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PinterestがDSPへ在庫を開放。Programmatic Dealsの中身と確認点

PinterestがProgrammatic Dealsを一般提供。Magniteを主なSSPに、Amazon Ads DVA+やDisplay & Video 360から在庫を買えます。発表にない条件と、窓口で先に確かめることを整理しました。

Pinterestが2026年10月26日、Programmatic Deals の一般提供を発表しました。企業の広告主が、すでに使っている購入の仕組みのまま、Pinterest の display と video の在庫を買えるようにするものです。主なサプライ側は Magnite で、需要側として名前が挙がっているのは Amazon Ads DVA+、Display & Video 360、Yahoo DSP、DeepIntent の4つです。

実務にとっての意味は、配信面が新しく増えたことではなく、買い方の入口が増えたことです。Pinterest の在庫を、他の媒体と同じ画面で、同じ取引の形で計画に入れられるようになります。一方で、発表が書いているのは経路と相手の名前までで、価格の条件や取引の形は書かれていません。この記事では、発表の文面と、買う側になる Display & Video 360 の公式ヘルプを突き合わせ、何が確認できて、何を窓口に聞く必要があるのかを整理します。確認日は2026年10月27日です。英語の記載を訳しているため、管理画面の日本語表記とは語が違うことがあります。

提供地域は北米・南米・アジア太平洋の一部の市場とされています。アジア太平洋という括りは出ていますが、国名の記載はありません。日本の広告主にとっては、ここが最初の確認事項になります。

発表で確認できること

発表の骨格は短いものです。企業の広告主が、SSP と DSP のパートナー経由で、選ばれた Pinterest の display と video の在庫を買えるようになった、というのが本体です。買い方そのものを新しく覚える必要はなく、すでに使っているメディアバイイングの流れの中へ入れられる、という書き方をしています。

Magnite の役割は、主なサプライ側のパートナーとして明記されています。発表の説明では、Pinterest の在庫とオーディエンスの信号を購入基盤へつなぐ技術を提供する立場です。あわせて、Pinterest の在庫は Magnite Orchestration にも含まれると書かれています。これは共通の環境の中でエージェントをつなぐ調整のレイヤーだと説明されています。中南米とアジア太平洋では、サプライ側で Google Ad Manager も使うと書かれています。

Programmatic Deals で Pinterest の在庫を買うときの4つの層を積み上げた階層図。上から広告主とメディアバイヤー、需要側のDSP4社、サプライ側のMagniteと地域別のGoogle Ad Manager、最下層にPinterestのdisplayとvideoの在庫を並べ、各層に発表の記載を添えている
4つの層のうち、発表が名前で示しているのは中の2層です。最下層の「どの在庫か」は選ばれたものという記載だけで、範囲は書かれていません。出典:Pinterest Newsroom「Pinterest unlocks premium inventory for programmatic buyers, scaling high-intent discovery」(確認日 2026-10-27)

ここで気をつけたいのは「selected」という限定です。買えるのは display と video の在庫のうち選ばれたもので、どの広告面が含まれるのかは発表に書かれていません。検索結果やPinのクローズアップに出る面がどう扱われるのかも、文面からは判断できません。同社が9月に出したPinterestが視覚検索に広告を載せる。Visual Search Adsの読み方の面と、今回買える在庫の関係も、発表からは読み取れません。

どのDSPから買えるのか

名前が挙がっている事業者を、発表の記載どおりに並べます。

役割 発表に書かれている事業者
サプライ側(主) Magnite
サプライ側(中南米・アジア太平洋) Google Ad Manager
需要側 Amazon Ads DVA+ / Display & Video 360 / Yahoo DSP / DeepIntent

自社または代理店がすでに使っているDSPがこの中にあるかどうかで、進め方が変わります。含まれていれば、既存の運用へ在庫を足す相談から始められます。含まれていない場合、発表の時点ではそのDSPから買う方法が示されていません。DSPを増やす判断は、ひとつの媒体の在庫のためだけに決めるものではありません。社内にある契約の棚卸しが先です。

規模の数字は需要の大きさで、成果の約束ではない

発表には、Pinterest 側の規模を示す数字が並んでいます。月間の利用者は640 millionに達し(発表では record と書かれています)、月間の検索は80 billion 件を超え、そのうち半分以上が購買に関わるものだとされています。さらに、テキスト検索の96%超が指名でない検索だと書かれています。

