マーケティングの手法を紹介する記事は数多くありますが、並べ方に基準がないと「結局どれをやればいいのか」が分かりません。この記事では、顧客との接点の作り方という一本の軸で手法を整理します。分類そのものを覚えることが目的ではなく、自社が次に取り組むべきものを選べる状態にすることが目的です。
分類の軸:顧客が来るか、こちらから行くか
数ある手法は、大きく2つに分かれます。
ひとつは、顧客が自分で探して見つける経路です。検索、SNSでの発見、口コミ、比較サイトなどが該当します。相手が困りごとを自覚している段階で接触するため、話が早く進みやすい一方、見つけてもらえる状態を作るまでに時間がかかります。
もうひとつは、こちらから届ける経路です。広告、メール、展示会、テレアポ、DMなどが該当します。届ける相手とタイミングを自分で決められるため即効性がありますが、相手はまだ困りごとを自覚していないことが多く、費用をかけ続ける必要があります。
この2つは対立するものではなく、組み合わせて使います。ただし、どちらの性質を持つ施策なのかを意識しないまま並行して走らせると、成果が出ない理由を切り分けられなくなります。
顧客が探して見つける経路
SEO(検索エンジン最適化) は、検索されたときに自社のページが見つかる状態をつくる取り組みです。Googleは公式のスターターガイドで、検索エンジンがページを見つけ、内容を理解し、検索結果に表示するという流れを説明しています。この流れに自社のページが乗っているかどうかが出発点になります。効果が出るまでに時間がかかる一方、いったん流入が生まれると広告費なしで続く点が特徴です。
コンテンツマーケティング は、記事や資料で顧客の疑問に答え、その積み重ねで信頼と検討機会を得る取り組みです。SEOと重なりますが、検索以外(SNSでの共有、営業資料としての利用、メールでの配信)でも使える点が違います。
SNS運用 は、日々の発信を通じて認知と関係を作る取り組みです。プラットフォームごとに利用者層と反応の仕方が異なるため、すべてに手を出さず、顧客がいる場所を選ぶことが前提になります。
口コミ・紹介 は、既存顧客からの推薦で新しい顧客に出会う経路です。費用がかからず成約率も高い一方、意図的に増やしにくいという性質があります。紹介しやすい状態(説明資料、紹介の依頼、事例の公開)を用意しておくことが実務上の打ち手になります。
こちらから届ける経路
Web広告(リスティング・ディスプレイ・SNS広告) は、費用を払って露出を買う手法です。出稿すればその日から表示され、止めれば止まります。速さと制御しやすさが利点で、費用対効果を数字で確認できます。
メールマーケティング は、すでに接点のある相手へ継続的に情報を届ける手法です。新規獲得ではなく、検討中の相手を逃さないこと、既存顧客との関係を保つことに向いています。手元のリストを使うため費用が小さく、中小企業でも取り組みやすい領域です。
展示会・セミナー は、対面や画面越しに直接説明できる場を作る手法です。準備の労力は大きいものの、一度に多くの見込み客と会えます。
DM・テレアポ は、こちらから直接連絡する手法です。対象を絞れる反面、相手の状況を選べないため、断られる前提の設計が必要になります。
選ぶ順番
手法を選ぶときは、いま詰まっている場所から逆算します。
そもそも知られていない場合は、認知を作る手法(広告、SNS、展示会)が候補になります。知られてはいるが問い合わせが来ない場合は、サイトの内容と導線の改善、事例や資料の整備が先です。問い合わせは来るが成約しない場合は、マーケティングより営業側の話になります。
もうひとつの基準が、時間の余裕です。3か月以内に成果が必要なら広告が現実的で、1年かけて費用のかからない流入を作りたいならSEOとコンテンツが向きます。この2つは競合せず、広告で早く検証した訴求を、後からコンテンツへ転用するという進め方もできます。
手法より先に決めること
