自社のTikTok動画が見られないとき、原因を「アルゴリズムに嫌われた」で片づけると次の手が決まりません。TikTokは、おすすめ(For You)に何を並べるかの判断材料を、公式のニュースルームで3種類に分けて説明しています。視聴者の行動、動画の情報、端末とアカウントの設定です。そのうえで、フォロワー数も、そのアカウントが過去に好成績の動画を出したことがあるかどうかも、推薦システムの直接の要素ではないと明記しています。
同じ公式の説明には、逆の側も書かれています。アップロードされた直後や審査中の動画、生々しい医療処置や規制対象の商品の合法な摂取を映していると判断された動画、再生を人為的に増やそうとするスパムは、推薦の対象にならないことがある、という記述です。これは削除とは別の扱いで、繰り返した場合にアカウント単位で推薦を止める方針まで公表されています。業種によっては、ここが伸びない原因の一つになります。
この記事は、TikTokが公式に発表している範囲だけを使って、判断材料と重みの差、同じ投稿者の動画が連続しない仕組み、推薦の対象外になりうる条件、アカウント単位の制限、そして自社の到達を確認する手段を順に並べたものです。発表の日付も併記します。仕組みの全体が公開されているわけではなく、投稿直後の配信をどう割り当てるのか、制限のしきい値がいくつなのかは、参照した発表に記載がありません。書かれていないことは、ここでも書いていません。アカウントの開設手順はTikTok企業アカウントの始め方、投稿から問い合わせまでの導線はTikTokで集客する方法で扱っています。
判断材料は3種類に分けて説明されている
おすすめのフィードは、視聴者の興味に合わせて集められた動画の流れで、並びは一人ひとり違うものになる、と公式は説明しています(2020年6月18日の発表)。その並びを決める材料として挙がっているのが次の3種類です。
| 分類 | 公式が挙げている例 | 重みについての記述 |
|---|---|---|
| 視聴者の行動 | いいねやシェアをした動画、フォローしているアカウント、書いたコメント、自分が作った動画 | 強い指標と弱い指標がある(次節) |
| 動画の情報 | キャプション、音源(サウンド)、ハッシュタグ | 個別の記述はありません |
| 端末とアカウントの設定 | 言語の設定、国の設定、端末の種類 | 他の計測項目に比べて低い |
3つめの設定について、公式は「利用者がそれを好みとして能動的に示したものではないため、ほかに計測している項目と比べて推薦システムの中での重みは低い」という説明を添えています。端末や言語の条件をそろえること自体が、並びを動かす力は小さいという意味です。
企業アカウントの立場で見ると、この3分類は「自分で決められるもの」と「決められないもの」に分かれます。キャプション、音源、ハッシュタグは投稿のたびに自分で選べます。視聴者の行動は相手側の履歴なので、こちらから操作できません。打ち手を考えるときは、動かせる材料だけを動かすところから始めることになります。
強い指標と弱い指標が分けて説明されている
同じ発表には、すべての材料が同じ重さで扱われるわけではないと書かれています。例として示されているのは次の対比です。
| 強い指標の例 | 弱い指標の例 |
|---|---|
| 長めの動画を最初から最後まで見たかどうか | 動画の視聴者と投稿者が同じ国にいるかどうか |
読み取れるのは、視聴の深さが並びに効くという一点だけです。最適な尺も、完視聴率の目標値も、参照した発表に記載がありません。「冒頭の数秒で結論を出す」といった運用の定石は各社の経験則として語られているもので、公式が数値で示した基準ではありません。そのため、この記事でも秒数の目安は置きません。
ここで気をつけたいのは、強い指標が分かったからといって、完視聴されやすい形だけを追う判断にはならないことです。最後まで見られても、自社の商品やサービスが伝わらない動画は、事業の側の目的を果たしません。動画単位の指標と、問い合わせや来店といった事業側の成果は分けて管理します。その分け方はTikTokマーケティングとはで整理しています。
フォロワー数と過去の実績は「直接の要素ではない」
公式の説明でいちばんはっきりしているのが、この一文です。フォロワー数も、そのアカウントが過去に好成績の動画を出したことがあるかどうかも、推薦システムの直接の要素ではないと書かれています。