この最後の1行が、広告主にとっては意味を持ちます。ブランド名で探されている検索ではないということは、まだ買うものを決めていない人に出会う面だという主張です。ただし、これらはいずれも検索の量と性質であって、広告の成果ではありません。社内資料へ転記するときに「これだけの需要が取れる」と書き換えないでください。

事例として挙がっているのは、ビューティのブランド Moroccanoil です。2026年6月のキャンペーンで、Magnite が用意した取引を Amazon Ads 経由で使い、Amazon の自社オーディエンスと Pinterest のビューティ向けのターゲティングを組み合わせたと書かれています。公表されている結果は、増分リーチが15%、オーディエンスの重複はわずか1%、new-to-brand の購入者が63%多く、クリック率はそのブランドの平均より20%高かった、というものです。

読み方には条件が3つ付きます。1つ目は、1社・1回のキャンペーンの値だということ。2つ目は、比較の相手が「そのブランドの平均」であって、他社や他の媒体ではないこと。3つ目は、重複の少なさが組み合わせた相手に依存することです。この例では Amazon の自社オーディエンスと組み合わせています。同じ組み合わせを作らなければ、同じ重複率にはなりません。

取引の形は発表に書かれていない

ここが実務で最初に詰まる箇所です。発表の文面には、private marketplace や preferred deal といった取引形態の言葉が出てきません。CPM や下限価格、最低の出稿額についての記載もありません。つまり「買える」ことは分かっても、「どう買うか」は分かりません。

買う側の作法は、DSP側の公式ヘルプで確認できます。Display & Video 360 のヘルプでは、在庫ソースは非保証の固定(preferred deals)と非保証のオークション(private auctions)の2種類に分かれると書かれています。レートの種別は CPM(固定)か CPM(下限)のどちらかです。

Display and Video 360 の公式ヘルプが示す在庫ソースの2種類を比較した表。非保証の固定と非保証オークションについて、レートの種別、落札の仕組み、入札がなかったときの扱い、配信の優先順位、保存後の変更可否の5項目を並べている
価格の決まり方と、売れ残ったときの行き先が違います。最下段のとおり、保存したあとに種別だけを入れ替えることはできません。出典:Display & Video 360 ヘルプ「Add an inventory source to Display & Video 360」、「About non-guaranteed auctions」(確認日 2026-10-27)

非保証のオークションについては、別のヘルプが仕組みを説明しています。1つの販売者と複数の広告主の関係で、下限のCPMを置いた一位価格または二位価格のオークションとして動き、下限以上で最も高い入札が在庫を取ります。参加した買い手が落札しなかった場合や入札しなかった場合、売れ残った在庫はオープンオークションへ回ると書かれています。配信の優先順位は、非保証の固定が先、次に非保証のオークション、最後にオープンオークションの順です。

この違いは、計画の立て方を変えます。固定の取引では価格が決まっているので支出の見通しが立ちますが、量の確保は別の条件に左右されます。オークション側では、下限より上でどこまで出すかを自分で決めることになります。どちらで提供されるのかを確かめないまま、配信量を前提にした計画は作れません。

窓口から先に受け取る項目

Display & Video 360 で在庫ソースを登録するとき、ヘルプが挙げている項目は決まっています。Deal ID、Exchange(どの取引所経由か)、在庫のフォーマット(audio・display・video のいずれか)、レートの種別と金額、そして開始日と終了日です。任意の項目として、売り手の名前やクリエイティブの要件も挙がっています。

Pinterest の在庫をDSPで買う前に確認する項目を7行に並べたチェックリスト。Deal ID、Exchange、在庫のフォーマット、レートの種別と金額、取引の期間、対象の国、Google Ad Manager 由来の取引の承諾の順に、それぞれ根拠となる記載を添えている
上の5つはDSPの登録画面で入れる値、下の2つは発表の側で決まっていない部分の確認です。1番目から3番目は保存したあとに直せません。出典:Display & Video 360 ヘルプ「Add an inventory source to Display & Video 360」、Pinterest Newsroom の公式発表(確認日 2026-10-27)

注意したいのは、保存したあとに変更できない項目があることです。ヘルプは、Deal ID、Exchange、在庫のフォーマットが保存後は変えられないと書いています。さらに、在庫ソースの種別を「非保証の固定」から「非保証のオークション」へ、またはその逆へ変更することもできないと明記されています。受け取った値をそのまま入れて走り出すのではなく、登録の前に窓口と突き合わせる手順を挟むほうが安全です。

