Mailchimpの見積もりでいちばんずれるのは、金額の桁ではなく数え方です。請求の単位は連絡先ですが、ここで数えられるのは「いま配信できる人」ではありません。ヘルプセンターは、購読済み・配信停止済み・未購読の3つの状態にある連絡先が、料金プランの連絡先数に含まれると書いています。つまり配信を止めた人も、請求の対象として残ります。
この記事は、Mailchimpのヘルプセンターと料金ページに書かれていることだけを使って、請求の対象になる連絡先の数え方を整理します。扱うのは、状態ごとの扱い、複数のオーディエンスに同じ人がいるときの数え方、アーカイブで請求から外す方法とその制約、月に送れる通数の決まり方、そして上限を超えたときに起きることです。確認日は2026年10月1日です。
金額そのものは、選んだ連絡先数の段と、開いた国によって変わります。ここでは公式ページに表示された値を、表示のまま後半で扱い、換算はしていません。ツール選定の手順を先に整えたい場合はメルマガ配信ツールの比較の軸を、課金の単位がアカウント本数で決まる例はBufferのチャネル単位の料金を参照してください。
請求の対象になるのは、3つの状態にある連絡先だけ
ヘルプセンターの「About Your Contacts」は、連絡先の状態を分けて説明しています。料金プランの連絡先数に含まれるのは、購読済み(subscribed)、配信停止済み(unsubscribed)、未購読(non-subscribed)の3つです。
状態ごとの定義と扱いを並べると、次のようになります。
| 状態 | ヘルプの説明 | 連絡先数に含まれるか |
|---|---|---|
| 購読済み(subscribed) | マーケティングの配信を受け取ることに同意した人 | 含まれる |
| 配信停止済み(unsubscribed) | 以前は受け取っていたが、受け取りをやめた人 | 含まれる |
| 未購読(non-subscribed) | やり取りはあるが、配信に同意していない人 | 含まれる |
| 確認待ち(pending) | 登録フォームを送信したが、同意の確認が済んでいない人 | 含まれない |
| 配信不能(cleaned) | 宛先へ届かないと判定された人 | 含まれない |
| アーカイブ済み(archived) | 名簿から外した人。データは残る | 含まれない |
| 削除(deleted) | 個人情報ごと消した人 | 含まれない |
出典:Mailchimp ヘルプセンター「About Your Contacts」、「About Mailchimp Pricing Plans」(確認日 2026-10-01)
この表で実務に効くのは、上の3行と下の4行の境目です。社内で名簿の規模を聞かれたとき、多くの担当者が答えるのは「配信できる人の数」でしょう。ところがMailchimpが請求の根拠にするのは、それに配信停止済みと未購読を足した数です。配信できない相手のぶんも払い続ける形になります。
未購読という区分も、日本の運用では見落とされがちです。ヘルプの説明では、やり取りはあるが配信に同意していない人がこれにあたります。つないだオンラインストアで買い物をした人や、フォームから問い合わせただけの人がこの状態で入ってくると、メールを1通も送っていないのに連絡先数が増えます。同意をどこで取るかという設計は、そのまま請求の設計になります。同意と停止の管理をどう組むかはメールマーケティングとはの側で扱っています。
同じ人が2つのオーディエンスにいれば、2件として数えられる
もう1つ、名簿の設計が請求に跳ね返る点があります。Mailchimpは連絡先の集まりをオーディエンスと呼びますが、ヘルプの「Getting Started with Your Audience」は、オーディエンスは1つで足りるはずだと書いたうえで、こう続けています。
if freddie@address.com is in 2 of your audiences, we count that as 2 contacts
同じアドレスが2つのオーディエンスに入っていれば、2件として数える、という説明です。理由も同じ節に書かれていて、オーディエンスの間では連絡先のデータが共有されないためだとしています。
この仕様は、組織の形をそのままツールに持ち込んだときに効いてきます。事業部ごと、ブランドごと、あるいは日本向けと海外向けでオーディエンスを分けると、どちらにも登録している顧客は2件になります。3つに分ければ3件です。管理のしやすさのために分けた結果、同じ人に対して複数回払う状態が生まれます。
