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コンテンツ運用ルールの作り方|PostHogの公開ハンドブックに学ぶ

記事を作り続ける体制は、型の定義と「やらないこと」を先に文書にできるかで決まります。PostHogが公開しているハンドブックから、5つのコンテンツ型、優先しない領域の線引き、内部リンクやメタ情報の数値基準を読み、Googleの公開ドキュメントと突き合わせます。

記事を作り続けられるかどうかは、書き手の力量よりも、何を書くかを決める基準が文書になっているかで決まります。基準が無いチームでは、企画のたびに「この記事は誰向けなのか」から話が始まり、公開するかどうかもその場の判断で変わります。担当が1人増えるごとに、判断の幅も増えていきます。

この記事で読むのは、PostHog(プロダクト分析やセッション記録などを提供する米国のソフトウェア会社)が公開しているハンドブックです。同社は社内向けの手順書をそのままウェブに置いており、コンテンツの型の決め方、優先しない領域、検索向けの実装基準まで外から読めます。社外向けに整えた資料ではなく、社内の人が参照する文書が公開されているところが、読む価値のある点です。確認日は2026年9月30日です。

進める順序は3つです。コンテンツを5つの型に分けた定義、注力すると書いたものと優先しないと書いたものの線引き、そして数値で書かれた検索向けの基準。そのうえで、ハンドブックの記述をGoogleが公開しているドキュメントと突き合わせ、他社の手順書をそのまま輸入すると外れる部分を切り分けます。文章そのものの調子をどう決めるかは、ブランドボイスの決め方の側で扱っています。

手順書を公開している会社は、そこに何を書いているのか

社内文書を公開している会社は、1社だけではありません。当サイトでは以前、計測用のパラメータの命名規則を公開しているGitLabの例をUTMパラメータの命名規則で読みました。PostHogの場合は、コンテンツとマーケティングの節が同じ形で置かれています。

コンテンツの節は、チームの目的を2つ挙げるところから始まります。1つはPostHogの認知を広げること、とくに同社が理想とする顧客像にあたる人たちの間で広げること。もう1つは、開発者と利用者が、記事・動画・ドキュメントによってより上手くやれるようにすることです。認知と、既存利用者の成功が並んでいます。

書き手についての記述も具体的です。技術を理解できる書き手をチームとして抱えることを挙げ、フリーランスやゲスト投稿にコンテンツを頼らないと書いています。そして品質について、3つの否定形が並びます。

We don’t rely on AI. We don’t take content in exchange for links. We don’t have arbitrary volume goals.

AIに頼らない、リンクと引き換えにコンテンツを受け取らない、任意の本数目標を持たない。3文のうち、運用にいちばん影響するのは3つ目だと考えます(この判断は当社によるものです)。本数の目標が先にあると、材料の足りない企画でも枠を埋めるために通ってしまいます。逆に本数を置かないなら、何をもって公開に足ると判断するのかを別の形で決めておく必要があります。それが、次に見る型の定義です。

なお、この3文は同社の方針であって、検索エンジンの要件ではありません。とくにAIの扱いは混同されやすいため、後半でGoogleの公開ドキュメントと並べて確認します。

コンテンツを5つの型に分け、型ごとに狙う相手を変えている

ハンドブックは、作るコンテンツを5つに分けています。原文の見出しと、書かれている中身を並べます。

PostHogのコンテンツ5つの型を、原文の見出し、ハンドブックに書かれている中身、主に効く読者の状態の3列で並べた表形式の図
左2列はハンドブックの記載、右列の「主に効く読者の状態」は当社による整理です。5つが並列の分類として置かれていることを示しています。 出典:PostHog Handbook「Content」(確認日 2026-09-30)

5つを見比べて分かるのは、これが書式の分類ではなく、狙う相手の分類になっていることです。見解を示す記事はまだ知らない人へ、比較は他社と比べている人へ、定番の解説は検索から初めて来る人へ、操作手順は使い始めた利用者へ向いています。ニュースレターは配信の経路でありながら、それ自体が1つの型として置かれています。

