【株式投資のコツ】企業の信用リスクをチェックしよう!

株式投資を行う場合、値上がりする企業を探すことは大事ですが、それ以上に「倒産の可能性が低いか」ということを重視する必要があります。

そのためには、財務諸表から安全性を確認するようにしましょう。また、倒産の可能性があるかどうかも財務諸表や四季報などでも確認することができます。倒産や上場廃止は、株式投資で最も大きなリスクなので、かならず安全性を確認するようにしましょう。

信用リスクとは

信用リスクとは、有価証券の発行体(国や企業など)が経営不振や財政難によって、利息や元本を払えなくなる債務不履行を起こすことをいいます。

そういう事態が予想されると株価は大きく下がりますし、倒産すると株券は紙くずになります。有価証券の発行体の債務不履行は最も大きなリスクです。そのため、企業の財務や経営状況、格付けなどをしっかりと確認しておかなければなりません。

企業の安全性を判断する指標

倒産の可能性が低いかどうかを見る指標をきちんと確認しておきましょう。

自己資本比率

自己資本比率とは総資産に占める株主の出資による純資産の割合のことです。安全性を見る上でとても大切な指標で、高い方が安全ですが、高すぎると収益性に問題があると考えられます。計算式は以下のようになります。

  • 自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本

自己資本とは返さなくてもいい資本です。具体的には、資本金と資本剰余金、利益剰余金です。

  • 資本金・・・事業を円滑に進めるために、株主が会社に出資した金額のことです。会社を設立するにあたっての開業資金だけでなく、新規事業を立ち上げる際などに資金が必要になった時に株主や投資家から調達した資金も資本金に分類されます。ただ、創業者が自己資金を投じているケースも多くなります
  • 資本剰余金・・・資本剰余金は、資本準備金及び資本準備金以外の資本剰余金に区別されます。 資本剰余金は株主からの払込みなど資本取引から発生する剰余金で、その他資本剰余金には以下のようなものが含まれます。

資本準備金の取り崩し

自己株式処分差額

  • 利益剰余金・・・利益剰余金とは、企業が生み出した利益を積み立てたお金です。会社内部に蓄積されているお金をいいます。企業会計においては、貸借対照表の純資産に記載される株主資本の一部です。利益剰余金は利益準備金と、その他利益剰余金で構成されています

自己資本比率はどのくらいなら倒産しないといえるのでしょうか。一般に自己資本比率が70%以上なら理想的な企業、40%を超えていたら優秀な企業だと判断されます。赤字企業では自己資本比率はマイナスになることもあります。

自己資本比率は高ければ高いほど良いものの、まずは40%を目指したいところです。 自己資本比率が極めて小さく、借入金に依存した経営を行っている企業は資金繰りが厳しく、倒産して借入金が返済できない可能性があります。

自己資本比率が低いと会社の信用ダウンになります。自己資本比率を高めるには、税引き後純利益の蓄積である利益剰余金を増やすことで自己資本を増加させるか、固定資産や売上債権をコントロールして資産を減らし、分母である総資本を減少させることが必要になります

ただし、自己資本比率は高ければ安全ですが、高すぎても良くありません。90%を超えるような自己資本利益率では、利益の蓄積ばかりして積極的な投資をしていないと見られてしまいます。収益性や成長性に問題があると判断されるのです。

有利子負債比率

有利子負債比率とは、有利子負債と自己資本を比較して安全性を見る指標です。有利子負債を自己資本で割って求めるので、高いほど借入金に依存しているということになります。計算式は以下のようになります。

  • 有利子負債比率 = 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100

有利子負債とは、利子を払う必要がある負債のことで、金融機関の借入金や発行している社債のことです。これらが多すぎると金利負担が利益を圧迫するので、有利負債は少ない方が安全性は高いと考えられます。

有利子負債は、流動負債に属する返済までの期限が1年以内の短期借入金やコマーシャルペーパー(CP)、 固定資産に属する1年超の長期借入金や普通社債などを合算して求めます。有利子負債と自己資本を比較する有利子利子負債比率で、その会社の負債を返済する能力が分かります 。

実際は負債の返済のために自己資本をすぐに使うということはほとんどありません。しかし、この比率を見れば自己資本の規模に照らして、適正な負債額か、負債の金利が程度かといった判断をすることができます。

有利子負債比率が低い企業ほど財務の安全性が高いといえます。一方、有利子負債比率が高い企業は、金利上昇局面で利払い負担が増えて、利益の圧迫要因となります。通常は手元にある現金化できそうな資金から負債をまず返済するので、フリーキャッシュフローと比較する有利子負債フリーキャッシュ比率の方が、より現実的な安全性を測る指標となります。

