Metaは2026年10月13日、Facebookのフィードとリール(Reels)に表示される内容を、利用者が自分の言葉で指定できる仕組みを公開しました。発表の題は「Your Algorithm, Your Words: New Ways to Shape What You See on Facebook」です。機能の名前は Your algorithm で、見たい話題を自分で追加して管理する専用の場所が用意されます。
企業の発信に関係のない話ではありません。これまで推薦システムへの働きかけは、プラットフォーム側が用意した選択肢を押す形に限られていました。そこに自由記述が入ると、何を見たいかを言葉で宣言した利用者が現れます。配信される側の前提が少し変わります。
この記事で扱えるのは、Metaの公式発表と、同社の透明性センターに載っている順位付けの説明の範囲です。確認日は2026年10月14日です。提供地域、提供開始の時期、対応言語、広告への適用は発表に記載がありません。日本のアカウントでいつ何が使えるようになるのかも書かれていません。記載のない部分は推測で補わず、確認できなかったこととしてそのまま残します。
発表されたのは「言葉で伝える」という入口
発表が説明しているのは2つの機能です。
1つ目が Your algorithm です。発表はこれを「a dedicated space to tell us exactly what you’re into」、つまり自分が何に関心を持っているかを正確に伝えるための専用の場所だと説明しています。ここで利用者は「directly add and manage the topics you want to see in Feed and Reels」、フィードとリールで見たい話題を直接追加して管理できます。入口については、投稿に付いている三点メニューが更新され、たどり着きやすくなったと書かれています。
2つ目が、既存の操作のあとに続く追加の質問です。利用者が投稿に対して Interested(関心がある)または Not interested(関心がない)を選んだあと、場合によっては追加の質問が表示されます。そこで「in your own words, what you want to see more or less of」、もっと見たいもの、あまり見たくないものを自分の言葉で書けます。発表は「Your recommendations will update in real time」と述べ、推薦がその場で更新されるとしています。
技術面の説明も短く触れられています。発表は大規模言語モデルについて「large language models are helping us take a genuine leap forward」と書き、利用者が書いた文章を「freeform text together with everything we already understand about what you enjoy」、つまりこれまでに把握している好みと合わせて扱うとしています。反映の速さについては、同じセッションの中で、いまその人にとって重要なことを反映するように適応すると説明されています。
ここで押さえておきたいのは、Metaが「新しい推薦システムを作った」とは書いていないことです。既存の順位付けに、言葉という入力を1本足したという説明になっています。順位付けそのものの説明は、以前から透明性センターに置かれているものが変わらず使われています。
これまでの操作手段と、何が違うのか
比較のために、既存の操作を並べます。次の一覧は、透明性センターに置かれているFacebookフィードのAIシステムの説明に挙げられている項目で、説明は公式の記載にもとづいています。
| 既存の操作 | 公式の説明 |
|---|---|
| Hide | その投稿を再び見ないように隠す |
| Snooze | 人・ページ・グループの投稿を一時的に止める |
| Interested / Not interested | その投稿と似た投稿の順位のスコアを一時的に上げ下げする |
| Unfollow | 特定の投稿を見ないようにする |
| Manage favorites | 優先したい人やページを選ぶ |
| Report content | コミュニティ規定への違反を報告する |
| Reconnect | フォローを外した相手を再びフォローする |
| See newest content first | 投稿を新しい順(逆の時系列)で見る |
並びは多いのですが、形はどれも同じです。用意された操作を押すという形式で、押した事実から機械が好みを推し量ります。
注目したいのは Interested / Not interested の説明です。公式は「temporarily increase or decrease the ranking score for a post and other posts like it」と書いています。効果は一時的(temporarily)で、対象はその投稿と似た投稿です。利用者が何を望んでいるのかを言葉として伝える経路ではありません。
Your algorithm が変えるのはこの点です。利用者は、たとえば「自転車の整備」のような話題そのものを言葉で書き、追加して管理できます。関心を推定される側から、関心を申告する側へ回る、という違いです。
順位付けのどこに効くのか
Metaは透明性センターで、Facebookのフィードの順位付けを4つの段階として説明しています。
- 在庫(inventory)… 友達、フォローしているページ、参加しているグループから、Facebookを開いたときに見える可能性のある新しい投稿を集める。コミュニティ規定に違反する内容は除く
- 信号(signals)… 投稿1件ごとに数千の信号を見る。いいね、共有、コメントのような行動と、そこから推定される行動のデータが含まれる
- 予測(predictions)… その人が関連性と価値を感じる内容を個別に予測する。コメントする可能性や、問題があり配信を下げるべき内容かどうかの予測が含まれる
- 関連性スコアで並べる … 投稿ごとにスコアを付けて並べ、同じ出どころばかりが続かないように種類を混ぜる
同じ資料には、信号として具体的に何を見ているかの例も載っています。誰が投稿したかと過去にその相手とどうやりとりしたか、写真・動画・リンクのどの形式か、友達のうち何人がその投稿にいいねを付けたか。さらに、投稿ごとの平均滞在時間や、同じ友達の投稿をすばやくスクロールで通り過ぎた回数も挙がっています。予測の側には、投稿に反応せずスクロールで通り過ぎる可能性や、Interested を押す可能性が並びます。
