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売上の30〜40%が請求書払い|斧投げ店が作った団体の受注経路

カンザスシティ発の斧投げ店Blade and Timberは、売上の30〜40%が法人や団体への請求書払いだとSquareの公式事例ページで説明しています。個人客向けの店が団体の受注を柱にした経緯を、公式資料の範囲で整理します。

斧を的へ投げて遊ぶ店に、誰が来ると思うでしょうか。週末の若い客、という答えが自然です。ところがカンザスシティで始まった Blade and Timber では、売上の30〜40%が法人や団体への請求書払いだと、創業者の説明としてSquareの公式事例ページに書かれています。店頭でその場で支払う客ではなく、請求書を受け取って後から払う相手が、売上の3分の1から4割を占めているということです。

先に誤解を防いでおきます。これは「請求書の機能を入れれば法人の需要が生まれる」という話ではありません。公表されているのは比率と運用の一部だけで、売上額、件数、1件あたりの請求額、従業員数、入金までの日数は、どの資料にも書かれていません。事例ページはSquareが自社の事例として公開しているもので、第三者が検証した数値ではありません。

この記事で扱えるのは、その事例ページと、Squareの公式ヘルプ2本に書かれている範囲です。読みどころは比率そのものではなく、個人客向けの看板を出している店が、支払い方の違う2種類目の客をどう受け止める形にしていたかという順序にあります。事例ページの公開日は2025年3月13日、当サイトの確認日は2026年10月15日です。

個人客の店で、売上の30〜40%が請求書払い

Blade and Timber は斧投げの店です。運営しているのは Swell Spark で、ほかにミニゴルフとカクテルの Sinkers Lounge、脱出ゲームの Breakout KC という2つの業態を持っています。CEOは Matthew Baysinger さんで、事例ページは、中西部とハワイで10年にわたって家族や友人、地域の人たちを集めてきた人物として紹介しています。Blade and Timber そのものは、本文で7拠点と書かれています。

この店の数字でいちばん目を引くのが、受注の内訳です。事例ページにはこう書かれています。“According to Baysinger, 30-40% of the business’ sales are B2B invoiced sales.”(Baysinger さんによれば、この事業の売上の30〜40%は請求書で受けたB2Bの売上である。)内訳として挙がっているのは、社内イベント、誕生日の集まり、団体での来店です。つまり斧投げという遊びを、個人の娯楽としてではなく、集まりの場として売っている部分が相当の割合になっています。

ここで、数字の扱いを1つはっきりさせておきます。事例ページの見出しは「6 Locations in 8 Years」で、本文には「seven locations」と書かれています。どちらがどの時点の数なのかは示されていません。当サイトは本文の7拠点を採り、見出しとの食い違いがあることをそのまま残します。片方だけを引いて「8年で7拠点へ」と書くと、資料に無い整合を作ってしまいます。

数値カード4枚。拠点の数は事例ページ本文の記載で7か所、構想から開業までは60日で2017年中頃の概念実証、売上に占めるB2Bの比率は30〜40%で請求書での受注、新しく採用した人が会計に立つまでは48時間。売上額、従業員数、客数、1件あたりの請求額は公表されていないと注記している
4枚のうち30〜40%だけが売上の構成に関わる数字で、残りは期間と人の話です。拠点の数は本文の記載を採り、見出しとの食い違いを図の中に残しています。 出典:Square「Fun and Games: How This Axe-Throwing Business Grew to 6 Locations in 8 Years With Square」(確認日 2026-10-15)

日本の体験型ビジネスに引き写すと、この比率の意味がはっきりします。個人客は来てから決まるので、何人来るかは前日まで分かりません。団体は逆で、日程と人数が先に決まり、支払う相手が来場者とは別になります。売上の予測しやすさがまったく違う2つを、同じ場所で同時に売っているという構造です。

60日で開けて、基盤を替えずに業態を足した

始まりは倉庫でした。事例ページは、カンザスシティの倉庫を使った概念実証として立ち上げたと書いています。Baysinger さんの言葉はこうです。“One of the beautiful things about Square is it’s so easy to get going quickly.”(すばやく始められることが、Squareの良いところの1つだ。)そして “We went from idea to open in probably 60 days back in mid-2017 as a proof of concept.”(2017年中頃、構想から開業までおそらく60日だった。概念実証としての開店だ。)

ビールと斧投げを組み合わせた店ですが、この組み合わせが次の壁を作りました。酒類を出すなら食事の提供も必要だという行政区の条件に当たったのです。Baysinger さんは “We had to learn, and grow, and expand to be able to run a full-fledged restaurant.”(一人前のレストランとして回せるように、学び、育ち、広げなければならなかった。)と述べ、対応として Square for Restaurants を使い始めたことを挙げています。続く言葉が “The fact that we were able to do that using the same platform that we already had was a huge bonus.”(すでに使っていた基盤のままそれができたことは、大きな利点だった。)です。

屋内の斧投げ施設で斧を構える人のイメージ写真
斧投げを遊びとして提供する屋内施設、という業態のイメージです。Blade and Timber の店舗を写したものではありません。写真:Jvxhn Visuals(Pexels)

