低評価の口コミが付いたとき、最初に決めるのは「消せるか」ではありません。その投稿が3種類のどれに当たるかです。Googleのポリシーに違反している投稿、客観的な事実に反する記述を含む投稿、そして実際の体験として書かれた低い評価。この3つで取れる手段がまったく違い、順番を取り違えると、消えない投稿の結果を待ちながら返信もしていない時間だけが延びていきます。
分かれ目は評価の高さではありません。Googleのマップのユーザー投稿コンテンツに関するポリシーは、投稿されるコンテンツがその場所での実体験に基づいている必要があるとしています。裏返すと、実際に来店した人が体験として書いた低い評価は、低いこと自体を理由に削除の対象にはなりません。星1つでも体験であれば残り、星5つでも実体験に基づかなければ違反になります。
この記事では、低評価の口コミを3種類に分ける基準、Googleのポリシーが実際に禁止している記載、返信がGoogle側の審査を通る仕組みと所要時間、報告の手順と通らなかったときの扱い、事実と異なる記載に修正を依頼できる範囲、返信前に確認する6項目、そして削除が認められなかったときの相談先を順に扱います。一次情報はGoogleの公式ヘルプとポリシー、消費者庁のQ&A、法務省の案内で、確認日は2026年10月30日です。公式に記載が無かった項目は推測で埋めず、最後にそのまま残しました。
口コミそのものを増やす手順はGoogleの口コミを増やす方法|店舗・企業が実践できる施策にまとめているので、ここでは付いてしまった低評価への対応だけに絞ります。
低評価の口コミは3種類に分かれる
分類は、投稿の文面だけを見て決めます。感情ではなく、ポリシーの記載と事実関係の2点で切ります。
種類1は、ポリシーに違反している投稿です。実体験に基づいていない、その場所での体験と関係のない論評が書かれている、個人情報が含まれている、ハラスメントに当たる、といったものです。この種類だけが、Googleへの報告で削除の対象になり得ます。
種類2は、体験としては書かれているが、客観的な事実に反する記述を含む投稿です。提供していない商品について書かれている、実際には存在しない仕様が書かれている、といったものです。この種類は、削除ではなく投稿者への修正依頼という手段が残ります。
種類3は、実際の体験として書かれた低い評価です。待ち時間が長かった、接客が合わなかった、価格が高いと感じた。これはポリシー違反ではないため、報告しても削除されません。ここに時間を使うなら、返信と業務側の改善に振り向けたほうが早く効きます。
1つの投稿に種類1と種類3が混ざることもあります。体験を書いたうえで、関係のない政治的な論評や従業員個人への攻撃が続いている場合です。このとき報告できるのは違反している部分であり、低い評価の部分ではありません。報告の理由を選ぶ画面で、違反に当たる記載を根拠に選ぶことになります。
ポリシーが禁止しているのは「低い評価」ではない
報告する前に、Googleが何を禁止しているかを文面で確かめます。マップのユーザー投稿コンテンツに関するポリシーには、禁止または制限されているコンテンツの種類が項目ごとに並んでいます。低評価の口コミで該当を検討する価値があるのは、次の5項目です。
| ポリシーの項目 | 公式の記載(要旨) | 当てはまる例 | 当てはまらない例 |
|---|---|---|---|
| 虚偽のエンゲージメント | Googleマップに投稿するコンテンツは、お店や場所での実体験に基づいている必要がある | 来店も利用もしていない人物による投稿 | 利用したうえで不満を書いた投稿 |
| 関連性のないコンテンツ | その場所での体験に基づくコンテンツ、またはその場所での体験に関する質問のみを投稿する。一般的、政治的、社会的な論評や個人的な不満が含まれるコンテンツは許可されない | 店舗と無関係な政治的主張だけの投稿 | 提供時間や価格への具体的な不満 |
| ハラスメント | 個人や企業に対するハラスメントととれるコンテンツの投稿、ハラスメントに参加するよう煽ることは許可されない | 従業員個人を名指しして繰り返し攻撃する投稿 | 対応内容への批判 |