 固定比率

固定比率とは、固定資産と自己資本を比較したもので、固定資産に投資した資金が自己資本でどれだけまかなわれているかを見る指標です。長期的な視野で財務の安全性を見ることができます。

会社は、土地や建物・工場など事業に使うための設備に投資をしています。固定比率はこの設備投資に無理がないか、また返済義務のない自己資本で設備投資をまかなえるかどうかというのを判断するための指標です。これらの設備は1年以上にわたって使用される資産なので、貸借対照表の資産の部の固定資産の項目に記載されています。

計算式は以下のようになります。

  • 固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本

一般的に、固定資産は返済義務のない資金で購入するのが望ましいと されています。ですから、固定比率は自己資本の100%以内であることが理想です。100%を超えると、負債で土地や建物・機械などを購入していることを意味し、数字が大きくなると安全性が低いと見られます。100~120%の範囲なら健全、200%超えると危険だと判断します。

100%未満は自己資本で固定資産のすべてをまかなっているということです。残った資産は流動資産に充てられるので、換金性や安全性が高いといえます。

流動比率

流動比率とは、1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを表す指標です。短期返済の資金繰りの面から、安全面を見る指標で、計算式は以下のようになります。

  • 流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動比率は貸借対照表の資産の部にある流動資産と、負債の部の流動負債を使い、1年以内の短期的な資金繰りを見ます。いつでも返却が必要なお金に対して、払えるお金がどれだけあるかを示しています。流動資産は、現金・預金、有価証券、棚卸資産、売上債権などです。一方、流動負債は支払い時期や返済期限が1年以内に到来する負債です。

流動比率の目安は業種によって異なりますが、一般的な目安として150%。200%以上だとより望ましいといわれています。流動資産を支払いに充てる場合に、通常は安く処分しないとならないことが多くなるので、100%だと十分とはいえません。流動資産が半分になって売却しても支払いができるように、200%以上あることが望ましいのです。

継続企業の前提に関する疑義注記とは

会社四季報などを見ていると、「継続企業の前提に関する重要事象等」という項目があります。これは、企業が将来経営破綻してしまうリスクが、他の企業よりも高いということを表しています。例えば、以下のような項目があります。

  • 債務超過の状況にある
  • 赤字が何期も続いている
  • 営業キャッシュフローのマイナスが続いている

経営破綻した決算書の内容は一変してしまいます。例えば、建物や土地などの資産は「いくらで売れるか」という視点から再評価されるため、それまでの価格よりもはるかに低い評価となります。解散価値ということで考えれば、事業を継続していく企業の貸借対照表とは全く異なったものになるのです。

継続企業の前提に関する重要事象が存在した場合、経営努力により破綻のリスクを解消することが十分に可能と見られた場合はリスク情報として記載します。不十分だと見られた場合には、財務諸表へ注記が義務付けられていて、そちらの方が事態はより深刻になります。

つまり 、企業の努力で経営破綻のリスクを解消することが可能である場合は、決算短信や価証券報告書に継続企業の前提に関する重要事象が存在するということが、リスク情報として記載されますし。四季報では、「継続前提に重要事象」と記載されます。

それに対して、破綻のリスクを回避するための対応策が十分ではない、つまり企業努力によって経営破綻のリスクが解消できない可能性がある場合は、財務諸表の後ろに継続企業の前提に関する注記がなされます。四季報では「継続前提に疑義注記」と記載されます。

継続企業の前提に関する重要事象がリスク情報として記載されている企業は、「継続企業の前提に関する疑義注記」と書かれている方がより深刻な事態で、経営破綻のリスクがさらに高くなります。これらの記載がある企業への投資は、特に初心者の方は避けるべきです。なお、業績が回復するなどして継続企業の前提に関する記載対象から外れることもあります。気になる企業に関しては、四季報や決算短信などで確認するようにしましょう。

監理銘柄・整理銘柄とは

株価が大幅に下がっている銘柄では、監理銘柄もしくは整理銘柄に指定されているかどうかも確認する必要があります。監理銘柄とは、上場廃止基準に抵触するおそれのある株式について割り当てる銘柄です。

監理銘柄は上場廃止かどうか審査中の銘柄ですが、整理銘柄は上場廃止が決定した銘柄です。監理銘柄に関しては企業側の説明などによって廃止基準に触れないと判断されれば解除されます。

東証1部の上場廃止基準を見てみましょう。

  • 債務超過

債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかった時。原則として連結対象貸借対照表で判断されます。

