FXの正しい期待値の求め方|勝てない勝負には手を出さない

「FXはハイリスク」ということをよく耳にしますが、実際には、正しい方法で行えばFXの期待値は非常に高いことが分かっています。たとえば、宝くじやパチンコ、競馬といったギャンブルだけでなく、銀行預金といった安全そうな資産運用よりも、FXの方が期待値は高めです。

期待値は単に「勝てそう」とか、「負けそう」という相場の気配ではありません。そこには、正しい期待値の求め方という計算方法が存在します。

では、正しい期待値はどのようにして計算すれば良いのでしょうか。色々な例を出しながら、できるだけ分かりやすく解説していきましょう。

FXの正しい期待値の求め方・計算方法

FXで勝ちをおさめるためには、まず「期待値」についてしっかりと理解することが大切です。期待値とは、簡単にいえば「勝つ確率(勝率)」を意味します。しかし、将来の勝ち負けを確実に予測することは不可能なので、「勝つであろう確率」といった方が正しいかもしれません。

たとえば、儲かる可能性がゼロ、つまり絶対に負けると分かっているものに投資しようと思う人はいないでしょう。この場合の期待値はゼロです。期待値がゼロのものは儲かる可能性もゼロなので、投資対象としての魅力もありません。

このように、誰でも簡単に期待値が計算できれば勝ち負けの判断を行いやすいですよね。勝つ可能性より負ける可能性が高ければ(期待値が低い)、投資を控えれば良いですし、負ける可能性より勝つ可能性が高い(期待値が高い)方にすすんで投資しておけば良いのです。

では、そもそもFXとは期待値が高いのか、それとも低いのか。また、その期待値をどのようにして求めればよいのでしょうか。

以下より詳しくお伝えしていきます。

【4つのサイコロゲーム】どれに参加する?

FXの期待値を正しく計算するために、サイコロを使ったあるゲームを行ってみましょう。サイコロを持っていないという人は、六角鉛筆に1~6までの数字を書いて転がしてもかまいません。一緒にやってみましょう。

  • (1)サイコロを6回振り、1~4までの数字がでれば100円ずつもらえる。ただし、5と6が出ると100円を支払う必要がある。参加費は無料で行える。
  • (2)サイコロを6回振り、奇数が出れば200円ずつもらえる。ただし、偶数が出ると100円支払う必要がある。参加費は無料で行える。
  • (3)サイコロを6回振り、1~4までの数字が出れば100円ずつもらえる。ただし、5と6が出ると何ももらえない。最初に200円の参加費が必要。
  • (4)サイコロを6回振るが、どの数字が出ても100円ずつ受け取れる。その代わり、最初に800円の参加費が必要。

 

上記のサイコロゲームをもう少し分かりやすく表にまとめてみました。

ゲーム 参加費 受け取れるお金 支払うお金
(1)
サイコロ6回
0円 出目:1~4
100円
出目:5~6
100円
(2)
サイコロ6回
0円 出目:1、3、5
200円
出目:2、4、6
100円
(3)
サイコロ6回
200円 出目:1~4
100円
なし
(4)
サイコロ6回
800円 出目:1~6
100円
なし

 

一見、4番のゲームが徳になりそうな気がします。サイコロの出目にかかわらず必ず100円受け取れるからです。しかし、最初に参加費800円を支払う必要があることを忘れてはいけません。

では、上記のゲームでは一体どれが最も勝つ可能性が高いのでしょうか。つまり、どれが最も期待値が高いのか、と言い換えることもできます。次の項目で詳しくお伝えします。

最も期待値の高いゲームは2番

上記のサイコロゲームで最も期待値が高いのは2番です。つまり、最も勝つ可能性が高いということになります。

では、どうやって期待値を求めればよいのでしょうか。

ここでは簡単な「確率」を使います。

たとえば、1番のゲームでは、1~4の出目が出れば100円を受け取れます。サイコロを6回振り、1~4の出目が出る確率は6分の4ですよね。つまり、サイコロを6回振れば4回は100円を受け取れるということで、合計400円が受け取れます。