型が先に決まっていることの実利は、着手のときに出ます。ハンドブックは、書くことや変更することに許可や承認は要らないと明記しています。アイデアは所定のSlackチャネルに投げるか、テンプレートに沿ってGitHubの課題として出す形です。承認の工程を置かない代わりに、どの型として書くのかを決めれば、狙う相手と役割が自動的に定まります。

日本語のチームへそのまま持ち込めるのは、型の数や名前ではなく順序のほうです。型を先に決め、そのあとで1本ごとの企画を出す。この順序が逆になっているチームでは、企画が出るたびに読者像の議論が再開します。読者が何を求めているかを確かめる手順そのものは、検索意図の調べ方にまとめています。

「優先しない」と書いてある側に、判断の速さが出る

マーケティングの節には、得意であるべきものと、優先しないものが、それぞれ列挙されています。

ハンドブックが得意であるべきと挙げている12項目と、優先しないと書いている6項目を左右に並べ、やらないと明記されている5項目を右下に置いた図
左右はハンドブックに列挙されている項目です。日本語の要約と括弧内の補足は当社によるもので、原文の訳ではありません。右下は同節の「No sneaky shit」に挙がっている禁止事項です。 出典:PostHog Handbook「Marketing」(確認日 2026-09-30)

注力する側には、ドキュメント、ローンチ、イベント、グッズ、屋外広告、開発者に向けた発信者への協賛まで入っています。一方で、費用の最適化、大規模で統合されたキャンペーン、広報、他社コミュニティでの活動、カンファレンス、ショート動画が優先しない側に置かれています。ショート動画については、試したが機能しなかったという理由まで添えられています。

この線引きを支えているのが、同節の価値観です。1つ目は、意見を持つこと。

we would rather have 50% of people love us and 50% hate us than 80% mildly agree with us

80%の人が軽く同意する状態よりも、50%に愛され50%に嫌われる状態を選ぶ、という書き方です。2つ目は、押すのではなく引くこと。顧客はまず製品で判断するという前提に立ち、口コミを既定の経路に置いています。3つ目が「No sneaky shit」で、他社の解析タグを入れない、検証できない製品の主張をしない、競合を不当に批判しない、ポップアップのようなダークパターンを使わない、冷たい連絡は少量で相手に即した内容だけにする、といった具体が並びます。

屋外広告が注力側に入っているのは、開発者向けの製品としては珍しい判断です。広報とカンファレンスを外しながら、ブランドの露出を広く取る手段は残している、という組み合わせになります。

都市の建物に掲げられた大きな屋外広告の看板。ハンドブックは注力する項目のひとつに屋外広告を挙げている
ハンドブックは、得意であるべきものの最後に屋外広告を挙げています。写真は屋外広告のイメージで、同社の実際の出稿が写っているものではありません。 写真: John Israel(Pexels)

学べるのは項目の中身ではなく、優先しない側が同じ粒度で書かれていることです。やることだけを並べた方針は、依頼が来たときに断る根拠になりません。「カンファレンスに出ませんか」と持ち込まれたときに、合わないと文書に書いてあれば、判断は毎回ゼロからにならずに済みます。自社で書くときは、やらない理由を1行添えておくと、あとから方針を見直すときにも使えます。

検索向けの基準は、数で書かれている

コンテンツの節の下には、検索向けのガイドが別ページとして置かれています。ここは具体的で、数値がそのまま書かれています。

SEOのガイドに数値で書かれている基準を4枚のカードで示した図。H1は1ページに1つ、本文の内部リンクは3から5本、メタタイトルはおよそ60字未満、メタディスクリプションは160字未満
4枚の数値と3つの方針はガイドの記載です。下段の注記のうち、日本語での文字数についてのくだりは当社の運用基準です。 出典:PostHog Handbook「SEO best practices」(確認日 2026-09-30)

語の選び方については、こう書かれています。

Don’t obsess over exact-match keywords, ask: What is the searcher really trying to accomplish?

