中小企業成功事例/海外事例

広告が出せない商材をメールで売る|英Goodraysの公表値

英国のCBDブランドGoodraysは有料検索もオンライン広告も使えません。訪問者を購読者に変え、4つの自動メールで再購入まで運ぶ順序と、公式事例に出ている数値・出ていない項目を整理します。

有料検索もオンライン広告も使えない商材を、どうやって売り続けるか。英国のCBDブランド Goodrays は、その制約を前提に運用を組んでいます。工夫しているのは広告の出し方ではありません。サイトに来た人を購読者に変え、自動メールで再購入まで運ぶという順序です。

先に、公表されている成果を書きます。事例ページの成果欄にあるのは3つだけです。オンライン売上のうちメール経由が53%、登録フォームの送信率が10.2%、チェックアウト放棄フローの成約率が8.3%。本文にはさらに、再購入率40%、メール売上のうち自動フローが69%、初回割引メールの成約率9.7%という値が出てきます。ただし、どの数値にも集計した期間が書かれていません。前年比や増減としては読めません。

この記事では、Klaviyo の公式導入事例に書かれている施策と数値、そして英国の広告・食品の規則で何が制限されているのかを一次情報だけで整理します。そのうえで、広告が出しにくい商材を扱う日本の事業者が持ち帰れる部分を取り出します。確認日は2026年10月31日です。配信の頻度そのものの設計は全リストへの配信は年4回|豪Emu Ridgeのメール運用と公表値で扱っているので、ここでは「広告が使えない」という制約の下での順序に絞ります。

机の上でノートパソコンを開き、注文の商品を梱包している人物。小さな体制でオンライン販売を回している様子を示すイメージ画像
小さな体制でオンライン販売を回している様子のイメージ画像です。Goodrays の作業場や商品ではありません。写真: Kampus Production(Pexels)

広告が出せないという前提は、どこから来るのか

事例ページは、英国ではCBDに規制上の制約があるため、有料検索やオンライン広告で商品を訴求できないと説明しています。そのうえで、自社が持つチャネルに頼るしかなく、購読者を集めることが事業の前提になると書いています。

この「制約」は2つの側から来ています。広告表現の側と、食品としての認可の側です。

広告表現の側はASA(英国の広告の自主規制機関)の案内が示しています。MHRA(英国の医薬品規制当局)の承認を受けていない商品に、医薬的な表現を使うことはできません。治す、回復させる、防ぐ、戦う、といった言い方がこれにあたります。食品・サプリメントとしての健康強調表示も、GBの栄養・健康強調表示の登録簿に載っているものだけが使えます。そしてASAは、現時点でCBDについて認められた表示はひとつもないと書いています。さらに、完全な認可を得ていないのに「FSAに認可された」と示すこともできません。どの規制が自社の商品に当てはまるかを判断する責任は販売者にある、とも明記されています。

食品としての側はFSA(英国食品基準庁)の案内です。CBD食品はノベルフードにあたり、市場に出す前に認可が必要だとされています。FSAは公開リストを持っていますが、そこに載っている商品は正式に販売を認可されたものではなく、安全性の評価も完了していないと書かれています。健康な大人への助言は1日10mgまでで、これは5%のCBDオイルで4〜5滴に相当すると説明されています。子ども、薬を服用している人、妊娠中・授乳中の人などには、医師の指示がない限り推奨しないとされています。原本の公開日は2020年2月13日で、1日あたりの摂取に関する注意は2023年10月に更新されました。

ここまでをまとめると、この商材は言えることが構造的に狭いということになります。効能を語れず、認可されたとも書けず、広告の面も使えません。残る手段は、商品が何であるかを説明することと、買った人との関係を続けることの2つです。以下の施策は、その2つだけで組み立てられています。

英国のCBD商材でできることとできないことを左右に並べたOK・NG図。左はCBDの説明、効果が出るまでの時間の説明、登録簿で認められた表示の使用、購読者の獲得。右は医薬的な表現、登録簿に無い健康強調表示、FSAに認可されたという表示、有料検索とオンライン広告での訴求
右側は英国の規則から来る制約で、左側は事例ページに書かれている施策です。日本で同種の商品を扱う場合の可否は、ここからは判断できません。 出典:ASA「Cannabidiol (CBD) containing products」、FSA「Cannabidiol (CBD)」、Klaviyo 公式導入事例(いずれも確認日 2026-10-31)

