実店舗を持つ会社にとって、広告の成果は画面の外で起きます。見たのは通勤中のスマートフォンでも、財布が開くのは店の中です。この「外側」へ予算を寄せるための設定が、Google広告のヘルプに Local customer optimization という名前で掲載されています。Performance Maxの店舗目標のキャンペーンで使うもので、店舗の近くにいる、あるいはその地域に関心があって、すぐに行動できる状態の人へ配信を優先させる機能だとヘルプは説明しています。
先に、誤解しやすいところを書きます。これは新しいキャンペーンの種類ではありません。店舗目標のPerformance Maxの中にある、オンとオフを切り替える設定です。そしてオンラインの目標とは併用できません。ヘルプには、オンラインのキャンペーン目標と、Merchant Centerの商品を含むPerformance Maxのキャンペーンとは互換性がないと書かれています。ひとつのキャンペーンで店舗もネット通販もまとめて任せる、という使い方はできない、ということです。
この記事で扱うのは、Google広告の公式ヘルプに書かれている範囲だけです。日本での提供状況、業種ごとの可否、使い始めた広告主の数や来店の増加幅は、いずれも記載がありません。確認日は2026年9月9日です。あわせて、店頭で起きた売上を広告側へ戻すための店舗販売のアップロードについても、同じヘルプ群から条件を整理します。設定の話と、成果を数える話は、片方だけでは動かないためです。
何が変わるのか
ヘルプが挙げている利点はふたつです。ひとつは、すぐに行動できる状態の人を捉えること。経路を調べている人、サービスを探している人、店舗の近くを移動している人など、その場で動く意図を持って動いている人に届けるという説明です。もうひとつは、地域を絞った配信です。キャンペーンの予算を、その地域に合わせた広告へ振り向けるとされ、配信先としてGoogleマップ、Waze、Google検索のローカル向けの形式が挙げられています。
言い換えると、変わるのは配信面の広さではなく、予算の寄せ先です。同じ店舗目標のキャンペーンでも、この設定を入れると「近さ」と「いま動くかどうか」が優先の軸になります。地図アプリや経路案内の中で名前を見せることに意味がある業種、つまり飲食、小売、整備や修理のように来店してもらわなければ成立しない業種にとって、配信面の性質が変わる設定だと読めます。
ただし、ヘルプに書かれているのは仕組みの説明までです。どれだけ来店が増えるかについての数値は掲載されていません。有効にすれば来店が増える、という書き方はできません。既存の店舗目標のキャンペーンに対して、配信の重心をどこへ置くかを選べるようになった、という理解が実態に近いはずです。
対象になるのは店舗向けの目標だけ
この設定を使うには、キャンペーンの目的が店舗側を向いている必要があります。ヘルプの手順では、キャンペーンの目的として Local store visits and promotions を選び、キャンペーンの種類として Performance Max を選ぶよう案内されています。そのうえで、コンバージョンの目標として来店、店舗での販売、通話、経路案内といった店舗向けのものを確認する流れです。通話と経路案内については、Googleが提供する形のものが挙げられています。
配信面そのものは、店舗目標のPerformance Maxのヘルプに一覧があります。Googleマップ、Waze、検索ネットワーク、YouTube、ディスプレイネットワーク、ビジネスプロフィール、Gmailが挙げられ、マップの中ではプロモートピンや地図の検索結果に出る広告など、複数の出方が説明されています。Wazeについては提供される国が限られていることも書かれています。マップだけに配信することはできないとも記載されており、面を細かく選ぶ発想の機能ではないことが分かります。
前提として必要になるのが、店舗の情報そのものです。ヘルプでは、ビジネスプロフィールを連携するか、アフィリエイトのロケーションを選ぶことが求められています。ローカル顧客最適化の側でも、対象にする店舗を、ビジネスプロフィールのアカウントか、連携した住所のアセットから選ぶと説明されています。店舗の一覧が整っていないと、そもそも設定の対象が決まりません。営業時間や住所の更新が放置されているなら、そこが先です。地図での見え方をどう整えるかはMEO対策のやり方で扱っています。
有効にするまでの操作
新しく作る場合と、すでに動いているキャンペーンに足す場合で、たどり着き方が違います。新規で作るときは、目的と種類を選び、コンバージョンの目標を確認したところで、Local customer optimization のパネルが現れ、そこにあるトグルを切り替えます。対象の店舗を選び、Merchant Centerの商品が選ばれている場合は外してから進みます。
すでに動いているキャンペーンに足すときは、キャンペーンを選んでから設定へ入り、予算と入札の最適化の項目の中にあるトグルを切り替えて保存します。入り口が分かれているだけで、切り替えるものは同じです。
併用できない組み合わせがある
ここが設計に効きます。ヘルプには、この設定はオンラインのキャンペーン目標とは互換性がないこと、そしてMerchant Centerの商品を含むPerformance Maxのキャンペーンとは併用できないことが明記されています。あとからオンラインの目標を足したくなった場合は、先にローカル顧客最適化のトグルをオフにする必要がある、とも書かれています。
実務上の意味は単純です。店舗の来店を狙うキャンペーンと、ネット通販の売上を狙うキャンペーンを、同じ器にまとめられません。予算をひとつにして機械に配分を任せる、という運用をしている場合、この設定を入れるならキャンペーンを分けることになります。分ければ、予算の上限も、成果の見え方も、担当者の判断の単位も分かれます。設定を入れる前に、その分割に耐えられる予算配分になっているかを見ておく必要があります。