| 個人情報 | 本人の同意なく個人情報を配信または投稿することは禁止される | 従業員の氏名や連絡先が書かれた投稿 | 役職や部門の記載のない指摘 |
| 不実表示 | Googleマップを使用して他人に誤解を与えたり欺いたりすること、不実表示を行うことは禁止される | 別の店舗の出来事を自店のものとして書いた投稿 | 事実に沿った体験の記述 |
左の2列は公式ポリシーの記載、右の2列は当社がその記載に当てはめて整理したものです。表を横に読むと分かるのは、どの項目も「評価が低いこと」を禁止していないことです。禁止されているのは、体験に基づいていないこと、その場所と関係がないこと、個人を攻撃すること、個人情報を出すこと、誤認させることです。
項目はこの5つだけではありません。同じページには、評価の操作、なりすまし、誤った情報、宣伝と勧誘といった種類も並んでいます。自店に付いた投稿がどの項目にも当てはまらないなら、報告しても結果は変わりません。この判定を先に済ませておくと、報告と返信のどちらに時間を使うかを迷わずに決められます。
返信はGoogle側の審査を通る
種類2と種類3では、返信が主な手段になります。ここで押さえておくことが2つあります。1つは権限、もう1つは審査です。
権限について、Googleのヘルプには「クチコミに返信するには、ビジネスのオーナー確認を行う必要があります」と書かれています。オーナー確認が済んでいないプロフィールでは、そもそも返信ができません。低評価が付いてから確認作業を始めると、対応がその分だけ遅れます。
審査について、同じヘルプは、返信がGoogleのコンテンツ ポリシーに準拠しているかどうかを確認する審査があり、返信の投稿が承認されなかった場合は編集するよう求められると説明しています。所要時間は、通常10分以内だが最長で30日ほどかかる場合もあるとされています。つまり返信ボタンを押した時点で公開されるわけではありません。
この2つを足すと、返信の運用で決めておくことが見えます。誰が書き、誰が承認されなかったときに書き直すか、です。10分で公開される日もあれば、承認されずに戻ってくる日もあります。1人の担当者が片手間で回す設計にすると、戻ってきた返信がそのまま放置されます。
報告の手順と、通らなかったときの扱い
種類1に当たると判定できた投稿は、ビジネス プロフィールから報告します。公式ヘルプが示す手順は、ビジネス プロフィールに移動し、クチコミを読むを選び、報告するクチコミの横にある報告を選び、報告する理由を選択し、報告を送信を選ぶ、という5段階です。
送信した後の扱いについて、ヘルプは「クチコミの評価には通常数日かかります」としています。そして「報告したクチコミが削除に該当しないと判定された場合、1回限りの再審査請求を送信できます」と書かれています。やり直せるのは1回だけです。同じ理由で何度も送り直す運用はできません。
| 手段 | できること | できないこと | 公式に書かれている所要 |
|---|---|---|---|
| 返信 | 事実関係を公開の場で示す、改善した内容を伝える | 投稿を消すこと、評価を変えること | 審査は通常10分以内、最長で30日ほど |
| 報告 | ポリシー違反に当たる投稿の削除をリクエストする | 低い評価そのものを理由に削除させること | 評価には通常数日 |
| 再審査請求 | 削除に該当しないという判定を1回だけ見直してもらう | 2回目以降の請求 | 記載がありません |
| 修正の依頼 | 客観的な事実に反する記載を改めるよう投稿者へ依頼する | 感想や評価を書き替えさせること | 投稿者の判断による |
再審査請求は1回しか使えないため、最初の報告で理由の選び方を間違えないことが実質的な勝負どころになります。表の4行のうち、自店の投稿がどれに乗るかを分類の段階で決めておけば、ここで迷いません。複数店舗の投稿をまとめて見る体制は口コミ管理ツールおすすめ比較|レビュー収集・返信・分析を効率化で扱っています。
事実と異なる記載には、修正を依頼できる
