マーケティング調査/解説

自社調査の結果を公表するときの注意点|景品表示法から見た根拠と調査概要

自社で行ったアンケートや比較調査の結果を広告やプレスリリースに載せるときの確認点を、景品表示法の不当表示の区分、合理的な根拠として求められる2つの要件、表示文と調査がずれる場所、公表側に出す調査概要の項目まで整理しました。

自社でアンケートを取り、その結果を広告やプレスリリースに載せる。ここで確認することは、調査の作り方とは別の話になります。結果を外へ出した瞬間に、その数字は社内の調査記録ではなく、商品やサービスについての表示として読まれます。表示には景品表示法がかかり、求められれば裏付けとなる資料を出すことになります。公表の作業を調査の延長として扱うと、この切り替わりに気づけません。

この記事は、自社調査の結果を公表する直前に確認する順番を整理したものです。最初に、公表した数字が不当表示のどの区分に関わるのかを見ます。次に、根拠として認められる条件が消費者庁の資料でどう書かれているかを確かめ、表示文と調査の中身がずれる場所を3か所に分けます。そのうえで、公表するページに出す項目と、社内に残しておく資料を分けます。

扱うのは一般的な考え方と、公表されている資料の読み方です。個別の文面が違法かどうかの判断ではありません。表示は商品や文面の全体から判断されるため、際どい言い方が残る案は、公開前に社内の法務や弁護士へ回してください。

公表した時点で、調査ではなく表示になる

消費者庁は、景品表示法で禁じられる不当表示を3つに分けて説明しています。品質や規格などの内容についての優良誤認表示、価格や取引条件についての有利誤認表示、そして内閣総理大臣が指定する表示です。自社調査の結果は、このうちどれにでも関わり得ます。満足度や効果の割合は内容の話、費用や条件の話は取引条件の話になります。

どのくらいの精度で見られるのかは、消費者庁が挙げている例から分かります。優良誤認表示の例として挙げられているのは、カシミヤ混用率が80%程度のセーターに「カシミヤ100%」と表示した場合です。表示と実際が違っていれば、書いた側に悪意があったかどうかとは別に問題になります。調査結果の場合、数字そのものは集計のとおりでも、その数字が指している範囲が文面とずれていれば、同じ形で問題になります。

区分 消費者庁の説明 自社調査の結果が関わる場面
優良誤認表示(第5条第1号) 商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示 満足度、効果を実感した割合、他社の商品との比較
有利誤認表示(第5条第2号) 商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示 費用が下がったと答えた割合、条件の有利さに関する集計
指定告示(第5条第3号) 内閣総理大臣が指定する表示 第三者に書いてもらった記事や投稿、口コミの依頼

区分と説明は消費者庁の表示規制の概要から取り、右の列は当社が整理したものです。自社調査を使うときは、まず自分が書こうとしている文がどの行に当たるのかを決めます。そこが決まらないうちは、どの資料を手元に置いておくべきかも決まりません。

根拠として認められる条件は、2つに分かれている

消費者庁は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとしています。そして、提出した資料が合理的な根拠と認められるためには、2つの要件を満たす必要があるとしています。1つは「提出資料が客観的に実証された内容のものであること。」、もう1つは「表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。」です。

この2つは、見ている対象が違います。前者は調査そのものの話です。だれに、どう聞いて、どう集計したのかを示せる形になっているかを見ます。後者は調査と文面の関係の話です。調べた内容と、広告に書いた言葉が同じことを指しているかを見ます。社内では前者だけを気にしがちですが、実務で引っかかるのは後者です。調査会社に頼んだ調査でも、公表の段で文面を強くした時点で対応が崩れます。

ここを分けて考えると、直し方が変わります。要件②の側でずれているなら、調査をやり直す前に、表示文を調べた範囲まで戻すという選択肢があります。「利用者の満足度」を「2年以上の継続利用者への調査」に書き換えるのは、費用のかからない修正です。一方で、調査の設計そのものに戻らないと直せないずれもあります。公表を止める前に、どちらなのかを見分けます。

関係図。左に広告やプレスリリースへ書く表示文、右に手元の調査結果を置き、中央に2つの要件を置いて、両方そろって初めて合理的な根拠になることを示した図
要件①は調査の側、要件②は文面と調査の対応を見ています。左右のどちらに原因があるかで、直す場所が変わります。 出典:消費者庁「不実証広告規制」(確認日 2026-10-06)/左右の箱の項目は当社の整理

表示文と調査がずれるのは3か所

ずれは、たいてい決まった場所で起きます。だれに聞いたか、何を聞いたか、何を分母にしたか、の3つです。

だれに聞いたかのずれは、回答者の条件が文面から落ちることで起きます。長く使っている顧客に聞いた満足度を、利用者全体の評価のように書けば、読み手はこれから買う人の評価として読みます。自社の顧客リストへ送った調査は、すでに自社を選んだ人の集まりです。この偏りは調査の欠陥ではなく、調査の条件です。条件を文面に書けば、調査はそのまま使えます。

何を聞いたかのずれは、言い換えで起きます。「また使いたいか」への回答は、使い続ける意向です。これを「効果を実感した割合」と書くと、聞いていない効果の話になります。設問文の言葉のまま書くのが、いちばん安全で、しかも読み手にとって分かりやすい形です。社内の企画書で短くまとめた表現が、そのまま公表文へ流れていく事故が多いので、公表する文は設問文と並べて確認します。

