海外向けの販売でTrustpilotを使い始めるとき、先に確かめたいのは料金より招待のしかたに公式のルールがあることです。Trustpilotは、事業者が顧客へレビューを依頼すること自体は認めています。ただし「誰に送るか」「何通送るか」「どんな文面で送るか」に条件を置いていて、そこを外れた集め方をすると、プロフィールへの消費者警告やTrustScoreの非表示といった、集めたレビューの見え方そのものを損なう措置の対象になります。国内のキャンペーンでよく使われる「レビュー投稿でクーポン進呈」は、この条件に真正面からぶつかります。
この記事は、事業者向けガイドライン(June 2026/version 7.2)、レビュアー向けガイドライン(version 2.2)、料金プランのページ、そして同社が公表しているTrust Reportの記載だけを使い、4つの点を整理します。招待してよい範囲はどこまでか。禁止されているのは何か。低い評価のレビューを消せる場面はあるのか。そして、無料のままどこまで使えるのか。
金額は公式ページの表記どおり米ドルで書き、日本円へは換算していません。確認日は2026年9月10日です。
招待してよいのは「体験した人ぜんぶ」に「1体験1通」
ガイドラインが事業者に最初に求めているのは、実際に体験した人へ送ることです。原文は「あなたの商品やサービスで本当の体験をした人を招待してください。これは1つの体験につき1通です」と書かれています。あわせて、顧客を選ばず一貫して招待すること、商品やサービスを体験するだけの時間を置いてから依頼すること、そして自動・手動のどちらの方法でもよく、リンクやQRコードによる依頼も認められることが示されています。
日本の運用に置き換えると、購入完了や発送完了といった出来事を起点に、対象になった顧客へ機械的に一律で送る形が、この条件にいちばん近くなります。反対に、担当者が顧客リストを眺めて「この人は喜んでいたから送ろう」と決める運用は、次に見る禁止事項へそのまま該当します。判断を人が挟むほど、選別に近づくと考えたほうが安全です。
禁じられているのは「見返り」と「選別」
禁止事項のうち、日本の販促と衝突しやすいものは5つあります。
1つ目は見返りです。ガイドラインは「レビューを書くこと、または編集することに関連して見返りを提供すること」を禁じ、例として割引、プロモコード、抽選への応募、返金、無料の提供物、その他の便益を挙げています。「レビューを書いてくれたら次回使えるクーポンを送る」という設計は、金額の大小に関係なく当てはまります。
2つ目は相手の選別です。「どの顧客を招待するかを選り好みすること。良い体験をしたと分かっている人だけを招待することを含む」と書かれています。3つ目はその設計版で、「良い体験をした人しか到達しない、顧客体験の特定の段階で招待が送られるように設定すること」が挙がっています。満足度調査で高い点を付けた人だけをレビュー投稿へ誘導する、いわゆるレビューゲーティングがここに入ります。
4つ目は文面です。「気に入ったら5つ星のレビューをお願いします」のように、良い評価だけを書くよう示唆する書き方が名指しで禁じられています。5つ目は圧力で、書くこと・直すこと・消すことについて相手に迫る行為が挙がっています。
依頼の文面と送付の条件は、社内で決裁を取る前に確認しておく価値があります。あとから直すのは、送信の仕組みより、集まってしまったレビューの扱いのほうが難しいためです。
違反が確認されたときに何が起きるか
ガイドラインは、違反が確認された場合に取られうる措置として5つを挙げています。アカウント機能の停止や凍結、事業者との契約の終了、プロフィールへの消費者警告の掲示、TrustScoreの非表示、そして法的措置です。文面は「これらの結果を招くことがある」という書き方で、段階の順序として示されているわけではありません。
このうち後半の2つは、集めたレビューを自社サイトやメールで見せる運用と直結します。プロフィールに警告が出た状態、あるいは評点が表示されない状態では、レビューを引用する側の前提が崩れます。招待の設計を誤ったときの損失は、支払っている料金ではなく、それまでに積み上げた評価の見え方で発生すると考えておくべきです。
書く側にも同じ縛りがかかっている
抜け道を探す前に見ておきたいのが、レビュアー向けガイドラインです。事業者側の禁止事項と対になる形で、書く側にも条件が置かれています。
| 論点 | 事業者側のガイドライン | レビュアー側のガイドライン |
|---|---|---|
| 見返り | 書くこと・編集することへの見返りを提供しない | 見返りを受け取った、または提示された人は書けない |
| 関係者 | 記載を確認できず | オーナー、従業員、家族、株主、競合は書けない |
| 体験の範囲 | 体験した人へ1体験1通 | 購入に限らず、電話・メール・チャットも体験に含む |
| 期間 | 記載を確認できず | 通常は直近12か月以内の体験 |
| 削除 | 低い評価を理由に削除は求められない | ガイドライン違反や法的要請があれば削除される |
社員に書かせる、取引先に頼む、キャンペーンの参加者に書いてもらう。いずれも事業者側とレビュアー側の両方で塞がれています。片側だけを読んで「依頼した相手が自主的に書いたのだから問題ない」と整理しないでください。
低い評価のレビューは消せるのか
事業者はレビューを報告(フラグ)できますが、認められる理由は内容で決まります。差別やヘイト、テロ、脅迫や暴力、わいせつ、名誉毀損にあたる内容、他人の個人情報が含まれるもの、広告や宣伝が目的のもの、実際の体験に基づかないもの、別の事業者について書かれたもの。ここまでが挙げられている理由です。
そして、その直後にこう書かれています。「星の評価が気に入らない、否定的なレビューに同意できないというのは、レビューを報告する正当な理由にはならず、事業者が不当だ、批判的だと考えるという理由でレビューを削除することはありません」。低い評価そのものは、報告の対象ではないという線引きです。