一方、5~6の出目が出る確率は6分の2となります。サイコロを6回振れば2回は100円を失うということです。ここでは合計200円を支払うことになります。

では、受け取った400円から支払った200円を差し引いてみましょう。答えは200円ですよね。この利益(儲け)にもなる200円が、1番目のゲームの期待値となります。

さっそく上記のように1番から4番まで期待値を計算していきましょう。計算式は以下のようになります。

  • サイコロゲームの期待値=(最大収入×勝つ確率-最大支出×負ける確率)-参加費

1番目のゲームの場合、サイコロの出目が6回とも1~4になることもあります。その場合600円の収入です。これを「最大収入」といいます。反対に、サイコロが6回とも5~6の出目ならば、最大600円を失うことになります。これを「最大支出」といいます。

では、実際の数字を当てはめてみましょう。

  • (1)(600円×4/6-600円×2/6)-0円=プラス200円
  • (2)(1,200円×3/6-600円×3/6)-0円=プラス300円
  • (3)(600円×4/6-0円×2/6)-200円=プラス200円
  • (4)(600円×6/6-0円×0/6)-800円=マイナス200円

それぞれの期待値を整理します。

  • (1)+200円
  • (2)+300円
  • (3)+200円
  • (4)-200円

ということは、4つのサイコロゲームの内、最も期待値が高いのは2番目ということになります。つまり、投資を行う場合は、2番目のゲームに資金を投じるのが正しいということです。

「大数の法則」で期待値の精度を高める

上記の期待値の求め方は、勝つ確率と負ける確率を使って計算を行いました。たとえば、サイコロを6回振って、1~4の出目が出る確率を6分の4と計算しています。

確かに、この確率の計算式は正しいですが、必ずしもこの通りに出目が現れるとは限りません。サイコロを6回振れば、その6回とも1~4が出るかもしれませんし、反対に6回とも5~6の出目かもしれませんよね。あるいは1~4が2回しか出ず、残りの4回は5~6だったという、確率に反することも起こり得ます。

この確率とはいわゆる「平均」のことです。つまり、6回の内1~4が出るのは4回の可能性がある、もしくは5~6が2回出る可能性があります。あくまで可能性の話ということです。

しかし、この平均値は何度も同じことを繰り返すほど、予測値に近づいていくという傾向があります。これを「大数の法則」といいます。

サイコロを6回振ると、「2・5・4・2・1・3」という6つの数字が出ました。1~4の出目は5回なので確率は6分の5です。5~6は1回なので確率は6分の1となり、最初に予想した確率(勝ち6分の4、負け6分の2)と誤差があることが分かります。

この理由はサイコロを振る回数が少ないからです。

そこで、サイコロを100回振ってみましょう。最終的な出目を集計すると、予想した確率に近づいていることが分かるはずです。1,000回振ればさらに確率は集約され、1万回振ればもっと予測値に近づきます。

このように、大数の法則を理解すれば、偶然の働く余地が少なくなり、より本来の正しい確率に近づいていくのです。

先ほどの期待値の計算では以下のような結果が出ました。

  • (1)+200円
  • (2)+300円
  • (3)+200円
  • (4)-200円

これは、あくまでも大数の法則によって、本来の正しい確率が適用された場合の期待値です。つまり、予測した期待値を正しいものにするためには、何度も同じ行動を繰り返さなければなりません。

負ける可能性の方が高い(期待値が低い)商品とは?

