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KlarnaのAIアシスタントは初月で顧客対応の3分の2を処理した

決済のKlarnaは、OpenAIと組んだAIアシスタントが初月で2.3 million件の会話に対応し、フルタイム700人分の仕事をこなしたと公表しました。解決時間や再問い合わせ率まで公開された事例から、顧客対応AIの実像を整理します。

後払い決済で知られるスウェーデン発のKlarnaは、OpenAIの技術を使ったAIアシスタントの成果を、具体的な数値とともにプレスリリースで公表しました。稼働から1カ月の時点で、AIアシスタントは2.3 million件の会話に対応し、これは同社の顧客サービスチャットの3分の2にあたります。顧客対応AIの事例は「導入した」という発表で終わることが多いなか、Klarnaは処理件数、解決時間、再問い合わせ率、想定される利益改善額まで開示しました。公表された数値の中身と、そこから日本の実務者が読み取れることを整理します。

何をしたか:OpenAIと組んだ顧客対応の自動化

KlarnaとOpenAIの関係は、ChatGPTの登場直後にさかのぼります。共同創業者でCEOのSebastian Siemiatkowski氏はChatGPT公開直後からその可能性に注目し、Klarnaは欧州企業として初、フィンテックとして世界初のChatGPTプラグイン提供企業になりました。同氏は「全員にテストと探索を促している」と語っており、AIの実験を組織の標準行動にする方針を明確にしています。

その延長線上で投入されたのが、Klarnaアプリに組み込まれたAIアシスタントです。返品や返金の処理、注文状況の確認といった、顧客サービスに寄せられる定型的な問い合わせへの対応を担います。特徴的なのは提供範囲の広さで、23の市場で24時間週7日(24/7)稼働し、35を超える言語でやり取りできます。同社は、この多言語対応によって、各市場の移民・駐在コミュニティとのコミュニケーションが大きく改善したとも述べています。

Klarna AIアシスタントの事例カード。23市場、24時間週7日、35超の言語、初月2.3 million件の会話
プレスリリースに記載された提供範囲と初月の実績です。会話数の2.3 millionは原文の表記のままです。 出典:Klarna プレスリリース(2024年2月)(確認日 2026-08-19)

発表文の書き方にも特徴があります。Klarnaはこのプレスリリースを、数字が物語るという構成でまとめ、導入の意義を形容詞ではなく測定値で示しました。企業がAI活用を対外発信するときのお手本のような構成で、後続の企業が自社の成果を発表する際の比較基準にもなっています。

多言語対応がもたらした副次的な効果にも触れられています。同社は、35を超える言語への対応により、各市場の移民・駐在コミュニティとのコミュニケーションが大きく改善したと述べています。人手のサポート体制では、話者数の少ない言語ほど後回しになりがちです。AIによる対応は、これまで十分にサービスが行き届かなかった顧客層に届く手段にもなり得るという指摘です。

公表されている結果

プレスリリース(2024年2月)で公表された初月の数値を整理します。会話への対応件数は2.3 million件で、顧客サービスチャット全体の3分の2。仕事量に換算するとフルタイムの担当者700人分に相当します。顧客満足度のスコアは人間の担当者と同水準を保ちました。

質の面の数値も出ています。用件解決の正確さが人間を上回り、再問い合わせは25%減少。顧客が用件を解決するまでの時間は、従来の11分から2分未満へ短縮されました。これらの結果を踏まえ、同社はこのAIアシスタントが2024年に40 million米ドルの利益改善をもたらすと見積もっています。

注目すべきは、開示の粒度です。処理件数や人員換算だけでなく、「再問い合わせが減った」という品質の証拠と、「解決時間が短くなった」という顧客体験の証拠を並べています。量だけの自動化なら、質を犠牲にしても達成できます。質の指標を同時に公開したことが、この事例の説得力を支えています。

解決時間の棒グラフ。従来の対応が11分、AIアシスタントが2分未満
プレスリリースの公表値から作成しました。AIアシスタントは「2分未満」と公表されているため、2分として描いています。 出典:Klarna プレスリリース(2024年2月)(確認日 2026-08-19)

