
「もしも働けなくなったら、どうしたらいい?」
「疾病」によって「怪我」によって「精神疾患」によって等、働けなく理由は様々なですが1つ確かな事は「誰にでも働けなくなるリスクはある」という事です。
働けなくなるほど大きな疾病や怪我を負ってしまうということは同時に大きな医療費や入院費等が掛かってしまうリスクがあります。ただ、それよりも危惧したいのは「収入が無くなってしまう」という事に関してでしょう。
収入が無くなってしまうと今のような生活を続けることが出来るのか?家族を養っていけるのか?等、日々から就業されている方なら一度は考えた事のあるトピックだと言えます。
そのために、存在するのが就業不能保険です。就業不能保険とは、就業不能な状態に陥った際に働けない間の収入を保険金でカバーする事の出来る保険であり、大黒柱と呼ばれるような方に人気の保険になっています。
ただ、同じように考えたいのは「公的保障」と呼ばれる主に国が保障をしてくれるような制度や保険です。就業不能・公的保障のどちらも一長一短あり、働けなくなった際のリスクを考えた時にしっかりと押さえたい部分だと言えるでしょう。
そのため、この記事では主に「働けなくなった問のリスク」というものについて詳しくご紹介していき、「利用できる公的保障」「検討するべき就業不能保険」等についてご紹介していきたいと思います。
まず、始めに働けなくなった時のリスクについて解説していきます。
働けなくなった時のリスクにはどのようなものが考えられる?
就業不能保険の保障や公的保障を受けられる「働けない状態」というのは、主に「疾病・障害により重度の障害を負ってしまった」というような物理的に「体が動かせない」というのが、主な対象です。(一部では精神疾患も認められる)
つまり、公的保障や就業不能保険が必要になるときは、主に「医療機関」のお世話になっている事が多いと言えるでしょう。この事から考えられるリスクを考えていきます。
医療費の負担と収入減
医療機関で何らかの治療を行っているという事は「医療費の負担による支出増」と「治療に際して収入減」というのが考えられます。
もちろん、医療費の負担によって支出が増えるとは言っても先進医療等を受けない限りはそこまで巨額になる事はありません。また、病院によっては分割払いを受け付けている所があります。そのため、医療費の自己負担分が払えないという事はないでしょう。
ただ、注意したいのは就業不能保険や公的保障が対象となるような疾病や怪我で医療費が掛かっているという事は「働くことが出来ない」という状態だと言うことです。
特別なご職業ではない限り、通常働けないとなると労働から得られる収入はゼロに近くなると言えます。医療費により増える支出と収入減、ある程度の貯蓄がないと公的保障や就業不能保険がないと厳しい状態になると言えるでしょう。
その時の生活費はどうする?
もし、就業不能状態になったとしても「生活費」は発生します。光熱費や通信費はもちろんのこと、配偶者やお子さんのいる家庭だとその負担は大きなものになると言えます。
また、見落としがちな出費に「雑費」があります。治療を受けている間の支出に関しては、医療費にのみ焦点を絞ってしまいがちですが、入院しているなら「入院に伴う生活費」通院しているなら「交通費」等の費用が掛かってきます。
このような費用は医療費と比較した時に、それほど大きなものにならないので見落としがちだと言えますが、収入が減っている状態では軽く見れない支出です。
働けなくなった時の公的保障
先程、働けなくなった時のリスクについてご紹介させて頂きました。就業不能保険の必要性を強く感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、場合によっては「公的保障」によって就業不能保険と共に、経済的な負担を軽減出来る可能性もあるので「働けなくなった時に使える公的保障」についてご紹介していきたいと思います。
医療保険制度を活用
疾病や怪我等働けなくなる原因は様々なだと思いますが、一般的に働けなくなるような重い疾病・怪我等にはまずはじめに医療保険制度を活用する事が重要になってくる事が多いです。
原則、日本国民であれば「国民皆保険制度」という制度の対象となり、何らかの公的な医療保険に加入している可能性が高いです。日本では基本的に医療機関にかかる際に「保険証」を提示する事が一般的です。
そのいつも提示している保険証が国民皆保険制度に該当する公的な医療保険のものであり、具体的にはいくつか種類があります。職業や地域によって多少異なりますが、主に以下のようなものに加入しているでしょう。
- 健保組合
(サラリーマンに多く、大企業なら組合健保・中小企業なら協会けんぽが多い) - 共済系の組合
- 国民健康保険
(自営業の人に多い) - 後期高齢者医療制度
(75歳以上は原則この保険に加入している)
