GA4でオーディエンスを作ろうとすると、候補の一覧に「7日以内に購入する可能性が高い既存顧客」のような予測の候補が並びます。ところが選べない状態のまま変わらないことがあり、その理由は画面に書かれていません。これは設定の失敗ではなく、予測を出すための条件をプロパティが満たしていない状態です。条件は利用者が画面で変えられるものではなく、送っているイベントと、集まっている人数と、モデルの品質で決まります。
この記事では、Google アナリティクス ヘルプの記載にもとづいて、予測指標が何をどの期間について予測しているのか、対象になるために何が必要なのか、どこで使えるのか、そして出てきた数字をKPIの判断にどこまで使えるのかを順に整理します。確認日は2026年10月28日です。ヘルプに記載を見つけられなかった項目は推測で埋めず、確認できなかったこととして最後にまとめました。
予測しているのは「人ごとの可能性」で、実績の数ではない
公式ヘルプが挙げている予測指標は4つです。いずれも集計値ではなく、ユーザー1人ごとに付く値です。ここを取り違えると、レポートの読み方そのものが変わってしまいます。
「購入の可能性」は、過去28日間に操作を行ったユーザーによって、今後7日間以内に特定のキーイベントが記録される可能性と定義されています。「離脱の可能性」は、過去7日以内にアプリやサイトで操作を行ったユーザーが、今後7日以内に操作を行わない可能性です。「予測収益」は、過去28日間に操作を行ったユーザーが今後28日間に達成する全購入キーイベントによって得られる総収益の予測で、これだけは可能性ではなく金額として出ます。4つめの「アプリ内購入の可能性」は、ユーザーが予測範囲内に in_app_purchase イベントをトリガーする可能性です。
定義を並べると、指標ごとに見ている過去の長さと、予測している先の長さが違うことが分かります。購入の可能性は過去28日を見て先7日を予測し、離脱の可能性は過去7日を見て先7日を予測します。予測収益は過去28日を見て先28日です。つまり「どのユーザーが対象に入るか」も指標ごとに違い、離脱の可能性だけは直近1週間に動きのあった人しか対象になりません。先週まったくアクセスがなかった人は、離脱の可能性の計算に入らないという理解になります。
| 指標 | 対象になるユーザー | 予測している内容と期間 |
|---|---|---|
| 購入の可能性 | 過去28日間に操作を行ったユーザー | 今後7日間以内に特定のキーイベントが記録される可能性 |
| 離脱の可能性 | 過去7日以内に操作を行ったユーザー | 今後7日以内に操作を行わない可能性 |
| 予測収益 | 過去28日間に操作を行ったユーザー | 今後28日間に達成する全購入キーイベントによる総収益 |
| アプリ内購入の可能性 | 記載を確認できませんでした | 予測範囲内に in_app_purchase イベントをトリガーする可能性 |
指標の名前に「可能性」と付いていることは、読み方を決めるうえで重要です。これは推定であって、達成された件数ではありません。実績として数えるのはキーイベントの側で、その設定はGA4のキーイベント設定|計測中のイベントを成果として数えるまでで扱っています。どの指標を定常的に見るかという選び方そのものは、アクセス解析で見る指標の選び方|定義と前提から絞り込むにまとめています。
対象になるかどうかは、3つの前提条件で決まる
公式ヘルプは、予測モデルを正常にトレーニングするための条件を3つ挙げています。1つでも欠けると、その予測は使えません。
1つめは人数です。ヘルプは「関連する予測条件をトリガーしたリピーターが過去 28 日の間の 7 日間で 1,000 人以上、トリガーしていないリピーターが 1,000 人以上必要です。」と記載しています。注意したいのは、条件を満たした人だけでなく、満たしていない人も1,000人以上必要という点です。購入した人が十分にいても、購入していないリピーターが足りなければ条件に届きません。対象は新規ユーザーではなくリピーターで、期間は過去28日の中の7日間です。