ここから読み取れるのは2つです。1つは、業態の検証を60日という短さで1回やってしまったこと。もう1つは、法令の条件で業態が変わっても、記録と会計の基盤を替えずに済ませたことです。前者は思いつきの速さの話ですが、後者は選び方の話です。小さく試す場合、試した結果が良かったときに作り直しになる仕組みを選ぶと、2回目の投資が重くなります。

経緯の図。2017年中頃にカンザスシティの倉庫で概念実証を構想から60日で開業、時期の記載がない段階として酒類の提供に食事が必要な行政区への対応とシアトルとハワイへの出店、2024年10月に2つのブランドを1拠点へ統合、現在は事例ページ本文で7拠点と記載。見出しでは8年で6拠点と書かれており、どの時点の数かは示されていない
年月が書かれている段階は2017年中頃と2024年10月の2つだけです。出店の順序は事例ページの記述の順で並べており、年月を推定して埋めていません。 出典:Square「Blade and Timber」事例ページ(確認日 2026-10-15)

拠点が中西部の外へ出たとき、効いたのは人の側だったと書かれています。Baysinger さんは “The fact that we can hire someone and onboard them on how to use our POS, and then within 48 hours we can have confidence that they’re going to be able to check a customer out.”(人を採用してPOSの使い方を教えると、48時間のうちに、その人が会計をこなせると安心して言える。)と述べ、シアトルとハワイで店を開けたときの話として “When we opened up the stores in Seattle and Hawaii, the consistency of how intuitive it is.”(シアトルとハワイで店を開けたとき、分かりやすさが同じままだったこと。)を挙げています。遠い土地で採用から始める事業では、教える時間がそのまま開業の速さになります。

「請求書がなければ、やっていけない」

では、売上の30〜40%を占める団体の受注は、どうやって取っているのでしょうか。事例ページで Baysinger さんが語っているのは、支払いの速さを選ばれる理由として見ている、という考え方です。“We believe that if we can give customers the ability to pay faster than other businesses, that we’re more likely to get those sales.”(ほかより速く支払える状態を客に渡せるなら、その売上を取れる可能性が高くなると考えている。)そして請求書については “Without Square Invoicing, we wouldn’t make it, really.”(Squareの請求機能がなければ、本当にやっていけない。)と述べています。

この言い方には、法人・団体の受注の性質が表れています。団体の予約は、見積もりから支払いまでのあいだに社内の手続きが挟まります。幹事がカードを切るのではなく、会社が払う場合は、金額の書かれた書面と、経費として処理できる支払い方が必要です。その書面が出るまで何日もかかる相手と、問い合わせの返信と同時に請求書が届く相手では、話が進む速さが変わります。Baysinger さんが「速く支払える状態」と言っているのは、割引や値引きの話ではありません。

分岐図。左は来店客で、その場でPOSが会計を受け、採用した人も48時間で会計に立てるが、売上に占める比率は公表されていない。右は法人と団体で、社内イベントや誕生日会や団体の貸し切りを請求書で受け、支払い方を相手が選べる形になっており、売上の30〜40%だとCEOが説明している。左右の比率が足して100%になるとは書かれていない
右の経路だけが、来場の前に金額と人数の合意を取る形です。左の比率は公表されていないため、図の中でも空けています。 出典:Square「Blade and Timber」事例ページ、Square Support「Create and send invoices」(確認日 2026-10-15)

請求書の側で何ができるのかは、事例ページではなくSquareの公式ヘルプに書かれています。送る形は、請求書、見積もり、繰り返しの請求書の3つです。送付の経路はメール、テキストメッセージ、支払いリンクの共有に分かれ、メールでは追加の宛先を8件まで入れられて自動の督促も付きますが、テキストメッセージでは追加の宛先も自動の督促も使えません。支払う側が選べる手段として、カード、Apple PayとGoogle Pay、Cash App Pay、ACHの銀行振替、Afterpay、ギフトカード、保存済みのカードが挙がっています。相手の経理の都合に合わせて支払い方を選べることが、受注の条件になる場面はここに関わります。

前金の扱いも公式ヘルプに書かれています。頭金は注文の合計に対する割合でも固定の金額でも設定でき、残りを分割にできます。マイルストーンの支払いは1枚の請求書で12回まで設定でき、これは頭金を含まない数です。ただし条件が付きます。マイルストーンの分割は Square Plus、Square Premium、Square Invoices Plus の契約が必要で、分割の予定と延滞手数料は併用できません。さらに、請求書が完済されるまで取引として現れず、商品が在庫から引かれるのも完済の時点です。前金を受けた日に売上が立つ見え方にはならない、ということです。

日本で同じ形を考えるなら、ここが実務上の分かれ目になります。団体の受注で前金を取るか、全額を後払いにするかは、キャンセルの起きやすさと、相手が会社か個人かで変わります。前金を取る設計そのものを比べたい場合は、予約1週間前に頭金という形にしているシアトルの事業者の例が近いです(Hot Tub Boatsの予約と入金)。どちらが正しいという話ではなく、入金の時期をどこに置くかという設計の違いです。