  • 株主数:400人未満
  • 流通株式数:2,000単位未満
  • 流通株式時価総額:5億円未満

 

これらは全て一年間の猶予があり、一年以内に解消できない場合は上場廃止となります。

またこれらの基準の他に、上場する企業は市場や株主に対するコンプライアンス(法令遵守)の責任があります。有価証券報告書などを提出する文書に虚偽記載があったり、不適切な意見で市場を混乱させたりする場合には、東京証券取引所などの取引所が上場廃止の基準を下すことがあります。2006年にはライブドアが有価証券報告書の虚偽記載により上場廃止となりました。

近年では、2017年に東芝がアメリカの原発事業関連の巨額損失が判明し、債務超過に陥りました。この時は上場廃止基準の債務超過に当たり、債務超過の状態から1年以内に退却できない場合は、上場廃止となる恐れがありました。ただ、東芝は債務超過を解消することができ、上場を維持しています

このように大手企業でも、いつ上場廃止基準に抵触するかわからないので、株価が大きく下落した場合は、必ず上場廃止基準に抵触してないかどうかということを確認するようにしましょう。

株式の流動性リスクにも注意

企業の倒産リスクとはまた別ですが、株式の流動性にも注意する必要があります。買いたい値段で買えない、売りたい値段で売れないといったリスクがあるからです。流動性とは、株式などの資産の換金がしやすいかどうかということです。

売買高が多く取引が成立し成立しやすい銘柄は流動性が高いといいます。流動性が低いといつまでも現金化できない、もしくは著しく低い金額でしか換金できないといった恐れがあります。一般的に出来高が多い銘柄や売買代金が多い銘柄は、証券取引所で取引相手が見つかりやすく、流動性が高いといえます。

何か材料が出た時に最も恐ろしいのが、ストップ安が続くことです。株価には値幅制限というのがあります。例えば、1000~1500円の1日の値幅制限は300円です。1200円の株価なら、翌日の値幅は1500円から900円。そして、その安値の水準900円の値段がつくことをストップ安といいます。

流動性が低い銘柄では、何か悪材料が出た時にストップ安が続くことがあります。それも当日の値段で売れればまだいいのですが、3営業日連続など数日間売れないこともあります。

株式は換金性が高い金融商品ですが、流動性の低い銘柄は売りたい値段で売れないこともあるのです。ですから、流動性リスクにもきちんと留意する必要があります。

発行済み株式数をチェック

流動性を判断する材料としては、日々の出来高の他に発行済株式数をチェックする方法もあります。

発行済株式数とは、株式会社が発行している株式の総数です。 株式の評価を表すのに時価総額がありますが、これは株価に発行済株式数を掛けたものです。

株式会社が発行する株式の数は無制限に出していいわけではなく、定款によって定められています。定められた株式の発枠のうち、その時点で発行した株式の総数を発行済株式数といいます。株式数は増資や減資によって変動します。

また、株式には普通株と種類株があります。優先株のような種類株は株式市場ではほとんど売買されないので、種類株を除いた普通株を発行済株式数とします。なお、発行済株式数は会社の規模を表しています 。

発行済株式数は、 EPS( 一株当たり利益)やBPS( 一株当たり純資産)などを算出する際にも使われます。株価が割安として判断される PER や PBR に使われるので、非常に重要な指標です。

まとめ

今回は企業の信用リスクをチェックするための指標や見方を解説してきました。財務諸表では以下の4つをチェックします。

 

①自己資本比率

②有利子負債比率

③固定比率

④流動比率

 

この他に、会社四季報や決算短信などで、継続企業に関する注記を確認し、監理銘柄や整理銘柄に該当しないかを確認する必要があります。

そして、円滑な売買のために流動性も確認する必要があります。株式投資の目的は利益を出すことですが、そのためには損失をなるべく抑えなくてはなりません。上場廃止や倒産などといったことになれば、株価は大きく下落するか、もしくは株券が紙くずになってしまいます。

そうならないためにも、必ず財務諸表などをチェックする必要があるのです。ただし、安定的に利益を出している企業が突然上場廃止になるというリスクはほとんどありません。日頃から企業分析をきちんとしておけば避けることができる可能性が高いのです。

しかし、絶株式投資には絶対という言葉はありませんので、一つの銘柄に集中投資するのは避け、複数の銘柄に分散して投資をするようにしましょう。そうすれば、万が一のことがあっても大きな損失は避けることができます。今回の記事が株式投資の参考になれば幸いです。

 

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