先ほどの期待値を見ると、誰だって期待値の高い2番目に投資して、4番目には手を出したくないと考えるでしょう。4番目のゲームは期待値がマイナスに振れています。ということは、何度も繰り返し投資を行うほど、大数の法則によってその期待値に収束されていき、ゲームをするほど損失が膨らんでいくということです。

こうした期待値の計算方法を理解すると、「手を出して良い投資」と「手を出してはいけない投資」がはっきりと分かります。1番目や3番目のゲームはまだましですが、絶対に4番目のゲームには参加してはいけないことが分かるでしょう。

しかし、現実には4番目のゲームのような、絶対に手を出してはいけないものがあふれています。一方で、期待値について理解していないことから、そのことに気付かずに手を出す人が多いのも事実です。

では、期待値の低い、いわゆる「お金を投じるほど逆に損失を広げてしまう」ものは、どのような種類があるのでしょうか。以下で詳しく紹介していきます。

宝くじ

宝くじがなぜ「ギャンブル」と呼ばれるか、それは期待値が低く、参加者は絶対に損をしてしまうシステムだからです。参加者が得をしないのは、参加者以外の人たちが代わりに得をしているからです。こうした負ける人、勝つ人がはっきりと分かれることを、「ゼロサムゲーム」と呼びます。

宝くじの場合は、「胴元」が絶対に得をします。胴元とは、参加者から参加費(賭け金)を集め、最終的に賭け金を参加者に配分する人のことです。しかし、胴元はあらかじめ賭け金から一定割合の手数料を抜き、自分たちの利益にしていることを忘れてはいけません。そもそも、この仕組み自体を知らない人の方が多いです。

参加者に配られる最終的な賭け金は「配当」と呼ばれます。また、配当は胴元の手数料を差し引いた金額なので、胴元は参加者を集めるだけで絶対に得をする仕組みなのです。

では、宝くじの参加者にはどれくらいの配当があるのでしょうか。この割合を「還元率」と呼び、ギャンブル業者たちは、それぞれ以下のような還元率を設定しています。

ギャンブル業者 還元率
宝くじ 45.7%
競馬 74.1%
競輪 75.0%
競艇 74.8%
オートレース 74.8%
サッカーくじ(toto) 49.6%
パチンコ 約85%

たとえば、宝くじの胴元が多くの参加者から10億円の掛け金を集めたしましょう。還元率は45.7%なので、約4.5億円が参加者に還元されることになります。

では、残りの5.5億円はどこに消えたのでしょう。そうです、胴元の懐に消えたのです。つまり、還元率の残り(100%-還元率)は胴元の利益として儲かる仕組みになっています(ここでは分かりやすいように胴元の税金や費用などを無視しています)。

一方で、宝くじで大金が当選する確率は1,000万分の1とされます。小数点に直すと、0.0000001%です。

では、この確率を使って、先ほどと同じように期待値を計算していきましょう。ちなみに、ここでは上記の例を参考に、勝てば4.5億円、負ければ0円、参加費は100円(宝くじチケット代)というゲーム方式にしておきます。

  • (勝ち450,000,000円×勝率0.0000001%-負け0円×負け率0.9999999%)-100円=期待値マイナス54.99999

期待値がマイナスに振れました。そして、大数の法則によって何度も参加していると、正しい勝率や負け率に近づいていきますので、ほぼ確実に期待値はマイナスです。また、宝くじの場合は、参加するごとにチケットを購入しなければなりません。

3回チケットを購入すると参加費は300円となり、

  • (勝ち450,000,000円×勝率0.0000001%-負け0円×負け率0.9999999%)-300円=期待値マイナス254.99999

さらに期待値がマイナスに振れてしまいました。しかも、1,000万分の1という勝率にどんどん近づいていくので、チケットを買えば買うほど確実に敗者になる可能性を高めているのです。

このように、宝くじほど損をするものはありません。

その他のギャンブル

宝くじ以外のギャンブルとしては、競馬やパチンコ、競輪などが挙げられます。しかし、ギャンブルと名の付く通り、これらも必ず参加者が損をしてしまう仕組みです。ギャンブル業者には必ず胴元が存在し、彼らが勝者になっている以上、参加者は必ず敗者になります(ゼロサムゲーム)。

円預金

一方、ギャンブルとはいわず「投資」と呼ばれるものの中にも、期待値がマイナスに振れているものがあります。その代表的なものが円預金、つまり普通預金や定期預金です。

銀行にお金を預けると、一定の金利を付与されて利息が受け取れますよね。そのため、普通預金や定期預金も立派な資産運用方法です。また、万が一銀行が破綻しても、預金者のお金は保証の対象になるため、円預金を「ノーリスクで確実に儲かる、絶対に安全な運用方法」と捉える人も多いのではないでしょうか。

