Googleは、Search Consoleに「プラットフォームプロパティ」という種類のプロパティを追加し、全世界での提供を開始しました。あわせて、ソーシャルと動画の投稿の成果を分析するための公式ガイドも公開されています。これまでSearch Consoleは、自分が所有するWebサイトの検索での見え方を確認する道具でした。そこにSNSと動画のアカウントが加わったことで、測れる範囲が大きく変わります。自社サイトを持たずSNSだけで発信している事業者にとっても、公式の計測手段ができたことになります。
何が変わったのか
追加されたプラットフォームプロパティは、SNSや動画プラットフォームに投稿した内容が、Google検索やDiscoverでどう扱われているかを確認するためのものです。公式ドキュメントによれば、対象となるのはTikTok、Instagram、X、YouTubeの4つです。
ここで押さえておきたいのは、これがSNS内部の分析ではないという点です。各プラットフォームは、それぞれ独自の分析画面を持っています。今回追加されたのは、それらとは別に「Googleの検索結果を経由して、その投稿がどれだけ見られ、どれだけクリックされたか」を見る仕組みです。SNSの投稿は、プラットフォームの中だけで消費されるものだと考えられがちですが、実際には検索から辿り着く経路も存在します。その経路が、これまでは事実上見えていませんでした。
設定の方法も公開されています。利用するには、アカウントごとにSearch Consoleへ追加して確認の手続きを行います。すでにGoogle上で確認済みの検索プロフィールを持っている場合は、確認済みのアカウントが自動的にプロパティとして登録されます。
この変更が持つ意味は、計測の空白が埋まることにあります。これまで、SNSの投稿が検索から見つかっているかどうかを知る手段は、実質的にありませんでした。各プラットフォームの分析画面は、そのアプリの中で起きたことを示します。Search Consoleは、自社のドメインで起きたことを示します。その両方の外側に、検索からSNSの投稿へ辿り着く経路がありました。プラットフォームプロパティは、この見えていなかった部分を対象にしています。SNSに力を入れている事業者ほど、把握できていなかった範囲は大きかったことになります。
使えるレポートと分析の方法
用意されているレポートは2種類です。ひとつはInsightsレポートで、全体像を掴むための簡潔な画面です。公式ドキュメントでは、直近28日間でどれだけクリックが発生したかを把握する用途が挙げられています。あわせて、成果の出ている投稿、発見のきっかけになった検索語、閲覧者の地域の分布が確認できます。
もうひとつはPerformanceレポートで、こちらは細かく分解して見るためのものです。国ごとの成果、モバイルとデスクトップの内訳、検索語ごとの成果に加えて、検索語をまとめた「クエリグループ」の傾向を見られます。クエリグループでは、上位のもの、伸びているもの、落ちているものが区別して示されます。
分析のための機能もいくつか挙げられています。直近の動きを追うための24時間のフィルタ、投稿の形式を比べるための比較モード(たとえばYouTubeのショート動画と通常の動画の比較)、特定の内容に絞るためのページのフィルタ。さらに、表示回数やクリックが急に伸びたときにそれを見つける使い方や、説明文やタイトルを修正した効果を追う使い方、変更した時点に印をつけておく注釈の機能も案内されています。
日本の実務者はどう使えるか
第一に、SNSの投稿を「検索で見つかる資産」として扱えるようになります。従来、SNSの投稿は公開直後の数日で役目を終えるものとして扱われがちでした。しかし検索から流入があるなら、投稿は公開後も働き続けます。どの投稿にその性質があるのかを、推測ではなくデータで確認できるようになったことが、この変更の実務上の意味です。
第二に、タイトルや説明文の書き方を検証できます。注釈の機能で変更の時点を記録し、その前後の変化を見る使い方が公式に案内されています。SNSの投稿文は、これまで感覚で書かれることが多かった領域です。検索語ごとの成果が見えるなら、Webページの見出しと同じように、検証しながら改善する対象になります。
第三に、形式の比較ができます。ショート動画と通常の動画を比べる機能が例として挙げられているように、どの形式が検索経由の流入を生んでいるのかを確認できます。制作にかかる手間は形式によって大きく違うため、この比較は制作計画の判断に直結します。短い動画は本数を作りやすい一方、長い動画は一本あたりの制作負荷が高くなります。どちらが検索から見つかっているのかが分かれば、限られた制作の時間をどこに割くかを根拠のある形で決められます。
あわせて有用なのが、クエリグループの増減です。伸びている検索語と落ちている検索語が区別して示されるため、自社の投稿が拾われている関心の移り変わりを追えます。SNSの運用では、反応の良かった内容を繰り返す判断が取られがちですが、その反応がアプリ内のものなのか検索経由のものなのかで、続けるべきかどうかの判断は変わります。
第四に、自社サイトを持たない事業者にとっての意味です。SNSだけで発信している事業者は、これまでGoogleの公式ツールで測れる対象を持っていませんでした。プラットフォームプロパティは、その状態を変えます。ただし、これはSNSがWebサイトの代わりになるという話ではありません。プラットフォームの仕様や表示の仕組みは運営者の判断で変わるため、自分で管理できる場所を持たない構成には別の危うさが残ります。測れるようになったことと、依存してよいことは別の問題です。
第五に、自社サイトとSNSの役割分担を見直す材料になります。同じ話題について、サイトの記事とSNSの投稿の両方を持っている場合、どちらが検索から見つかっているかを比べられます。もし投稿の側だけが拾われているなら、その話題は短い形式のほうが求められている可能性があります。逆にサイトの記事だけが拾われているなら、詳しく読みたい需要が中心だと考えられます。これまで別々に評価していた2つの経路を、同じ道具の上で並べて見られるようになった点は、運用の判断を具体的にします。
最後に、この機能の限界について補足します。ここで確認できるのは、Googleの検索やDiscoverを経由した動きだけです。SNS内部での表示や、アプリ内での回遊は含まれません。したがって、この数値だけで投稿の成果全体を評価することはできません。各プラットフォームの分析画面と併せて見る前提の道具として扱うのが適切です。また、対応するプラットフォームや利用できる機能は今後変わる可能性があります。運用に組み込む際は、公式ドキュメントで最新の内容を確認してください。導入して間もない機能では、表示される数値の定義が後から調整されることもあります。長期の比較を行う場合は、その点も踏まえて読む必要があります。まずは数週間ぶんの数値を眺め、自社の投稿がどの検索語で拾われているのかを把握するところから始めるのが、無理のない使い方です。
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