ChatGPTをマーケティング業務に使う相談は多く寄せられますが、「何ができるか」より「何を任せ、何を人が判断するか」の線引きが実務では重要になります。この記事では、業務の場面ごとに具体的な使い方を示したうえで、指示の書き方、確認の手順、社内で決めておくべきことを解説します。
得意なことと苦手なこと
OpenAIの開発者向けドキュメントでは、指示(プロンプト)に応じてテキストを生成する仕組みが説明されています。この性質から、実務での向き不向きが決まります。
得意なのは、形式が決まった作業と、たたき台の作成です。大量の文章の整理、言い換え、要約、案出し、下書きの作成が該当します。
苦手なのは、事実の保証です。もっともらしい文章を作れますが、その内容が正しいとは限りません。数値、固有名詞、法令、他社の情報については、必ず人が一次情報で確認します。
この線引きを持たずに使うと、誤った情報が公開される事故につながります。
調査での使い方
社内テキストの整理が最も効果的です。問い合わせの文面、商談の記録、サポートへの質問を貼り付け、頻出する論点を抽出させます。人が全部読む時間を短縮できます。
指示の例としては、「以下は当社への問い合わせ内容です。顧客が繰り返し挙げている困りごとを、多い順に整理してください。文中に無い内容は補わないでください」といった形になります。材料の範囲で答えるよう明示することが重要です。
検索されている言葉の候補出しにも使えます。ただし、実際の検索回数は分かりません。候補を出させたうえで、公式のキーワード調査ツールで実数を確認する組み合わせにします。
競合情報の整理では、公開されている情報を貼り付けて比較表の形に整えさせます。ChatGPTに競合を「調べさせる」のではなく、集めた情報を整理させる使い方です。
企画での使い方
案出しの相手として使います。訴求の切り口、記事の題材、キャンペーンの案を大量に出させ、人が選びます。数を出すことは得意なので、10案、20案と求めても構いません。
壁打ちも有効です。決めた企画に対して、「この案の弱点は何か」「想定される反論は何か」と尋ねると、検討の抜けが見つかります。
決定は人が行います。対象の顧客、提供する価値、優先順位は事業の判断です。自社の制約や過去の経緯を、ChatGPTは知りません。
制作での使い方
下書きの作成が中心です。記事の構成案、メールの文面、広告の訴求案、資料の骨子を作らせ、人が事実と表現を確認して仕上げます。
指示のコツは、前提を具体的に渡すことです。OpenAIのドキュメントでも、期待する出力の形式や文脈を明示することの重要性が説明されています。実務では、対象読者の状況、答える疑問、含めるべき要素、避けたい表現、字数の目安を渡します。
事実を含む部分は、材料を渡してから書かせます。手元にある一次情報の内容を貼り付け、その範囲で書くよう指示します。何も渡さずに書かせると、実在しない数値や事例が混じります。
自社の文体に揃えるには、過去の記事を例として渡します。
分析での使い方
数字の読み解きの補助に使えます。集計結果を貼り付けて、傾向の候補を挙げさせる使い方です。ただし出てきた解釈が正しいとは限らないため、人が元データで確認します。
レポートの文章化は向いています。数字は人が確定し、それを説明する文章の下書きをChatGPTに作らせる形です。
指示の書き方の基本
同じ質問でも、指示の書き方で出力の質が変わります。実務で効く要素は次の5つです。
役割を与える:「BtoBのマーケティング担当者として」といった前提を置くと、想定される文脈が絞られます。
目的を書く:何のための出力かを伝えます。社内共有用か、公開用かで書き方が変わります。
材料を渡す:事実に関わる部分は、こちらが持っている情報を渡します。
形式を指定する:箇条書きか文章か、字数はどれくらいか、見出しは必要かを明示します。
制約を書く:「渡した材料に無いことは書かない」「専門用語を使わない」といった制約を加えます。
このうち最も効果が大きいのは、材料を渡すことと、材料の範囲で答えるよう制約することです。
確認の手順
ChatGPTの出力をそのまま使わないための手順を決めます。
数値:3桁以上の数字は、出典で実在を確認します。 固有名詞:企業名、製品名、法令名の実在と表記を確認します。 主張の裏付け:「〜と言われています」は、誰が言っているかを確認します。 他社表現との類似:特徴的な言い回しが混じっていないかを見ます。 自社の提供範囲:できないことを書いていないかを確認します。
短い文章でも、そのまま公開しない体制にします。
社内で決めておくこと
入力してよい情報の範囲:顧客の個人情報、未公開の経営情報、取引先から預かった資料を入力してよいかを決めます。利用しているプランのデータの扱いを確認したうえで、社内の基準を作ります。
使ってよい業務:どの業務で使い、どの業務では使わないかを明文化します。
確認する人:出力を誰が確認するかを決めます。
記録:どの業務でどう使い、どれだけ時間が変わったかを記録します。広げる判断の材料になります。
精度が上がらないときの見直し
出力が期待に届かないとき、原因はほぼ指示の側にあります。次の順で見直します。
材料を渡しているか:事実に関わる部分で、手元の資料を渡さずに書かせていないかを確認します。
制約を書いているか:「渡した材料に無いことは書かない」という一文があるかどうかで、出力の性質が変わります。
一度に多くを求めていないか:構成と本文と図を同時に頼むと、どれも中途半端になります。工程を分けます。
対象と目的を伝えているか:誰向けの、何のための出力かが抜けていると、一般論が返ってきます。
形式を指定しているか:分量、箇条書きか文章か、見出しの有無を明示します。
この記事のまとめ
ChatGPTは、形式の決まった作業とたたき台の作成に向き、事実の保証には向きません。この線引きが業務での使い方を決めます。
調査では社内テキストの整理、企画では案出しと壁打ち、制作では下書き、分析では読み解きの補助に使えます。指示では、役割・目的・材料・形式・制約を渡し、特に材料の範囲で答えるよう明示します。出力は必ず人が確認してから使います。
業務に入れる順番
すべての業務に一度に入れる必要はありません。影響の小さい順に進めます。
最初は、社外に出ない作業から始めます。社内資料の整理、議事録のまとめ、記事の構成案。誤りがあっても、公開前に気づけます。
次に、公開物の下書きへ広げます。記事、メール、広告文。確認の体制ができていれば、ここで大きく時間が減ります。
その後、社内データの整理に進みます。問い合わせや商談の記録を扱うため、入力してよい情報の範囲を決めてから着手します。
顧客に直接触れる用途は最後です。自動返信のような使い方は、誤った内容が相手に届くため、体制が固まってから検討します。
この順なら、失敗の影響を小さく保ちながら効果を確かめられます。
効果を測る
導入の効果は、記録がなければ判断できません。
測るのは3つです。その作業にかかっていた時間、AIを使った後に残った時間、確認に必要になった時間。3つ目を忘れると、効果を過大に見積もります。
記録は、1つの業務について1か月分あれば十分です。実測の結果を持って、広げるか止めるかを判断します。
出典と注記
テキスト生成の仕組みとプロンプトの書き方については、OpenAI の開発者向けドキュメントに基づきます(確認日 2026年8月20日時点)。サービスの仕様と規約は変更が速いため、実際の運用では提供元の最新の記載を確認してください。 業務別の使い方と確認手順は、当社が支援の現場で用いている整理です。入力するデータの扱いは、利用するプランの規約と自社の方針に従ってください。
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