「マーケティング担当」という肩書きは、会社によって指す仕事がまったく違います。広告の出稿管理をする人もいれば、展示会の運営をする人も、記事を書く人もいます。この記事では、規模や業種を問わず共通して発生する業務を5つに分けて整理し、1人で担当する場合に何から手を付けるべきかまでを解説します。
マーケティング業務の全体像
日本マーケティング協会が2024年に制定した定義では、マーケティングは「構想でありプロセスである」とされています。同協会は、この「構想」には戦略・仕組み・活動が含まれると注釈を添えています。
つまりマーケティング担当者の仕事は、考える仕事(構想)と、動かす仕事(仕組み・活動)の両方を含みます。この2つを別の人が担当している会社もあれば、1人が兼ねている会社もあります。求人票を見るときも、どちらを求められているかで仕事の中身は大きく変わります。
実務に落とすと、業務は次の5つに分かれます。調査、企画、制作、配信・実行、分析です。この順に見ていきます。
業務1:調査
何をつくり、誰に届けるかを決めるための情報を集める仕事です。
具体的には、自社の顧客がどんな人かを既存データから整理する、競合が何を訴求しているかを調べる、検索されている言葉から需要のある論点を洗い出す、営業やサポートに寄せられる質問を集める、といった作業です。
見落とされやすいのが、社内にある情報の活用です。営業の商談メモ、問い合わせフォームの記入内容、サポートへの質問には、顧客が実際に使っている言葉と、迷っている論点が詰まっています。外部の調査データを買う前に、まず社内を掘るほうが速く、精度も高いことが多くあります。
業務2:企画
集めた情報をもとに、誰に何をどう伝えるかを決める仕事です。
ここで決めるのは、対象とする顧客像、伝える価値、使う経路、そして予算と期間です。この段階の判断が、後工程すべての前提になります。企画が曖昧なまま制作に進むと、「とりあえず作ったが誰に届けるか決まっていない」状態になり、費用が無駄になります。
企画には、施策の優先順位付けも含まれます。多くの会社では、やりたいことの数に対して人手と予算が足りません。効果の見込みと必要な労力の両方で並べ、上から着手するのが基本です。
業務3:制作
企画を形にする仕事です。記事、LP(ランディングページ)、広告のクリエイティブ、資料、メール、動画、SNS投稿などが該当します。
自社で作るか、外部に依頼するかの判断もここに含まれます。担当者が自分で全部作る必要はありません。ただし外注する場合でも、何を作るのかを言語化して渡せなければ、成果物は期待とずれます。制作の実務スキルより、依頼内容を書き切る力のほうが重要になる場面は多くあります。
業務4:配信・実行
作ったものを、実際に顧客の目に触れる場所へ出す仕事です。
広告の入稿と予算調整、記事の公開、メールの配信、SNSの投稿、展示会やセミナーの運営が該当します。地味な作業が多い一方、設定を一つ間違えると成果がゼロになる領域でもあります。配信先の絞り込み、リンク先の確認、フォームの動作確認といった地道な点検が、実際の成果を大きく左右します。
業務5:分析
出した結果を見て、次の判断材料にする仕事です。
Googleアナリティクスなどの計測ツールでは、データは「ディメンション」と「指標」で構成されます。Googleの公式ヘルプによれば、ディメンションはデータの属性を表し、指標は数量的な測定値を表します。たとえば「どのページが」「何回見られたか」の前半がディメンション、後半が指標です。この区別を理解しているだけで、レポートの読み方は安定します。
分析で大事なのは、数字を眺めることではなく次の行動を決めることです。「アクセスが増えた」で終わらせず、増えた経路のどこを伸ばすか、問い合わせにつながっていない原因は何か、まで踏み込みます。
1人で担当する場合の優先順位
中小企業では、マーケティング担当が1人、あるいは他業務との兼任というケースが大半です。この場合、5つの業務をすべて同じ強度でやることはできません。
優先すべきは、計測の整備です。何がどれだけ成果につながっているか分からない状態では、限られた時間をどこに使うべきか判断できません。問い合わせ数と、その流入元が分かる状態を最初に作ります。
次が既存の資産の改善です。すでにあるサイト、すでに来ている訪問者、すでにある顧客リストを活かすほうが、新しい施策を立ち上げるより速く成果が出ます。
新規の施策に着手するのはその後です。順番を逆にすると、成果が出ているかどうか分からないまま作業だけが増えていきます。
必要なスキル
マーケティング担当者に求められるスキルは、専門知識よりも先に、次の2つです。
ひとつは言語化です。誰に何を提供しているかを短く説明できること、外注先に依頼内容を書き切れること、社内に施策の狙いを説明できること。この力がないと、どの工程でも認識のずれが生じます。
もうひとつは数字を読む習慣です。高度な統計は要りません。訪問数、問い合わせ数、成約数、その割合を毎月同じ形で見続けられれば、変化に気づけます。
この記事のまとめ
マーケティングの仕事は、調査・企画・制作・配信・分析の5つに分けられます。会社によって担当範囲は違いますが、この5つのどこを担うのかを確認すれば、仕事の中身は具体的に見えてきます。
1人で担当する場合は、計測の整備、既存資産の改善、新規施策の順に進めます。専門知識より、言語化と数字を読む習慣が土台になります。
業務の1年の流れ
日々の作業だけでなく、年間を通じた周期も把握しておくと動きやすくなります。
月次では、前月の数字の確認と共有、進行中の施策の調整、翌月の制作物の準備を行います。ここで大事なのは、毎月同じ形式で数字を並べることです。形式が変わると比較ができなくなります。
四半期では、施策の入れ替えを判断します。続けるもの、やめるもの、新しく試すものを決めます。判断材料は月次で積み上げた数字です。
年次では、対象とする顧客層と提供する価値の定義を見直します。競合の状況や顧客の要望は変わるため、前提が古くなっていないかを確認します。
この周期を決めておくと、「日々の作業に追われて振り返れない」状態を避けられます。
他部署との関わり方
マーケティング担当は、単独では成果を出せません。関わりの深い部署は3つあります。
営業とは、獲得した見込み客の質について情報を交換します。件数だけを追うと、営業側で「話にならない問い合わせ」が増えることがあります。成約に至った問い合わせの共通点を営業から聞き取り、獲得の条件に反映します。
開発・製造とは、提供できることの範囲を確認します。訴求が実態を超えると、受注後に問題になります。書ける内容の限界を把握しておくことが、結果的に信頼につながります。
サポートとは、既存顧客が困っている点を共有します。ここには、次に作るべきコンテンツの題材と、商品改善の材料が揃っています。
出典と注記
マーケティングの定義と注釈は、公益社団法人日本マーケティング協会の公表内容によります。ディメンションと指標の説明は Google アナリティクス ヘルプの記載に基づきます。業務の5分類と優先順位の考え方は、当社が支援の現場で用いている整理であり、公的に定められた区分ではありません。
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