企業アカウントにとっての意味は2つあり、どちらも同じ文に含まれています。ひとつは、開設して間もないアカウントの動画にも機会があるということ。もうひとつは、一度当たった動画の実績が、次の動画を押し上げるわけではないということです。前者だけを引用すると勇気の出る話になりますが、後者も同時に書かれています。社内の計画では、フォロワー数を前提にした見込みを立てないほうが実態に合います。
新しく使い始めた人のフィードについては、興味のカテゴリを選んでもらうか、人気のある動画をまとめた一般的なフィードを出し、そこでの反応から並びを調整していくと説明されています。ただし、投稿直後の動画が何人に配られるのかという割り当ての仕組みは、参照した発表に記載がありません。「最初に配られる人数が決まっている」という説明を見かけても、公式情報として扱わないでください。
同じ投稿者・同じ音源の動画は連続して並ばない
2021年12月16日の発表には、おすすめのフィードでは同じ音源を使った動画や同じ投稿者の動画が通常2本続けて並ばない、と書かれています。システム側の安全策として明示されているものです。
運用に置き換えると、同じ日に複数本を投稿しても、1人の視聴者のフィードでそれが続けて再生される形にはなりません。本数を増やすことが、特定の視聴者への露出の連打になるわけではないという意味です。もっとも、1日あたりの投稿本数について、公式の推奨値は参照した発表に記載がありません。本数は、無理なく作れる範囲と、1本あたりの作り込みのどちらを取るかという自社側の判断になります。
同じ発表では、似た内容が続くことを避ける仕組みを試していること(例として挙がっているのは極端なダイエットやフィットネス、悲しさ、失恋に関する内容)、視聴者が「興味がない」を選ぶと、その投稿者や音源を使った動画を以後出さないようにできることにも触れています。語句やハッシュタグを指定して除外できる機能については、この時点で開発中と書かれています。
企業側から見ると、流行している音源に合わせ続ける施策は、1人の視聴者への連続露出という点では働きません。そして一度「興味がない」を選ばれた相手には、以後その音源や自社の動画が届かなくなります。同じ型の動画を量産する前に、相手にとって続けて見る価値があるかどうかを考える材料になります。
推薦の対象外になりうる条件
削除されていないのに広がらない、という状態は公式の説明の中に根拠があります。2020年6月18日の発表に挙がっているのは次のものです。
| 公式が挙げている内容 | 書かれている表現 |
|---|---|
| 生々しい医療処置(graphic medical procedures)を映していると審査で判断されたもの | 推薦の対象にならないことがある |
| 規制対象の商品の合法な摂取(legal consumption of regulated goods)を映していると審査で判断されたもの | 推薦の対象にならないことがある |
| アップロードされた直後、または審査中の動画 | 推薦の対象にならないことがある |
| 再生を人為的に増やそうとするスパム | 推薦の対象にならないことがある |
いずれも「対象にならないことがある」という書き方で、必ず外れると断定されていません。2021年12月16日の発表では、一般の視聴者に適さない種類の内容は推薦しないようにしていること、人気が出てきた動画は安全性を担当するチームが確認していることも説明されています。
ここは業種によって重さが変わります。酒類や医療のように、商品やサービスを使う場面そのものが上の例と重なりうる領域では、「投稿はできたのに広がらない」状態が起こる前提で企画を組むことになります。一方で、対象外になる内容の全一覧は公表されていません。自社の動画が該当するかどうかを事前に機械的に判定することはできず、確認できるのは公式が例示した範囲だけです。オーガニックの投稿で届きにくい商材を扱う場合に、広告という別の経路を検討するなら、費用の決まり方はTikTok広告の費用にまとめています。
繰り返すとアカウント単位で推薦されなくなる
2024年4月17日の発表で、おすすめの基準に反する内容を繰り返し投稿した場合に、アカウント全体を一時的に推薦の対象外にする方針が示されました。あわせて、そのアカウントと投稿が検索でも見つけにくくなること、制限したときは本人へ通知し、異議を申し立てられることが書かれています。
同じ発表では、アカウントと直近30件の投稿をまとめて点検できるAccount Checkの提供も案内されています。確認できるのは、ルール違反で削除されたものがあるか、おすすめへの到達が制限されたものがあるかという状態です。コメントやダイレクトメッセージなど、機能の利用が制限されているかどうかもこの画面に含まれると書かれています。自分の投稿が静かに広がらなくなっていたとしても、担当者が画面から確かめられる手段が用意されている、という位置づけです。