入口は「訪問者全員」。最初に購読者を取る

広告で新しい人を連れてこられない場合、サイトに来た人が最後の機会になります。事例ページは、だからこそサイトを訪れたすべての人から連絡先を取ることが欠かせない、という考え方を示しています。実装はポップアップの登録フォームで、特別なものではありません。

公表されている送信率は10.2%です。事例ページはこれを「平均の2倍」と書き、1年で購読者リストが2倍になったとも説明しています。

ここで止まる点があります。「平均」が何の平均なのか、母数も対象も書かれていません。業種別なのか、同じツールの利用者全体なのかも不明です。したがってこの数字は、自社の送信率を評価する基準としては使えません。期間の記載もないため、10.2%がいつの値なのかも分かりません。読み取れるのは「訪問者全員を対象に入口を1つ置いた」という設計の方針までです。

4つの自動メールが受け持つ範囲

事例ページに出ているメールは4種類で、それぞれ担当する場面が違います。1つの長いシナリオではなく、場面ごとに別のきっかけで動く形です。

Goodraysが使っている4つの自動メールを順番に並べた手順図。1は登録フォームで購読者を取る工程、2はウェルカムメールで効果が出るまでの時間を説明する工程、3はカート放棄とサイト離脱を拾い直す工程、4は次に要る時期を予測して補充を促す工程
各工程に添えた率は、事例ページに書かれている値だけです。サイト離脱のフローについては成約率が公表されていません。 出典:Klaviyo 公式導入事例「CBD brand achieves a 40% repurchase rate with Klaviyo」(確認日 2026-10-31)

順番に意味があります。入口で連絡先を取り、最初のメールで期待値をそろえ、途中でやめた人を拾い、買った人に次の時期を知らせる。どれか1つだけを入れても、前の工程がなければ送る相手がいません。広告で入口を増やせない事業では、この連なりが途切れた分がそのまま損失になります。

ウェルカムメールの仕事は、売ることではない

新しい購読者に送るメールの中身は、商品の宣伝ではなく説明です。CBDが何であるか、精神作用がないこと、どの商品があるか、ブランドが信頼できる根拠は何か。事例ページは、CBDについての誤解を解くことを目的として挙げています。

ここに、効果が出るまでの時間の話が入ります。事例ページは、平均して顧客が常用者になるまでに2回の購入が必要だと書いています。そしてCBDは効果が現れるまで6〜8週間かかるため、すぐ実感できると期待しないよう教育することが重要だとしています。初回割引を含むメールの成約率は9.7%で、割引を使わなかった人には再通知を送る形です。

この順序は日本の実務にそのまま置き換えられます。効果が出るまでに時間がかかる商材は少なくありません。学習サービス、健康食品、業務システムのように、使い始めてすぐには変化が見えないものです。最初のメールで「いつ頃に何が分かるか」を伝えておかないと、変化が見えない時期に離脱が起きます。購入後のフォローを何通に分けるかという設計は14通のうち売るのは3通|米焙煎店の購入後フォローメールで扱いました。

なお、ここで言えるのは「期待値を先に伝える設計になっている」ところまでです。その説明によって解約や返品がどれだけ減ったのかは公表されていません。

放棄されたカートと離脱を拾う

3つ目は取りこぼしの回収です。事例ページは、カートの放棄とサイトからの離脱を別のきっかけとして扱い、閲覧していた内容をもとに商品を提案し直すと書いています。つまり「カートに入れた人」だけでなく、「見て帰った人」にも別のメールが用意されています。

公表されているのはチェックアウト放棄フローの成約率8.3%です。サイト離脱の側の数値はありません。2つを合わせた効果として読まないでください。

「次に要る時期」を予測して送る

4つ目が再購入です。使っているのは Relo というアプリで、事例ページは「顧客が再注文を必要とする時期をAIで予測するアプリ」と説明しています。Relo はそのデータを Klaviyo へ同期し、Goodrays はそれをもとに個別のメールフローを送ります。メールには前回買った商品が表示され、カートに入った状態のリンクが添えられます。

