マーケティング戦略/解説

STP分析とは?セグメンテーションからポジショニングまで解説

STP分析の進め方を、市場の切り分け・狙う層の決定・立ち位置の設定という3段階で解説します。切り口の選び方、対象を絞る判断基準、ポジショニングを一文にまとめる方法まで整理します。

STP分析は、市場を切り分け(Segmentation)、狙う層を選び(Targeting)、その中での立ち位置を決める(Positioning)という3段階のフレームワークです。マーケティング戦略の中核にあたる「誰に何を提供するか」を決める作業を担います。この記事では、各段階で具体的に何を決めるのか、どこで判断を誤りやすいのかを解説します。

STP分析が担う役割

日本マーケティング協会が2024年に制定した定義では、マーケティングは「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させる」ための構想でありプロセスとされています。

この「誰と価値を創造するのか」を決めるのがSTP分析です。対象が決まらなければ、価値の内容も、届ける経路も決められません。施策の前に置かれるべき作業であり、ここが曖昧なまま広告や記事に進むと、伝える内容が総花的になります。

S:セグメンテーション(市場の切り分け)

最初の段階では、市場を意味のある単位に切り分けます。

切り口には次のようなものがあります。地理(地域、都市規模、気候)、人口統計(年齢、性別、職業、企業規模、業種)、心理(価値観、ライフスタイル、重視する点)、行動(利用頻度、購入のきっかけ、検討期間、求める機能)。

実務で有効なのは、後半2つです。「30代女性」より「時間がなく、選ぶ手間を減らしたい人」のほうが、提供すべき内容が明確になります。BtoBでも「従業員100人以下の製造業」より「人手不足で受注を断っている製造業」のほうが、書くべき文章が決まります。

切り分けの良し悪しは、施策が変わるかどうかで判定します。 分けた結果、どの層にも同じ施策しか思いつかないなら、その切り口は役に立っていません。

手順図。セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3段階
3段階で「誰に何を提供するか」を決めます。各段階の判断基準は当社の整理です。 出典:公益社団法人日本マーケティング協会「34年振りにマーケティングの定義を刷新」(確認日 2026-08-20)

T:ターゲティング(狙う層の決定)

切り分けた中から、どこを狙うかを決めます。

判断の材料は3つです。第一に規模。その層に十分な数の見込み客がいるか。第二に到達可能性。その層に届く手段があるか。第三に自社の適合度。その層の求めるものを、自社が他社より上手く提供できるか。

規模だけで選ぶと、大手と正面から競合することになりがちです。資源の限られた事業では、大手が対応しにくい条件を持つ層を選ぶほうが勝ち筋が見えます。特殊な業務要件、小口の取引、地域密着、短納期といった条件です。

ここで決めるべきもうひとつのことは、狙わない層を明確にすることです。「誰でも歓迎」の状態は、実質的にターゲティングをしていません。

比較表。地理・人口統計・心理・行動の各切り口と、施策への落としやすさ
同じ市場でも切り口によって、書くべき内容の具体性が変わります。当社の整理です。 出典:公益社団法人日本マーケティング協会「34年振りにマーケティングの定義を刷新」(確認日 2026-08-20)

P:ポジショニング(立ち位置の設定)

選んだ層の中で、競合と比べてどう位置づけられたいかを決めます。

作業としては、顧客が選ぶときに重視する軸を2つ選び、その平面上に自社と競合を置きます。軸の例は、価格の高低、対応範囲の広さ、専門性の深さ、導入の手軽さ、サポートの厚さなどです。

重要なのは、軸を自社の都合で選ばないことです。顧客が実際に比較検討で使っている基準を軸にします。営業の商談記録や問い合わせの文面に、その基準が現れています。

置いてみて自社と競合が同じ場所に重なるなら、差別化ができていない状態です。軸を変えるか、提供内容を変えるか、対象を絞り直すかの判断が必要になります。

ポジショニングを一文にまとめる

STPの成果物は、図表ではなく一文です。次の形に収まるかを確認します。

「〈対象〉にとって、〈自社〉は〈競合や代替手段〉と違い、〈提供する価値〉を提供する存在である」

この一文が書けたら、以降の判断がすべてここから逆算できます。書くべき記事の内容も、広告の訴求も、断るべき問い合わせも決まります。書けない場合は、3段階のどこかに事実の不足があります。

検索行動との接続

BtoB・BtoCを問わず、現在は検討の初期段階が検索で始まることが多くなっています。Googleは公式のSEOスターターガイドで、ユーザーが探している内容にページが答えているかが重要である旨を説明しています。

