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「事情があって1回自己破産したけれど、再び借金をして支払いがキツくなった」
「2回目の自己破産を検討しているけれどできるものなのか?」
1回自己破産して借金がゼロになったものの、また借金を繰り返してしまうことはよくある話です。そして、2回目の自己破産を検討する方も出てくることでしょう。
しかし、1回目の自己破産をするときに裁判所から「同じことは2度としないように」「これからは計画的に」などの言葉をかけられているはずです。
実際のところ2回目の自己破産はできないのでしょうか?また、免責が認められるのは最初の1回のみなのでしょうか?
今回は、2回目の自己破産の条件やどんな理由があれば免責許可がおりるのかなどについて解説していきます。
2回目の自己破産をする方も意外に多い
借金の返済が困難な場合に法的な解決を図ることが「債務処理」で、その最終的な手段となるのが「自己破産」です。
自己破産をすることによって、それまでの借金はすべて免除。自宅などの財産は没収されてしまいますが、その後は新たな経済の再建が可能となるため債務者にとってメリットの方が大きな制度でしょう。
自己破産は本来「一生に一度のみ」と考える方も多いかと思いますが、意外に2回目の自己破産を検討する方は多いものです。そして、実際に2回以上の自己破産をしている方もいるほど。
なお、2回目の自己破産を検討するのは、一般的に以下のような理由が多いです。
・失業
・ギャンブルがやめられない
・事業の失敗
・浪費
結論として、これらの理由で自己破産が認められる場合もあります。しかし、2回目以降の自己破産は免責の条件が厳しくなると考えておくのが良いでしょう。
2回目の自己破産の条件とは?
自己破産は借金をすべてゼロにするという強い効果がありますから、これを自由に何度も利用されてしまえば債権者にとって大きな不利益となります。
債務者が借金を繰り返したとしても「また自己破産すれば良いのでは?」という考えにもなりますし、計画的に大きな借金をすることも考えられるでしょう。それでは単に「借り逃げ」の状態になるだけですよね。
そうならないためにも、2回目以降の自己破産をする場合、免責を受けられる条件は法的に厳しくなっているのです。
自己破産は免責決定がされることによって借金がなくなります。よって、自己破産で借金をなくすためには、破産の手続きを行うだけでなく免責決定を受けなければ意味はありません。
それでは、2回目の自己破産が認定されるにはどんな条件が設けられているのでしょうか?
2回目でも7年が経過していれば自己破産の手続きは可能
破産法第252条1項10号で「最初の自己破産で免責を受けてから7年が経っていない場合は、免責不許可事由に該当してしまう」とあり、これに該当する場合は再び自己破産申請をしても認めてもらえません。
要するに「最初の自己破産で免責を受けてから7年以内は不可能だが、7年が経過すれば自己破産はできる」ということになるのです。
しかし、7年が経過しているからというだけで免責が受けられると決まったわけではありません。自己破産の理由しだいでは免責が受けられないケースも多くありますし、1回目の自己破産よりも審査が厳しくなることも考えられます。
なぜなら自己破産は債権者にとっては債務者の没収財産がない、もしくは少ない場合は貸し倒れの状態になるだけで何の得もありません。
そのため、裁判所側も社会主義の観点から「一定期間内における自己破産は認めない」「同じ過ちは繰り返すことのないように」と考えているのです。
では、いかなる理由があっても7年が過ぎていなければ破産はできないと解釈されてしまうかもしれませんが、それは違います。実は破産の原因によっては7年以内の自己破産が裁量免責で認められる場合もあるので、可能性はゼロではないのです。
1回目の破産とは異なる理由と妥当性が必要
2回目の自己破産は内容や理由において、1回目以上に厳しくチェックされます。
また、自己破産の理由が1回目と同じだったり社会通念上妥当性を欠く理由だったりする場合は、認められない可能性が高いでしょう。
そのため、2回目の自己破産では内容や理由について十分に注意しなくてはなりません。
1回目と同じ内容や理由をはじめ、浪費やギャンブルによる破産も反省心がないとみなされてしまいますから、これらの場合はより厳しく調査されることが考えられます。
2回目の自己破産の注意点
1回目の自己破産から7年が経過したとしても、2回目の自己破産は裁判所の心証も悪くなっていると考えるのが一般的です。
1回目のときに「今回の件を反省して、今後は十分に注意して生活する」ことを約束したはずなのに、同じことを繰り返しています。
裁判所からしたら「1回目の自己破産を本当に反省しているのか?」と疑ってしまうのは当然ですし、1回目と同じ状態で自己破産ができないと考えておくべきです。
破産審尋で説明をする必要がある
自己破産をするには「破産審尋」という手続きがあり、破産申し立て後、もしくは破産手続き開始決定がされる前に行われます。
1回目の自己破産の場合、よほどの問題がないとされない限り破産審尋はありません。