違反そのものの扱いは、2023年2月2日の発表にまとまっています。違反は累積で記録され、機能別(コメント、LIVEなど)またはポリシー別(いじめや嫌がらせなど)のしきい値に達するとアカウントが永久に停止されます。しきい値は内容の重さで変わり、暴力を助長するものなど重いものは累積を待たずに永久停止の対象です。そして違反の記録は90日で消えると明記されています。安全センターには、アカウントの状態を確認する画面と、自分が出した報告の記録を見る画面が用意されています。
| 処分の種類 | 対象 | 残るかどうか |
|---|---|---|
| 削除 | ルールに反した投稿 | 投稿そのものが残りません |
| 推薦の対象外 | おすすめの基準に反した投稿 | 削除とは別の扱いとして説明されています |
| アカウント単位の制限 | 繰り返した場合のアカウント全体 | 一時的な措置。通知と異議申し立てがあります |
| 永久停止 | 違反がしきい値に達した場合、または重い違反 | アカウントが停止されます |
企業アカウントでは、ここを記録の問題として扱っておくと後で困りません。削除と推薦の対象外は別の事象なので、別に記録します。担当者が複数いる場合は、いつ誰がどの動画を投稿したかを残しておかないと、どの投稿が制限の原因になったのか追えなくなります。異議申し立ての窓口がある以上、事実関係を自社側でも持っておく価値があります。
公式の説明は、いつ出たものかで分けて読む
ここまでに引いた4つの発表は、2020年から2024年にかけて別々に出たものです。内容は重なっていません。社内で「TikTokの仕組み」として共有するときは、どの発表に基づくのかを残してください。
注意したいのは、古い発表に「試験中」「開発中」と書かれていた機能が、その後どうなったかは、参照した発表には書かれていないことです。似た内容が続くのを避ける仕組みや、語句を指定して除外する機能は2021年12月16日の時点の記述です。現在の挙動として断定できる材料は、この発表の中にはありません。確認日を添えて引用し、更新があれば書き換えるという扱いが現実的です。
自社の動画が届いているかを確認する
公式が企業向けに案内している確認手段は、Business Accountの分析機能です。TikTok For Businessのページには、分析機能でコンテンツの成果を確認でき、あわせてアカウントの成長と視聴者の属性のデータが見られると書かれています。
ただし、表示のうちおすすめ経由がどれだけあったかという内訳について、参照したページに記載がありません。「おすすめに乗ったかどうか」を1つの数値で判定する手段は、公式の案内の中にはないという前提で見ることになります。確認できるのは、動画ごとの成果の差と、アカウント全体の推移です。
そのため、自社の動画が広がらないときの切り分けは次の順になります。はじめに、推薦の対象外として例示されている内容に自社の商材や撮り方が重なっていないかを見ます。次に、Account Checkのような公式の画面で、削除や制限が記録されていないかを確かめます。そのうえで、動画ごとの数値を比べます。この順番を逆にすると、制限がかかっている状態のまま、動画の作り方だけを何度も変えることになります。
運用の判断に落とすと
公式の説明から、確度の高い判断は3つです。1つめは、推薦の対象外になりうる内容の例示を、企画の段階で自社の商材と突き合わせること。撮り方を変えれば避けられる場合もあり、避けられない商材なら別の経路を考える判断になります。
2つめは、フォロワー数を前提にした目標設定をやめることです。直接の要素ではないと明記されているため、フォロワーが増えたら表示が増えるという前提の計画は、公式の説明と噛み合いません。見るのは動画単位の成果と、その積み上がりです。
3つめは、削除と推薦の対象外を別のものとして記録することです。前者は投稿が消えるので気づけますが、後者は投稿が残るため気づきにくく、繰り返すとアカウント全体へ及びます。公式が通知と異議申し立ての手段を用意しているので、気づいたときに動けるよう、投稿の記録を自社側に残しておきます。
いずれも、公式が書いていることの範囲に収めた判断です。秒数の目安、投稿本数の推奨値、初期配信の人数のような、よく語られるわりに公式の記述が見つからない項目は、この記事では置いていません。社外の記事を根拠にそれらを計画へ入れる前に、出どころを確かめてください。
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