Googleが2026年9月10日、広告の計測まわりの更新をまとめて公表しました。柱は3つで、Data ManagerをGoogle アナリティクスとDisplay & Video 360へ直接組み込むこと、Data Manager APIを業界の標準仕様に合わせて汎用化すること、そしてオープンソースのマーケティング・ミックス・モデル(MMM)であるMeridianを更新し、地域実験の仕組みであるGeoXを一般提供にすることです。
先に、この記事の立場を書いておきます。ここに書けるのは、Googleの発表本文と公式ドキュメントに載っている範囲だけです。日本でいつ、どの機能から使えるようになるのか、日本語の管理画面でどう表示されるのか、日本の広告主にどれだけの差が出たのかは、確認した範囲では公表されていません。確認日は2026年9月11日です。
この記事では、発表の骨格、Data Managerまわりで実際に変わる3点、公表された数値に付いている条件、Meridianの更新点、そして日本の担当者が先に決めておくことの順に整理します。
発表の骨格は「基盤・シグナル・因果」の3つ
発表はまず、計測を事後の通信簿から先回りする性能エンジンへ変えるという、今年に入って同社が示した方針を引き継ぐと述べています。そのうえで、そこには3つの要素が同時に働く必要があると書かれています。AIを動かすための強いデータ基盤、全体像を見るための複数のシグナル、そして現実の成果につなげるための因果の証明です。
今回の更新は、このうち1つ目と3つ目にほぼ対応しています。Data Managerまわりの変更が「基盤」で、Meridianの更新が「因果」です。真ん中の「複数のシグナル」については、今回の発表では新機能というより、基盤が整うと集まるシグナルが増える、という前提として置かれています。
| 発表が挙げる要素 | 今回の更新で対応する部分 |
|---|---|
| AIを動かすデータ基盤 | Data Managerの統合、Data Manager APIの汎用化、診断機能 |
| 全体像を見る複数のシグナル | ブランド指標をMeridianへ入れられるようにする更新 |
| 成果を示す因果の証明 | Meridian GeoXの一般提供、実験結果のMMMへの取り込み |
この並びを頭に置いておくと、個々の機能名を追わなくても、どこの話をしているのかを見失わずに済みます。以下でも、この3つの順に沿って見ていきます。
Data Managerまわりの3つの変更
Data Managerについては、発表に3つの変更が書かれています。
ひとつ目は、Data ManagerをGoogle アナリティクス(GA)とDisplay & Video 360(DV360)へ直接組み込むことです。これまでData Managerは、Google広告に第一者データを持ち込むための入り口という位置づけでした。それが解析側と運用型ディスプレイ側にも入ります。あわせて、GAとDV360でも拡張コンバージョンを提供すると書かれています。
ふたつ目は、Data Manager APIが「ユニバーサル」になったことです。発表は、これがIAB Tech Labが定めるEvent and Conversions API(ECAPI)の標準に基づくものだと明記しています。ECAPIは、広告主の側から広告プラットフォームへイベントや成果を送るときの形式をそろえるための業界仕様です。プラットフォームごとに別々の送信口を実装してきた作業が、共通化される方向へ動くということになります。発表は同時に、Data Managerに組み込みの診断機能を追加し、キャンペーンの成果に影響が出る前にデータの問題を見つけて対処できるようにする、とも書いています。
みっつ目は、Google広告に「Data Strength Uplift Metric」という指標が入ることです。発表の説明では、第一者データの設定によって回収できた追加のコンバージョン数を計算する指標です。データ連携の作業は、やっても効果が数字で見えにくいという問題が長くありました。この指標は、その作業の効果を広告のレポート側で示そうとするものだと読めます。
そもそもData Managerとは何か
用語を先に押さえておきます。公式ヘルプは、Google Ads Data Managerを「Googleの外にある顧客データを取り込み、Google広告で使えるようにする、画面操作型のデータ取り込み・管理ツール」と説明しています。ヘルプは構成要素を3つに分けています。BigQueryやHubSpotのような接続元であるデータソース、そこから取り込む個々のテーブルやファイルであるコネクション、そしてCustomer Matchのように取り込んだデータを実際に使う場所であるデスティネーションです。
利点として挙げられているのは、一度つないだデータソースを複数のGoogleのデスティネーションへ使い回せること、画面操作で始められること、権限を保ったまま複数人で作業できることです。管理画面では、左側のナビゲーションにあるツールのアイコンからData managerを開きます。
