新規顧客の獲得は、ひとつの施策で解決する問題ではありません。相手が自社を知り、興味を持ち、他社と比べ、問い合わせるまでには段階があり、それぞれで必要なものが違います。この記事では、4つの段階に分けて必要な施策を整理し、どこで詰まっているかを見つける方法まで解説します。
4段階で考える
新規顧客が生まれるまでの流れを、次の4段階に分けます。
認知:自社の存在を知る段階。まだ何をしている会社かは分かっていません。
興味:何を提供しているかを理解し、自分に関係あるかもしれないと思う段階。
比較:他の選択肢と並べて検討する段階。「何もしない」という選択肢も含みます。
問い合わせ:連絡を取る段階。ここで初めて名前と連絡先が分かります。
多くの現場では、認知の段階(集客)だけに力を入れ、残りが手つかずになっています。訪問数が増えても問い合わせが増えないときは、興味と比較の段階に原因があります。
認知の段階でやること
まだ自社を知らない人に、存在を伝える段階です。
費用をかけて露出する:広告は最も速い手段です。対象と予算を決めれば当日から表示されます。 探している人に見つかる:検索から見つかる状態を作ります。時間はかかりますが、費用をかけ続けなくても続きます。 人づてに伝わる:紹介、口コミ、他社との協業。信頼が引き継がれるため、後の段階が短くなります。 場に出る:展示会、セミナー、地域の集まり。直接会える点が強みです。
この段階の目的は「知ってもらう」ことであり、すぐの成約ではありません。認知の施策を成約数で評価すると、有効な施策まで止めてしまいます。
興味の段階でやること
知った相手に、自分に関係があると思ってもらう段階です。
必要なのは、相手の困りごとに触れる情報です。自社の会社概要や沿革ではなく、「こういう状況で困っていませんか」という切り口の情報が効きます。
Googleは公式ドキュメントで、ユーザーを第一に考え、有用で信頼性の高いコンテンツを作ることの重要性を説明しています。自社が言いたいことではなく、相手が知りたいことから書く。この基本が、そのまま興味の段階の設計になります。
具体的には、よくある質問への回答、選び方の基準、失敗しやすい点の解説、実際の事例が該当します。
比較の段階でやること
他社と並べて検討されている段階です。ここで必要なのは、判断材料を隠さないことです。
料金の目安、対応できる範囲、対応できない範囲、進め方の手順、納期。これらが分からないと、相手は判断できず、分かる会社を選びます。
対応できないことを書くことは、一見損に見えて実は効きます。範囲を明示すると、合わない相手からの問い合わせが減り、合う相手には「正直な会社」という印象が残ります。
事例も比較の段階で強く働きます。自分と似た状況の相手がどうなったかは、最も参考にされる情報です。顧客の許可を得て、事実の範囲で書きます。
問い合わせの段階でやること
連絡を取る一歩を用意する段階です。
入口を複数用意する:問い合わせフォームだけでなく、資料請求、電話、メールなど、相手の状況に応じた入口を作ります。いきなり相談するのは心理的な負担が大きいため、資料請求のような軽い入口があると接点が増えます。
入力項目を減らす:必須項目が多いほど離脱します。最初の接触に必要な情報だけに絞ります。
次に何が起きるかを書く:送信後どうなるか、いつ返信が来るかを明示すると、送信への不安が減ります。
返信を速くする:見込み客は複数社に同時に問い合わせています。返信の速さは、それだけで比較優位になります。
どこで詰まっているかを見つける
4段階のどこに問題があるかは、数字で特定できます。
Googleアナリティクスの公式ヘルプでは、重要な行動を「キーイベント」として計測できると説明されています。問い合わせや資料請求をキーイベントとして設定すれば、訪問からの通過率が分かります。
見るべきは次の3つの数字です。訪問数(認知が足りているか)、主要ページの閲覧数(興味の段階に進んでいるか)、問い合わせ数(比較と行動の段階を越えたか)。
訪問が少なければ認知、訪問はあるが主要ページが読まれていなければ興味、読まれているのに問い合わせがなければ比較か行動の段階に原因があります。
既存顧客との使い分け
新規獲得は、既存顧客への提案より手間と費用がかかります。関係がゼロから始まるためです。
このため、新規獲得だけに注力するのは効率が悪くなります。既存顧客からの追加受注や紹介を並行して進めるほうが、全体の成果は安定します。
判断の目安は、獲得にかけられる費用です。1件の成約から得られる利益と、問い合わせから成約に至る割合が分かれば、新規獲得に使える上限が計算できます。この数字を持たないまま広告費を増やすと、費用対効果を誰も説明できなくなります。
この記事のまとめ
新規顧客の獲得は、認知・興味・比較・問い合わせの4段階に分けて考えます。段階ごとに必要な施策が違い、認知の施策を成約数だけで評価すると判断を誤ります。
詰まっている段階は、訪問数・主要ページの閲覧・問い合わせ数の3つの数字で特定できます。新規獲得と並行して既存顧客への提案を進めるほうが、全体の成果は安定します。
業種による段階の長さの違い
4段階のどこに時間がかかるかは、商材によって変わります。
金額が大きく検討期間が長い商材(BtoBのシステム、住宅、設備)では、比較の段階が最も長くなります。複数人が関わり、社内で稟議が必要になるためです。この場合、比較の段階で使われる資料(料金、事例、進め方、他社との違い)を厚くすることが効きます。
金額が小さく即断される商材(日用品、飲食、小売)では、認知と行動の段階が中心です。目に触れた瞬間に判断されるため、伝わる速さと分かりやすさが優先されます。
専門性が高く信頼が問われる商材(士業、医療、コンサルティング)では、興味の段階が長くなります。誰が担当するのか、どんな考え方をするのかが判断材料になるため、人と方針を見せる情報が効きます。
自社の商材がどれに近いかを確認すると、どの段階に資源を寄せるべきかが決まります。
獲得の費用を見積もる
新規獲得にいくらまで使えるかは、逆算で決まります。
必要な数字は3つです。1件の成約から得られる利益、問い合わせから成約に至る割合、目標とする利益。これらが分かれば、問い合わせ1件に使える上限が計算できます。
取引が継続する事業では、初回の利益だけでなく、取引期間全体の利益で考えます。初回が赤字でも、継続によって回収できるなら、獲得により多く投じられます。
社内で合意しておくこと
新規獲得は、マーケティング担当だけでは完結しません。着手前に、次の3点を関係者と合意しておきます。
どの段階までを担当するか:問い合わせまでか、商談化までか。責任範囲が曖昧だと、成果の評価で揉めます。
何をもって成果とするか:件数か、質か、その両方か。件数だけを目標にすると、質の低い問い合わせが増えます。
どのくらいの期間で判断するか:施策によって成果が出るまでの時間が違います。認知の施策を1か月で評価すると、有効な施策まで止めることになります。
この3点を先に決めておけば、途中で方針がぶれることを避けられます。
出典と注記
コンテンツ制作の考え方は Google 検索セントラルの公式ドキュメント、キーイベントの計測については Google アナリティクス ヘルプに基づきます。4段階の整理と施策の割り当ては、当社が支援の現場で用いている考え方であり、公的に定められた区分ではありません。
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