マーケティングの現場では、同じ言葉が人によって違う意味で使われることがあります。会議で話が噛み合わない原因の多くは、意見の違いではなく用語の解釈のずれです。この記事では、実務で頻繁に出てくる用語を4分野に分けて整理します。公式の定義があるものは出典を示し、社内で使い方を揃える際の基準になる形にしました。
戦略まわりの用語
マーケティング:公益社団法人日本マーケティング協会が2024年に制定した定義では、「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである」とされています。同協会は、主体は企業だけでなく個人や非営利組織もなり得ると注釈しています。
ターゲット:施策を届ける相手の層。年齢や地域といった属性で区切る場合と、困りごとや利用場面で区切る場合があります。後者のほうが施策に落としやすくなります。
ペルソナ:ターゲットをさらに具体化した、架空の人物像。実在の顧客への聞き取りをもとに作るのが前提で、想像だけで作ると施策の判断がぶれます。
ポジショニング:競合と比べたときの自社の位置づけ。「何なら選ばれるか」を一言で言える状態にする作業を指します。
バリュープロポジション:顧客が求めていて、競合が提供できず、自社が提供できる価値。この3つの重なりを指す言葉です。
KPI:目標の達成度を測る中間指標。最終目標(売上など)に対して、途中で確認できる数字(問い合わせ数、資料請求数など)を置きます。
集客まわりの用語
リード:見込み客。名前と連絡先が分かっていて、まだ顧客になっていない相手を指します。
リードジェネレーション:リードを獲得する活動。資料請求、セミナー申込、問い合わせなどが該当します。
リードナーチャリング:獲得したリードとの関係を育て、検討段階を進める活動。メールや事例の提供などで行います。
SEO:検索エンジン最適化。Googleは公式ドキュメントで、検索がクロール(ページの発見と読み込み)、インデックス登録(内容の解析と保存)、検索結果の表示という段階で成り立つと説明しています。SEOはこの流れに自社のページを乗せ、適切に評価される状態を作る取り組みです。
オーガニック流入:広告費をかけずに検索などから来る訪問。
インプレッション:表示された回数。クリックされたかどうかは問いません。
エンゲージメント:反応の度合い。SNSでは、いいね・コメント・保存・共有などの合計を指すことが多い言葉ですが、プラットフォームによって算出方法が異なるため、比較の際は定義の確認が必要です。
計測まわりの用語
ディメンションと指標:Googleアナリティクスの公式ヘルプでは、ディメンションはデータの属性を表し、指標は数量的な測定値を表すと説明されています。「どのページが」がディメンション、「何回見られたか」が指標です。レポートはこの2つの組み合わせで作られます。
セッション:一定時間内の一連の訪問。同じ人が翌日に再訪すれば、別のセッションとして数えられます。
直帰:訪問後、他のページを見ずに離脱すること。ただし1ページで目的を達している場合もあるため、高い=悪いとは限りません。
コンバージョン(CV):あらかじめ決めた成果。問い合わせ、資料請求、購入、会員登録など、事業によって設定が異なります。
CVR(コンバージョン率):訪問や表示に対する成果の割合。分母を何にするかで数字が変わるため、社内で統一しておく必要があります。
CPA:成果1件あたりにかかった費用。広告費を成果数で割って求めます。
LTV:1人の顧客が取引期間全体でもたらす利益。CPAの上限を決めるときの基準になります。
広告まわりの用語
リスティング広告:検索語に連動して表示される広告。困りごとを自覚した人に届くため、成約に近い位置にあります。
ディスプレイ広告:Webサイトやアプリの広告枠に表示される広告。まだ探していない層への認知づくりに向きます。
運用型広告:入札や配信設定を継続的に調整しながら出す広告の総称。
CPC:クリック1回あたりの費用。CPM:表示1,000回あたりの費用。課金の仕方の違いを表します。
ROAS:広告費に対する売上の割合。利益ではなく売上を分子にする点が、費用対効果を見るときの注意点です。
混同されやすい言葉の整理
KPIとKGI:KGIは最終目標、KPIはその途中に置く指標です。KGIだけを追うと、達成できなかったときに原因を特定できません。
CVとCVR:CVは件数、CVRは割合です。件数が増えても率が下がっていることがあり、両方を並べて見る必要があります。
リーチとインプレッション:リーチは届いた人数、インプレッションは表示回数です。同じ人に3回表示されれば、リーチは1、インプレッションは3になります。
用語を社内で揃える方法
用語集を作るだけでは運用されません。実務で効くのは、レポートの様式に定義を書き添えることです。毎月見る資料に「CVR=問い合わせ数÷セッション数」と明記しておけば、解釈のずれは起きません。
もうひとつは、言葉より数字の出どころを共有することです。同じ「問い合わせ数」でも、フォーム送信を数えているのか、営業が受けた件数なのかで値が変わります。どのツールのどの画面の数字かまで揃えておくと、議論が噛み合います。
この記事のまとめ
マーケティング用語は、戦略・集客・計測・広告の4分野に分けると整理しやすくなります。公式の定義があるものはそれに従い、社内で解釈が分かれる用語はレポート上に定義を書き添えるのが実務的な解決策です。
使う場面の多い略語
実務では略語が頻出します。読み方が分からないまま会話に出てくると、確認しづらくなるため、代表的なものを整理します。
BtoB/BtoC:企業向け/消費者向け。商材の性質が変わるため、施策の前提が異なります。
MA:マーケティングオートメーション。見込み客への接触を自動化する仕組みの総称です。
CRM:顧客関係管理。顧客情報と取引履歴を集約し、関係を維持するための仕組みです。
SFA:営業支援システム。商談の進捗管理を担う点で、CRMと役割が分かれます。
UGC:利用者が作った投稿や写真、レビューのこと。自社発信より信頼されやすい性質があります。
ABテスト:2つの案を同時に出し、成果の良いほうを選ぶ検証方法です。
用語を調べるときの注意
用語の意味は、提供元があるものと、慣習的に使われているものに分かれます。
プラットフォームの機能名や指標(インプレッション、リーチ、エンゲージメントなど)は、提供元の公式ヘルプに定義があります。算出方法がサービスごとに違うため、必ず提供元の説明を確認します。
フレームワークや概念(4P、STP、カスタマージャーニーなど)は、提唱者や教科書によって細部が異なります。社内で使う際は、どの説明を採用するかを決めておくと議論が安定します。
業界の慣習語(刈り取り、上澄み、ナーチャなど)は、会社ごとに意味が違います。相手が使ったときは、意味を確認してから話を進めるほうが安全です。
出典と注記
マーケティングの定義は公益社団法人日本マーケティング協会、ディメンションと指標は Google アナリティクス ヘルプ、検索の仕組みは Google 検索セントラルの記載に基づきます。その他の用語の説明は一般に流通している使われ方を当社が整理したもので、団体によって定義が異なる場合があります。
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