APIの側は、開発者向けドキュメントが「データパートナー、代理店、広告主が第一者データを複数のGoogle広告プロダクトへ送るための統合された取り込みAPI」と説明しています。1回の呼び出しでオーディエンスと成果データを複数のプロダクトへ送れるとされ、送り先としてGoogle広告、Google アナリティクス、Display & Video 360、Campaign Manager 360、Search Ads 360、Google Ad Managerが挙げられています。Customer Matchやモバイル端末ID、PAIRのデータ、オフラインのコンバージョンやイベントが対象です。
つまり今回の発表は、まったく新しい製品を出したという話ではありません。すでにあるData Managerの適用範囲を、広告の外側と、標準仕様に沿ったAPIの側へ広げたという話です。読むときの粒度をここに合わせておくと、社内での説明もぶれません。
公表された数値は平均で、条件が付いている
発表には4つの数値が出てきます。いずれもGoogleが自社データをもとに公表した平均値で、脚注に測定の条件が書かれています。条件を外して引用すると、自社でも同じ数字が出るという話に読み替えられてしまいます。ここでは数値と条件を並べます。
| 公表された値 | 何と比べた値か | 脚注に書かれた測定条件 |
|---|---|---|
| 増分ROASが平均26%増 | オフラインとアプリのデータをData Managerへつないだ広告主 | 全世界、2025年4月〜2026年4月。コンバージョン値に入札する検索キャンペーンが対象 |
| 検索コンバージョンが平均11%増 | 標準のコンバージョン取り込みと拡張コンバージョンの比較 | 全世界、2026年1月1日〜1月14日の広告ログのコンバージョンデータ |
| コンバージョンが平均14%増 | Google tag gatewayでデータ基盤を整えた広告主 | 全世界、2025年7〜12月と2026年1〜6月の比較 |
| Demand Genでは20%を超える増 | 同上(Demand Genキャンペーン) | 全世界、2026年6月3日〜6月17日 |
読み取れることを整理します。4つの数値は、測った期間も、比較の相手も、対象のキャンペーンも別々です。増分ROASの26%はコンバージョン値に入札する検索キャンペーンの話で、Demand Genの数値は2週間の測定です。同じ「うちも一律で増える」という読み方はできません。
もうひとつ、これらはいずれも平均値です。平均が上がっているということは、上がらなかった広告主も含まれているということでもあります。発表は個別の広告主に対する保証をしていませんし、当サイトも保証できません。自社で判断するなら、導入の前後で自社の数字を測るしかありません。
なお、ここに出てくる2つの機能名も公式ヘルプで定義が確認できます。拡張コンバージョンは、第一者の顧客情報を一方向のハッシュ化で秘匿したうえで送り、広告に接触したGoogleアカウントと突き合わせて計測の精度を上げる仕組みです。Webの成果を扱うものと、Webで獲得した見込み客のオフライン成果を扱うものの2種類があります。Google tag gatewayは、CDN、ロードバランサー、Webサーバーといった自社のインフラを通してGoogleのタグを動かす仕組みで、ヘルプはページ側のタグのコードを変える必要はないと書いています。
Meridianの更新とGeoXの一般提供
もうひとつの柱がMeridianです。公式ドキュメントは、Meridianをプライバシーに耐えるかたちで高度な計測を行うために作られたオープンソースのMMMだと説明しています。実験を使ってモデルを較正すること、動画の出稿計画のためにリーチとフリークエンシーを扱えること、検索の需要量を取り込んで下流の計測精度を上げること、予算配分の最適化を出せることが挙げられています。
今回の発表でMeridianについて挙げられているのは4点です。ひとつはエージェント型の機能で、データ品質の点検、エラーの解消、モデル構築の案内をその場で支援するとされています。ふたつめはブランド指標の投入で、ブランド名の検索量のような指標をモデルへ直接入れられるようになり、上流の動画やテレビの出稿が後の売上へつながる流れを見られるようになります。みっつめがGeoXの一般提供です。GeoXは、どの広告プラットフォームでも使える地域実験のためのオープンソースのライブラリで、今年に入ってベータとして出ていたものが、全世界で一般提供になります。よっつめが実行基盤の更新で、分析がより速く、より効率よく動くようにMeridianの裏側に手を入れたと書かれています。
ここで押さえておきたいのは、GeoXが特定の広告媒体に閉じた仕組みではないと書かれている点です。地域を分けて配信を変え、その差から効果を測るという方法自体は以前からありますが、それを共通のライブラリで回せて、結果をそのままMMMの前提として取り込めるところが今回の変化です。媒体の管理画面が出す数字とは別に、自分で因果を測る手段を持てる、という位置づけになります。
一方で、MMMも地域実験も、始めればすぐ答えが出るものではありません。モデルに入れる期間のデータ、地域ごとの配信の設計、実験の待ち時間が必要です。ツールが手に入ることと、判断に使える結果が出ることは別です。媒体をまたいだ評価の考え方はGA4のアトリビューションの側でも整理しています。
