海外のマーケティングツールに毎月払っている利用料は、国内の事業者が受けている限り、国内取引として消費税の課税対象になります。請求元が海外の会社であること自体は、課税されるかどうかを変えません。国税庁のタックスアンサーは、電子書籍・音楽・広告の配信などインターネットを介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と呼び、国内の事業者や消費者に対して行われるものは、国内から行われるものも国外から行われるものも国内取引として消費税が課税されると書いています。
変わるのは、だれが納めるのかと、自社がその消費税を仕入税額控除に使えるのかです。ここが請求元と役務の性質で3つに分かれます。リバースチャージ方式という言葉を見て「自社で申告しなければならない」と早合点する必要はありません。一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間など、当分の間その仕入れはなかったものとされる経過措置があります。
この記事は、国税庁が公開しているタックスアンサー、質疑応答事例、公表サイトに書かれている内容だけで、判定の順番を整理します。扱うのは、海外から受けても国内取引になる理由、事業者向けと消費者向けの分かれ目、経過措置が効く条件、控除できるかどうかを決めるもの、プラットフォームを介した課金の扱い、請求書を受け取ったときに見る項目です。確認日は2026年10月9日です。なお個別の取引がどちらに当たるかの判断と申告の実務は、税理士に確認してください。この記事の作成者は税理士ではありません。
請求元と役務の性質で、3つの経路に分かれる
最初に全体を見ておきます。分岐は2段で、1段目が請求元、2段目が役務の性質です。
1段目でいちばん取り違えやすいのは、同じツールでも請求元が1つに決まっていないことです。海外のサービスでも日本法人が請求するものがあり、その場合は国内の事業者からの課税仕入れになります。クレジットカードの明細に並ぶ英語表記だけでは、どちらなのか分かりません。見るのは契約書と請求書の名義です。
2段目の分かれ目は、役務が事業者向けかどうかです。国税庁は「事業者向け電気通信利用役務の提供」を、役務の性質または取引条件等から、その役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものと説明し、例として広告の配信を挙げています。利用料の金額や、自社が法人であることでは決まりません。決めるのは提供される役務の側の性質と取引条件です。
ツールの料金そのものの数え方は、サービスごとにかなり違います。契約単位で積み上がるものはBufferのチャネル単位の料金、名簿の状態で決まるものはMailchimpの請求対象になる連絡先で扱っています。この記事で見るのは、そうして決まった請求額を受け取ったあとの話です。
広告の配信は例として挙げられている
事業者向けに当たると、納税義務者が入れ替わります。国税庁の説明では、国外事業者から役務の提供を受けた国内事業者が、「特定課税仕入れ」として申告・納税を行う形になります。これがリバースチャージ方式です。ふだんの取引では売る側が消費税を申告しますが、この取引では買う側が申告します。
例として挙げられている広告の配信は、マーケティングの現場でいちばん金額が大きくなりやすい支出です。海外の広告プラットフォームへ直接出稿している場合、その請求がここに当たるかどうかは、毎月の金額が大きいだけに影響も大きくなります。広告費の見方そのものはGoogle広告の費用の決まり方の側で扱っています。
一方で、だれでも申し込めるツールの月額利用料が事業者向けに当たるかどうかは、ツールの名前では決まりません。役務の性質と取引条件を見ることになります。国税庁のページに個別のサービス名の例示はないため、この記事でも特定のツールについて「こちらに当たる」とは書きません。契約条件と提供されている役務の内容を見て、判断に迷うなら税理士へ回すのが順番です。
経過措置で「なかったものとされる」範囲が広い
事業者向けに当たっても、すべての事業者が申告するわけではありません。国税庁は経過措置を示しており、一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間、簡易課税制度を適用している場合、2割特例や3割特例の適用を受けている場合は、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。
「なかったものとされる」という書き方は、免除とは少し違います。その取引が申告の計算に入ってこないので、納める税額も、そこから控除する税額も出てきません。リバースチャージの対象になる取引を見つけたからといって、必ず税額が増えるわけではないということです。
注意したいのは、課税方式と課税売上割合が課税期間ごとに動くことです。課税売上を立てていない取引が増えた期や、簡易課税の適用をやめた期には、前期と同じ処理が当てはまらなくなります。国税庁の書き方も「当分の間」であり、終わりの期限は示されていません。期ごとに確認する作業として置いておくのが安全です。
適用される税率は、軽減税率の対象品目にあたらない限り標準税率です。国税庁は標準税率10%の内訳を、消費税7.8%と地方消費税2.2%としています。
控除できるかどうかは、登録番号で決まる
消費者向けに当たる役務の場合、納税義務者は国外事業者の側です。受けた側がその取引を申告することはありません。そのかわり、支払った消費税を仕入税額控除に使えるかどうかが、相手の登録の有無で分かれます。
国税庁のページは、かつての登録国外事業者制度が廃止され、インボイス制度へ移行したことに触れています。現在の扱いは質疑応答事例に書かれており、消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、適格請求書発行事業者からの課税仕入れでなければ仕入税額控除の対象になりません。相手が登録していなければ、請求額の中に相当分が含まれていても控除には使えない、ということです。