数値を読むときの注意も添えます。700人分の仕事という人員換算は、対応件数を人間の処理能力に換算した推計であり、実際に700人を削減したという意味ではありません。また、40 million米ドルの利益改善は同社自身による見込みです。公表値を引用するときは、それが実測なのか、換算なのか、見込みなのかを区別して扱う必要があります。この記事でも、それぞれの数値の性質を原文に沿って書き分けています。

導入を検討する日本企業向けに、この事例から導ける進め方を整理すると、次の順番になります。まず、問い合わせログを1カ月分類し、定型の用件が何割を占めるかを測る。次に、定型上位の用件について、回答の正解をFAQや手順書の形で文書化する。そのうえで、限定した用件だけをAIに任せて満足度と再問い合わせ率を計測し、結果を見て対象を広げる。Klarnaの発表が優れているのは、この計測しながら広げるための指標セットを先に示してくれている点です。

Klarnaのプレスリリースのファーストビュー
引用キャプチャKlarnaのプレスリリース。初月の会話数や解決時間は、この発表の記載どおりです。 出典:Klarna「Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month」(プレスリリース)(確認日 2026-08-19/表示のファーストビュー)

日本の実務者が参考にできる点

第一に、AI導入の成果は「代替した仕事量」と「品質指標」のセットで測るという型です。Klarnaの開示は、処理件数(量)、満足度・正確性・再問い合わせ率(質)、解決時間(体験)、利益改善(財務)の4層になっています。日本企業がチャットボットやAI対応を導入する際も、この4層で目標と計測を設計すれば、「導入したが効果が分からない」という状態を避けられます。

第二に、定型業務から着手する王道です。Klarnaが任せたのは返品・返金・注文照会といった、手順が決まっていて頻度の高い問い合わせです。例外的で複雑な相談は人間に残す。この切り分けは、サポート窓口を持つあらゆる事業に応用できます。まず問い合わせログを分類し、定型の割合を測ることが出発点になります。

第三に、多言語対応という見落とされがちな価値です。35言語を超える対応は、人間のチームで実現しようとすれば莫大な費用がかかります。日本でも、インバウンド需要や在住外国人への対応を課題とする事業者にとって、AIによる多言語サポートは、人手では最初から選択肢にならなかった水準のサービスを可能にします。

留意点もあります。公表されているのは初月の数値であり、その後の推移は別途の開示を確認する必要があります。また、これは自社アプリに大量の定型問い合わせが集まる大企業の事例です。問い合わせの絶対数が少ない事業では、同じ投資対効果は成立しません。自社の問い合わせ量と定型率を測ってから判断すべき事例です。

AIに任せる仕事と人に残す仕事の左右比較。手順が決まった高頻度の業務はAI、個別判断が必要な業務は人間
Klarnaの切り分け(定型はAI、例外は人間)を、導入検討時の観点として一般化した整理です。 出典:Klarna プレスリリース(2024年2月)(確認日 2026-08-19)

発表から2年が経って

このプレスリリースは2024年2月のもので、顧客対応AIの成果を数値で公表した初期の代表例として、その後も繰り返し参照されてきました。現在では、同様の取り組みを公表する企業が増え、AIによる一次対応は珍しい施策ではなくなっています。

だからこそ、いま読み返す価値があるのは個別の数値ではなく、開示の設計です。処理量、品質、体験、財務という4種類の指標を同時に出したこと。そして、AIが解決できなかった場合に人間へ引き継ぐ体制を前提として示したこと。この2点は、これから導入する事業者が自社の計画を組むときの雛形になります。

なお、この記事で扱ったのは公表された初月の実績のみです。その後の運用体制や、実際の業績への影響については、この記事の出典からは確認できません。最新の状況を知りたい場合は、同社のプレスリリース一覧で続報を確認してください。

出典と注記

この記事はKlarnaのプレスリリースとOpenAIが公開した導入事例のみを出典とし、件数・時間・言語数・金額は原文の数字列のまま記載しました(2.3 million、40 millionなどの表記も原文どおり)。その後の業績への実際の影響額は、この記事の出典からは確認できません。為替換算は行っていません。

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