個人年金保険料控除を受けるには一定の条件をクリアしなければならない!個人年金保険料控除を受けるための条件とは?

長寿王国日本。厚生労働省が発表した日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.26歳と過去最高を記録しています。さらに100年時代という言葉が出てきているように、日本人の平均寿命はさらに伸びていくと予想されます。

それに伴い、定年年齢も65歳から70歳に引き上げられ、年金の支給額が減額するだろうと言われている中、私たちの老後の資金作りというテーマは今非常に重要となってきています。

老後の資金作りの1つとして、「個人年金保険」を利用する方法があります。そして、個人年金保険には、「個人年金保険料控除」という制度があります。この個人年金保険を利用して老後の資金作りをしながら、個人年金保険料控除で節税対策もできてしまうのです。

今回は、「個人年金保険料控除」に焦点をあてて、解説していきます。

1.個人年金保険とは

日本には、公的保険(国や地方公共団体が主体)と私的保険(民間の保険会社が主体)があります。

さらに、私的保険は、

  • 生命保険(第一分野)→終身保険、定期保険、個人年金保険など
  • 損害保険(第二分野)→火災保険、地震保険など
  • 第三の保険分野の保険→医療保険、がん保険など

の3つに分類され、個人年金保険は、1の生命保険(第一分野)に該当します。

現在の日本の年金制度は、65歳以降に偶数月に年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金など)を受け取ることができます。この年金は、65歳に達するまでちゃんと国民年金や厚生年金を支払っている国民が受け取ることができるものであり、未納月などがあれば受け取ることができる年金は少なくなってしまいます。

そしてこの年金は、今後日本が、少子化が進みさらに高齢化社会になっていくと懸念されている影響で、支給開始年齢が65歳から70歳に引き上げられる可能性が出てきています。

支給開始年齢が引き上げられてしまうと、老後の生活資金が不足する恐れがあります。さらに、老後の生活資金が不足する恐れから、年を取っても働き続けなければならない状態になってしまいます。

こういった老後の不安要素を少しでも減らす方法として、個人年金保険に加入するという方法があります。個人年金保険は、契約する際に決めた受取開始年齢になると、年金を受け取ることができる保険となります。

個人年金保険は受取る方法によって種類が異なる

個人年金保険には、年金を受け取る方法によって種類が異なります。

終身年金

終身という言葉は、1度耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

終身年金とは、生存している間は、ずっと年金を受け取ることができる個人年金保険となります。年金の受取開始年齢が65歳で、100歳まで生きた場合は、35年間、年金を受け取ることができます。死亡すると、年金の受給権利は失います。

有期年金

次は、有期年金です。有期年金は、生存している間の一定期間、年金を受け取ることができる個人年金保険となります。

年金の受取開始年齢が65歳、65歳から10年間年金を受け取るという有期年金を契約すると、75歳まで年金を受け取ることができます。しかし、75歳になる前に死亡した場合は、生存している間だけ年金を受け取ることができ、残りの期間分の年金は受け取ることができないので注意してください。

確定年金

確定年金は、有期年金と同様、一定期間年金を受け取ることができる個人年金保険となります。

しかし、有期年金と大きく異なる点が1つあります。

確定年金は、契約時に決めた一定期間内に死亡してしまった場合でも、その期間内は年金を受け取ることができます。死亡後の年金の受取人は、遺族となります。10年間の期間で設定した場合は、10年間年金を受け取ることができます。

保障期間付終身年金

保障期間付終身年金は、年金の受取開始後に一定期間の保障期間を設けます。この保障期間の間は、生存している場合のみという縛りはなく、死亡した場合でも、年金を受け取ることができます。

保障期間が終了した後は、生存している間は、年金を受け取ることができますが、死亡した場合は、年金の受給権利は失くなってしまいます。

保障期間付有期年金

保障期間付有期年金も、保障期間付終身年金と同様、年金の受取開始後に一定期間の保障期間を設けます。

保障期間内は、生存している場合でも死亡した場合でも、年金を受け取ることができます。

保障期間が終了した後は、生存している間の一定期間、年金を受け取ることができます。

夫婦年金

最後に、夫婦年金です。夫婦年金は、夫婦のどちらかが生存している間、年金を受け取ることができる個人年金保険となります。

 

