Googleは2026年8月20日、検索広告のAI Maxについて、テストと計画のためのツールを広げると発表しました。発表を担当したのは検索広告のプロダクトマネジメント担当ディレクターであるBrandon Ervin氏で、公開されているのは3つの変更です。複数の検索キャンペーンを1回のA/Bテストでまとめて検証できるようになること、ブランドと地域の設定を有効にしたままAI Maxの実験を回せるようになること、そしてPerformance Plannerが既存キャンペーンへの影響を示すようになることです。いずれも2026年9月からの提供と案内されています。この記事では、発表の中身を確認したうえで、AI Maxという機能がどこに位置づくのか、日本の運用者が何を準備できるのかを整理します。
発表の内容
発表の書き出しでErvin氏は、「キャンペーンについてより賢い最適化の判断を下すために、もっと柔軟性と創造面の制御が必要だという声を聞いてきた」という趣旨を述べています。今回の拡張は、その要望に対する回答として位置づけられています。
ひとつめは、複数キャンペーンにまたがるA/Bテストです。これまでの実験は原則としてひとつのキャンペーンの中で完結していましたが、発表では、異なる予算とROI目標を複数の検索キャンペーンにまたがって設定し、1回のA/Bテストとして測れるようになると説明されています。狙いは、投資を増やしたときに成果がどう伸びるか、いわゆるスケールの効き方を測ることです。
ふたつめは、実験におけるブランドと地域の制御です。AI Maxの実験を、ブランド設定と地域設定を有効にした状態で実施できるようになります。これまでは、検証のために設定を外す必要があった場面があったということでもあります。
みっつめは、Performance Plannerの強化です。入札や予算の目標を変えたときに、既存キャンペーンのパフォーマンスにどう影響しうるかを表示し、提案された変更をワンクリックで適用できるようになると案内されています。発表は、これらが以前提供されたワンクリックの実験機能の延長線上にあるとも述べています。
AI Maxは何の上に乗る機能か
前提を確認しておきます。Google広告ヘルプの説明では、AI Maxは新しいキャンペーンタイプではありません。既存の検索キャンペーンの中で有効化する、継続的な最適化のレイヤーとして説明されています。中身は主に、検索語句のマッチングの改善、見出しと説明文のテキストの調整、そして最終ページURLの拡張です。
同じヘルプページには、キャンペーンと広告グループの両方の階層で、ブランドや対象地域といった、従来はキーワードでしか得られなかった制御が使えると書かれています。今回の発表でブランドと地域の設定を有効にしたまま実験できるという話が出てくるのは、この制御が実験の対象にも広がるという意味です。
成果についてもヘルプページに記載があります。検索キャンペーンでAI Maxを有効にした広告主は、同程度のCPAまたはROASのもとで、コンバージョンまたはコンバージョン値が14%多くなるのが一般的だとされています。これはGoogleの2025年の社内データに基づく数字で、小売の広告主は除くという但し書きが付いています。第三者が検証した値ではないため、自社で確かめる前提の参考値として扱うのが妥当です。
何が新しくなるのか
今回の3点は、いずれも「効果を確かめる作業」を対象にしています。AI Maxそのものの配信ロジックが変わるという発表ではありません。ここは読み違えやすいところです。
複数キャンペーンのA/Bテストが効くのは、予算配分の判断です。ひとつのキャンペーンだけで実験をすると、そのキャンペーンの中での良し悪しは分かっても、予算を全体としてどう振り分けるべきかは分かりません。異なる予算とROI目標を複数のキャンペーンに置いて同時に比較できれば、投資を増やしたときの伸び方を、実際の配信結果から見られるようになります。
ブランドと地域の設定を有効にしたまま実験できることは、検証の現実味に関わります。本番の運用でブランド除外や地域指定を使っているのに、実験だけそれを外した状態で回すと、実験の結果と本番の条件がずれます。設定を保ったまま比較できれば、実験で得た結論をそのまま本番へ持ち込みやすくなります。
Performance Plannerの変更は、実験の前段階に効きます。入札や予算を動かしたときの影響を事前に見て、そのまま適用できるようになるためです。ただし、プランナーが示すのは予測であって実績ではありません。予測を確認してから実験で検証する、という順番は変わりません。
この拡張が実務で意味すること
広告プラットフォームの自動化が進むと、運用者の仕事は「配信を細かく操作すること」から「どの設定が自社にとって良いかを確かめること」へ移ります。今回の発表は、その移行を前提にした道具立てだと読めます。実験の柔軟性と、計画段階の見通しを同時に広げているからです。
一方で、発表から分からないことも記録しておきます。提供対象の国と地域、日本語アカウントでの提供時期、複数キャンペーンのA/Bテストに置ける上限や条件は、この発表には記載がありません。Performance Plannerの予測がどの範囲の変更に対応するのかも書かれていません。導入時期を計画に組み込む場合は、Google広告の管理画面とヘルプの案内で個別に確認する必要があります。
また、この発表は業界向けのオンラインイベントであるRethink 2026にも触れています。運用の指針を追う場合、発表単体ではなくイベントで示される考え方まで含めて見るほうが、変更の背景をつかみやすくなります。
判定の側にも注意点があります。公式ヘルプが示している成果は「同程度のCPAまたはROASのもとでコンバージョンまたはコンバージョン値が増える」という形で書かれています。つまり、単価が悪化していないことを前提にした比較です。実験を設計するときも、コンバージョン数だけを見て良し悪しを決めると、単価の変化を見落とします。何を固定し、何を比べるのかを先に決めておく必要があります。
もうひとつ、AI Maxの中身が検索語句のマッチング、テキストの調整、最終ページURLの拡張である以上、効果は自社のページ構成にも左右されます。最終ページURLの拡張は、意図に近いページへ誘導する仕組みです。誘導先になりうるページが薄い、あるいは古いままの状態では、機能が働く余地が小さくなります。実験の前に、広告から着地しうるページの状態を確認しておく価値があります。
日本の運用者が準備できること
9月の提供開始を待つあいだにできることは、実験の土台を整えることです。
第一に、比較したい仮説を先に書き出しておきます。複数キャンペーンのA/Bテストは、何と何を比べたいのかが決まっていなければ設計できません。予算を増やす対象、ROI目標を緩める対象、そのまま据え置く対象を、あらかじめ言葉にしておきます。
第二に、現在のブランド設定と地域設定を棚卸ししておきます。実験でその設定を有効にしたまま回せるということは、裏を返せば、いまの設定が適切かどうかが結果に直接効くということです。
第三に、コンバージョン計測の状態を確認します。実験の判定はコンバージョンとその価値で行われるため、計測が不安定なままでは、どの機能を有効にしても判断材料になりません。
出典と注記
この記事はGoogleの公式ブログとGoogle広告ヘルプのみを出典とし、機能名・提供時期・数値は原文の表記に従いました。14%という数値はGoogleの社内データに基づく同社の説明であり、当サイトが検証したものではありません。日本での提供条件や提供時期は発表に記載がありません。導入を検討する場合は、Google広告の管理画面と公式ヘルプで最新の情報を確認してください。
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