このような保険に加入しておけば、高額療養費制度等を利用している事で基本的に高額の医療費は自己負担3割で治療を受ける事が可能です。(収入や年齢によって前後する事があります。)
また、通院等が必要になる場合でも一般的な収入の家庭であれば、月の医療費が8万円を超える場合にそれ以上の医療費を払い戻して貰う事が可能です。
働けなくなった場合は、日々の生活費についてしっかりと公的保障を受ける必要性がありますが、まずはじめに最も大きな費用になる「医療費」を国の制度を理解して、賢く利用しましょう。
傷病手当金を活用する
次にご紹介したい働けなくなった時に、利用したい公的保障は「傷病手当金」です。傷病手当金とは健康保険に加入している方が受ける事の出来る保障です。
3日以上欠勤した場合に4日目から、元の収入の3分の2に当たる金額を最長で1年6カ月に渡って給付を受ける事が出来る制度です。(就業不能という条件をクリアする必要があり)
ただ、健康保険協会・健康保険組合・共済組合から給付される保険金であり、自営業の方が多く加入する「国民健康保険」ではこの制度がありません。つまり、自営業の方で国民健康保険に加入している方は対象外です。
傷病手当金は通常会社にお勤めの方が申請する事の多い制度なので、必要書類を揃えて担当医に「就業不能である」という旨の診断書等を用意してもらう必要があり、多くの場合は会社を通してのやり取りになるでしょう。
その手続きさえ済ましてしまえば、最長で1年6カ月3分の2という金額ではありますが、収入が保障されます。給付が遅れる事の多い就業不能保険とは違い、働けなくなったその月から給付が開始されるというのも、働けなくなった方には大きなメリットだと思います。
ただ、傷病手当金には注意したいデメリットが存在しています。というのも、大きく分けて「保険の審査にマイナスに作用する」「失業保険を受給できない」という2つのデメリットです。
まず、始めに「保険の審査」というのは一般的に医療保険や生命保険と言った保障する対象が身体であった場合に「健康に関するチェック」が行われる事が多いです。
このチェックでは病歴や傷病手当金のような給付を受け取っていたか?というものに関しての質問が存在し、重い疾病で長期間給付を受け取っていたとなると保険加入に際しての審査にマイナスに作用する可能性が高いと言えるでしょう。
そのため、就業不能状態ではあるが数カ月で回復が見込まれる場合、貯蓄等で十分に出費を行っていけるのなら出来るだけ利用しない方が良いかもしれません。
また、傷病手当金の給付を受けている間は「失業保険」の給付を受け取る事が出来ません。退職日から1年以上経過している場合に限って給付を受け取る事が可能ですが、傷病手当金を利用すると長期間失業保険は得られないと理解した方が良いでしょう。
ただ、少なからずデメリットが存在する傷病手当金ですが、給付の速さと金額は利用するに値するものだと言えます。もちろん、状況によって使い分けが必要ですが、基本的に「働けない」という事態になったら検討対象に入れておきましょう。
障害年金
「傷病手当金の1年6カ月を過ぎた場合の公的保障は?」このような疾病・怪我に対応しているのが、障害年金です。障害年金とは公的な年金制度であり、基本的に「障害によって労働に制限が掛かる場合」に支給される年金です。
傷病手当金の1年6カ月を過ぎても公的な保障が必要なケースは、一般的に障害年金を受け取れるような状態になっている事が多いでしょう(長期的に就業不能な状態)。障害年金は以下のような
- 国民年金・厚生年金の加入者であること
- 20歳未満
- 年金制度等に加入していない60歳以上65歳未満の人
- 保険料をしっかりと支払っている事(3分の2以上)
条件をクリアしている必要性があります。障害年金の給付を受けるには、年金制度の障害認定基準に当てはまる必要性があり、障害の度合いを測る等級によってその給付額が異なります。
障害認定基準は細かく要件が設定されており、実際に給付を受け取る際にはしっかりと医療機関にかかる必要がありますが、概要では以下のように等級が分かれています。
- 障害等級1級・・・介護がないと日常生活が困難な状態
- 障害等級2級・・・日常生活においてあまり介護を必要としないが、労働は難しいような状態
- 障害等級3級・・・労働に関して大きな制限を受けてしまう状態
- 障害手当金・・・原因となる傷病が完治しているが、まだ労働に制限を受けてしまう状態
条件が細かすぎてクリアするのが難しいと感じてしまいますが、実際には傷病手当金が終わる1年6カ月も就業不能な状態が続いているのであれば、高確率でどれかの等級に当てはまる可能性があります。
また、もちろんの事ですが障害等級1級が最も給付額が高く、障害手当金が最も給付額が低く設定されています。障害等級1級であれば月に10万円~15万円(性別・年齢等によって異なる)程度の給付が可能になるので、必要に応じて申請しておきましょう。
