半導体大手のNVIDIAが、社内の実務でChatGPT Workをどう使っているかを、OpenAIが導入事例として公開しています。派手な全社導入の宣言ではなく、営業支援とマーケティングという2つの現場で、誰が・どの作業を・どれだけ効率化したかが具体的に書かれているのが特徴です。公表されている数値は、繁忙期の週16時間の削減、試作品づくりの2〜3週間から3〜5日への短縮、週25〜40件の外部情報から5〜8件の重要シグナルの抽出。個人の工夫が地域を越えて共有されていく過程まで含めて、事例の中身を整理します。
何をしたか:現場主導の業務自動化
1人目の事例は、営業・事業開発部門を支えるゴートゥーマーケット(GTM)ストラテジストのWill Daney氏です。同氏の定常業務のひとつが、同社の世界的なAIカンファレンス「GTC」に向けた営業組織の支援でした。従来は、アカウントリストの整備、参加登録の追跡、顧客対応アクションの洗い出しといったスプレッドシート作業に忙殺され、イベント前の時期には手作業の分析が業務時間の約40%を占めていたといいます。
Daney氏はこの一連の作業を、週2回自動実行されるChatGPT Workのワークフローに置き換えました。効果は数値で公表されています。12週間に及ぶGTCの計画サイクルの間、このワークフローは週あたり約16時間を削減しました。本人は、取り戻した時間を現場チームとの対話や顧客支援の質の向上に充てていると語っています。
重要なのは、このワークフローが「本人の持ち物」であることです。イベントの内容が変わっても、新しいツールの購買や導入を待たずに自分で作り替えられる。さらに、サンノゼ、台北、欧州、ワシントンDCでイベントを支援する同僚たちにワークフローを共有し、各地域が現地の事情に合わせて調整して使っています。個人の効率化が、そのまま組織の資産になった例です。
2人目は、マーケティング組織のAIオペレーションチームで働くRachita Jain氏です。同氏の課題は、新しいモデルやベンチマークが次々と発表される業界で、自社の優先事項に関係する情報を見落とさないことでした。ChatGPT Workは、週に25〜40件届く外部のAI関連アップデートから、行動につながるシグナルを週5〜8件に絞り込んで提示します。また、業務ツールの試作品づくりも、従来の2〜3週間から3〜5日へ短縮されました。
Daney氏の従来の作業を、もう少し具体的に見ておきます。GTCの前には、担当地域のアカウントリストを組み立て、顧客や見込み客の参加登録を追跡し、営業チームが取るべきアクションを整理するという作業が、スプレッドシート上で延々と続いていました。どれも判断そのものより、情報を集めて並べる時間が大半を占める作業です。ChatGPT Workへの置き換えで自動化されたのは、まさにこの収集と整形の部分で、何をすべきかを考える仕事は本人に残っています。
もうひとつ注目すべきは、ワークフローの所有権に関する本人の発言です。自分がワークフローを持っているから、イベントの内容が変わっても、新しいツールが購買され、導入され、保守されるのを待たずに、自分で作り替えられる。企業のIT導入では、要件定義から利用開始までの時間が変化に追いつかないことが慢性的な課題でした。現場が自分で組み立てて自分で直せる道具は、この構造問題への一つの答えになっています。
公表されている結果
数値を整理します。GTM業務では、12週間の計画サイクル中に週約16時間を削減。手作業の分析が業務時間の約40%を占めていた状態から、週2回の自動実行への転換です。マーケティング業務では、週25〜40件の外部情報から5〜8件の重要シグナルを抽出し、試作品の作成期間は2〜3週間から3〜5日になりました。
GTCはNVIDIAの公式サイトでも確認できる同社最大級のカンファレンスで、営業組織にとって年間最大の山場のひとつです。その準備作業という、成果が事業に直結する業務での数値である点が、この事例の重みになっています。
情報の絞り込みという用途も、もう少し具体的に見ておきます。Jain氏が直面していたのは、新しいモデルやベンチマークが次々に発表される業界で、自社の優先事項に関係する動きを見落とさないという課題でした。週に25〜40件届く外部のアップデートを人が全部読むのは現実的ではなく、かといって読まなければ判断を誤ります。ChatGPT Workは、この流れ込む情報から行動につながるシグナルを週5〜8件に絞って示します。重要なのは、件数を減らすこと自体ではなく、絞り込みの基準に自社の優先事項が組み込まれている点です。
日本の実務者が参考にできる点
第一に、「繰り返しの構造を持つ業務」から自動化していることです。イベントごとに毎回発生するリスト整備や進捗追跡は、頻度が高く、手順が決まっていて、成果の定義が明確です。日本の実務でいえば、定例レポートの作成、キャンペーンごとの進行管理、展示会前の顧客リスト整備が同じ構造を持ちます。まず「毎回やっている作業」を書き出すことが出発点です。
第二に、現場の担当者自身がワークフローを持つ形です。情報システム部門による全社ツール導入ではなく、業務を最もよく知る本人が組み立て、必要に応じて自分で直す。この形は変化への追従が速く、「ツールはあるが現場に合わない」という失敗を避けられます。そのうえで、できたワークフローを他チームへ共有する経路があれば、個人の工夫が組織の生産性になります。
第三に、情報収集の自動化という使い道です。業界動向の追跡は、多くのマーケターが「重要だが時間が取れない」と感じている仕事です。大量の情報源から自社に関係するものだけを絞り込ませる使い方は、ツールを問わず今日から試せる型であり、週次のインプットの質を安定させます。
留意点として、公表されている削減時間は特定の担当者・特定の業務での実績であり、組織全体の平均値ではありません。また効果の前提には、対象業務を熟知した本人がワークフローを設計しているという条件があります。ツールだけ導入しても、業務の分解ができていなければ同じ結果にはなりません。
個人の工夫を組織へ広げる
この事例のもう一つの主題は、成果の横展開です。Daney氏が作ったワークフローは、サンノゼ、台北、欧州、ワシントンDCでイベントを支援する同僚たちへ共有され、各地域が現地の事情に合わせて調整して使っています。ひとりの担当者の工夫が、そのまま他地域の生産性になった形です。
この広がり方には、ツールの性質が関係しています。プログラミングを伴う自動化は、作った人以外が読み解いて直すのが難しく、属人化しやすい。一方、自然言語で組み立てるワークフローは、受け取った側が中身を読んで理解でき、自分の状況に合わせて書き換えられます。共有の障壁が低いことが、横展開の速度を支えています。
日本企業がAI活用を組織に広げるときも、同じ道筋が使えます。全社一斉の導入研修より、成果を出した現場のワークフローを、そのまま隣のチームへ渡す。渡された側が自分で直せることを前提にすれば、活用は現場の速度で広がります。重要なのは、誰がどんなワークフローを作ったかが見える場所と、それを共有してよいという合意です。
出典と注記
この記事はOpenAIが公開した導入事例とNVIDIAの公式サイトのみを出典とし、時間・件数・期間は原文の表記のまま記載しました。全社での利用規模や契約形態は公表されていません。
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