2.個人年金保険料控除とは

個人年金保険に加入している方は、個人年金保険料控除という制度を受けることができます。

保険料控除は、1月1日~12月31日までの1年間に支払った保険料に応じて、翌年の所得税・住民税が控除されるという大変魅力的な制度となります。

保険に加入している方は、節税対策にもなるので、保険料控除はフル活用しましょう。

保険料控除は、

  • 一般の生命保険料控除
  • 個人年金保険料控除
  • 介護保険料控除

の3つに分かれます。

個人年金保険は、個人年金保険料控除に該当します。

個人年金保険の保険料控除は、平成23年以前の契約と平成24年以降の契約で、控除額が異なります。

平成23年以前の契約

所得税

  • 払込保険料 25,000円以下→控除額 全額
  • 払込保険料 25,000円以上55,000円以下→控除額 払込保険料×1/2+12,500円
  • 払込保険料 55,000円以上100,000円以下→控除額 払込保険料×1/4+25,000円
  • 払込保険料 100,000円以上→控除額 55,000円(最高限度額)

住民税

  • 払込保険料 15,000円以下→控除額 全額
  • 払込保険料 15,000円以上40,000円以下→控除額 払込保険料×1/2+7,500円
  • 払込保険料 40,000円以上70,000円以下→控除額 払込保険料×1/4+17,500円
  • 払込保険料 70,000円以上→控除額 35,000円(最高限度額)

平成24年以降の契約

所得税

  • 払込保険料 20,000円以下→控除額 全額
  • 払込保険料 20,000円以上40,000円以下→控除額 払込保険料×1/2+11,000円
  • 払込保険料 40,000円以上80,000円以下→控除額 払込保険料×1/4+20,000円
  • 払込保険料 80,000円以上→控除額 40,000円(最高限度額)

住民税

  • 払込保険料 12,000円以下→控除額 全額
  • 払込保険料 12,000円以上32,000円以下→控除額 払込保険料×1/2+6,000円
  • 払込保険料 32,000円以上56,000円以下→控除額 払込保険料×1/4+14,000円
  • 払込保険料 56,000円以上→控除額 28,000円(最高限度額)

平成23年以前の契約と平成24年以降の契約両方の契約がある場合は、どちらを保険料控除に使用するのか事前に決めておきましょう。控除額は、平成23年以前の契約の方が大きいので、平成23年以前の契約の方が節税効果は高くなります。

しかし、平成23年以前の契約を更新した場合、取扱いが平成24年以降の契約となり、最高限度額が変わってしまうので注意しましょう。

 

3.個人年金保険料控除を受けるための条件とは

先ほど、個人年金保険料控除についてお話ししましたが、実は個人年金保険料控除は個人年金保険に加入している方全員が受けることができません。

個人年金保険料控除を受けるためには以下の4つの条件をすべて満たす必要性があります。

  • 個人年金保険の年金の受取人が、契約者or契約者の配偶者であること
  • 個人年金保険の年金の受取人と被保険者が同一であること
  • 個人年金保険料の支払期間が10年以上で設定されていること
  • 加入している個人年金保険の種類が「確定年金」・「有期年金」の場合、年金の受取開始年齢が60歳以降、かつ受取期間が10年以上で設定されていること

次に、それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。

1.個人年金保険の年金の受取人が、契約者or契約者の配偶者であること

まず、個人年金保険の年金の受取人の条件です。この条件はシンプルですね。契約者が夫の場合は、個人年金保険の年金の受取人が夫、もしくは配偶者の妻で設定する必要があります。契約者が妻の場合は、夫になります。

2.  個人年金保険の年金の受取人と被保険者が同一であること

個人年金保険の年金の受取人と被保険者が同一であることが、個人年金保険料控除を受けるための必須条件の1つとなります。

被保険者とは、保険の対象となっている人を指します。個人年金保険の年金の受取人を夫とした場合は、被保険者も夫で設定しなければ、個人年金保険料控除を受けることができません。

3.個人年金保険料の支払期間が10年以上で設定されていること

1と2の条件は人に関するものでしたが、3は期間に関する条件となります。個人年金保険料の支払期間を10年以上で設定することが、個人年金保険料控除を受けるための条件となります。

保険料の支払方法には、毎月支払う「月払い」や1年間分の保険料をまとめて支払う「年払い」、その他に契約時に保険料を一括で支払う「一括払い」などがあります。

支払方法を、月払いではなく、年払いや一括払いにすると、支払う保険料が少し安くなります。しかし、節約のために一括払いにしてしまうと、個人年金保険料控除を受けるための条件、支払期間が10年以上で設定されていないため、個人年金保険料控除を受けることができなくなってしまいます。

