広告や宣伝を目的とするメールは、あらかじめ相手の承諾を得ていることが前提になります。消費者庁の特定商取引法ガイドは、通信販売の電子メール広告について「消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者が電子メール広告を送信することを、原則禁止しています」と記載しています。承諾を取れば終わりでもありません。同じページは、承諾や請求を受けた場合は「最後に電子メール広告を送信した日から3年間、その承諾や請求があった記録を保存することが必要です。」としています。
つまり、同意は「取る」ものであると同時に「残す」ものです。名簿が増えたかどうかではなく、3年後に一人ひとりについて、いつ、どの画面で、何を見せて承諾を得たのかを説明できるかどうかが問われます。この記事では、承諾が必要になるメールの範囲、フォームで決めておくこと、確認メール(ダブルオプトイン)で変わる点、記録として残す項目までを順に整理します。確認日は2026年10月29日です。配信そのものの進め方はメールマーケティングのやり方|リスト獲得から配信・分析までにまとめています。
承諾が要るのは「広告または宣伝」のメール
規制がかかるのは、商品やサービスの広告・宣伝を行うためのメールです。注文を受けたことを知らせる連絡や、発送の通知そのものは、広告を目的としたメールではありません。最初に見るのは、送ろうとしているメールがどちらなのかという点です。
もうひとつ押さえておきたいのが、責任を負う範囲です。消費者庁のガイドは「この規制は、通信販売事業者(販売業者又は役務提供事業者)のみならず、通信販売電子メール広告受託事業者も対象となります。」と記載しています。配信を代行会社やツールに任せても、承諾の確認と記録が不要になるわけではありません。自社の名簿を渡して送ってもらう形であれば、どちらの側にも関わる話として設計しておく必要があります。
規制の対象外になる3つの類型
消費者庁のガイドは、オプトイン規制の対象外となるものとして3つを挙げています。1つめは「契約の成立、注文確認、発送通知などに付随した広告」です。2つめは「メルマガに付随した広告」で、消費者からの請求や承諾を得て送信する場合が挙げられています。3つめは「フリーメール等に付随した広告」で、無料メールサービスの利用条件として広告が記載される場合です。
実務でよく迷うのは1つめでしょう。注文確認メールの末尾に関連商品の案内を少し載せる、という形がこれにあたります。ただし「付随した」広告であることが前提で、連絡の体裁を借りた広告メールにしてしまえば、同じ扱いにはなりません。どこまでが付随かを社内で線引きできないのであれば、広告部分を承諾済みの相手だけに送る形へ寄せるほうが、後から説明しやすくなります。
対象外だからといって、何を書いてもよいわけでもありません。通信販売の広告には表示事項が定められており、その一覧には「電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス」が含まれます。あわせて同法は誇大広告等を禁止しており、消費者庁は「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止していると記載しています。承諾の有無とは別の軸として、本文の書き方にも制約がかかります。
承諾の記録は、最後に送信した日から3年
保存期間の起算点は、承諾を得た日ではなく最後に電子メール広告を送信した日です。配信を続けているかぎり起算点は先へ動き続けるため、3年前に登録した人であっても、先週配信していれば記録を持っていなければならない、という読み方になります。「3年たったから消してよい」と判断できるのは、その人への配信を止めてから3年が過ぎたときです。
同じガイドは、ファクシミリ広告についても同じ形の規定を記載しています。電子メールと期間が違うため、両方を運用している場合は並べて確認しておくと取り違えません。
| 広告の手段 | 記録を残す対象 | 保存期間 | 起算点 |
|---|---|---|---|
| 電子メール広告 | 消費者から受けた承諾や請求があった記録 | 3年間 | 最後に電子メール広告を送信した日 |
| ファクシミリ広告 | 消費者から受けた承諾や請求があった記録 | 1年間 | 最後にファクシミリ広告を送信した日 |
出典:消費者庁「特定商取引法ガイド|通信販売」(確認日 2026-10-29)
配信ツールの画面には、登録日と配信停止日は残っていても、「どの画面で何を見せて承諾を得たか」までは残らないことがあります。ツールの標準機能だけで3年分を説明できるかは、メルマガ配信ツールおすすめ比較|中小企業向けサービスを目的別に紹介で挙げた比較軸と同じ要領で、導入前に確かめておく項目です。
同意を取る画面で決めておくこと
承諾は、チェックボックスを1つ置けば成立するというものではなく、相手が何に同意したのかが分かる状態で得るものです。フォームを作る前に、次の4つを文章として決めておくと、後から説明しやすくなります。送信するのは誰か(社名とサービス名)、どんな内容を送るのか、どのくらいの頻度で送るのか、停止したいときはどうすればよいのか、の4点です。
同時に、業務上必要な連絡と、広告・宣伝のための配信を分けておきます。注文確認や契約内容の通知は、受け取らない選択ができない性質の連絡です。これを広告配信への同意と1つのチェックボックスにまとめてしまうと、何に承諾したのかを後から切り分けられません。登録フォームの時点で別の項目にしておけば、配信停止の処理も素直になります。
承諾を得た文面そのものも、更新のたびに上書きしないで版として残します。2年前に登録した人が見た説明文は、いまサイトに出ている説明文とは限りません。記録として意味があるのは、その人が実際に見た版のほうです。
確認メール(ダブルオプトイン)で変わること