逆に、1つのオーディエンスにまとめてタグやセグメントで切り分ける設計なら、同じ人は1件のままです。分けるかどうかを決める前に、重複して登録される人がどれくらいいるかを数えておいてください。分ける理由が請求の増加に見合うかどうかは、その数字がないと判断できません。
アーカイブは請求から外れるが、戻る経路が3つある
名簿を減らさずに請求の対象を減らす方法として、ヘルプが案内しているのがアーカイブです。「Archive or Unarchive Your Contacts」には、アーカイブ済みの連絡先は請求の段に数えられないと書かれています。同時に、その人のデータは保持され、メールやSMSのレポートに含まれる個人を特定できる情報も残るとしています。
戻る経路は3つ書かれています。1つ目は、連絡先の一覧から、またはインポートによって、いつでも解除できることです。2つ目と3つ目は自分の操作ではありません。その人がMailchimpの登録フォームから登録した場合、そしてつないだオンラインストアで行動した場合に、アーカイブが解除されます。
ここが運用の勘所です。アーカイブで請求を下げた状態は、こちらが何もしなくても崩れます。登録フォームを出し続けているなら、外した人が戻ってくる前提で考える必要があります。アーカイブは一度やれば終わる作業ではなく、周期を決めて見直す作業です。
制約も明記されています。アーカイブ中は、その連絡先のプロフィールを編集できず、マーケティングの配信もできません。そしてヘルプは、削除を求められた場合についてはっきり書いています。アーカイブは法的な削除の代わりにはならず、削除の要求には完全な削除で応じる必要があるという説明です。請求を下げる目的で、削除すべき相手をアーカイブに置き換えてはいけません。向く相手として挙げられているのは、重複、古くなった情報、反応のない連絡先です。
月に送れる通数は、連絡先の上限に倍率をかけた数
連絡先の数を決めると、月に送れる通数も決まります。ヘルプセンターの「About Mailchimp Pricing Plans」は、プランごとに保存できる連絡先の上限と、送信の倍率を書いています。
| プラン | 保存できる連絡先 | 月の送信上限 | ヘルプの補足 |
|---|---|---|---|
| Free | 250件まで | 月500通(1日250通まで) | 上限を超えると送信に保留がかかる |
| Essentials | 50,000件まで | 連絡先の上限の10倍 | - |
| Standard | 100,000件まで | 連絡先の上限の12倍 | - |
| Premium | 200,000件まで | 連絡先の上限の15倍 | これを超える規模は個別に対応するとしている |
出典:Mailchimp ヘルプセンター「About Mailchimp Pricing Plans」(確認日 2026-10-01)
送信の数え方も定義されています。1人の連絡先へ送った1通が1送信で、1通を500人へ送れば500送信です。配信の回数が2倍になれば、必要な送信数も2倍になります。連絡先の数だけで段を選ぶと、通数の側で足りなくなる場合があります。
倍率は追加分にも同じように適用されます。ヘルプの「About Additional Charges」は、Standardの例として、追加の連絡先1,000件のブロックには12,000通の追加送信が含まれると説明しています。段を上げるときに増えるのは、保存できる件数と送れる通数の両方です。
上限を超えたときに起きることは、有料と無料で違う
上限は「そこで止まる線」ではありません。ヘルプの記載では、請求期間の途中で連絡先の総数が上限を超えてもサービスは止まらず、請求に追加の金額が乗ります。追加のぶんは、より小さい単位の連絡先のまとまり(add-on contact block)として課金されるという説明です。請求額の計算にも条件があり、その請求期間で最も多かった連絡先の総数がもとになると書かれています。月の後半に名簿を整理しても、ピークの数が請求に効きます。
無料プランは扱いが違います。250件の上限を超えると、有料プランへ上げるか連絡先を減らすまで、実際の配信もテスト配信も保留されると書かれています。料金ページの側にも、無料プランは連絡先または送信の上限を超えると送信が止まる、という注記があります。有料は止まらずに増え、無料は止まるという非対称は、評価の計画を立てるときに押さえておく点です。
