マーケティング調査/解説

政府統計を記事や資料に引用するルール|出典の書き方と加工時の表示

政府や自治体が公表している統計データを自社の記事や提案資料に使うときのルールを、各サイトの利用規約の記載から整理します。申請が要らないのはどこまでか、出典の書き方、グラフに作り直したときに書き足すこと、サイトによって準拠する規約の版が違う現状までを扱います。

政府や自治体が公表している統計データは、個別の許諾を取らなくても、自社の記事や提案資料、広告に載せられます。商用利用も認められています。ただし無条件ではなく、出典を記載することと、自分で加工したならその旨を別に記載することが条件として書かれています。

つまずきやすいのは、ここで従うべき規約が1種類ではないところです。デジタル庁が示している最新の雛形と、実際の統計サイトが宣言している雛形は、今日の時点で版がそろっていません。「この版を覚えておけば全部通る」という形にならないため、使うサイトごとに利用規約のページを1枚開くという手順になります。

もう1つは、「自由に利用できる」と書かれている対象が公表済みの統計表までだという点です。回答票そのものにあたるデータは別の経路で、申出の手続きが必要になります。

この記事では、どこまでが手続きなしで使える範囲なのか、出典に何を書くのか、グラフに作り直したときに何が増えるのか、そしてサイトごとに違う規約の版をどう確認するのかを順に整理します。確認日は2026年10月29日です。参照したページに記載を見つけられなかった項目は、推測で埋めずに記事の後半へまとめました。

まず分かれるのは「公表された統計表」と「調査票情報」

同じ「政府統計のデータを使いたい」という相談でも、指しているものが2つに分かれます。この区別を先に付けないと、必要な手続きの話がかみ合いません。

1つは、e-Stat や各府省のサイトで誰でも閲覧・ダウンロードできる統計表、時系列データ、グラフです。こちらは利用規約に従う限り、申請の手続きはありません。e-Stat の利用規約は「どなたでも以下の1)~6)に従って、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能です。」と記載しています。会員登録も、事前の連絡も要りません。

もう1つは、個々の回答票にあたるデータです。e-Stat の「ミクロデータの利用」では、「調査票情報の利用」「オーダーメード集計の利用」「匿名データの利用」の3つが案内されており、新規登録から事前相談・申出を経て利用開始という流れが示されています。公表済みの統計表のように、見つけたその日に記事へ載せられるものではありません。

使いたい政府統計のデータが公表済みの統計表なら申請の手続きはなく利用規約に従えばよく、調査票情報や匿名データなら新規登録から事前相談・申出を経て利用開始という手続きが必要になることを左右に分けた分岐図
どちらのデータを使うのかで、必要な手続きが分かれます。右側の利用の要件そのものは、参照した案内では確認できませんでした。 出典:e-Stat「当サイトのコンテンツについて」・e-Stat「ミクロデータの利用」(確認日 2026-10-29)

マーケティングの調査で必要になるのは、ほとんどの場合は左側です。市場の規模や世帯あたりの支出のような集計値は公表済みの統計表から読めます。公表統計から市場規模を見積もる側の手順は、市場規模の調べ方|公表統計と検索需要から見積もる手順にまとめています。この記事はその続きで、見つけたデータを外に出す側の決まりを扱います。

使う前に見るのは、そのサイトの利用規約ページ1枚

ここが実務でいちばん効く部分です。「政府のデータだから政府標準利用規約」という覚え方は、今日の時点では正確ではありません。

デジタル庁の「オープンデータ」のページには、公共データ利用規約(第1.0版)が置かれており、本体の掲載日は2024年7月5日と書かれています。解説も同じ日付、英訳の掲載は2024年11月22日です。従来の政府標準利用規約(第2.0版)は、同じページで参考として並んでいます。e-Govデータポータルの側でも、公共データ利用規約について「国又は地方公共団体等の公的機関のWebサイトやオープンデータに適用できるコンテンツの利用規約(ルール)です。」と説明され、令和6年7月5日の改正として記録されています。

ところが、実際の統計サイトの記載は追いついていません。e-Stat の利用規約には「本利用ルールは、政府標準利用規約(第2.0版)に準拠しています」とあり、国土交通省の国土数値情報ダウンロードサイトの利用規約も標題が「政府標準利用規約準拠版」で、本文に同じ準拠の記載があります。

参照先 宣言している利用ルール ページに書かれていた日付
デジタル庁「オープンデータ」 公共データ利用規約(第1.0版) 本体の掲載日 2024年7月5日
政府統計の総合窓口(e-Stat) 政府標準利用規約(第2.0版)に準拠 このルールを定めた日 平成28年1月29日
国土数値情報ダウンロードサイト 政府標準利用規約(第2.0版)に準拠 制定 令和2年4月1日