取引の受け取り方も、経路によって違うと書かれています。Google Ad Manager 由来の取引は、先に同期したうえで Negotiations の画面で承諾する必要があります。ヘルプにはこのほか Rubicon 由来の取引が My Inventory へ直接同期されてすぐ使えるという記載もありますが、この表記が今回のサプライ側と同じものを指すのかは、ヘルプからは判断できません。経路ごとの手順は窓口に確認してください。

媒体をまたぐ重複をどう見るか

DSP側で買うようになると、同じ人に他の媒体でも当たっている可能性を自分で見る必要が出てきます。発表が Moroccanoil の例で重複率を出しているのは、重複の少なさが売りになると考えているからです。ただし、その数字をどう測ったのかは書かれていません。

資料とノートパソコンを並べ、画面にグラフを表示して数字を見比べている机の上のイメージ画像
媒体側の数字とDSP側の数字を突き合わせる作業のイメージ画像です。Pinterest や Display & Video 360 の実画面ではありません。写真: Tiger Lily(Pexels)

自社で見るなら、先に決めることが2つあります。1つは、何をもって重複と呼ぶのかです。同じ人だと判定できる範囲は、DSPと媒体の組み合わせによって違います。もう1つは、増分をどの指標で見るのかです。リーチの増分なのか、購入者の増分なのかで、必要なデータの持ち方が変わります。指標の並べ方はWeb広告の効果測定方法|見るべき指標と改善の進め方に整理しています。

数値の出どころが媒体側とDSP側に分かれると、月次の資料で数字が合わない場面が増えます。どちらの数字を基準とするかを先に決めておくほうが、あとからの突き合わせより早く済みます。

発表に記載がないこと

推測で埋めないために、探しても見つからなかった項目を残します。

Pinterest の発表で確認できる項目と、記載がない項目を左右に並べた比較図。左は在庫の種類、主なサプライ側、需要側のDSPの数、地域別のサプライ側、提供地域。右は取引形態、CPMの水準、対象国の具体名、広告面の範囲、計測とレポートの取り扱い
左の5項目は発表の文面から転記できます。右の5項目は、今回の出典のどこにも書かれていませんでした。出典:Pinterest Newsroom「Pinterest unlocks premium inventory for programmatic buyers, scaling high-intent discovery」(確認日 2026-10-27)

このうち実務の判断に直結するのは、対象国と取引形態です。残りは運用を始める段で決まっていく部分ですが、この2つは自社が出せるかどうかそのものに関わります。社内で共有するときは、発表に書かれていることと、こちらの見立てを分けて書いてください。

日本の実務者が今日できること

いますぐ出稿を動かす話ではありません。やることは確認と準備の側に寄ります。

第一に、対象国と取引形態を窓口に聞くことです。北米・南米・アジア太平洋の一部という書き方からは、自社の配信先が入るかどうかは決まりません。ここが空のままだと、資料を作っても前提が崩れます。

第二に、契約しているDSPの棚卸しです。発表に名前のある4つのうちどれを自社または代理店が使っているのかで、相談相手が変わります。使っていないDSPの名前だけを見て計画を立てないでください。

第三に、素材の条件を取引ごとに受け取る前提で動くことです。ヘルプはクリエイティブの要件を在庫ソースの任意項目として挙げています。display と video の両方が対象なので、どの比率と尺が通るのかは取引の条件として示される前提で準備します。

第四に、レポートの様式を先に決めることです。媒体の管理画面から出る数字とDSPから出る数字が並ぶ形になります。機械が選ぶ側に回ったときに自社のデータをどう整えるかという考え方は、AIが買い物をする時代へ。Microsoftが示した3段階の備えで扱った順序がそのまま使えます。

まとめ

Pinterest は Programmatic Deals を一般提供し、display と video の在庫を SSP・DSP 経由で買える形にしました。主なサプライ側は Magnite、需要側として名前が挙がっているのは Amazon Ads DVA+、Display & Video 360、Yahoo DSP、DeepIntent です。中南米とアジア太平洋では Google Ad Manager もサプライ側に入ります。

一方で、取引形態・価格・対象国の具体名は発表に書かれていません。買い方の作法はDSP側のヘルプで確認できますが、そこで分かるのは一般的な仕組みで、今回の在庫がどちらの形で出るのかは別の話です。

いま動かせるのは、対象国と取引形態の確認、DSP契約の棚卸し、素材と計測の準備です。規模の数字は需要の大きさを示すもので、成果を約束するものではありません。この切り分けを保ったまま社内へ渡すのが、いちばん事故の少ない扱い方です。

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