金額の表示についても、確認できた範囲を書いておきます。料金ページを日本から開くと、金額は円で表示されました。無料プランが0円、Essentialsが月1,300円、Standardが月1,900円、Premiumが月38,000円で、有料の3つはいずれも「12か月間」の価格という表示です。ページには連絡先数を選ぶしくみがあり、段は0〜500から始まります。表示された金額は「〜から」という書き方なので、いちばん小さい段に対応するものです。13か月目以降の金額は、ページ上では別の表示に切り替わります。EssentialsとStandardには14日間の無料トライアルがあり、クレジットカードの登録は不要と書かれています。
数え方は、まとめ記事ではなくヘルプセンターで確かめる
この記事の数値は、すべてMailchimpのヘルプセンターと料金ページから取りました。連絡先の状態は「About Your Contacts」、プランの上限と倍率は「About Mailchimp Pricing Plans」、アーカイブは「Archive or Unarchive Your Contacts」、超過の扱いは「About Additional Charges」、オーディエンスの重複は「Getting Started with Your Audience」です。
数え方の仕様は、料金ページの表よりもヘルプ側に細かく書かれています。料金ページで分かるのは金額と、そのプランに含まれる範囲の要約までです。どの状態の人が数に入るのかは、ヘルプの側にしか書かれていません。見積もりで外れるのはこの部分なので、社内で共有する資料には、金額のスクリーンショットではなくヘルプの記載を添えるほうが確かです。
自社の名簿を、この数え方へ置き換える
ここまでの記載を、自社の名簿に当てはめる順序に並べます。項目の並べ方は当社によるもので、Mailchimpがこの手順を案内しているという意味ではありません。
最初に、名簿を1か所で数えます。オーディエンスを分ける予定があるなら、重複して登録される人を別に数えておきます。次に状態で分けます。ここで停止済みを請求の対象に入れ、確認待ちと配信不能を外します。3つ目に、月に送る通数を出します。宛先の人数とその月の配信回数をかけた数が、必要な送信数です。
4つ目が段の決定です。連絡先の上限に倍率をかけた数と、3つ目で出した通数を比べます。連絡先の側に余裕があっても、通数が上限を超えるなら上の段が必要になります。最後にアーカイブの運用を決めます。誰を外すか、本人が登録して戻ってきたときにどう扱うかを先に決めておけば、請求が静かに増えていく状態を避けられます。
日本から契約する前に確認しておくこと
公式ページに書かれていない側、または日本の条件に直接は当てはまらない側を挙げます。
対応言語には記載があります。ヘルプの「About Language Settings and Preferences」は、アプリの画面、チャットとメールでの技術サポート、ヘルプセンターの記事と動画の字幕について、英語・スペイン語・フランス語・ポルトガル語・ドイツ語・イタリア語の6言語を挙げています。このページに日本語の記載はありません。社内に英語で操作と問い合わせができる人がいるかどうかは、料金の前に確かめる項目です。
通貨と価格の表示についても、上に書いたとおり「12か月間」という条件が付いていました。年単位の予算を組むときは、13か月目以降の金額を選んだ段で確認しておく必要があります。
この記事で確認できなかったこと
確認できなかった項目を、埋めずに残します。
追加の連絡先ブロックの単価は、ヘルプの記載では自分のアカウントにログインして確認する形になっており、公開ページからは分かりませんでした。日本の消費税の扱い、適格請求書の様式、返金の条件についても、参照した範囲に記載がありません。有料プランの1日あたりの送信上限も見当たりませんでした(無料プランについては記載があります)。円で表示された金額が、選択のどの段に対応するのかについても、画面の表示は「〜から」までで、段ごとの金額の一覧は確認していません。
そして、この記事は使い勝手を評価したものではありません。当社は有料プランを契約して検証していないため、操作感、到達率、サポートの応答については書いていません。書いたのは、公式のヘルプセンターと料金ページに載っている数え方と上限だけです。海外のツールを公表値で読み解いた記事は海外マーケティングにまとめています。
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