ペルソナは、対象とする顧客像を具体的な人物として設定したものです。年齢や趣味を細かく決めることが目的だと思われがちですが、実務での役割は違います。施策を判断するときの基準を作ることが目的です。この記事では、想像で作らないための材料集めから、設定すべき項目、作った後の使い方までを解説します。
ペルソナを作る目的
日本マーケティング協会が2024年に制定した定義では、マーケティングは「顧客や社会と共に価値を創造」するプロセスとされています。誰と価値を創造するのかが曖昧なままでは、価値の内容も決められません。
ペルソナは、この「誰」を関係者が同じイメージで共有するための道具です。実務では次の場面で効きます。記事の題材を選ぶとき、広告の訴求文を決めるとき、サイトに載せる情報の優先順位を決めるとき、断るべき問い合わせを判断するとき。
逆に言えば、これらの判断に使えないペルソナは作る意味がありません。趣味や休日の過ごし方を細かく設定しても、施策の判断が変わらないなら不要な項目です。
材料は社内にある
ペルソナは想像で作るものではありません。事実を集めてから作ります。
既存顧客への聞き取りが最も確実です。何に困っていたか、どうやって当社を知ったか、何と比べたか、決め手は何だったかを聞きます。数人分でも、共通点と個別事情の区別が付きます。
問い合わせの文面には、顧客が使う言葉がそのまま残っています。専門用語を使っているか、どんな表現で困りごとを説明しているかを確認します。
商談の記録・失注の理由からは、検討の過程で気にしていた点が分かります。
サポートへの質問は、購入後につまずく箇所を示します。ここは購入前の不安と重なることが多く、記事の題材にもなります。
検索されている言葉からは、まだ接点のない層が何を探しているかが見えます。
これらを集めると、複数の顧客像が浮かびます。その中から、最も注力すべき一人を選んでペルソナにします。
設定する項目
項目は、事業の性質によって変わります。共通して必要なのは次の5つです。
状況:いまどんな立場で、何を担当しているか。BtoBなら役職と責任範囲、BtoCなら生活の中での位置づけ。
困りごと:解決したいことは何か。表面的な要望ではなく、その裏にある目的まで書きます。「サイトを作りたい」の裏に「営業の人手が足りない」があるなら、後者が本当の困りごとです。
きっかけ:いま動いている理由。人員の変化、法改正、既存の仕組みの限界など、動機となった出来事です。
判断の基準:何を比べて決めるか。価格、実績、納期、担当者の対応など。優先順位まで書けると精度が上がります。
情報の集め方:どこで調べるか。検索、SNS、知人からの紹介、業界紙など。ここが届ける経路の判断材料になります。
年齢や性別は、それによって施策が変わる場合だけ設定します。変わらないなら書かなくて構いません。
BtoBでの設定
BtoBでは、買う人と使う人と決める人が違うことが一般的です。ペルソナも複数必要になります。
担当者:日常的に困りごとを抱えている人。情報を集め、候補を絞る役割を担います。
決裁者:予算を承認する人。関心は費用対効果と失敗した場合のリスクにあります。
この2人では、必要な情報が違います。担当者には使い勝手や導入の手間、決裁者には投資の妥当性と実績が響きます。両方に届く資料を用意しておくと、社内での検討が進みやすくなります。
作った後の使い方
ペルソナは、作った時点では何も生みません。使い方が決まって初めて機能します。
コンテンツの題材選び:ペルソナが検索しそうな疑問を、そのまま記事の題材にします。Googleは公式ドキュメントで、ユーザーを第一に考え、有用で信頼性の高いコンテンツを作ることの重要性を説明しています。ペルソナは、その「ユーザー」を具体化する道具として働きます。
訴求文の判断:複数の案で迷ったとき、「この人はどちらに反応するか」で選びます。
掲載情報の優先順位:ペルソナが判断基準にしている項目を、ページの上部に置きます。
断る判断:ペルソナと違う相手からの問い合わせが増えている場合、集客の設計がずれているサインです。
よくある失敗
想像だけで作ること。作り手の思い込みが入り、実際の顧客とずれます。事実を集めてから作ります。
項目を増やしすぎること。施策の判断に使わない項目は、作る手間の分だけ無駄になります。
理想の顧客を書くこと。「予算が潤沢で意思決定が速い顧客」を設定しても、実在しなければ意味がありません。実際に受注している顧客から作ります。
一度作って更新しないこと。顧客層は変わります。受注の傾向が変わったら見直します。
共有されないこと。担当者の手元にあるだけでは判断が揃いません。関係者が見られる場所に置き、施策の議論で参照します。
見直しの周期
半年から1年に一度、次の点を確認します。
受注している顧客の傾向は変わっていないか。問い合わせの内容がペルソナの想定と合っているか。判断の基準として実際に使われているか。
使われていない場合、項目が多すぎるか、実際の顧客と離れているかのどちらかです。作り直すより、実際の受注顧客から作り直すほうが早く直ります。
この記事のまとめ
ペルソナは、施策を判断するための基準を作る道具です。想像ではなく、既存顧客への聞き取りや問い合わせの記録といった事実から作ります。
設定する項目は、状況・困りごと・きっかけ・判断の基準・情報の集め方の5つが軸です。BtoBでは担当者と決裁者の両方を用意します。作った後は、題材選び、訴求の判断、掲載順の決定に使い、定期的に実態と照らして見直します。
記入例の考え方
ペルソナは形式より中身です。ここでは、BtoBのサービス業を想定した記入の考え方を示します。
状況の欄には、「製造業の総務担当」ではなく「人員が増えず、既存の業務を回すだけで手一杯の総務担当」のように、動く理由になっている状況まで書きます。
困りごとの欄には、表面的な要望の裏にある目的を書きます。「ツールを導入したい」の裏に「引き継ぎが属人化していて、退職時に業務が止まる」があるなら、後者が本体です。
きっかけの欄には、いま動いている理由を書きます。担当者の異動、法改正、既存の仕組みの契約更新など、時期を決めている要因です。
判断の基準には、優先順位まで書きます。「価格>実績>納期」なのか「実績>納期>価格」なのかで、伝えるべき順番が変わります。
情報の集め方には、実際に使っている経路を書きます。ここが決まると、どこに出稿すべきかが決まります。
複数作るときの上限
対象が複数ある事業では、ペルソナも複数になります。ただし数を増やしすぎると、どれも中途半端になります。
実務では、同時に扱うのは2〜3人までが現実的です。それ以上必要に思える場合、対象の絞り込みが不足しているか、事業として手を広げすぎている可能性があります。
複数作る場合も、注力する順番を決めておくことが重要です。優先順位がなければ、施策のたびに「どのペルソナ向けか」で議論が止まります。
出典と注記
マーケティングの定義は公益社団法人日本マーケティング協会、コンテンツ制作の考え方は Google 検索セントラルの公式ドキュメントに基づきます。設定項目の整理と使い方は、当社が支援の現場で用いている考え方であり、公的に定められた形式ではありません。
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