もうひとつ、報告の形にも影響します。来店と店舗での販売は、オンラインの申し込みや購入とは性質が違います。同じ表に並べるなら、どの列が何を数えているのかを先に共有しておかないと、合計だけが増えた資料になります。コンバージョンの設定そのものの考え方はGoogle広告のコンバージョン設定にまとめています。
店頭で起きた売上を広告へ戻す
配信を店舗へ寄せても、店頭で何が売れたかが広告側へ戻らなければ、成果は来店の推定までで止まります。これを戻すための仕組みが、店舗販売のアップロードです。自社が持っている取引のデータを広告アカウントへ送り、コンバージョンとして扱わせるものです。
前提として、ヘルプのこの記事は店舗販売データのアップロードを許可された広告主に向けたものだと明記されています。誰でもすぐに使えるものではありません。そのうえで、送るデータの中身にも決まりがあります。ヘルプには、店舗での取引データだけを送ること、オンラインの売上、電話での売上、ネットで注文して店頭で受け取った分といった他の経路の取引を含めないことが書かれています。
期間の扱いも決められています。取引は日次または週次で送ることが推奨され、金額を伴う報告を受け取るには直近30日以内の取引である必要があると書かれています。90日より前の取引は処理されないこと、アップロード日から35日前までの範囲でしか店舗販売の値が更新されないことも記載されています。過去をまとめて送って埋め合わせる、という使い方は想定されていません。
送り方は3つある
送る経路は、ヘルプの中で用途ごとに分けて説明されています。ひとつ目はGoogle広告の画面から送る方法です。ヘルプでは、店舗販売を初めて扱う場合に向いているとされ、取り込み時の確認と誤りの表示があることが利点として挙げられています。画面から手作業で送るほかに、スプレッドシートやファイル転送を使って定期的に送る形も用意されています。ただし画面から手動で送る場合は、2時間のあいだに5ファイルまでという上限が、ファイルの大きさに関係なくかかると書かれています。
ふたつ目が Data Manager またはGoogle広告のAPIを使う方法です。ヘルプでは、取引の件数が多い場合に向いているとされ、データを変更する手間を減らせると説明されています。一方で技術的な作業が必要で、導入にあたってはGoogleの担当者へ連絡するよう案内されています。広告の運用担当だけで完結する経路ではありません。
みっつ目が店舗販売のパートナーへ任せる方法です。ヘルプでは、Google広告のAPIと直接つながっている事業者が、送信の自動化やデータの整形を担うと説明されています。照合の精度が上がる可能性にも触れられています。
日本の実務者が先に決められること
日本での提供可否がヘルプから読み取れない以上、待つしかない部分はあります。それでも、待っているあいだに決められることがあります。
ひとつ目は、店舗の一覧を整えることです。ビジネスプロフィールの連携が前提になっている以上、住所、営業時間、閉店や移転の反映が遅れていると、そのまま配信の対象の精度に響きます。店舗数が多い会社ほど、この整備は着手から完了までに時間がかかります。設定が使えるようになってから始める種類の作業ではありません。
ふたつ目は、キャンペーンの分け方を先に決めることです。オンラインの目標と併用できない以上、店舗向けと通販向けを分ける前提で予算を組み直す必要があります。分けた結果、片方の予算が学習に足りなくなるなら、それは設定を入れない判断の材料になります。入れるかどうかではなく、分けられるかどうかが先の論点です。
みっつ目は、店頭の取引データを日次または週次で出せるかを確認することです。レジや基幹システムから取引の単位で出せるのか、出せるとして誰が出すのか。他の経路の売上を混ぜずに切り出せるのか。ここが詰まっていると、送る経路の話まで進みません。ヘルプが挙げている3つの経路のどれを選ぶかは、件数と社内の体制で決まります。
よっつ目は、報告での扱いを決めることです。来店や店舗での販売を、既存のコンバージョンと同じ列に足し込むのか、分けて出すのか。足し込むなら、増えた数字が何を意味するのかを、報告先と先に合意しておく必要があります。数字が動いてから定義を調べ直す順番を避けられます。
公表されていないこと
確認できなかったことを残します。日本での提供可否と提供時期は、ヘルプに記載がありません。対象になる国や言語の一覧も、ローカル顧客最適化のページからは確認できませんでした。
効果に関する数値も公表されていません。この設定を有効にした広告主の数、来店や店舗での販売がどれだけ動いたかといった値は、ヘルプにありません。したがって、有効にすれば来店が増える、という言い方はできません。配信の重心を選ぶための設定であって、来店を増やすことを約束する機能ではありません。
店舗販売のアップロードについても、許可を受けるための条件が確認できませんでした。出稿の規模やアカウントの区分によるのか、業種によるのかは、ヘルプの記載からは分かりません。あわせて、ローカル顧客最適化をオフに戻したときに配信がどう変わるか、対象の店舗を途中で入れ替えた場合の扱いについても、断定できる記述を確認していないため、ここでは触れません。
出典と注記
この記事は、Google 広告ヘルプの「About Local customer optimization within Performance Max campaign for store goals」「About Performance Max for store goals」「Store sales uploads: Upload your first-party data」「Store sales uploads: Choosing your first-party data upload method」を出典としています。いずれもプラットフォームが自ら公開している一次情報です。仕様は改定されるため、実際に設定する前に各ヘルプの現在の記載を確認してください。確認日は2026年9月9日です。機能と条件の記述は原文の表記に沿っており、単位の換算や数値の補完はしていません。成果を保証する記述は含みません。海外の動きは海外マーケティング最前線に集めています。
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