完全一致の語に固執せず、検索した人が本当は何を成し遂げようとしているのかを問う、という指示です。そのうえで、1つの語ではなく意図の束を狙うこと、長い語の変形は取りやすく主題の厚みにもなることが続きます。見出しについては、検索結果の他の行と同じ響きなら研ぎ直す、ただし関連性を失うほど凝らない、という条件が付いています。

内部リンクについては、置き場所を選んだ3〜5本で足りるとし、本文の早い位置に置くことを勧めています。Googleは上のほうに置かれたリンクを重く見る傾向があるという説明が添えられていますが、これは同社の見解です。加えて、アンカーテキストは説明的で、かつ同じ文言を繰り返さないこと、合わない場所に無理にリンクを置かないことが書かれています。

そのまま持ち込めないのは文字数です。メタタイトルをおよそ60字未満、説明文を160字未満とするのは英語のページに対する基準で、全角の日本語では同じ数字が同じ表示量になりません。当サイトでは、日本語の説明文の目安を英語の基準とは別に定めています(値は上の図に入れました)。検索向けの基本の考え方はコンテンツSEOとはにまとめています。

ハンドブックの記述を、Googleの公開ドキュメントと突き合わせる

ここが、公開されている他社の手順書を読むときにいちばん大事な工程です。同じ文書の中に、その会社の方針と、検索エンジンの仕様の説明が混在しています。前者は真似るかどうかの話ですが、後者は一次情報にあたって確かめられます。

ハンドブックの記述 Googleの公開ドキュメントの記載 突き合わせた結果
リンクと引き換えにコンテンツを受け取らない 「Exchanging goods or services for links」をリンクスパムの例として列挙。広告として売買する場合は rel="sponsored" か rel="nofollow" を付けるとしている 方針はポリシーと同じ方向。自社で決めるのは、付ける属性の運用まで
AIに頼らない 自動生成そのものを禁じていない。自己点検の問いとして、AIの利用が読者に分かる形になっているか、どう使ったかの背景を示しているかを挙げている 「AIを使わない」は同社の選択で、検索の要件ではない
Googleのアルゴリズムは information gain(既出の情報に対してどれだけ独自の情報を足したか)を考慮するとしている 確認できたのは「独自の情報・取材・調査・分析があるか」という自己点検の問いまで。この名前の指標としての記載は見当たらなかった 独自性を求める方向は一致。ただし指標名を社内の根拠にはしない
もうGoogleだけに書いているのではなく、回答エンジンにも書いている AI Overviews や AI Mode に出るための追加要件や、特別な最適化は必要ないと明記。表示量を絞るなら既存の nosnippet や max-snippet などで制御する AI向けの別施策を立てる前に、通常の検索向けの前提を満たす順序になる

1行目は、方針とポリシーが同じ方向を向いている例です。Googleはリンクスパムを、検索順位の操作を主な目的としてリンクを作る行為と定義し、金銭だけでなく物品やサービスとの交換も例として挙げています。記事広告やネイティブ広告で対価を受け取り、リンクを含める場合も同じ扱いです。広告としてのリンク自体が禁じられているわけではなく、順位の評価に渡さない属性を付けるかどうかが分かれ目になります。

2行目は、方針と要件が違う例です。ハンドブックは「AIに頼らない」と宣言していますが、Googleの側は自動生成を理由に一律で扱いを変えるとは書いていません。求めているのは、独自性のある人に向けた内容であることと、自動生成を使ったなら読者に分かる形にすることです。「検索で評価されないからAIを使わない」という説明は、この一次情報では裏が取れません。使わないという判断をするなら、自社の理由で説明したほうが筋が通ります。

3行目は、確認できなかった例です。information gain という語での説明はハンドブック側にあり、Googleの公開ドキュメントで今回確認できたのは、独自の情報や分析があるかという自己点検の問いまででした。方向は同じでも、指標名を社内の根拠として使わないのが安全です。

4行目は、順序の話です。回答エンジンを意識して書くという構えは合理的ですが、Googleは追加の要件や特別な最適化は無いと明記しています。AI向けの施策を独立して立てる前に、通常の検索向けの前提が満たされているかを見る順序になります。