監視の規模は公表されている
Trustpilotは2025年5月29日に公開したTrust Reportで、削除の実績を数字で出しています。事業者としては、ルールが運用されているかどうかを推し量る材料になります。
| 項目(2024年) | 公表値 |
|---|---|
| 削除した偽レビュー | 4.5 million 件 |
| その年に投稿されたレビューに占める割合 | 7.4% |
| 削除のうち自動検知によるもの | 90% |
| 2023年と比べた自動削除の増加 | 53%増 |
| ガイドライン違反として消費者が報告した件数 | 92 thousand 件 |
| ガイドライン違反として事業者が報告した件数 | 601 thousand 件 |
| 2024年に投稿されたレビュー | 61 million 件 |
件数は英文の報告の表記のまま載せています。million は百万、thousand は千です。表を横に見て気づくのは、報告の件数で事業者側が消費者側の6倍を超えていることです。自社や競合について不審なレビューを見つけたときに、事業者が報告する運用が広く行われていることを示しています。
無料でどこまで使えるか
料金ページには、無料と3つの有料プラン、そして個別見積もりが並んでいます。
| プラン | 表示されている金額 | 主な範囲 |
|---|---|---|
| Free | 0ドル | 自動招待は月50件、レビュー収集ウィジェット1つ、返信、報告、パフォーマンス概要、オンラインサポート |
| Starter | from $99 per month, billed upfront annually | 年一括の前払いで月99ドルから |
| Plus | from $319 per month, per domain, billed annually | ドメインごとに月319ドルから |
| Premium | from $799 per month, per domain, billed annually | ドメインごとに月799ドルから |
| Enterprise | Contact sales for a pricing estimate | 個別見積もり |
見積もりで効いてくるのはドメインごとという単位です。PlusとPremiumの金額にはこの語が付いていて、Starterには付いていません。国別にドメインを分けて販売している場合、費用の前提が国の数だけ変わることになります。
無料プランで注意したいのは、自動招待の月50件という上限が、前半で見た「顧客を選ばず一貫して送る」という条件とぶつかりうる点です。月間の対象者が50人を超える事業では、全員へは送れません。そのときに誰へ送るかをどう決めるべきかは、参照したページに記載がありません。招待の設計を機械的に説明できる形にしておき、判断が人の裁量に見えないようにしておく必要があります。
有料側にあるのは分析
有料プランの側で増えるものの1つが、レビューの分析です。公式のReview Insightsのページは、レビューの中の肯定・否定・中立を判定する感情分析、語や語句のまとまりをトピックとして整理する機能、追加質問による深掘り、レビュー数と評価の変化がTrustScoreへどう効くかを試算する予測を挙げています。どのプランに含まれるかは、このページには書かれていません。
自動で付いた分類は、社内の議論の入口としては使えますが、そのまま事実として外へ出す性質のものではありません。分析結果を資料に載せるときは、元のレビュー本文まで戻れる形にしておいてください。
日本から使うときは、もう一つのルールが重なる
Trustpilotのガイドラインを満たしても、日本の規制は別に効きます。消費者庁の告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」は、令和5年3月28日に指定され、同年10月1日に施行されました。規制の対象は事業者で、事業者が第三者へ依頼した投稿など、広告であることが分からない表示が対象になります。
つまり、見返りを渡す設計は、Trustpilot側では招待のルール違反、日本側では表示の問題として、それぞれ別の理由で引っかかります。海外向けの販売であっても、日本の事業者が国内の顧客に依頼する部分があれば、両方を満たす形に整える必要があります。
公表されている条件を自社の運用に当てはめて読み直す作業は、海外のサービスを使うたびに出てきます。当サイトでは、チャネルの本数で金額が決まるBufferの料金の数え方でも同じ読み方をしました。国内向けの口コミ運用は口コミ管理ツールの比較とGoogleの口コミを増やす方法、海外の動きは海外マーケティングにまとめています。
この記事で確認できなかったこと
ヘルプセンター(help.trustpilot.com)はJavaScriptで画面を描くため自動取得ができず、招待方法ごとの細かい上限や、無料アカウントを作るときの条件は確認していません。日本語のインターフェースとサポートの有無、日本の消費税や請求書の扱い、各プランにReview Insightsが含まれるかどうかも、参照したページに記載がありません。有料プランの金額に付いている「from」が、どの条件での下限を指すのかも同様です。
当サイトはTrustpilotの有料プランを契約して検証していないため、管理画面の使い勝手、招待メールの到達、サポートの応答については書いていません。書いたのは、公開されているガイドラインと料金ページ、公表された報告に載っている範囲だけです。他のレビュープラットフォームとの比較も、同じ基準で公表値を並べられる状態になってから改めて扱います。
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