しかし、2回目になると問題があるとみなされてしまい、裁判官と直接面談をして事情を説明する必要が出てきます。そして、破産手続きを開始するかどうかの判断材料とされるのです。
裁判所側も2回目になると慎重に判断する必要がありますし、本当に反省をしているかどうかの意思確認をするのは当然のことでしょう。
1回目の自己破産の理由から、その後の借金に至るまでの経緯。現在の借金の状況などについて細かい質問がされます。
小さなことも厳しく追及されることも
自己破産するにあたり、さまざまな問題を抱えているかと思われます。
生活費を上手く管理できなかった、ネットショッピングを利用しすぎた、趣味に使っていたなど。誰にでもあることでしょう。
これらの問題は1回目の自己破産であれば、細かく追及されることなく見逃してもらえることもあります。
しかし、2回目では「なぜそうなったのか?」「そうならないためになぜ注意ができなかったのか?」などと厳しい言葉をかけられることも。
どんな答えを返すかによっては、免責不許可事由があると判断されたり免責そのものが受けられなくなったりもしますから注意してください。
管財事件の扱いとなる可能性が高い
2回目の自己破産の場合、「管財事件」の扱いとなる可能性が高くなるでしょう。
自己破産には同時廃止と管財事件という2種類の手続きがあり、財産がほとんどない方であれば同時廃止となるのが一般的です。手続きも比較的簡単なうえに費用も2万円ほどで済みます。
それに対して、必要以上に財産を持っていたり免責不許可事由に該当したりすると同時廃止ではなく管財事件になります。
しかし、ここで知っておきたいのが2回目の自己破産の場合は財産がなくても「免責不許可事由の可能性がある」と判断されて、破産管財人を立てられる可能性が高くなることです。
調査や観察を十分に進めることで免責をすべきかどうかを決定し、最低でも50万円以上(少額管財事件であれば20万円以上のお金も必要になってきます。
裁判所にも何度か足を運ばなくてはなりませんし、期間は最低でも半年以上はかかるでしょう。そして、調査を妨害すれば免責不許可事由に該当しますし、事実を知られたくがないために虚偽の申請をするのも同様です。
虚偽が発覚すれば、破産管財人は「免責を許可すべきではない」という意見を裁判所に提出。そして、免責自体が認められなくなってしまいます。
1回目の自己破産から7年が経過していない場合
1回目の自己破産から7年が経過していないけれども、どうしても借金が増えて支払いができないということも考えられるでしょう。
しかし、これまでにもお伝えしたように、1回目の自己破産から7年が経過していない場合はそれだけで免責不許可事由となってしまいます。
それでは諦めて何とか支払いを続けなくてはならないのか?となると、一概にはそうなりません。
なぜなら以下のようなケースであれば、2回目の自己破産が7年以内にできる(裁判官によって免責を受けられる)可能性があるのです。
7年以内で自己破産が認められる可能性があるケース
・病気や怪我によって、働くことが困難になった場合
・どうにもならない事情があって仕事をすることができない場合
→母子家庭で子どもの預け先が見つからない
・失業によって次の仕事が見つからない場合
人それぞれに事情はさまざまですが、浪費やギャンブルが理由でなければ、2回目の自己破産が7年以内の場合でも認められるケースはあります。
弁護士に受任通知を送ってもらい7年が経過するのを待つ
1回目の自己破産から7年が経過していない場合、先に弁護士へ依頼して債権者へ受任通知を送ってもらうという方法もあります。
弁護士が債権者に受任通知書を送られた時点で債務者への督促は完全にストップ。その後は生活を立て直す期間となるため、返済をしなくても大丈夫です。
そして、返済が止まっている間に7年が経過するのを待ち、その時点で申立をすれば免責不許可事由に該当しません。
しかし、弁護士が受任通知を送ることで督促が止まるのは最長でも1年程度とされていますので、この方法は7年の経過が比較的近いケースにのみ有効となるでしょう。
あまりにも長引くと債権者からの督促が来てしまうため、弁護士介入の状態が維持できなくなります。
もしも1回目の自己破産から6年以上が経過、あと少しで7年という場合は弁護士と申し立てのタイミングを相談のうえ調整してみると良いでしょう。
自己破産ではなく個人再生や任意整理も検討する
1回目の自己破産から6年以上が経過していない場合、前の項目で説明した弁護士介入によって7年の経過を待つという方法は使えません。
そうなると次に検討するのが個人再生や任意整理などの他の債務整理の方法です。
借金の金額が大きければ、個人再生を行うことで借金の返済額は大幅に減額。支払いの負担は楽になることが考えられます。また、借金の金額は大きくないけれど、毎月の収入が少ないために支払いが困難となっている場合は任意整理を検討してみると良いでしょう。
借金の利息の支払いをカットしてもらって、さらに返済期間を延すことで毎月の支払いをおさえられれば何とか継続できる可能性も出てきます。
もちろん、そうすることなく個人再生や任意整理によって借金を完済できれば問題は解決されるので、その場合は特に何もすることはありません。
3回目の自己破産も可能なのか?