日付は各ページの表記のまま並べています。e-Stat のルールを定めた日は、公共データ利用規約が示される前のものです。最新の雛形が出たあとも、個別のサイトは以前の版への準拠を宣言したままだと分かります。どちらが正しいかを自分で決める必要はありません。利用者が従うのは、データを取ったそのサイトが掲げているルールです。だから手順は「どの版が最新か」ではなく「このサイトは何と書いているか」を見る形になります。

確認すべき点は、版だけではありません。e-Stat の利用規約は6項目に分かれており、自由に利用できるという原則のほかに、権利の処理と対象外のコンテンツについての記載があります。

自由に利用できると書かれたデータでも、宣言されている利用規約の版、第三者が権利を持つ部分の有無、規約の対象から外れるロゴやキャラクターデザインという3つの層を順に確認する必要があることを上から並べた階層図
利用規約のページで順に確認する3つの層です。2層目と3層目は、規約の本文に書かれている例外にあたります。 出典:e-Stat「当サイトのコンテンツについて」・デジタル庁「オープンデータ」(確認日 2026-10-29)

2層目は第三者の権利です。e-Stat の利用規約は、第三者が著作権その他の権利を有している場合、その権利の処理は利用者の責任になるという立て方をしています。国のサイトに載っているからといって、国がすべての許諾を代わりに出しているわけではありません。白書や報告書に引用された民間の図表が典型で、こういう素材はそのページ全体と同じ扱いにできません。

3層目は、規約の対象から外れるコンテンツです。e-Stat の利用規約には、組織や特定の事業を表すシンボルマーク、ロゴ、キャラクターデザインなどには別の利用ルールが適用される場合があると書かれています。統計の数値は自由に使えても、そのページに並んでいる省庁のロゴを切り出して資料に貼るのは同じ話ではない、ということです。

書き足すものは、加工したかどうかで変わる

ここからが出典の書き方です。規約の求めは2段になっています。

1段目は出典の記載です。e-Stat は記載例として「出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)」を挙げています。国土数値情報の側は「出典:国土交通省国土数値情報ダウンロードサイト(当該ページのURL)」と、もう少し詳しい「出典:「国土数値情報(○○データ)」(国土交通省)(当該ページのURL)(○年○月○日取得)」の2通りを示しています。後者には取得日が入っているのが目を引きます。

2段目は、編集・加工したときの記載です。これは出典とは別に書くことが求められています。e-Stat の記載例は「「○○調査結果」(A省)を加工して作成」、国土数値情報は「「国土数値情報(○○データ)」(国土交通省)(当該ページのURL)を加工して作成」と「…をもとに○○株式会社作成」です。あわせて、編集・加工した情報を、あたかも国(又は府省等)が作成したかのような態様で公表・利用してはいけないと明記されています。

数値や表をそのまま引用する場合は出典だけでよく、グラフに作り直すなど加工する場合は出典に加えて加工した旨の記載が必要になることを、e-Statと国土数値情報の公式の記載例を左右に並べて比較した図
そのまま引用する場合と加工する場合で、書き足すものが変わります。左右の文面は各サイトが示している記載例です。 出典:e-Stat「当サイトのコンテンツについて」・国土交通省「国土数値情報ダウンロードサイトコンテンツ利用規約」(確認日 2026-10-29)

この2段目は、自社のコンテンツを作るときにほぼ必ず該当します。統計表の数字をそのまま表として載せるだけで終わることは少なく、必要な行だけを抜き、単位をそろえ、自社の配色で棒グラフに描き直す、という工程が入ります。その時点で加工です。出典だけ書いて済ませている資料は、この2段目が抜けている状態になります。

やりたいこと 見るページ そこで確認できること
統計表の数値を記事に引用する そのサイトの利用規約ページ 準拠している規約の版、出典の記載例、対象外のコンテンツ
自分でグラフに作り直して載せる 同じページの編集・加工の項 加工した旨の記載例、国が作成したように見せない決まり
個票レベルのデータを分析に使う e-Stat「ミクロデータの利用」 調査票情報・オーダーメード集計・匿名データという3つの経路と申出手続き
グラフを含む報告資料を会議の席で広げているイメージ写真
統計を自社の資料へ作り直す場面のイメージです。特定の統計サイトの画面を写したものではありません。写真:RDNE Stock project(Pexels)

数値そのものに著作権はない。それでも出典を書く理由

ここで混同されやすい点を分けておきます。e-Stat の利用規約には、数値データ、簡単な表・グラフ等のデータは著作権の対象ではないため、これらについては自由に利用できるという趣旨の記載があります。つまり、数字そのものは著作物として保護されていないという前提です。

そう書かれているのに出典の記載が求められるのは、著作権とは別に、利用規約という約束の側で定めているからです。e-Stat は本ルールがクリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0国際(CC BY 4.0)と互換性を持つとしています。CC BY は、自由な利用を認めるかわりに表示を求める形のライセンスです。同じ構造が規約に入っていると読めます。