1つの場所で2つのブランドを回す

事例ページの最後に置かれているのは、業態を混ぜる話です。2024年10月、Swell Spark は2つのブランドを組み合わせた新しい拠点を開きました。Baysinger さんは “We have a single POS serving both brands now.”(いまは1台のPOSが両方のブランドを受けている。)と述べています。斧投げとミニゴルフという別の遊びを同じ場所で売るとき、会計と記録が2本に分かれていると、どちらの遊びが売れたのかを後から比べられません。

経営の側の見え方についても引用があります。“Square is built for real-time, and it’s built for real people.”(Squareは即時のために作られていて、現実の人のために作られている。)そして “the fact that 95% of what we need to do on Square is also available on our phone from anywhere on Earth.”(必要な作業の95%が、地球上のどこからでも電話の上でできるということ。)という言い方で、拠点を離れていても数字を見られることを挙げています。拠点が中西部とハワイに分かれている事業では、見に行けないことが前提になります。

ここは複数の業態を1つの区画で持つときの記録の話として読めます。同じ場所で2つの体験を併売する形は、小売でも起きます。5つの形式を1つの事業として回している例はThe Epicurean Traderが5つの形式を同時に回す事例で扱いました。どちらも増やしているのは店の数ではなく、分けて記録する単位のほうです。

公表されている内容と、公表されていない内容

事例記事でいちばん危ないのは、空いた欄を相場や他店の数字で埋めてしまうことです。この事例で何が示され、何が示されていないのかを分けておきます。

項目 記載の状況 この記事での扱い
B2Bの請求書払いの比率 売上の30〜40%とCEOの説明として記載 表記のまま書く
拠点の数 本文は7拠点、見出しは6拠点 食い違いを残して本文を採る
開業までの期間 2017年中頃に60日 そのまま書く
新人が会計に立つまで 48時間 本人の説明として書く
売上額・利益 記載がありません 比率から逆算しない
団体受注の件数・平均単価 記載がありません 「何件で何円」と書かない
従業員数 記載がありません 規模を推定しない
入金までの日数 記載がありません 請求書の効果を日数で語らない
比率が変わった時期 記載がありません 「請求書を入れて30〜40%になった」と書かない

最後の行が特に大事です。事例ページは、請求書の機能が30〜40%という比率を作ったとは書いていません。述べられているのは、その比率が現にあることと、請求機能がなければ事業が成り立たないという本人の評価までです。道具が需要を作ったのか、需要に道具が合っていたのかは、この資料からは分けられません。

日本の体験型ビジネスが先に決められること

同じ構成にすれば同じ比率になる、という書き方はできません。公表されている範囲から言えるのは、団体の受注を売上の筋として扱うなら、先に決めておける項目がある、というところまでです。次の表は当社の整理で、公表された数値ではありません。

先に決めること 決め方 注意する点
団体の受注を別の売上として記録するか 通常の会計と別の品目・別の区分にする 月の売上が伸びた理由が後から分かる形にする
見積もりから請求書までの時間 問い合わせから何時間で書面を出すかを決める 金額の根拠を毎回作り直さない
支払い手段の幅 相手の経理が通せる方法を用意する 手数料の負担をどちらが持つか決めておく
前金の有無 人数確定の期限と合わせて決める キャンセル規定と同じ書面に載せる
当日の人の配置 団体と個人客が重なる時間を把握する 団体を取った日に通常営業を落とさない

この5つに共通しているのは、どれも新しい道具を入れる前に決まることです。順番を逆にして、請求書の機能を契約してから運用を考えると、送れる形は増えても受注が増えない状態になります。Blade and Timber の場合も、速く支払える状態を渡すという判断が先にあり、道具はその判断を実行する側に置かれています。

一方で、この事例から持ち帰れないこともはっきりしています。斧投げが社内イベントとして選ばれるのは、少人数で交代しながら時間を使える遊びで、勝ち負けが残らないからです。団体需要が付く業態と付かない業態があり、何が選ばれるかは体験の形で決まります。急な来客の増加にどう備えるかという別の問題を扱った例は客足が一夜で35%増えたタコス店が近い形です。

結局、売上の柱はどこにあったのか

この事例で売上を支えていたのは、斧投げという遊びの珍しさだけではありません。同じ場所を、その場で支払う客と、請求書で後から支払う相手の両方に売っていたことです。公表されている比率は30〜40%で、それが集まりの場としての需要だと書かれています。

Baysinger さんの言葉のうち、持ち帰る価値があるのは「ほかより速く支払える状態を渡す」という一文だと思います。価格でも設備でもなく、支払いまでの手続きを選ばれる理由として見ている点が、法人・団体の受注では実際に効きます。ただし、その効き方を裏づける数値はこの資料にありません。件数も金額も入金の速さも公表されておらず、成果を約束できる材料はここにはありません。確かめられるのは、個人客の店が2種類目の客をどう受け止める形にしていたか、そこまでです。

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