ダブルオプトインは、フォーム送信のあとに確認メールを1通挟む方式です。Mailchimpはこれを「an extra confirmation step that checks each email address or phone number(メールアドレスや電話番号を1件ずつ確かめる、追加の確認手順)」と説明しています。同社のヘルプは「The confirmation email contains a unique URL that your potential subscriber must click before we can add them to your audience as a subscribed contact.(確認メールには固有のURLが入っており、購読者として追加する前に、登録しようとしている人がそれをクリックする必要がある)」と記載しています。
購読者として追加される時点が、フォーム送信ではなくクリックの時点へ移る、というのがこの方式の要点です。入力されたアドレスが実在して本人が受け取れること、そして本人に登録の意思があることを、同じ1通で確かめられます。他人のアドレスを打ち込まれた登録や、打ち間違いのまま残る登録は、購読者に追加されません。
Mailchimpは、購読者の活動データを確認できるようになることから、ダブルオプトインが開封率の改善に役立つ場合があるとも記載しています。ただしこれは、確認メールを入れれば数字が上がるという意味には読み替えられません。実際の結果は、送る内容、頻度、相手との関係で変わります。導入を決める理由は、数字の改善ではなく、承諾した本人であることを確かめられる点に置くほうが説明しやすいはずです。なお登録直後に送る案内の設計は、ステップメールとは?仕組み・作り方・マーケティング活用例で扱っています。
記録として何を残すか
法令が明示しているのは、承諾や請求があった記録を3年間保存することです。項目まで細かく並べられているわけではないため、何を残すかは自社で決めることになります。判断の基準は単純で、3年後に第三者へ経緯を説明できるかです。日時だけが残っていても、どの画面で何を見せたのかが分からなければ、説明にはなりません。
この6項目のうち、運用で抜けやすいのは説明文の版と、配信停止を受け付けた日時です。前者は、フォームの文言を変えた日を記録しておけば後から対応づけられます。後者は、停止の受付以降に送っていないことを示すために要ります。名簿を表計算で複製して配信している場合、古い複製から送ってしまう事故が起きやすく、停止の記録が1か所に集まっていないと、起きたこと自体に気づけません。配信可否の正本をどこに置くかは、記録を設計するときに一緒に決めておきます。
法律を満たしても、受信箱に届くとは限らない
承諾と記録の要件は、送ってよい相手を決めるものです。実際に受信箱へ入るかどうかは、受信側の事業者が別に公表している条件で決まります。Gmail ヘルプは「2024 年 2 月 1 日以降、Gmail アカウントに 1 日あたり 5,000 件を超えるメール送信する送信者は、このセクションに示す要件を満たしている必要があります。」と記載し、SPFとDKIM、DMARCの設定、TLS接続、マーケティングメールと登録メールでの「ワンクリックで登録解除できるようにし、メッセージ本文に登録解除のリンクをわかりやすく表示する必要があります。」を挙げています。
| 観点 | 特定商取引法の電子メール広告(消費者庁) | Gmailの送信者ガイドライン(Gmail宛て1日5,000件超) |
|---|---|---|
| 送る前の条件 | あらかじめ承諾または請求を受けていること | SPFとDKIMの設定、DMARCの設定、TLS接続 |
| 解除の扱い | 承諾や請求の記録を3年間保存すること | ワンクリックで登録解除でき、本文に解除リンクを明示すること |
| 迷惑メール報告 | 記載なし | Postmaster Toolsで報告される迷惑メール率を0.3%未満に維持すること |
出典:消費者庁「特定商取引法ガイド|通信販売」、Gmail ヘルプ「メール送信者のガイドライン」(確認日 2026-10-29)
迷惑メール率については、同ガイドラインは「迷惑メール率を 0.10% 未満に維持し、迷惑メール率が決して 0.30% 以上にならないようにします。」とも記載しています。承諾を得ていない相手への配信は、この数字を押し上げる要因になります。法令の話と到達の話は別々に見えて、入口は同じ名簿です。受信側の条件をもう少し詳しく見るなら、海外向け一斉配信の送信者要件|Gmail・Outlook・Yahooの公表条件にGoogle・Microsoft・Yahooの記載を並べています。
この記事で扱っていない範囲
ここまでは、消費者庁が公表している特定商取引法ガイドの記載にもとづいて、通信販売の電子メール広告についてだけ整理しました。広告メールには、総務省と消費者庁が所管する特定電子メール法の規制もあります。今回はその条文とガイドラインを一次情報として確認できていないため、本文では扱っていません。実際に配信を始める前には、こちらもあわせて確認してください。
取得したメールアドレスの取り扱いそのもの(利用目的の特定や安全管理)は個人情報保護法の領域で、これも別に確認が要ります。海外の受信者へ送る場合は、相手国の規制が重なります。この記事の範囲は、日本国内向けの電子メール広告について、承諾と記録をどう設計するかまでです。個別の案件についての判断は、専門家に確認してください。
配信前に確認する順番
最後に、ここまでの内容を実行する順番にまとめます。まず、送ろうとしているメールが広告・宣伝にあたるのかを決めます。あたる場合は、承諾を得た相手だけが対象になっているかを名簿の側で確認します。次に、その承諾がいつ、どの画面で、どの説明文のもとで得られたものかを記録から取り出せるかを見ます。取り出せないのであれば、記録の設計から直します。
そのうえで、本文に表示する事項と配信停止の導線を確認し、最後に受信側の条件(認証と解除の実装)を見ます。この順番で進めると、名簿の問題を本文の工夫で埋めようとする事故が起きにくくなります。メールマーケティング全体の中でこの工程がどこに位置するかは、メールマーケティングとは?見込み客・既存顧客を育成する方法で全体像として整理しています。
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