2つめはモデルの品質です。ヘルプは「モデルの品質が一定期間維持されていることが要件になります」とし、あわせて、プロパティのモデルの品質が最小しきい値を下回った場合には、対応する予測の更新が自動的に停止すると説明しています。いったん使えるようになっても、その状態が続くとは限らないという性質がここにあります。
3つめはイベントです。購入の可能性と予測収益の両方を対象にするには、プロパティが purchase と in_app_purchase、またはそのどちらかを送信している必要があります。さらに purchase イベントを収集する場合は、その value と currency パラメータも収集しなければならないと明記されています。金額を伴うイベントを送っているつもりでも、パラメータが欠けていれば予測収益の側は成立しません。
いまどの予測が使える状態なのかは、推測しなくても確認できます。ヘルプは、オーディエンス作成ツールのオーディエンステンプレートの候補内にある「予測可能」セクションで、各予測の要件ステータスを確認できると案内しています。予測オーディエンスの側のページでも、予測モデルの要件を満たしている候補は[利用可能]とラベル付けされると書かれています。候補が選べないのは、この要件ステータスが満たされていないことの表示だと読めます。
使える場所は2か所に限られている
予測指標は、GA4のどのレポートにも自由に出せるわけではありません。ヘルプは、予測指標はオーディエンス作成ツールとデータ探索ツールで使用できると記載しています。データ探索ツールでは「ユーザーのライフタイム」の手法で使えると案内されています。標準レポートの表に列として足していく使い方ではない、ということです。
オーディエンス側では、予測指標による条件を1つ以上含むオーディエンスを「予測オーディエンス」と呼びます。候補として用意されているテンプレートには、次のようなものが挙げられています。
| 予測オーディエンスの候補 | 対象になるユーザー |
|---|---|
| 7日以内に購入する可能性が高い既存顧客 | 今後7日以内に購入に至る可能性が高いユーザー |
| 7日以内に離脱する可能性が高いユーザー | 今後7日以内にプロパティにアクセスしない可能性が高いユーザー |
| 初回購入予測ユーザー | 初回購入の可能性が高いユーザー |
| 7日以内に離脱する可能性が高い既存顧客 | 候補の名前のとおり。説明文の記載は確認できませんでした |
| 28日以内の高収益ユーザー | 候補の名前のとおり。説明文の記載は確認できませんでした |
候補はそのまま使うだけでなく、予測に基づく条件を使って自分でオーディエンスを作ることもできると記載されています。ここで現実的な制約になるのが枠です。「設定の制限」のページによると、オーディエンスはプロパティあたり100です。試しに作った予測オーディエンスを消さずに残していくと、広告の配信や分析で使う予定だったほかのオーディエンスの枠を先に消費します。キーイベントが30、保存済みの比較とセグメントがそれぞれ50という上限も同じページに並んでいるので、同じ画面で使う枠としてまとめて見ておくほうが計画が立てやすくなります。
作れても、広告に出せるとは限らない
予測オーディエンスを作る目的が広告の配信である場合、GA4の側で作れたことと、広告の側で使えることは別の話になります。Google 広告 ヘルプの「データ セグメントの設定について」には、「なお、広告を掲載するには、セグメントのアクティブ ユーザーが 100 人を超えている必要があります。」と記載されています。
この条件は、予測オーディエンスと相性が悪くなることがあります。購入の可能性が高い上位のユーザーだけに絞り込むほど人数は減り、絞り込みを強めた結果として100人を超えなくなれば配信には使えません。条件の厳しさと、配信に必要な人数は逆向きに動くため、どのくらいの人数が残るのかを見ながら条件を決めることになります。なお、ここで引用した100人という条件はGoogle 広告の側の要件で、GA4でオーディエンスを作ること自体を妨げるものではありません。
KPIの判断に使うときは、欠測する前提で置く
ここまでの条件を踏まえると、予測指標をKPIの運用に組み込むときの線引きが見えてきます。