生活保護を利用する
最後にご紹介したい働けない人のための保険は「生活保護制度」です。一般的に、元々正社員としてお勤めになっていた方が、生活保護を受ける事は珍しいと言えるでしょう。何故なら、そのような方は
- 傷病手当金
- 障害年金
と言ったような制度の対象となる事が多く、生活保護を利用する必要性がないからです。ただ、自営業や非正規雇用の方は上記のような制度の対象とならないケースも少なくありません。就業不能保険にも加入していないという方の最終手段だと言えるでしょう。
なぜ、最終手段かと言うと「貯蓄・資産」があると、生活保護を受けられないからです。細かな条件は役所の人の判断によって分かれる事が少なくありませんが、以下のような条件
- 資産・貯蓄が全く無い
- なんらかの理由によって就業不能(重度の疾病・障害、年齢、精神疾患等)
- 頼れる親族・身内がいない(はじめに身内に頼る事を求められます)
- 様々な収入(年金を含めた)が厚生労働省が決めている最低限の生活費を下回っている
上記したように厳しい条件があり、本当に最後の手段としてしか使えない制度だと言えるでしょう。ただ、本当に生活に困ってしまった時の選択肢として頭の中に留めておくのは、どんな人にも必要だと思います。
就業不能保険と公的保障を比較
先程、働けなくなった時の公的保障についてご紹介させて頂きました。ここで気になるのは「就業不能保険と公的保障の比較」だと言えます。
もちろん併用する事も可能ではありますが、比較する事で違いをしっかりと理解し、賢い使い分けが出来るように両者の理解を深めていきましょう。
就業不能保険と公的保障の違いは?
公的保障と就業不能保険の大きな違いは「強制か?否か?」というポイントだと思います。どちらも保険料を支払う必要性があり、保険事故が発生した際に保険金が降りる仕組みになっていますが、公的保障は強制的な加入になっている事が多いです。
逆に言うと、公的保障は強制的になるほど汎用性が高い保障を提供している(例えば、健康保険なら医療費全般を保障)と言えます。
一方の就業不能保険はどうでしょうか?専門的に「働けない」という状態を保障しており、他のリスクに対応する事が出来ません。強制的ではなく、加入に際しては任意になっています。
ここで、考えられる1つの違いは「就業不能保険に加入しておけば、働けないというリスクを特別に保障する事ができる」という点です。というのも、公的保障ではどうしても不十分な部分が出てきます。
例えば、傷病手当金は即効性が高く働けなくなった時にすぐに申請することが可能ですが、長期的な保障をする事は出来ません。その後も、障害年金が存在していますが、実際の所障害等級1級以外の給付はかなり少ないものだと言えるでしょう。
そのため、公的保障は生活費の補助にはなりますが、他の収入がどうしても必要になってきます。しかし、就業不能保険なら就業不能状態から給付までに「60日~180日」という期間が必要ですが、かなり長期間に渡って保障出来るものが多く、保険金も十分なものになります。
そもそも、目的としているニーズが異なるので比べる事自体がナンセンスかもしれません。ただ、1つしっかりと押さえたいのは「公的保障だけで生活していくのは難しい」という事です。
どのように使い分けしていくのか?
就業不能保険と公的保障は似て非なるものです。そこから重要になるのは「公的保障を賢く使いながら、就業不能保険をどのような保障に設定するのか?」という点だと言えるでしょう。
公的保障は障害の度合いやこれまでの収入等、給付関して「予め決まっているもの」に沿った保障を受ける事しか出来ません。しかし、就業不能保険の場合は月々の保険金を5~10万円という細かい単位で調節する事が可能です。
まとめ
働けなくなった時のリスク
- 医療費は増え、収入が減る
- 治療中の雑費は大きくなりがち
働けなくなった時の公的保障
- 医療保険制度を活用して、自己負担分を減らす
- 傷病手当金を活用して、働けない間の収入をカバーする
- 障害年金に該当する場合は、給付を申請する
- 上記したような制度を利用できず、貯蓄等もない場合は生活保護制度を利用する
就業不能保険と公的保障の比較
- 就業不能保険は任意、公的保障は強制
- 公的保障だけでの生活は難しい
- 自分が受けられる制度を確認して、就業不能保険の保険金を調節する
この記事では働けなくなったリスクというのを中心的に、公的保障や就業不能保険についてご紹介させて頂きました。
働けなくなったリスクの大きさというのは、本当に人それぞれです(家族構成や貯蓄等)。また、利用できる制度も人それぞれなので、もしもという時に賢く制度を利用できるように就業不能保険に加入する・しないに限らずしっかりと押さえておきたいものです。