自分の言葉で書いた文章は、この段階のうち信号として加わる入力という位置づけで説明されています。発表が「これまでに把握している好みと合わせて」と書いているのはその意味です。ただし、その文章が他の信号と比べてどれだけ強く扱われるのかは公表されていません。1行書けば順位が決まる、という説明はどこにもありません。
推薦の判断材料をどこまで公開するかは、プラットフォームによって粒度が違います。TikTokの側は判断材料の種類と重みの差を公式に説明しており、TikTokのおすすめに乗る仕組みで整理しました。並べて読むと、各社が「説明する範囲」をどこに引いているかが見えてきます。
「見たくない」と書かれた言葉は、どこへ向かうのか
もう一方の向きも見ておきます。利用者が「あまり見たくない」と書ける経路が増えることは、企業の発信にとっては逆風にもなり得ます。
Metaは配信を下げる対象について、別の資料で分類を公開しています。価値の柱ごとに整理されており、「Responding to People’s Direct Feedback」(人々の直接のフィードバックに応える)の下に clickbait links と engagement bait が置かれています。「Incentivizing Creators to Invest in High-Quality and Accurate Content」の下には事実確認を受けた誤情報、「Fostering a Safer Community」の下にはコミュニティ規定に違反する可能性が高い内容が並びます。方針に違反しないものの境界に近い内容についても、個別の順位付けで配信を下げると説明されています。
ここで重要なのは、利用者の直接のフィードバックが、以前から配信を下げる根拠の一つとして位置づけられていることです。釣りの見出しや、いいねやコメントを無理に促す投稿が対象に挙がっているのは、人々がそれを望んでいないと答えているからだという整理になっています。
では、自由記述で書かれた不満が、個別の投稿やページの配信をどう下げるのか。そこは公表されていません。発表は推薦が更新されると書いているだけで、書いた本人の画面以外に影響するのかどうかには触れていません。ここを推測で埋めると、根拠のない不安を社内に広げることになります。確認できるのは「利用者の言葉を受け取る経路が増えた」という事実までです。
日本の実務者はどう備えるか
発表の範囲で、いま動かせることは限られています。それでも、やっておく価値のある準備はあります。
第一に、自社の投稿の主題が、言葉として本文に書かれているかを読み直すことです。利用者が「見たい」と書くのは、たいていブランド名ではなく話題です。商品名だけが並び、それが何のための道具なのかが文章に出ていない投稿は、話題として受け取られる手がかりが薄くなります。主題が画像の中にだけ描かれている投稿も同じです。
第二に、反応を促す文言を点検することです。いいねやコメントを促す呼びかけは、Metaが配信を下げる対象として engagement bait を挙げている以上、以前から不利な扱いを受け得ます。利用者が自分の言葉で不満を書けるようになれば、同じ種類の投稿がさらに選ばれにくくなる可能性もあります。反応の数そのものを目的にした文言は、この機会に外すのが妥当です。
第三に、外部リンクの着地先を点検することです。Metaは配信を下げる対象として、広告で覆われたサイト、読み込みが遅いサイト、壊れたサイトへのリンクを挙げています。フィードでの見え方を工夫する前に、リンク先の状態を直すほうが順序として正しい場合があります。ページ全体の設計から見直すならFacebookマーケティングの進め方に整理してあります。
第四に、配信量の増減をこの機能のせいにしないことです。推薦がその場で更新されると書かれていることは、逆にいえば利用者ごとの変動が大きくなるということでもあります。社内の報告で、ある週の表示数の減少を新機能の影響と断定すると、他の原因を探す手が止まります。
第五に、自分のアカウントで実物を見ることです。投稿の三点メニューを開いて Your algorithm が出てくるか、Not interested を押したあとに追加の質問が出るかを確かめます。提供地域と対応言語が発表に書かれていないため、日本のアカウントで何ができるのかは、自分で開くまで分かりません。社内に共有する資料は、この確認のあとに作るほうが確実です。
記載が見つからなかったこと
推測で埋めないために、探しても確認できなかった項目を残します。
| 確認したかった項目 | 記載の状況 | どう扱うか |
|---|---|---|
| 提供地域と提供開始の時期 | 記載がありません | 「すでに全世界で使える」と社内へ伝えない |
| 対応言語(日本語で書けるか) | 記載がありません | 自分のアカウントで確認してから共有する |
| 自由記述が影響する範囲 | 書いた本人の画面以外への影響は不明 | 他人の画面での配信増減と結びつけない |
| 他の信号と比べた重み | 記載がありません | 「1行書けば反映される」と説明しない |
| 効果が続く期間 | 既存の操作は一時的と明記、新機能は記載なし | 恒久的な設定として扱わない |
| 広告の配信への適用 | 記載がありません | 広告の配信面の話に転用しない |
| Instagramへの展開 | 記載がありません | フィードとリールの話として扱う |
| 書かれた文章の保存と利用の範囲 | 発表には記載がありません | プライバシーの説明を別途たどる |
空欄が多いのは、提供が始まった直後の発表としては普通のことです。問題になるのは、空いた欄を社内資料で埋めてしまうときです。公表されている内容と自分たちの見立ては、必ず行を分けて書いてください。
結局、何が変わるのか
変わったのは推薦の精度ではなく、利用者が推薦システムに対して使える言語です。これまでは押すことしかできなかったところに、書くことが加わりました。Metaは新しい仕組みを作ったとは書かず、既存の順位付けに自由記述という入力を足したと説明しています。読み取れるのはそこまでです。
企業の側がやることは、派手な対策ではありません。自分たちの投稿が、利用者の言葉で言い表せる話題になっているかを確かめることです。「この会社の新商品が見たい」と書く人は少数でも、「この分野の修理の知恵が見たい」と書く人はいます。話題として名前の付く発信をしているかどうかが、ここでの分かれ目になります。
そして、分からないことは分からないままにしておくことです。提供地域も、言葉の重みも、効果が続く期間も発表には書かれていません。成果を約束できる材料は、現時点でどこにもありません。確かめられるのは、自分のアカウントの三点メニューを開いたときに何が出るか、いまはそれだけです。
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