まず、毎月必ず数字が出る前提の報告の型を作らないことです。モデルの品質が最小しきい値を下回れば、対応する予測の更新は自動的に停止します。人数の条件も、閑散期や繁忙期で満たせる月と満たせない月が分かれる可能性があります。定例のレポートに固定の枠として置くと、空欄になった月に「数字が悪くなった」のか「予測が止まった」のかを区別できません。毎週同じ形で配る仕組みを作る場合の注意点は、KPIレポートの作り方|Looker Studioで毎週届く形にするで扱っています。
次に、予測と実績を同じ列に並べないことです。予測指標は可能性の推定で、実績のキーイベント数とは別のものです。同じ表の隣に置くと、達成率のように見えてしまいます。判断に使うなら、予測の高いユーザー群に対して何をしたか、その後に実績がどう動いたかという形で、時点をずらして見ることになります。
精度を上げるために公式ヘルプが挙げているのは、データ共有設定でモデリング用途を有効にすること、購入イベントを確実に収集すること、推奨イベントを幅広く収集することなどです。いずれも設定と計測の側の話で、予測そのものを調整する手段は示されていません。利用者が触れるのは入力の側だけだと理解しておくほうが、期待とずれません。
長期の推移として残したい場合は、保持期間の制約も重なります。GA4のデータ保持期間と、1年を超える推移を残すための経路はGA4のデータ保持期間|14か月で消えるものと、長期の推移を残す経路にまとめています。
今回参照したページで確認できなかったこと
推測で埋めないために、今回参照した範囲で記載を見つけられなかった項目を残します。
予測が更新される頻度は確認できませんでした。品質が下回った場合に更新が自動的に停止するという記載はありますが、通常どのくらいの間隔で更新されるのかは書かれていません。したがって「前日の行動がいつ反映されるか」も、この範囲では分かりません。
停止した予測が再開する条件も確認できませんでした。品質が回復すれば自動で戻るのか、何らかの操作が必要なのかは示されていません。止まった場合に何をすればよいかは、この記載からは決められません。
アプリ内購入の可能性が対象とする期間の日数も確認できませんでした。ほかの3つは7日または28日という日数が明示されていますが、この指標については「予測範囲内」という表現にとどまっています。
予測の精度を示す数値と、モデルの品質の最小しきい値そのものも示されていません。品質がしきい値を下回ると止まるという動作は書かれていても、そのしきい値がどのような基準なのかは公開されていません。あわせて、上位何パーセントのユーザーを対象にするといったパーセンタイルの扱いについても、今回のページには記載がありませんでした。プロパティの種別による制限についても明記を見つけられませんでした。
まとめ
GA4の予測指標は、ユーザー1人ごとに「これから起きる可能性」を付けるもので、集計された実績ではありません。購入の可能性は過去28日から今後7日、離脱の可能性は過去7日から今後7日、予測収益は過去28日から今後28日と、指標ごとに見ている期間が違います。
対象になる条件は3つです。条件をトリガーしたリピーターと、していないリピーターが過去28日の間の7日間でそれぞれ1,000人以上いること。モデルの品質が一定期間維持されていること。購入側の予測を使うなら purchase または in_app_purchase を送り、purchase では value と currency も集めていること。いまどの予測が使えるかは、オーディエンス作成ツールの候補の「予測可能」セクションで確認できます。
使える場所はオーディエンス作成ツールとデータ探索ツールの「ユーザーのライフタイム」の2か所です。作ったオーディエンスをGoogle 広告の配信に使う場合は、アクティブユーザーが100人を超えている必要があり、条件を絞り込むほどこの壁に近づきます。オーディエンスの枠はプロパティあたり100なので、試作を残し続けないほうが安全です。
運用に組み込むときは、更新が自動的に止まりうることを前提にしてください。固定枠のレポートに置くと、欠測と悪化を見分けられなくなります。予測は実績と別の欄で扱い、予測の高い群に何をしたかという形で後から実績と突き合わせるのが、この指標の性質に合った使い方です。
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