当サイトとしては、ここに実務上の理由を2つ足しています。1つは、統計は改定されることです。確報への差し替えや遡及改訂で、同じ表の同じセルの数字が後から変わります。出典に取得日まで書いておけば、数字が合わなくなったときに「古い版を見ていた」のか「書き写しを間違えた」のかを切り分けられます。国土数値情報の記載例に「(○年○月○日取得)」が含まれているのは、この用途に合っています。

もう1つは、読者が同じ数字に到達できることです。出典が「総務省」だけだと、読者はその数字を自分で確かめられません。府省名、調査名、ページのURL、取得日まで並べて初めて、同じ経路をたどれます。自社で実施した調査の結果を公表する側の決まりは、自社調査の結果を公表するときの注意点|景品表示法から見た根拠と調査概要で扱っています。他者のデータを引く場合と、自分のデータを出す場合で、確認する法令が変わります。

民間の調査レポートは、この規約の外にある

最後に範囲の話です。ここまでの利用規約が適用されるのは、その府省等のウェブサイトが公開しているコンテンツです。e-Stat の利用規約も「当サイトで公開しているコンテンツ」を対象として書かれています。

したがって、民間の調査会社が公表したレポート、業界団体の資料、他社のプレスリリース、ニュースメディアの記事は、この規約の対象になりません。無料で読めたとしても、政府のデータと同じ感覚で表を転載してよいことにはなりません。それぞれの発行元が示している転載の条件を個別に見るか、著作権法の引用の要件に照らして判断することになります。引用の要件そのものは、今回参照した一次情報の範囲外なので、この記事では扱いません。

公開されている情報源を使って競合や市場を調べる側の手順と情報源は、競合調査のやり方|公開情報だけで確かめる手順と情報源にまとめています。どの情報源が公表されたものなのかを先に押さえておくと、この記事の規約の話を当てはめやすくなります。

今回参照したページで確認できなかったこと

推測で埋めないために、参照した範囲で記載を見つけられなかった項目を残します。

どこからが編集・加工にあたるのかの線引きは確認できませんでした。規約の文言は「編集・加工等」までで、必要な行だけを抜き出すこと、単位を千円から百万円へ変えること、複数の表を足し合わせて別の指標を作ることが、それぞれ加工に入るのかは示されていません。判断に迷う場合は、加工した旨を書いておくほうが規約の求めから外れません。

公共データ利用規約(第1.0版)と政府標準利用規約(第2.0版)の条文上の違いも確認できませんでした。デジタル庁のページに両方が置かれていることと、第1.0版の掲載日は読み取れましたが、本体と解説はPDFで提供されており、本文の比較は今回の参照範囲に含めていません。したがって「版が変わると出典の書き方も変わるのか」は、この記事では答えられません。

各府省が第1.0版へ切り替える時期も示されていません。e-Stat と国土数値情報が第2.0版の準拠を掲げたままである理由や、移行の期限にあたる記載は見つけられませんでした。出典に取得日を書くことが必須なのか推奨なのかも判断できません。e-Stat の記載例には取得日が入っていない形があり、国土数値情報の記載例には入っている形があります。例が複数あるだけで、どちらかを必須とする文言は確認できませんでした。

調査票情報の利用の要件も、参照した案内のページには具体的に書かれていませんでした。手続きの流れと3つの経路までは確認できますが、どのような立場の人が何の目的で申し出られるのかは、別の案内で確かめる必要があります。

まとめ

公表されている政府統計の統計表は、申請なしで記事や資料、広告に使えます。商用利用も認められています。ただし条件が2つあり、出典を記載すること、編集・加工したならその旨を出典とは別に記載することが規約に書かれています。加工した情報を国が作成したかのような形で出すことは禁じられています。

同じ「政府のデータ」でも、回答票にあたる調査票情報、オーダーメード集計、匿名データは別の経路です。新規登録から事前相談・申出を経て利用開始という流れで、見つけたその日に載せられるものではありません。

従う規約は、データを取ったそのサイトが掲げているものです。デジタル庁は公共データ利用規約(第1.0版)を2024年7月5日付で掲載していますが、e-Stat と国土数値情報は政府標準利用規約(第2.0版)への準拠を宣言したままです。版を記憶するのではなく、使うサイトの利用規約ページを1枚開く手順にしてください。あわせて、第三者が権利を持つ部分と、ロゴやキャラクターデザインのように規約の対象から外れるコンテンツがあることも、同じページで確認できます。

出典には府省名、調査名、ページのURL、取得日まで入れておくと、統計が改定されたときに原因を切り分けられ、読者も同じ数字に到達できます。数値そのものは著作権の対象ではないと書かれていますが、表示を求めるのは規約とライセンスの側の約束です。保護の有無と、書く義務の有無は別の話として扱ってください。

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