種類2への対応は、法令の側から線が引かれています。消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aは、ECサイトのレビュー投稿について、客観的な事実に反する内容を含んだ投稿や、他社の名誉を毀損する内容を含んだ投稿について記載を改めるよう依頼したとしても、そのことのみをもって事業者が表示内容の決定に関与しているとは評価できないため、「事業者の表示」に当たることはないとしています。
同じ回答には続きがあります。これはあくまで客観的な事実に反する内容が含まれている場合であり、顧客が購入商品を使用した感想を記載していることに対して、自社に都合の良い内容に改めるよう依頼すれば、依頼を受けて修正された投稿は「事業者の表示」に当たると考えられる、とされています。
依頼できるのは「事実の誤り」までで、「評価の書き替え」は越えています。実際には扱っていない商品について書かれているなら、その点を指摘して直してもらえます。味が好みに合わなかったという感想を、おいしかったという記述に変えてほしいと頼むと、別の規制の側に入ります。この線引きは口コミ依頼はステマ規制に当たるか|景品表示法の線引きで詳しく扱っています。
返信を公開する前に確認する6項目
ここまでの判断を、返信を出す直前の確認に落とします。6項目のうち1つ目と4つ目は出典の記載に沿った判断で、残りは社内の運用として決める項目です。
3つ目の個人情報については、投稿側だけの話ではないことに注意してください。ポリシーは、本人の同意なく個人情報を配信または投稿することを禁止しています。返信は同じ画面に並ぶ投稿なので、同じ基準で読まれます。来店の有無、予約の内容、購入した商品を返信で明かすと、事実関係を示したつもりで別の問題を作ります。確認できた範囲だけを書き、記録が無い部分は無いことを前提に書くのが安全です。
削除が認められなかったときの相談先
ポリシー違反に当たると考えて報告したのに削除されず、再審査請求も通らなかった場合、プラットフォームの中でできることは尽きます。名誉や権利の侵害に当たると考えられるときの経路は、法務省が案内しています。
法務省のページは、プロバイダなどに対して「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」を送付したり、プロバイダなどが開設している削除依頼フォームを通じて削除依頼を送付することにより、人権侵害情報の削除を依頼することができるとしています。自分で削除を依頼することが困難な場合は、最寄りの法務局に相談できることも案内されています。
相談窓口として、同ページにはインターネット人権相談受付窓口と、みんなの人権110番(0570-003-110)、こどもの人権110番(0120-007-110)、犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714)が挙げられています。削除されなかった投稿を社内で抱え続けるより、公的な窓口の判断を仰ぐ経路があることを先に共有しておくほうが、現場の対応は落ち着きます。
同時に、口コミの件数や評価そのものを目的にしないことも効きます。低評価が1件付くたびに社内が止まる状態は、母数が少ないことから来ています。評判を集客につなげる仕組み全体は口コミマーケティングとは?評判を集客につなげる方法で扱っています。
公式に記載が無かったこと
この記事の一次情報では、次の項目について記載を確認できませんでした。推測で埋めていません。
報告した口コミが実際に削除される割合と件数については、記載がありません。報告から削除までの確定した日数も、「通常数日かかります」という記載以上のものはありません。再審査請求の審査にかかる期間についても、記載がありません。返信が承認されなかった場合に通知される理由の内容も、編集を求められるという記載までで、どの基準に触れたかを個別に知る方法は書かれていません。
Google以外の投稿先(予約サイト、通販サイト、求人サイトなど)の報告手続と期間は、この記事で確認した一次情報に含まれないため扱っていません。投稿先ごとに規約と手続が違うため、対象の媒体の公式ヘルプを個別に確認してください。
この分野の実務を相談したい方へ
記事で扱っている内容は、当社が実務として支援している領域です。 自社で進めるか外部に任せるかの判断からご相談いただけます。