STPで決めた対象と価値は、その層が実際に使う言葉に翻訳して初めて検索から見つかります。社内用語や業界用語のままでは、対象が検索する言葉と一致しません。ポジショニングの一文ができたら、その内容を対象が使う言葉に言い換える作業をセットで行います。

よくある失敗

第一に、セグメンテーションを属性だけで済ませること。年齢や業種だけで区切ると、施策が変わりません。困りごとや利用場面まで踏み込みます。

第二に、ターゲットを広く取りすぎること。「見込みがある層は全部」としたくなりますが、伝える内容が薄まります。特に発信できる量が限られる小規模な事業では、絞ったほうが結果的に届きます。

第三に、ポジショニングを願望で書くこと。「高品質で低価格」は、顧客から見た事実でなければ意味がありません。実際に選ばれた理由を顧客に聞いて裏付けます。

第四に、一度決めて放置すること。競合の動きや顧客の要望は変わります。定期的に見直し、一文が今も正しいかを確認します。

OKとNGの比較。状況で切る・顧客の言葉に翻訳するのがOK、属性だけ・願望で書くのがNG
当社が支援の現場で見ている、つまずきやすい箇所と対処です。 出典:Google 検索セントラル「Google 公式 SEO スターター ガイド」(確認日 2026-08-20)

この記事のまとめ

STP分析は、市場を切り分け、狙う層を決め、その中での立ち位置を定める3段階の作業です。切り分けは属性より状況で行い、狙う層は規模・到達可能性・自社適合度で判断し、立ち位置は顧客が使う比較軸の上で決めます。

成果物は図ではなく一文です。「誰にとって、何と違い、どんな価値を提供するのか」が書けているかが、STPが機能しているかの判定基準になります。

BtoBでの切り分け方

BtoBの事業では、企業属性だけで切り分けると施策に落ちません。有効なのは、次の3つを組み合わせる方法です。

業務上の状況:人手が足りない、既存の仕組みが限界、法改正への対応が必要など、いま動く理由になっている状況です。

意思決定の構造:担当者が決められるのか、稟議が要るのか、複数部署が関わるのか。これによって必要な資料が変わります。

導入の経験:同種のサービスを使ったことがあるか。初めての導入なら基礎の説明が要り、乗り換えなら比較の材料が要ります。

この3つで切ると、書くべき内容と、営業が用意すべき資料まで具体的に決まります。

ポジショニングの軸を見つける方法

軸は机上で考えるより、実際の言葉から拾うほうが精度が上がります。

受注した理由を聞く:決め手になった点を顧客に直接尋ねます。想定と違う理由が挙がることが多く、その差が発見になります。

失注の理由を集める:選ばれなかった理由には、競合との違いが最も明確に現れます。

問い合わせの文面を読む:比較検討の段階で何を気にしているかが、そのまま軸の候補になります。

これらから拾った言葉のうち、繰り返し出てくるものが、顧客の使っている比較軸です。

決めた内容を施策に渡す

STPの成果物である一文は、そのままでは施策になりません。次の3つに翻訳して初めて実務が動きます。

言葉への翻訳:対象が実際に使う表現に置き換えます。社内用語や業界用語のままでは、検索されている言葉と一致せず、読み手にも伝わりません。

場所への翻訳:その層がどこで情報を集めているかを決めます。検索なのか、SNSなのか、業界紙なのか、紹介なのか。ここが決まると、使う経路が決まります。

順番への翻訳:認知から検討、決定までの流れで、どの段階に手を打つかを決めます。認知が足りない層に詳細な比較資料を出しても読まれません。

この3つが揃うと、STPで決めた内容が、その日から動かせる施策になります。

見直しの頻度

一度決めた内容も、前提が変われば合わなくなります。四半期に一度、次の3点を確認します。

問い合わせの内容が想定と合っているか。 ずれてきていれば、対象の定義が実態と離れています。

競合の訴求が近づいていないか。 同じことを言い始めていれば、ポジショニングが機能しなくなっています。

顧客が選んだ理由が変わっていないか。 決め手が変わっていれば、比較軸そのものが動いています。

出典と注記

マーケティングの定義は公益社団法人日本マーケティング協会、検索での見つかり方については Google 検索セントラルの公式ガイドに基づきます。STPは経営学で広く用いられているフレームワークで、当社が考案したものではありません。切り口の選び方や判断基準は、当社が支援の現場で用いている整理です。

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