しかし、正確には、円預金ほどリスクの高い資産運用はありません

円預金をノーリスクだと誤解している人は、インフレやデフレのことを忘れてしまっています。お金の価値は物価と連動し、常に変動するものです。つまり、絶対に安全なお金というものは存在しません。

たとえば、今日銀行に預けている1万円は、1年後でも1万円と「額面上は」変わりません。しかし、1年の間に物価が1%上昇したとしたらどうでしょう。1年前には1万円で販売していた商品が、物価が上昇し1万1,000円でないと買えなくなってしまいます。

つまり、物の値段が上がることによって、反対にお金の価値が下がってしまったのです。確かに預金通常の表示では同じ1万円ですが、実際には円の価値が下がったことによって「損をしている」ことになります。

ただし、物価上昇率を超える速度で、それよりも高い利息を受け取っていたなら問題はありません。上記の例だと、1年後に1%の物価が上昇したとしても、利息がついて1万2,000円(金利2%)の残高になっていれば、1,000円分の「得をしている」ことになります。

では、日本の預金金利は物価上昇率を上回っているのでしょうか。

答えはNoです。

日本の大手銀行(三菱UFJや三井住友など)のほとんどは、普通預金の年利0.001%、定期預金の年利0.01%です。一方の物価上昇率は、2018年は前年比1.0%上昇しています。

【参考:総務省統計局、2015年基準 消費者物価指数 全国 2019年(平成31年)1月分 (2019年2月22日公表)

ということは、円預金の利息をはるかに上回る勢いで物価が上昇しているので、預金者は「確実に損をしている」ということです。これは、さきほどのサイコロゲームの4番目、つまり期待値がマイナスに振れていることを意味しています。

数ある資産運用方法の中でも、円預金ほど損をするものもありません。

FXは勝つ可能性の方が高い(期待値が高い)投資法

では、FXはギャンブルや円預金に比べて期待値が高い投資方法なのでしょうか。答えはYesです。しかし、条件もあります。

その条件の一つ目は、必ずストップを設定しておくことです。ストップとは「逆指値注文」とも呼ばれる方法で、あらかじめ値下がりの許容範囲を決めて注文しておくことを意味します。

たとえば、1ドル=100円でポジションを得た場合、同時にストップ注文を99円に設定しておくと、仮に95円や90円と暴落したときでも損失は1円の値幅だけに限定されるのです。ストップを利用すれば、「損失を出しても平気な範囲」を自由に設定することができます。

理想的な許容範囲は0.25~1%程度です。つまり、証拠金(自己資金)が100万円あれば、2,500円~1万円の範囲内に損失を抑えておくということです。

しかし、いくら損失を低く抑えたとしても、負け続けていればどんどん損失の金額が膨らんでしまいます。そこで、勝率を55%まで維持することができれば、0.25~1%の損失許容範囲でも十分に利益を出すことができます

勝率の高め方については説明すると長くなるので、また別の記事で紹介していきましょう。しかし、大切な資金を宝くじや競馬、円預金に投じる余裕があるくらいなら、FXを利用した方が確実です。

FXの正しい期待値まとめ

サイコロゲームの期待値の計算方法をもう一度おさらいしておきます。

  • サイコロゲームの期待値=(最大収入×勝つ確率-最大支出×負ける確率)-参加費

この計算方法はサイコロゲームだけでなく、ギャンブルや投資、資産運用でも活用することができます。計算の結果、数値がプラスに振れる場合には投資を決断すると良い結果が生まれやすいと言えるでしょう。しかし、宝くじや競馬、パチンコ、または円預金など、中には確実にマイナスの期待値に振れるお金の使い方も存在します。

投資や資産運用では「勝てない勝負には手を出さない」という鉄則があります。大切な資金を増やすために、常に勝負の期待値を見極めてから手を出すようにしましょう。

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