ハンドブックに書かれていなかったこと

読んだ範囲で、探したものの見つけられなかった項目を挙げます。埋めずに残します。

本数と頻度です。任意の本数目標を置かないと書いてある一方で、実際に週あたり何本公開しているかの記載は見当たりませんでした。チームの人数の内訳も同様で、コンテンツの周辺に複数のチームが並んでいることは書かれていますが、各チームの人数までは読み取れません。この方針による成果の数値もありません。型の分け方を変えたことで流入がどう動いたかといった前後比較は載っていません。日本語や他言語での運用についての記載もありませんでした。

いずれも「社内に無い」という意味ではありません。公開されている手順書は社内の担当者が参照するための文書で、載る項目はその目的で選ばれます。外部の読み手が確かめられる範囲がここまで、ということです。

自社の規程に移すとき、先に決める6項目

最後に、日本語のチームが着手するときに先に決める項目を整理します。項目と順序は当社によるもので、PostHogがこの6項目を推奨しているという意味ではありません。

決める項目 PostHogの場合(ハンドブックの記載) 自社で決めること
型の定義 5つ(見解を示す記事・比較・定番の解説・操作手順・ニュースレター) 型の数と、型ごとに狙う読者の状態
書き手 技術を理解できる書き手を社内に置き、外注とゲスト投稿に頼らない どこまでを社内で持ち、何を外に出すか
着手の手続き 承認は不要。アイデアはSlackの所定チャネルか、テンプレートに沿った課題で出す 承認を要るものにするか。不要にするなら判断の基準を先に文書化する
本数 任意の本数目標を置かない 本数を置くかどうか。置くなら何のための数字か
実装の基準 H1は1ページに1つ、内部リンクは3〜5本、メタ情報の文字数と固有性 日本語での文字数。リンクの本数と置き場所
やらないこと 他社の解析タグ、検証できない主張、競合の不当な批判、ダークパターン、リンクとの交換 名指しで禁じるものと、その理由

6項目のうち、後回しにされやすいのは4番目と6番目です(この判断は当社によるものです)。型や実装の基準は作りやすく、形も残ります。一方で本数の扱いと、やらないことの明記は、決めなくても日々の作業が止まらないため先送りされます。そして運用が崩れるのは、たいていこの2つが無い側からです。締め切りが近いときに本数を優先するのか品質を優先するのかが書かれていなければ、その場の空気で決まります。

もう1つ添えるなら、変更の経路です。GitLabのハンドブックには変更を提案する手順が書かれており、PostHogも承認なしに変更できるとしています。規則は決めた瞬間から現実とずれ始めるため、直す経路が文書の中に無いものは、運用の中で自然に無視されます。

この記事で確認できたこと

PostHogは、コンテンツとマーケティングの手順書を社外から読める形で公開しています。コンテンツは5つの型に分けて定義され、型ごとに狙う相手が違います。書き手は社内に置き、フリーランスやゲスト投稿に頼らないとしています。品質については、AIに頼らない、リンクと引き換えにコンテンツを受け取らない、任意の本数目標を持たない、の3点が並んでいました。書くことや変更することに承認は要らず、アイデアはSlackか課題テンプレートから出す形です。

マーケティングの節では、得意であるべき12項目と優先しない6項目が列挙され、後者にはショート動画やカンファレンスが入っています。検索向けのガイドには、H1は1ページに1つ、内部リンクは3〜5本、メタタイトルはおよそ60字未満、説明文は160字未満という数値が書かれていました。文字数は英語のページに対する基準で、日本語にそのまま持ち込めません。

Googleの公開ドキュメントと突き合わせると、リンクとの交換を避ける方針はスパムポリシーと同じ方向でした。一方で、AIを使わないことは同社の選択であって検索の要件ではなく、information gain という指標名での記載はGoogle側では確認できませんでした。AI Overviews や AI Mode については、追加要件や特別な最適化は必要ないと明記されています。本数と頻度、チームの人数の内訳、この方針による成果の数値、他言語での運用は、確認した範囲では見当たりませんでした。

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