計測の土台は、結局コンバージョンの定義にある
ここまでの話は、どれも「送るデータがある」ことが前提です。Data Managerで第一者データをつなぐにも、拡張コンバージョンで精度を上げるにも、Data Strength Upliftで回収分を測るにも、まず何を成果として数えるかが決まっていて、その計測が正しく動いている必要があります。
裏返すと、コンバージョンの定義が曖昧なまま新しい連携だけを増やしても、増えるのは数字の出どころが分からないレポートです。ここは新機能の話ではなく、以前からの基本のままです。設定の手順そのものはGoogle広告のコンバージョン設定で扱っています。
日本の実務者が先に決めること
ここからは、発表の記載を自社の運用へ当てはめるときの整理です。発表に書かれていない前提を足さない範囲で、決められることだけを挙げます。
ひとつ目は、いま何を送っていて、何を送っていないかを一覧にすることです。オフラインの受注、アプリ側の行動、CRMに入っている解約や継続。このうちどれが広告側へ渡っていないかが分かれば、Data Strength Upliftのような指標が出たときに、その数字が何の作業の結果なのかを説明できます。逆にここが分かっていないと、指標だけが増えて解釈できません。
ふたつ目は、送信口をどこに集めるかを決めることです。Data Manager APIが標準仕様に寄せられたことで、媒体ごとの実装を1本にまとめるという選択肢が現実的になります。ただし、いま動いている実装を止めてまで急ぐ話かどうかは別です。次にサーバー側の計測へ手を入れるときに、その方式を選ぶかどうかを決めておけば足ります。判断の前提はWeb広告の効果測定の側で整理しています。
みっつ目は、誰が担当するのかを先に割り振ることです。Data ManagerのGAとDV360への統合は解析の担当者に、APIの汎用化は開発とデータ基盤の担当者に、Data Strength Upliftは広告運用の担当者に効きます。同じ発表として一括で回覧すると、全員が自分の話ではないと判断して止まります。
よっつ目は、因果を測る予定があるかどうかを決めることです。GeoXが一般提供になっても、地域を分けた配信設計と待ち時間を確保できなければ実験は回りません。年間の計画のどこに実験の枠を置くのか、置かないのかを決めておけば、機能が使えることと使うことを混同せずに済みます。
いつつ目は、数値の引用ルールを決めることです。今回の4つの数値は、社内資料や提案書に引かれやすい形をしています。引くのであれば、測定期間と比較の相手を必ず添える、という決まりにしておいてください。条件を落とした引用は、あとで「話が違う」となる原因になります。
公表されていないこと
確認できなかったことを残します。日本での提供時期は、参照したページからは確認できませんでした。Data ManagerのGAとDV360への統合、GAとDV360の拡張コンバージョン、Data Strength Upliftのいずれについても、地域ごとの提供の順序や日付は見つかりませんでした。
Data Strength Upliftが具体的にどう計算されるのか、どの画面のどこに出るのかも、発表の記載にとどまり、詳細な定義は確認できていません。Data Managerの診断機能が何を検知するのかについても、対象の一覧は公表されていません。
Meridianについても、エージェント型の機能がどのモデルで動くのか、利用に費用がかかるのかは記載がありませんでした。GeoXの一般提供が既存のベータ利用者にどう影響するのかも同様です。ECAPIについては、Googleの発表が標準に基づくと書いているだけで、対応の範囲がどこまでかは、発表本文からは読み取れません。
出典と注記
この記事は、Googleの公式ブログ「Drive profitable growth with new data and measurement tools」、Google Ads Data Manager ヘルプ「About Google Ads Data Manager」、Google for Developersの「Data Manager API」と「Meridian」、Google 広告ヘルプの「About enhanced conversions」「Google tag gateway for advertisers」「Set up your web conversions」を出典としています。いずれもプラットフォームが自ら公開している一次情報です。
数値は発表の表記どおりの数字列で書き、単位や通貨の換算はしていません。効果を保証する記述はしていません。公表されているのは条件付きの平均値で、個別の広告主の成果を示すものではないためです。仕様は改定されるため、実際に設定を変える前に各ページの現在の記載を確認してください。確認日は2026年9月11日です。海外の動きは海外マーケティング最前線に集めています。
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