コンバージョン率(CVR)は、訪問や表示に対して、どれだけの割合で成果が生まれたかを示す指標です。計算式は単純ですが、分母に何を置くかで数字が変わるため、比較のときに誤解が生じやすい指標でもあります。この記事では、計算方法と、数字を正しく読むための注意点、改善の優先順位の付け方を解説します。
計算方法と分母の選び方
CVRは「成果の数 ÷ 母数」で求めます。問題は母数に何を置くかです。
セッション数を分母にする場合、同じ人が複数回訪問すると、それぞれが分母に数えられます。訪問あたりの効率を見る指標になります。
ユーザー数を分母にする場合、同じ人の複数回の訪問は1として数えられます。人あたりの成約率を見る指標になります。
特定ページの閲覧数を分母にする場合、そのページを見た人のうち何割が成果に至ったかを見ます。ページ単位の改善では、この分母が最も使いやすくなります。
広告の表示回数やクリック数を分母にする場合、広告の効率を見る指標になります。
Googleアナリティクスの公式ヘルプでは、データがディメンション(属性)と指標(数量的な測定値)で構成されると説明されています。CVRは、成果の数という指標を、別の指標で割ったものです。どの数字を分母にしたかを明記しない限り、他の数字と比較できません。
社内で定義を揃える
CVRの議論が噛み合わない最大の原因は、分母の不一致です。
対策は単純です。レポートの様式に計算式を書き添えること。「CVR=問い合わせ数÷セッション数」と毎回同じ場所に書いておけば、解釈のずれは起きません。
もうひとつは、成果の定義を揃えることです。Googleアナリティクスでは重要な行動をキーイベントとして設定できると公式ヘルプで説明されています。何をキーイベントにしているかを関係者が把握していれば、「問い合わせ数」が何を指すかで揉めることはなくなります。
平均値と比べない
「業界平均のCVRはどのくらいか」という問いはよく聞かれますが、この比較はあまり役に立ちません。理由は3つあります。
分母の定義が違う:公開されている数値が、セッション基準かユーザー基準かも分からないことが多くあります。
成果の定義が違う:購入をコンバージョンとするサイトと、資料請求をコンバージョンとするサイトでは、数字の水準がまったく違います。
流入の質が違う:指名検索が多いサイトと、ディスプレイ広告が多いサイトでは、同じ商品でもCVRは大きく変わります。
比較すべきは他社ではなく、自社の過去の数字です。先月と今月、改善前と改善後を比べれば、施策の効果が判断できます。
数字を分解して読む
全体のCVRだけを見ても、改善の手がかりは得られません。分解して読みます。
経路別:検索、広告、SNS、直接アクセス、参照元別に分けます。経路によってCVRは大きく違い、平均値には意味がありません。
ページ別:どのページを経由した人が成果に至っているか。訪問数が多いページと、成果につながるページは一致しないことが多く、そのずれが改善点になります。
端末別:スマートフォンとパソコンで差が出る場合、表示や入力のしやすさに原因があることがあります。
新規と再訪別:初回で決める商材か、複数回の訪問を経て決める商材かで、施策の方向が変わります。
改善の優先順位
CVRを上げる施策は数多くありますが、着手の順番があります。
第一に、計測が正しいかを確認します。設定の漏れで成果が計測されていない、二重に計測されている、といったことは珍しくありません。数字が間違っていれば、改善の判断もすべて誤ります。
第二に、流入の質を確認します。CVRが低い原因が、ページではなく集客側にあることがあります。対象と違う層を集めていれば、ページをどれだけ直しても成果は出ません。
第三に、離脱している箇所を特定します。フォームの入力途中で離脱しているのか、料金を見た時点で離脱しているのか。段階ごとの通過率を見ると、手を入れる場所が決まります。
第四に、1箇所ずつ変更します。同時に複数を変えると、どれが効いたか分かりません。
よくある改善点
離脱の原因として頻繁に見つかるのは、次のような箇所です。
入力項目が多い:最初の接触に不要な項目まで必須になっていると離脱します。
次に何が起きるか書かれていない:送信後の流れが分からないと、送信をためらいます。
料金の情報がない:判断に必要な情報が無ければ、分かる会社を選びます。目安だけでも示すと変わります。
入口が1つしかない:問い合わせだけでなく、資料請求のような軽い入口があると接点が増えます。
スマートフォンで使いにくい:ボタンが小さい、入力欄が押しにくい、といった問題は実機で確認しないと気づけません。
数字が動かないとき
改善したのにCVRが変わらない場合、次のいずれかです。
母数が少なすぎる:訪問数が少ないと、数件の変動で率が大きく動きます。判断に足る量が集まるまで待ちます。
原因が別の場所にある:ページを直しても、集客の対象がずれていれば変わりません。
成果の定義が事業と合っていない:Web上の数字は動いていても、実際の受注につながっていないことがあります。受注数と突き合わせて確認します。
この記事のまとめ
CVRは「成果の数 ÷ 母数」で求めますが、分母によって意味が変わります。社内で定義を揃え、レポートに計算式を書き添えることが前提です。
比較すべきは業界平均ではなく自社の過去の数字です。改善は、計測の確認、流入の質の確認、離脱箇所の特定、1箇所ずつの変更という順で進めます。
少ない母数での判断
中小企業のサイトでは、訪問数も成果数も多くありません。この状況でCVRを見るときの注意点があります。
数件の変動で率が大きく動く:分母が小さいと、1件の増減で率が数割変わります。前月比の増減だけで判断すると、偶然の変動を施策の効果と誤認します。
期間をまとめて見る:月単位で判断が難しい場合、四半期でまとめると変動が平準化されます。
率より件数を見る:母数が小さいうちは、率の変化より件数の推移のほうが実態を表します。
変化の理由を記録する:施策の実施日、サイトの変更日を記録しておくと、後から数字の動きと突き合わせられます。記録がないと、変動の原因を推測するしかなくなります。
改善の記録を残す
CVR改善は、変更と結果を記録しなければ知見が蓄積しません。
残すべきは4項目です。何を変えたか、いつ変えたか、変更前の数字、変更後の数字。この4つがあれば、効いた施策と効かなかった施策が区別できます。
記録がないと、担当者が変わった時点で試行錯誤がゼロからやり直しになります。表計算ソフト1枚で足りるため、改善を始める前に用意しておきます。
見るべき頻度
CVRを毎日見ても、判断には使えません。適した頻度があります。
日次で見るのは、異常の検知だけです。急にゼロになっていれば、計測の停止やフォームの不具合が疑われます。
週次では、実施した施策の反応を確認します。ただし数字の増減で結論は出さず、傾向の確認にとどめます。
月次が判断の単位です。前月と比べ、施策と数字を突き合わせて次を決めます。
四半期では、施策の入れ替えを検討します。続けるもの、やめるもの、新しく試すものを決めます。
頻度を決めておくと、日々の変動に振り回されず、必要なときに判断できます。
出典と注記
ディメンションと指標の説明、キーイベントの設定については Google アナリティクス ヘルプの記載に基づきます。分母の選び方や改善の優先順位は、当社が支援の現場で用いている整理であり、公的に定められた基準ではありません。CVRの水準は業種・商材・流入経路によって大きく変わります。
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