個人年金保険料控除を受けたいのであれば、一括払いではなく、月払いや年払いにしておきましょう。

4.加入している個人年金保険の種類が「確定年金」・「有期年金」の場合、年金の受取開始年齢が60歳以降、かつ受取期間が10年以上で設定されていること

最後に4つめの条件を見ていきましょう。4の条件は、個人年金保険の種類、そして年齢・期間と条件が細かく設定されています。

まずは、個人年金保険の種類は、「確定年金」・「有期年金」となります。そして、受取開始年齢を60歳以降で設定する必要があります。59歳はアウトです。

さらに、今までの条件にはなかった期間の条件、年金の受取期間が10年以上で設定されていることが条件となります。

例えば、個人年金保険料の支払いが終わり、年金の受取開始年齢を60歳に、受け取れる年金を300万円とします。この300万円を、60歳に一括で300万円を受け取る契約をすると、個人年金保険料控除を受けることができる条件、受取期間を満たしていないため、個人年金保険料控除を受けることができません。

もし個人年金保険料控除を受けたいのであれば、60歳以降に受け取れる300万円を、毎月2万円を受け取る契約を締結すれば、受取期間が10年以上になるので、個人年金保険料控除を受けることができます。

個人年金保険料控除を受けたいのであれば、上記で述べた4つの条件のうち、1つでも満たさなかった場合には、個人年金保険料控除を受けることができないので、契約する時には、個人年金保険料控除を受けるための条件を満たしているのかどうよく確認しておきましょう。

個人年金保険料控除を受けるための条件を満たしていない場合でも、保険料控除を受けられるって本当?

個人年金保険料控除を受けるための4つの条件のうち、3つの条件は満たしているのに、1つの条件だけ満たさなかった場合は、残念ながら、個人年金保険料控除は受けることができません。

しかし、個人年金保険料控除の条件を満たさなかった場合でも、一般の生命保険料控除を受けることができます。

個人年金保険料控除を利用できない場合は、一般の生命保険料控除を利用しましょう。

4.個人年金保険料控除を受けるための手続き方法は

最後に、個人年金保険料控除を受けるための手続き方法について見てきましょう。

個人年金保険料控除を受けるための手続き方法は、

 

  • 年末調整による手続き
  • 確定申告による手続き

 

 

の2パターンとなります。

年末調整による手続き

会社勤めの方は、毎年年末に行う「年末調整」によって、個人年金保険料控除を受けるための手続きを行います。

年末調整に必要な書類は、

  • 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書
  • 保険料の控除証明書

となります。

保険料の控除証明書は、毎年10月頃に契約した保険会社から送付されるので、年末調整まで失くさないように大切に保管しておきましょう。

平成23年以前の契約と平成24年以降の契約の両方の契約がある方は、どちらか一方の保険料の控除証明書を提出します。

給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書に必要事項を記入し、保険料の控除証明書を添付して会社に提出することにより、個人年金保険料控除を受けることができます。

給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書への記入ミス、提出漏れや保険料の控除証明書の添付忘れがあると、今後の手続きが面倒になってしまうので、しっかり確認をしましょうね。

確定申告による手続き

自営業の方は、年末調整がないので、ご自身で「確定申告」する必要があります。また、会社勤めの方でも、年末調整に間に合わなかった、不具合があったなど、何らかの理由で年末調整ができなかった場合にも、確定申告をしなければなりません。

確定申告は、毎年2月16日~3月15日の1ヶ月間の間に、行わなければなりません。確定申告の期間中は、非常に混みあいます。そして、保険料の控除証明書を失くしてしまった場合は、保険会社に再発行依頼をかけて取り寄せる必要があるので、注意しましょう。

確定申告に必要な書類は、

  • 確定申告書
  • 保険料の控除証明書
  • 源泉徴収票

の3点となります。

確定申告書は、税務署や還付申告センターなどに行って入手するほか、国税庁のHPからダウンロードする事が可能となっています。

源泉徴収票は、会社勤めの方が必要となる書類なので、自営業の方は不要です。失くしてしまった場合は、勤めている会社に発行してもらいましょう。

確定申告書に必要事項を記入し、保険料の控除証明書と会社勤めの方は、源泉徴収票を添付して、税務署、もしくは還付申告センターに持参か郵送にて提出します。

確定申告書への記入は、ご自身で税金を計算をしなければならないので、時間を要します。

確定申告書は余裕をもって入手し、確定申告の期間内に必ず手続きを行いましょう。

5.まとめ

個人年金保険は、老後資金作りに役立つ方法の1つに挙げられます。

そして、個人年金保険は、条件を満たしていれば、個人年金保険料控除という資金を貯めながら節税対策にもなる制度を受けとることができる制度です。

実際に、ご自身が年を取った時に老後資金がなく、手遅れにならないようにするために、早い段階から計画的に資金作りを始めてみてはいかがでしょうか?

楽しいセカンドライフを送れるように、資金作りに励みましょう!

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