仕組み債とは何?債券投資をさらに面白くする仕組み債のしくみ、メリット・デメリットを解説!

債券投資を行うにあたって、仕組み債を呼ばれる債券を目にします。仕組み債とは、当初は法人向けの債券でしたが、最近では一般の投資家でも購入できるようになりました。

そもそも仕組み債とはどのような債券なのでしょうか。

仕組み債とは、スワップやオプションなどのデリバティブ商品の要素が組み込まれた商品で、通常の債券とは異なる特別な仕組みとなっています。

債券投資は、その他の金融商品に比べると安全性が高い故に、ちょっと地味な投資方法でもあり、物足りないと思う人も多いでしょう。そこで仕組み債なら、株式やFX、先物取引などの要素が加わることで、投資に面白みが出てきます。

それぞれの投資家の趣向によっては、かなり魅力のある投資方法となり得ます。

そこで、今回は仕組み債とは何なのか、そのしくみを解説しながらメリット・デメリットも併せてご紹介していきます。

仕組み債とは

仕組み債とは、一般的な債券にはない特別な「しくみ」を持つ債券のことです。

仕組み債には、その種類によって様々な「しくみ」が組み込まれていますが、大まかには「デリバティブ商品」の要素を組み込んだ債券になります。そこで、まずはデリバティブ商品(金融派生商品)について解説しておきいましょう。

デリバティブ商品

デリバティブ商品とは金融派生商品とも呼ばれるもので、株式、株価指数、国債、通貨、金利、コモディティなどの将来の見込み期価格を取引するものをいいます。

デリバティブ商品の取引方法は大きく、オプション取引、スワップ取引、フォワード(フューチャア)取引などがあります。

デリバティブ商品の由来は・・・

もともと、米や綿花、野菜などの農作物を対象にした先物取引から発達した取引方法で、古くは古代ギリシャ時代にまでさかのぼると言われています。

古代ギリシャ

古代ギリシャにおいて哲学者ターレスは、天文学に従って翌年のオリーブの収穫量を予見していました。翌年のオリーブが豊作か不作か予見することで、オリーブ絞り機を借りる権利をあらかじめ購入するかどうか判断していたのです。

もし、豊作と予見しオリーブ絞り機の借り入れ権利を購入していたとします。そして、実際に翌年のオリーブの収穫が豊作だった場合に、オリーブ絞り機の借り入れ料は一気に上昇します。つまり需要が急激に高まることになります。

豊作になった時点で、オリーブ絞り機を借り入れすれば、高額な費用がかかってしまいます。しかし、まだ需要のない時期に安く購入しておき、その権利が値上がりした時に、それを人々に売ることで大きな利益となるわけです。

この取引方法がデリバティブ商品の基本となります。

江戸時代

国内でデリバティブ商品が普及したのは江戸時代の大阪だと言われています。

江戸時代に、大阪の堂島にて米商人たちの間で、米の売買価格を収穫前にあらかじめ決める取引が行われ始めました。米などの農作物は、その時の天候や災害などに大きく左右されてしまいます。

仮に不作だったとすれば米の価格は高騰し、米が余るほど収穫できれば価格は暴落してしまいます。そこで、米商人たちはその価格をできるだけ安定させていきたいと考えました。

収穫前に米取引の売買価格を決めておくことで、将来に予想外の価格変動から身を守ることができたということです。このような取引方法は、現在はリスクヘッジと呼ばれている、先物取引や信用取引の1部です。

やがて、価格安定を狙ったその取引方法は、

  • 米の値上がりを予測→先に買い付けを行っておく
  • 米の値下がりを予測→先に売り付けを行っておく

というように発展していき、利益を狙って取引に参加する者が増えていったとのことです。これが、国内でのデリバティブ商品の原型となります。

このようなデリバティブ商品の要素が組み込まれたものが、仕組み債になります。

仕組み債の特徴

それでは仕組み債の特徴をご説明していきます。

仕組み債の代表的なものに、スワップ取引、オプション取引があります。それぞれどのような取引方法なのでしょうか。

スワップ取引

スワップ取引とは、異なる金利や異なる為替レートを交換することで、その差益によって利益を得る方法になります。

金利スワップ
金利スワップは、金利を対象とするスワップ取引で、債券や通貨などの金利を交換することをいいます。

例えば固定金利1%の50万円の債券を、将来的に金利が上昇すると考えるAさんは、変動金利の債券に交換します。そこで、もし変動金利によって、金利が2%に上昇した場合に1%分の利益を得ることができます。