日本マーケティング協会が2024年に制定した定義では、マーケティングは「構想でありプロセスである」とされ、構想には戦略・仕組み・活動が含まれると注釈されています。手法は、この「活動」にあたる部分です。
つまり、どの手法を選ぶかの前に、誰にどんな価値を届けるのかという構想が要ります。ここが定まらないまま手法だけを増やすと、発信の内容がばらつき、どれも中途半端になります。まず1つの経路で成果の出る形を作り、それから広げるのが安全な進め方です。
この記事のまとめ
マーケティングの手法は、顧客が探して見つける経路と、こちらから届ける経路に分かれます。前者は時間がかかるが持続し、後者は速いが費用が続きます。
選ぶときは、認知・興味・問い合わせのどこで詰まっているかと、成果までに使える時間から逆算します。手法を増やす前に、誰に何を届けるかを決めることが先です。
組み合わせ方の基本
手法は単独で使うより、性質の違うものを組み合わせるほうが成果が安定します。
典型的な組み合わせは、広告で早く検証し、コンテンツで蓄積する形です。広告なら数週間で「どの訴求が反応されるか」が分かります。そこで効いた言葉を記事やLPに反映すれば、コンテンツ制作の当てずっぽうが減ります。
もうひとつは、集める経路と受け皿を対にする形です。展示会やセミナーで名刺を集めても、その後の接触がなければ関係は切れます。集めた後にメールで接触を続ける設計まで含めて、初めてひとつの施策として成立します。
避けたいのは、似た性質の手法を同時に増やすことです。SNSを3つ同時に始める、記事を書きながら動画も始める、といった広げ方は、どれも量が足りず反応が出ないまま終わります。
手法ごとの向き不向き
商材の性質によって、向く手法は変わります。
検討期間が長く、金額の大きい商材(BtoBのサービス、住宅、設備など)では、検索とコンテンツ、展示会、メールが効きます。比較検討の材料を求めている人が多いためです。
検討期間が短く、金額の小さい商材(日用品、飲食、小売など)では、SNS、広告、店頭、口コミが効きます。じっくり比較するより、目に入った時に選ばれるかどうかで決まるためです。
地域が限られる商材(美容室、飲食店、地域の工務店など)では、地図検索と口コミ、チラシ、看板の比重が上がります。全国向けの施策に費用を使う意味が薄いためです。
自社の商材がどれに近いかを確認するだけで、検討すべき手法はかなり絞り込めます。
効果を確かめる方法
どの手法を選んでも、効果を確かめられなければ次の判断ができません。手法ごとに、確認できる形を作っておきます。
オンラインの手法では、流入元が自動的に記録されます。ただし、広告に付ける計測用のパラメータや、SNSからのリンクの設定を忘れると、正しく分類されません。出稿の前に設定を確認します。
オフラインの手法でも、経路を区別する仕掛けを入れれば計測できます。チラシに専用のQRコードを載せる、展示会用の連絡先を分ける、紹介元を問い合わせフォームに記入してもらう、といった方法です。
大事なのは、始める前に確認方法を決めておくことです。始めてから測ろうとすると、開始前の数字が残っておらず、比較ができなくなります。
手法を変えるタイミング
続けている施策をいつ見直すかも、あらかじめ決めておきます。
判断の材料は、期間(決めた期間を過ぎたか)、中間指標(訪問や表示が動いているか)、社内の余力(続けられる体制があるか)の3点です。
問い合わせがまだ出ていなくても、中間指標が伸びていれば途中まで機能しています。逆に、期間を過ぎても中間指標がまったく動かない場合は、手法の選択そのものを見直します。感覚で止めると、あと少しで成果が出る施策を切ってしまうことがあります。
出典と注記
検索エンジンの動作についてはGoogleの公式ガイドに基づきます。マーケティングの定義と注釈は日本マーケティング協会の公表内容によります。手法の分類と選ぶ順番は、当社が支援の現場で用いている整理であり、公的に定められた区分ではありません。効果や期間は事業の状況によって変わります。
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