この形が効くのは、補充の間隔が人によって違うからです。同じ商品でも、毎日使う人と週末だけ使う人では次に要る時期がずれます。全員に同じ日数で送れば、早すぎる人には不要な催促になり、遅すぎる人は買う前に別の店へ行きます。定期購入に切り替えてしまう方法もありますが、こちらは買い切りのまま間隔を推測する選択です。

事例ページに出ている関連する値は2つです。再購入率が40%、メール売上のうち自動フローが69%を占めるとされています。マーケティング責任者の Henry Colyer さんは、チームが小さいため、自動フローのメールが多くの時間を節約し、その時間を事業を育てる別のことに使えていると述べています。人手が足りないことを前提に、繰り返しの連絡だけを機械に任せた形です。再購入の作り方を国内の文脈で整理したものはリピーターを増やす方法にあります。

公表されている値と、公表されていない項目

数値の読み方を間違えないために、どこまでが公表されているのかを分けておきます。

Goodraysの事例ページの成果欄に出ている3つの数値カード。オンライン売上のうちメール経由が53%、登録フォームの送信率が10.2%、チェックアウト放棄フローの成約率が8.3%
成果欄に並んでいるのはこの3つで、残りの値は本文の中に出てきます。いずれも集計期間の記載がありません。 出典:Klaviyo 公式導入事例「CBD brand achieves a 40% repurchase rate with Klaviyo」(確認日 2026-10-31)
項目 公表されている内容
メール経由の売上比率 53%(オンライン売上に対して)
自動フローの比率 69%(メール売上に対して)
再購入率 40%
登録フォームの送信率 10.2%(平均の2倍と記載。基準は不明)
初回割引メールの成約率 9.7%
チェックアウト放棄フローの成約率 8.3%
集計期間 記載がありません
売上額・購読者数・従業員数 記載がありません
サイト離脱フローの成約率 記載がありません
Relo の導入時期と費用 記載がありません

比率だけが並んでいて、分母が公表されていないことに注意してください。メール経由が53%であっても、オンライン売上そのものの大きさは分かりません。「比率が高い」ことと「売上が大きい」ことは別です。この事例から取れるのは金額ではなく、施策の組み方と順序です。

日本の実務者が持ち帰れる点

広告が規制されている商材でなくても、同じ構造に置かれている事業は多いはずです。広告費が上がって採算が合わない、プラットフォームの審査で出稿が止まる、業種の表現規制が厳しい。いずれも「広告で新規を増やし続ける」前提が崩れた状態です。

  • 広告が使えるかどうかを、施策を決める前の前提として扱う。使えないと分かったあとで組む順序は、使える場合とは変わります
  • 入口はサイト訪問者全員に置く。来訪が有限なら、連絡先を取る機会も有限です。国内では同意の取り方に実務上の作法があるので、メルマガの同意の取り方を先に確かめてください
  • 最初のメールで期待値をそろえる。効果が出るまでの時間を先に伝えるほうが、あとで「効かなかった」と判断される機会を減らせます
  • 再購入の間隔を推測する材料を持つ。予測アプリを入れるかどうかは別として、購入履歴から間隔を見るところまでは手元のデータでできます

効果の大きさは、商材と運用によって変わります。この事例の数値が自社で再現されるという意味ではありません。再現できるのは数値ではなく、順序と判断の置き方です。

この記事で確認できなかったこと

  • 公表されている各数値の集計期間。事例ページに記載がありません
  • 「平均の2倍」の比較対象。母数も業種の範囲も書かれていません
  • 売上額、購読者の実数、従業員数。いずれも記載がありません
  • Relo を導入した時期と費用、同期している項目の詳細
  • サイト離脱フローの成約率
  • Goodrays の公式サイトに書かれている会社情報。自動取得が拒否され、本文を確認できませんでした
  • 日本で同種の商品を扱う場合の広告の可否。この記事で確認したのは英国の規則だけです

出典はいずれも2026年10月31日に確認したもので、半年ごとに見直す設定にしています。規則の側は改定されます。引用した制限を自社の判断に使う前に、同じURLで最新の記載を確かめてください。

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