通貨スワップ
通貨スワップは、金利と元本を異なる通貨に交換することをいいます。

例えばドル建てで購入した債券を、円建てに交換することによって、もし円安に進んだ場合には金利・元本ともに利益が生じることになります。

金利の支払いはドル建てのままだったりと、債券の種類にもよります。

オプション取引

オプション取引とは、あらかじめ将来の売買価格を約束する方法になります。

現在50万円の債券があります。

半年後に価格が上昇することを予測するとします。その場合、50万円で購入した債券を半年後に60万円で売る権利をつけて、50万円の債券を購入しておきます。

半年後に60万円の価格になれば、50万円で購入した債券を60万円で売ることが可能で、10万円の利益になります。

また反対に価格が下がると予測した場合には、半年後に40万円で買う権利をつけて50万円の債券を売ります。

半年後に40万円に債券の価格が下がれば、その時に40万円で再購入することで、10万円の利益が出ます。

このように、スワップ取引やオプション取引を通常の債券に組み合わせることによって、将来的なリスクを回避したり利益を得たりすることができるのです。

仕組み債の種類

 

デリバティブ商品の要素が組み込まれた仕組み債には、投資家や発行元の要望に応じることができる様々な種類があります。

つまり組み込まれた「仕組み」によって、満期日や利子、償還金額などを変更していくことが可能になるのです。ここで、ポイントとなるのはその債券の将来をどう予測するかということになります。

それぞれの予測次第で、それが損失につながる恐れもありますが、大きな利益も期待できるわけです。

それでは実際にどのような仕組み債の種類があるのかを見ていきましょう。

EB債

外貨建ての社債に多いのがEB債、他社株転換可能債とも呼ばれるものです。

EB債は、Exchangeable Bond を略したもので、購入した債券が発行体とは異なる企業の株式に転換されて償還される可能性のある債券のことです。

転換される株式の銘柄は発行時に定められてあり、原則として判定日に対象とする株価が値上がりしていれば現金による償還、株価が値下がりしていれば株式による償還となります。

金利が通常の債券よりも高く設定されてあることや、償還方法を自分で選べないことがEB債の大きな特徴となります。

リンク債

リンク債とは、株式などの指数に連動して金利や償還金額が変動するタイプの債券です。

償還金額が変動するリンク債
償還金額が変動するリンク債とは、リンクとなる指標(日経平均株価など)が、あらかじめ決められた水準よりも値下がりした場合は日経平均株価指数に沿った金額が償還金額となります。

反対に、リンクとなる指標が水準よりも値上がりした場合は購入時の価格にて償還されます。

金利が変動するリンク債
利率判定日にリンクとなる指標があらかじめ定められた基準よりも値上がりした場合には利率が高くなり、値下がりした場合には低い利率が適用されることになります。

償還金額が変動するリンク債も金利が変動するリンク債も、いずれの場合もリンクとなる指標の価格変動に左右されることになります。

コーラブル債

コーラブル債とは、高い金利がつくかわりに発行体によって償還日の繰り上げが行われる債券のことをいいます。

コーラブル債には、繰り上げ検討が一回限りであるワンタイムコーラブル債と、数回に渡って繰り上げが検討されるマルチコーラブル債があります。

基本的に元本は補償されていますが、高金利の恩恵を受ける期間が短くなってしまう可能性があります。

デュアルカレンシー債
海外の金融機関が発行するものに多いのが、デュアルカレンシー債で、2重通貨債とも呼ばれる債券です。デュアルカレンシー債は、購入時の通貨と金利の支払いに適用される通貨、また償還される通貨が異なるものをいいます。

国内で販売されているデュアルカレンシー債は、購入時と利払いが円建てで、償還時に外貨となるものが一般的です。円建ての部分を除き為替レートによる影響が大きくなるのが特徴です。

判定特約型
判定特約型のデュアルカレンシー債とは、定められた判定特約によって、判定日や期間中に適用する通貨が異なるものをいいます。

その特約の内容は様々で、高い金利がつくかわりに為替差益による利益が反映されないことが大きな特徴となります。例えば単純にFXや外貨預金では、円安が進めばそれだけ利益が大きくなりますが、デュアルカレンシー債の場合は特約によって円安が進んだ場合は逆に外貨にて換算されるしくみになっています。

このように適用される通貨が、その時に判定によって変わるしくみの仕組み債をリバースカレンシー仕組み債、ノックイン仕組み債、ノックアウト仕組み債ともいいます。

仕組み債を選ぶ理由

 

以上ご説明した、EB債、コーラブル債、デュアルカレンシー債が仕組み債の代表的な3つのタイプになります。仕組み債が面白いといえる点は、これら3つのタイプが入り混じった様々な債券を選べところにあります。

投資家の要望に応じて、金利を重視するか、為替レートを重視するか、または株価指数の動きを重視するか、特定の株式に返還できることを重視するか、などによって仕組み債券の内容を吟味していくことができます。

例えば・・・

  • 為替レートの動きだけでは物足りない
  • 債券投資だけでは物足りない
  • 株価指標の動きだけでは物足りない
  • 元本の変動を避けたい
  • 金利による利益のみ重視したい
  • 株価と連動した投資がしたい
  • 株価指数や金融市場の価格変動のリスクを避けたい