テーブルの上の質問票に、ペンで回答を記入している手元
公表する数字は、回答者が読んだこの設問文から生まれています。文面を点検するときは、集計表ではなく質問票と並べます。イメージ画像です。写真: RDNE Stock project(Pexels)

何を分母にしたかのずれは、割合の計算で起きます。設問に答えた人だけを分母にした割合を「回答者の◯割」と書けば、分母は回答者全体だと読まれます。分母を変えれば割合は動くので、数字のすぐ横に分母を置きます。

左右比較の図。だれに聞いたか、何を聞いたか、何を分母にしたかの3つの観点について、調べた範囲を超えている文と、調べた範囲で止めた文を作例で対比した図
どれも同じ調査から書ける文ですが、右は調べた範囲で止めています。作例は当社が作ったもので、実在の表示ではありません。 照合の枠組みの出典:消費者庁「不実証広告規制」(確認日 2026-10-06)

No.1表示は、考え方が実態調査の報告書にまとまっている

調査結果の公表で、いちばん強い言い方になるのが順位の表示です。顧客満足度や人気といった言葉を使った表示について、消費者庁は令和6年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しています。自社調査から順位や第1位を出そうとしているなら、文面を作る前にこの報告書を読む段を入れてください。当サイトでは報告書の中の数値をここに引かず、一覧ページへの導線だけを置きます。

実態調査の報告書は、表示の種類ごとに出ています。自社が出そうとしている表示に近いものがあれば、そこに整理された考え方から、社内の点検項目をそのまま作れます。

公表日 報告書の名称
令和8年8月20日 環境ラベルに関する実態調査報告書
令和7年4月30日 買取サービスに関する実態調査報告書
令和6年9月26日 No.1表示に関する実態調査報告書
平成30年6月7日 広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書
平成30年5月16日 スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
平成29年7月14日 打消し表示に関する実態調査報告書

名称と公表日は、消費者庁の実態調査の一覧の表記のまま載せました(確認日 2026-10-06)。いちばん新しい環境ラベルの報告書は令和8年、つまり2026年8月の公表です。打消し表示の報告書が2本あることは、注記の扱いが以前から見られている論点だと示しています。小さな文字で条件を添えれば足りる、とは考えないほうがよい領域です。調査の条件は、注記ではなく数字の近くに置きます。

第三者に書いてもらうときは、もう1つ規制が重なる

調査結果を広める段で、社外の人に紹介してもらうことがあります。ここには別の規制がかかります。消費者庁は、令和5年10月1日から、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すいわゆるステルスマーケティングが景品表示法違反になるとしています。対象はインターネット上の表示だけではなく、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等の表示も含まれます。

押さえておくのは、規制の対象になるのが商品・サービスを供給する事業者、つまり広告主の側だという点です。依頼を受けた人ではなく、依頼した側が見られます。調査結果の紹介を社外の人へ頼むなら、広告であることが分かる形で出してもらうところまでが自社の仕事になります。依頼した事実と、どう表示してもらったかの記録も残します。自然に集まる口コミとの線引きは口コミマーケティングの進め方でも扱っています。

公表するページに出す項目と、社内に残す資料

公表の準備は、2つの置き場所に分けると迷いません。読み手が数字の範囲を確かめられるようにするものは、公表するページに出します。あとから根拠として説明するためのものは、社内に残します。

公表側に出すのは、調査主体と委託先の名前、調査方法、回答者の条件と集めた方法、調査期間、有効回答数と割合の分母、そして表示に使った設問文です。これらを数字の近くに置きます。別のページの注記にまとめると、数字だけが切り取られて引用されたときに条件が落ちます。

社内に残すのは、回答の元データと集計の手順、質問票の全文、どの数字がどの設問から来たかの対応表、調査会社とのやり取り、第三者へ依頼したときの記録です。対応表は作るのに時間がかかりませんが、これが無いと、半年後に自分の会社の数字の出どころを説明できなくなります。担当者が替わったあとに効いてくるのは、この1枚です。

チェックリストの図。公表するページに出す6項目と、社内に残して求められたときに出す6項目を2列に分けた図
左は読み手のため、右は後から説明するためのものです。項目の並びは当社の整理で、資料の提出を求められる仕組みの出典は消費者庁「不実証広告規制」です(確認日 2026-10-06)。

公表で使う予定があるなら、設計の段で決めておく

公表の段で文面を削ることになる原因は、たいてい設計の段にあります。聞く相手を自社の顧客だけにした、設問を社内の言葉で書いた、分母を決めずに割合だけ出した。どれも調査としては成り立ちますが、公表で使える範囲が狭くなります。外へ出す予定があるなら、設問を作る時点で「この数字をどう書くつもりか」を1行書いておきます。設問の点検のしかたはアンケート調査の作り方に、他社と並べるときの情報源の決め方は競合調査のやり方にまとめました。公表した数字を社内の指標として扱うなら、KPIレポートの作り方の側で定義を固定します。

公表した数字は、社内の資料と違って後から静かに直せません。だから、調べた範囲で止めた文を書くほうが結局は早く済みます。調査結果の公表は、強く言うための作業ではなく、言える範囲を確定させる作業です。範囲まで書き切った文は、根拠を求められたときにそのまま説明できます。

この分野の実務を相談したい方へ

記事で扱っている内容は、当社が実務として支援している領域です。 自社で進めるか外部に任せるかの判断からご相談いただけます。

支援サービスを見る 相談する