自己破産は人生の中で1回きりなどの制限はありませんから、申請は何回でもできます。
そもそも自己破産の制度は救済の意味合いが高いこともあり、返済ができない状況に陥った場合は回数関係なく利用することができるのです。
とは言っても、自己破産の回数が増えていくごとに免責の条件が厳しくなるのは当然のこと。1回目が浪費で自己破産となり、2回目はギャンブルなどが原因で再度自己破産になった場合は裁判所も厳しく対応するでしょう。
よって、2回でも3回でもそれ以上の申請もできますが、免責不許可事由に引っかかる可能性は極めて高いのです。また、費用も回数を重ねればそのぶんだけかさんでしまいます。
安易に自己破産ができるとは思わずに、同じことはもう絶対に繰り返さないくらいの危機感や決意を持った生活をするようにしてください。
2回目の自己破産を成功させるためには?
2回目の自己破産は1回目以上に手続きが複雑になりますし、免責の決定が得られるかどうかの判断も厳しくなります。
また、債権者や裁判所に配慮しなければならないことも多くありますから、成功させるには個人の力のみで行うことはおすすめできません。
まずは借金問題に詳しい専門家に相談。アドバイスをもらうことで、より効率的に借金解決ができるかどうかを検討するのが良いでしょう。
なお、借金問題の手続きを進めることができるのは弁護士か法務省からの認定を受け認定司法書士のみです。認定司法書士ではない単に司法書士である場合は債務整理の受任ができないため、借金問題の解決にはつながりません。
自己破産に追い込まれないためには?
自己破産は誰かしらに迷惑をかける行為だということを忘れてはいけません。
自己破産に追い込まれないためにできることをまとめておきますので、今後の生活の中で取り入れてみてください。
第三者の力を借りて治療を行う
1回の自己破産であれば仕方のないこととして済まされるかもしれませんが、自己破産を安易に繰り返そうとする方は何かしらの問題を抱えている可能性があるかもしれません。
浪費やギャンブルによって自己破産となったものの、また同じことを繰り返しているようでは依存や中毒に陥っていることも十分に考えられるのです。
自分自身ではそうではないと思っていても、こうした症状が見られる場合は病院やカウンセラーなどの力を借りるようにしましょう。
依存も中毒が改善されるまでの道のりは決して簡単なものではありませんが、適切な治療を受けることで症状は劇的に改善されるはずです。
借金につながらない状態を生活に取り入れる
クレジットカードを持たない、気軽に利用できるカードローンやフリーローンを申し込まないなど。借金につながらない状態を普段の生活に取り入れておくのも得策でしょう。
最近はインターネットショッピングをする機会も増えているので、クレジットカードがないのは困る!となるかもしれません。また、高速道路を利用する方でしたら、クレジットカードの付帯サービスのETCカードも必要に感じるでしょう。
そんなときは銀行口座から即時決済となるデビットカードを利用すれば良いですし、最近増えているチャージ式のプリペイドカードも使えます。
ETCカードのみであれば、家族カードを利用するかクレジットカードを持たずに発行できるETCパーソナルカードを利用するなど。
少し探してみれば選択肢は思った以上に多いことがわかりますから、普段から借金をしない生活を心がけるようにしてください。
まとめ
2回目の自己破産の条件をはじめ、どうすれば免責許可がおりるのかなどについて解説しました。
最後にポイントを振り返ってみましょう。
・自己破産は2回目でも3回でも申請することは可能だが、免責許可を受けてから7年が経過していることが必須条件となる!
・借金の返済が不可能となった内容や理由に「浪費、本人の努力不足がある場合」は免責の許可がおりないため要注意!
・2回目の自己破産を成功させるためには借金問題に詳しい弁護士が鍵になる場合も!
とにかく、2回目の自己破産は1回目以上にハードが高くなります。また、裁判所からの免責許可をもらうこともそう簡単にはできないことなのです。
なかなか一歩前に踏み出すことは勇気が必要ですし、気が引けることもあるかもしれません。しかし、やってみないことには状況が変わることもないでしょう。
どんな結果になるのかは裁判所の判断にはなりますが、今後は同じことを繰り返さないように生活することを心がけて行ってください。