などと、それぞれの事情に合わせて、希望に合った仕組み債を探すことができます。

仕組み債の用語

仕組み債には様々な種類がありますが、発行条件を確認することで、その仕組み債がどのような「しくみ」になっているのかを確認することができます。

そこで、仕組み債の発行条件を見ていくにあたって必要な用語をいくつかご紹介しておきましょう。

発行体
発行する政府機関、金融機関、企業名のことです。

償還年限
償還される年月日のことで、満期時がいつなのかが記載されてあります。

発行価格
発行時、販売される価格のことをいいます。100%と書かれてあるものも多く、100%とは額面通りの価格のことで、10万円の債券であれば10万円で購入できることになります。

償還価格
償還価格も100%で表される場合もあり、償還価格100%とはその債券の額面通りだということを意味します。

償還方法
償還方法はどのように判定されるのかが説明されています。その判定方法によって、外貨、円貨、株式による償還の可能性があることが確認できます。

当初価格
リンク債の場合はリンクとなる指標の価格が条件設定の際にいくらなのかがわかります。

基準価格
株式や外貨で償還される場合の判定基準となる価格が表示されてあります。

ノックイン条項
株式や為替レートなどの判定基準となる価格から下回った場合の償還方法がどうなるのかを表したものです。

ノックアウト条項
ノックアウト条項とは判定基準となる価格から上回った場合にどうなるのかを表したものです。

利率・クーポン
金利の利率をクーポンともいいます。利率が年率で何%なのかがわかります。

中途売却
中途売却は可能かどうか、可能な場合はどのような条件になるのかの記載です。

発行体の信用リスク
発行体の財務状況や、格付けのレベルが確認できます。

仕組み債のメリット

Man
いろんな要素が組み込まれていて、確かに面白そうだけど、仕組み債のメリットは何なの?

通常の債券では得られない利益が期待できる

仕組み債の大きなメリットとは、通常の債券では得られない利益が期待できることです。

債券には大きく、国債、外国債、社債とありますが、基本的に元本が保証されている分、株式やFXなどに比べると利益率は低い傾向にあります。

安全性を重視して債券投資を行う人は多いと思いますが、仕組み債券であれば通常よりも高い金利や、償還時の利益を期待することが可能になります。

趣向に合わせて選ぶことができる

今回ご説明したように、仕組み債は株価指数に連動するものや、為替レートを基準にしていくもの、株式に転換できる債券などがあります。

投資家によって、株式が得意な人、為替に強い人など様々です。

それぞれの得意不得意に応じて、自分に合った仕組み債を選ぶことができます。

様々な要素がからむので面白い

そして、仕組み債の基本は、将来その債券によって利益が得られるかどうかを予測する楽しさが醍醐味となります。単純に為替レートで円安が進めば稼げるというわけではなく、判定方法や判定基準によって損する場合も多々あります。

選ぶ仕組み債の条件によって、株式や為替などの要素がからんできます。複雑にからみ合う条件の先を読むことがパズル解読や推理小説のように面白いと感じる人にとってはたまらない投資方法になります。

仕組み債のデメリット

 

Man
一般的な株式や通貨の動きの裏をかいていくってことろなのかな。でも、普通の債券のように安全性は低くなるよね?どんなデメリットがあるの?
Expert
もちろん仕組み債は、利益が期待できる分、リスクも高くなってしまいます。では、仕組み債のデメリットを解説していきましょう。

発行体は損をしない仕組みになっている

そもそも仕組み債券とは、通貨の異なる国家間や企業間などでの取引において、損失が出ないように考案されたリスクヘッジが基盤となっています。

ですから、投資が稼げる金額には上限があるよう設定されてあることが、仕組み債の一番のデメリットだと言えます。例えば、仕組み債券の種類によっては、せっかく金利が上昇し続けているのに、途中で償還繰り上げになってしまう可能性もあります。

為替レートや株価の恩恵が受けれない

通常の債券であれば、満期時には約束された償還金額が戻ってくるから安心でした。しかし、外国債券を購入する時と同様に、為替レートによって損失が出る可能性も高くなってしまいます。

仕組み債の場合は、今回ご説明したように、株価や為替レートによる恩恵が受けれない設定のものが多くなります。株式投資は、一般的に株価が上がると利益が出るわけですが、仕組み債では逆に株価が上がると大きな損失となる可能性を秘めています。

元本割れの可能性も高い

上記のように、発行体が損をしないような仕組み、そして為替レートや株価の恩恵が受けれない仕組みによって、その仕組み債の種類によっては元本割れの可能性も高くなってしまいます。

そのかわりに、ほとんどの仕組み債には高い金利が設定されていることになるのです。

まとめ

債券は安全性が高い代わりに、利益率も低くなりがちで、債券投資に物足りなさを感じる人もいるでしょう。また、株式投資やFXに励む人の中には、もっと違ったタイプの投資に挑んでみたいと思う人もいると思います。

そんな人にとって仕組み債は、これまでの投資とは一味違った先を読む楽しさを味わっていくことができます。

株価や為替レートで利益が出やすい時には定められた「しくみ」によって制限を受けてしまいますが、反面、株価や為替レートで利益が得づらい時ほど仕組み債は本領を発揮する投資方法となります。

株価、為替レート、金利などの様々な要素がからんだ仕組み債にはどんなものがあるのか、ぜひこの機会に調べてみませんか?

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