登録番号が本物かどうかは、国税庁の公表サイトで確かめられます。ここで覚えておきたいのが検索の向きです。公表サイトで引けるのは登録番号からだけで、Tに続く13桁の数字を入れて照会します。一度に入れられるのは10件までです。つまり社名から番号を探す使い方はできません。番号が請求書に載っていなければ、公表サイトに行っても確かめようがない、ということになります。
実務では、請求書がダウンロード形式でしか手に入らないサービスもあります。番号の有無は請求書を開かないと分からないので、契約した月の請求書を1度は開いて確かめておくほうが、期末にまとめて見るより早く済みます。
プラットフォームを介した課金は、納める人が変わる
もう1つ、請求元が切り替わる経路があります。国税庁のタックスアンサーは、令和7年4月1日以後、国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う電気通信利用役務の提供のうち、特定プラットフォーム事業者を介してその対価を収受するものについては、その特定プラットフォーム事業者が役務の提供を行ったものとみなして申告・納税を行うと書いています。これをプラットフォーム課税と呼びます。事業者向け電気通信利用役務の提供は、この対象から除かれています。
マーケティングの現場に関わるのは、同じツールでも決済の経路が複数あるときです。アプリストア経由で課金したものと、ツールの会社へ直接払ったものでは、だれが納税義務者になるのかが変わり得ます。経理の側で見ると、請求書の発行元が変わる可能性がある、ということです。
だれが特定プラットフォーム事業者に指定されているかは、国税庁が名簿を公表しています。指定の基準となる金額については、今回読んだ国税庁のタックスアンサーと案内ページには記載が見当たりませんでした。名簿と詳しい資料はPDFで公開されているので、対象かどうかを確認するときはそちらを見ることになります。
受け取った請求書を、どの順で見るか
ここまでの3つの経路を、処理の違いで並べます。
| 経路 | 請求元と役務 | 消費税を納めるのは | 自社の処理 |
|---|---|---|---|
| A | 国内の法人からの請求 | 請求元(国内の事業者) | 通常の課税仕入れ。適格請求書を保存する |
| B | 国外事業者の事業者向け電気通信利用役務の提供(例:広告の配信) | 役務の提供を受けた国内事業者 | 特定課税仕入れとして申告・納税。ただし経過措置に当たる課税期間はなかったものとされる |
| C | 国外事業者の消費者向け電気通信利用役務の提供 | 国外事業者 | 申告は生じない。控除できるのは適格請求書発行事業者からの課税仕入れだけ |
作業の順番としては、請求元の名義を確かめ、役務が事業者向けと消費者向けのどちらに当たるかを押さえ、そのうえで請求書に記載事項がそろっているかを見る形になります。3つの経路のどれに当たるかで、見るべき場所が変わります。経路Bなら自社の課税方式と課税売上割合、経路Cなら相手の登録番号です。
ツールを追加するたびに同じ確認が発生するので、契約しているサービスの一覧に請求元の法人名と登録番号の欄を足しておくと、毎月の作業が照合だけで済みます。海外ツールは契約の入口が自己申込みで、経理を通さずに増えやすいという性質があります。利用者の側で記録を残す形にしておくほうが現実的です。
確認できなかったこと
読んだ範囲で埋められなかった項目を残します。
- 特定のツールが適格請求書発行事業者として登録されているかどうかは、この記事では個別に確認していません。登録の状態は変わるため、請求書に載っている番号を公表サイトで照合する形にしてください
- 特定プラットフォーム事業者の指定の基準となる金額は、今回読んだタックスアンサーと案内ページには記載が見当たりませんでした
- 個別のツールが事業者向けと消費者向けのどちらに当たるかについて、国税庁のページにサービス名の例示はありません。例として挙がっているのは広告の配信です
- 特定課税仕入れを申告する場合の税額の計算方法は、この記事では扱っていません
いずれも「決まりがない」という意味ではありません。公開されているページで、外部の読み手が確かめられる範囲がここまでだということです。
出典として読んだページ
判定の材料にしたページと、そこで確認した内容を並べます。
| 確認した内容 | 出典 |
|---|---|
| 電気通信利用役務の提供の定義と、国内取引としての課税 | 国税庁 タックスアンサー No.6118 |
| 事業者向け電気通信利用役務の提供の定義と、広告の配信という例示 | 国税庁 タックスアンサー No.6118 |
| リバースチャージ方式と、課税売上割合95%以上などの経過措置 | 国税庁 タックスアンサー No.6118 |
| 消費者向けの役務について、適格請求書発行事業者からの課税仕入れでなければ控除できないこと | 国税庁 質疑応答事例 |
| 令和7年4月1日以後のプラットフォーム課税と、事業者向けが対象外であること | 国税庁 タックスアンサー No.6568 |
| 適格請求書に記載が必要な6項目 | 国税庁 タックスアンサー No.6625 |
| 登録番号からのみ検索できること、一度に10件までであること | 国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト |
| 標準税率10%の内訳(消費税7.8%・地方消費税2.2%) | 国税庁 タックスアンサー No.6303 |
海外発のツールを公表されている条件で読み解いた記事は、海外マーケティングにまとめています。利用規約の側で利用者に求められる条件を扱った例としては、Trustpilotのレビュー招待のルールがあります。
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