「売上を上げたい」という課題は大きすぎて、そのままでは打ち手が決まりません。売上を構成する要素に分解すると、どこに手を打つべきかが具体的になります。この記事では、分解の仕方と、要素ごとの施策、そして自社の状況に応じた優先順位の付け方を解説します。
売上を分解する
売上は、次の掛け算で表せます。
売上 = 集客数 × 成約率 × 客単価 × 購入頻度
事業によって呼び方は変わりますが、構造は同じです。訪問した人のうち何割が買い、1回あたりいくら使い、年に何回買うか。この4つのどれかが増えれば売上は増えます。
分解して考える利点は2つあります。ひとつは、打ち手が具体的になること。「売上を上げる」ではなく「成約率を上げる」なら、何をすべきかが見えます。もうひとつは、現状の弱点が分かることです。4つのうちどれが低いかを見れば、注力すべき場所が決まります。
集客数を増やす
最も分かりやすい打ち手ですが、費用と時間がかかります。
広告は最も速く、当日から流入が増えます。ただし止めれば止まります。検索からの流入は時間がかかりますが、費用をかけ続けなくても続きます。紹介・口コミは費用がかからず成約率も高い一方、意図的に増やしにくい経路です。
注意点として、集客数だけを増やすと成約率が下がることがあります。対象から外れた層を集めれば、訪問は増えても成果は増えません。集客を増やす際は、成約率も併せて確認します。
成約率を上げる
すでに来ている人を成果につなげる打ち手です。集客より投資対効果が高いことが多く、優先度は高くなります。
具体的には、判断材料を揃える(料金、対応範囲、進め方、実績)、問い合わせの入口を増やす、フォームの入力項目を減らす、返信を速くする、といった改善です。
Googleアナリティクスの公式ヘルプでは、重要な行動をキーイベントとして計測できると説明されています。成約率を扱うには、まず成果が正しく計測されている必要があります。
客単価を上げる
1回あたりの取引額を増やす打ち手です。
上位の選択肢を用意する:松竹梅の形で選択肢を作ると、中位が選ばれやすくなります。上位がなければ、比較の基準そのものが生まれません。
関連するものを提案する:本体と一緒に使うもの、後から必要になるものを案内します。
まとめて提供する:単品より、組み合わせのほうが顧客にとっても分かりやすい場合があります。
値上げを検討する:提供内容が変わっているのに価格を据え置いている場合、見直しの余地があります。ただし理由を説明できることが前提です。
客単価の改善は、集客を増やさずに売上を動かせるため、人手が足りない事業では特に有効です。
購入頻度を上げる
同じ顧客に何度も買ってもらう打ち手です。
次に買う理由を作る:消耗品なら補充の案内、サービスなら定期的な見直しの提案。
接触を保つ:メールや訪問で関係を切らさない。忘れられなければ、必要になったときに思い出されます。
満足度を確認する:納品後にアンケートを取り、問題があれば早めに対応します。不満のまま放置されると、次はありません。
既存顧客への働きかけは、新規獲得より費用がかかりません。にもかかわらず、多くの事業で手薄になっています。
優先順位の付け方
4つのうちどこから着手するかは、現状で決まります。
訪問はあるが問い合わせが少ないなら、成約率が最優先です。集客を増やしても、同じ割合で漏れ続けます。
問い合わせはあるが売上が伸びないなら、客単価か成約後の流れに原因があります。
リピートがないなら、購入頻度に手を打ちます。既存顧客への案内は、最も費用対効果が高い施策です。
そもそも訪問が少ないなら、集客に着手します。ただし受け皿となるページが説明不足なら、先にそちらを整えます。
判断には、Googleアナリティクスの公式ヘルプが説明するディメンション(属性)と指標(数量的な測定値)の組み合わせが使えます。経路別・ページ別に数字を分解すれば、どこが弱いかが見えます。
実行の前に確認する数字
打ち手を決める前に、次の数字を把握しておきます。
1件の成約から得られる利益:獲得にいくらまで使えるかの上限が決まります。
問い合わせから成約に至る割合:成約率の改善余地が分かります。
取引が続く期間と回数:初回だけでなく、取引期間全体の利益で考えられます。
これらを持たないまま広告費を増やすと、費用対効果を誰も説明できません。逆に、把握できていれば「単価が高い経路でも成約率が高ければ続ける」といった判断ができます。
4要素のつながりに注意する
要素は独立していません。ひとつを動かすと、他が影響を受けます。
集客数を増やすと成約率が下がることがあります。対象から外れた層を集めれば、訪問は増えても成果の割合は落ちます。集客を増やす際は、成約率を並べて確認します。
客単価を上げると成約率が下がることがあります。価格が上がれば、検討する人は慎重になります。上位の選択肢を追加する形なら、この影響を抑えられます。
購入頻度を上げようとして接触を増やしすぎると、解除や離脱を招きます。頻度と内容の質は両立させる必要があります。
つまり、ひとつの要素だけを追うと、全体の売上が伸びないことがあります。4つを並べて見ることが前提になります。
この記事のまとめ
売上は、集客数・成約率・客単価・購入頻度の掛け算に分解できます。分解すると、打ち手が具体的になり、現状の弱点も見えます。
多くの場合、集客を増やすより成約率と客単価に手を打つほうが費用対効果が高くなります。既存顧客への働きかけは最も費用がかからない領域ですが、手薄になりがちです。着手の前に、1件あたりの利益と成約率を把握しておきます。
短期と中長期の打ち手を分ける
売上の改善策は、効果が出るまでの時間が違います。並行して進めると、成果が途切れません。
すぐ効く打ち手は、既存顧客への提案、休眠顧客への再接触、問い合わせへの返信速度の改善、フォームの改善です。いずれも手元の資産を使うため、数週間で結果が見えます。
数か月かかる打ち手は、広告の運用改善、サイトの構成見直し、新しい選択肢の追加です。
半年以上かかる打ち手は、検索からの流入づくり、事例の蓄積、紹介が生まれる仕組みづくりです。
短期の打ち手だけでは、いずれ手元の資産を使い切ります。中長期の打ち手だけでは、その間の売上が持ちません。両方を並行させることが前提になります。
数字を追う頻度
売上の構成要素は、見る頻度を変えます。
週次で見るのは、問い合わせ件数と広告の消化状況です。異常があれば早く気づけます。
月次で見るのは、4要素すべてです。前月と比べ、どの要素が動いたかを確認します。
四半期で見るのは、施策の入れ替えです。続けるもの、やめるもの、新しく試すものを決めます。
頻度を決めておくと、日々の変動に振り回されず、必要なときに判断できます。
目標から逆算する
売上目標が決まっている場合、4要素に割り振ると必要な行動量が見えます。
たとえば売上を伸ばしたいとき、集客数だけで達成しようとすると、必要な訪問数が現実離れすることがあります。成約率と客単価も併せて動かす前提にすると、それぞれの必要な改善幅は小さくなります。
逆算の手順は次のとおりです。目標の売上を置き、現状の4要素の数字を並べ、どの要素をどれだけ動かせば届くかを試算します。実現可能な組み合わせが見つかれば、それが今期の計画になります。
見つからない場合は、目標が高すぎるか、事業の構造を変える必要があります。数字で確認せずに目標だけを掲げると、達成できない理由が分からないまま終わります。
出典と注記
ディメンションと指標の説明、キーイベントの設定は Google アナリティクス ヘルプの記載に基づきます。売上の分解方法と優先順位の考え方は、当社が支援の現場で用いている整理であり、公的に定められた手法ではありません。効果は業種・商材によって変わります。
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